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図書館スタッフおすすめ本

 

2019/09/01

人間とはどのような生き物であったか

| by 図書館

『ゴリラからの警告』 山極 寿一/著 毎日新聞出版 (市立・成人 914.6/ヤマ/18)

 「ゴリラの国に留学して来た」というゴリラ研究の世界的権威が、現在の人間社会に発する警告の書です。

 
 現在、社会のあちこちで噴出している問題・・・生活習慣病、アレルギー、自閉症、家庭内暴力、いじめ、ヘイトスピーチ等々・・・。皆さんは、この原因は何だとお考えになりますか?筆者は作中において、「こういったトラブルは、人間が備えている特徴の由来や本質を誤解することから生じる」と主張しています。著者の言う人間の特徴とは、祖先を同じくするサルやゴリラと比較して、人間に固有または顕著な性質や行動のことです。そしてそれは、人間が人間として進化していく過程で、様々な必要性から獲得してきたものなのです。著者はその一つ一つについて、なぜそれが人間にとって必要だったのか、その特徴を獲得したことで、人間の心身や社会がどのように発達してきたのかを、長年の研究に基づいて解り易く解説します。読み進めてゆくと、今現在私たちが生きているこの社会のあり方が、様々な点で人間という生物種の“つくり”に合っていないのではないかと考えられてきます。自分に合わない環境で生きていれば多大なストレスがかかりますし、そうなれば社会が荒れるのも当たり前でしょう。著者は、研究のため自ら一頭のゴリラとなってゴリラの群れに交わり、彼らを観察してきました。その結果、生物種という境界の外側から人間を観察する機会に恵まれました。その観察眼と評価は客観的で的確です。

 
 誰しも、己の本当の姿は判らぬもの。一度人間以外の目から人間の姿を見直し、さらに自分たちの生きる社会を見直してみてはいかがでしょうか。今ある苦しみや生きづらさの原因が判るかも知れませんし、原因が判れば解決の手段も見つかるかも知れません。

 


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