小学2年生の国語の教科書に泣けた

『きいろいばけつ』 森山 京(みやこ)/著 あかね書房 (市立・児童 F/モ /05)

小学2年生の国語の教科書に掲載されている物語です。

 森で黄色いばけつを見つけた、きつね君。
 一目でとっても気に入って、このばけつを森でうっとり眺めたり、このばけつで自分の庭の木に水をあげる姿を想像したり、ばけつに自分の名前を書くまねをしたりします。

 でも誰のものだか分からないので、持ち主が現れるまで、1週間待ちます。
 1週間待っている間の、きつね君の仕草がたまらない。
 大切に、大切に、ばけつを見守っているのです。

 でも、ばけつがやっと自分のものになる前の晩、ばけつは強い風に吹き飛ばされて、遠くへ飛んで行ってしまいます。
 この場面は、夢かうつつか、どちらでも取れる表現がしてあります。

 この後のきつね君のセリフ。
 「(どっちでも いい)と、きつねの こは、おもいました。」

 長女の教科書でここまで読んだ時、私はボロボロ泣きました。
 これを書いている今でも、泣けてきます。

 きつね君は、「どうでもいいや」と思ったわけでは決してありません。
 毎日、毎日、森へ通って、慈しむように眺めていた、ばけつなのです。
 どうでもいいわけは、ないのです。
 ぐっと我慢して、彼なりに今までの思いを昇華させたのです。
 あんたは、えらいなあ!と、きつね君を抱きしめたくなります。

 心躍らせながら、大事に大事に育てた「もの」や「こころ」が、最後の最後の段階で、自分の手の届かない所へ行ってしまう。
 すべてを失ったかのような、喪失感。
 それでも立ち上がって、ふたたび歩き始める。

 そんな経験は、子どもたちより大人の方が沢山しているから、大人がこの物語に心を揺さぶられるのですね。
 あなたも、小学2年生の国語の教科書で、泣いてください。