図書館スタッフおすすめ本

図書館スタッフおすすめ本

「『100万回死んだねこ』ってありますか?」

『100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集』 福井県立図書館/編著 講談社(市立・成人 015.2//21)


 図書館では、利用者の方が探している本を見つけることも大事な業務の一つです。初めて図書館で働き始めた時、「探しても本が見つからなかったらここを見るといいよ…」と先輩に教えてもらったのが、福井県立図書館のホームページ内にある「覚え違いタイトル集」でした。
 福井県立図書館の窓口での問合せなどから、覚え違いしやすいタイトルや著者名の事例をリスト化したページで、現在紹介されている事例は1300以上になります。
 そんな事例から厳選し書籍化されたのが本書です。

 

Q『蚊にピアス』→A『蛇にピアス』
Q『滅びた後のシンデレラ』→A『滅びの前のシャングリラ』
Q「なんかが強く吹きすぎてる本」→A『風が強く吹いている』など…

 

 覚え違いのタイトルや、ふんわりとした記憶からたどる事例、映画と原作のタイトルが異なっている事例など、利用者から尋ねられる内容も様々です。
 作品のタイトルを間違いなく覚えることは誰にとっても難しいですが、数々の事例にくすりと笑ったり「あるある」と頷いてしまいます。

 

読みたいと思ったけど探しきれず諦めていた本がありましたら、この本で再会できるかもしれません。
当館でも、お探しの本がありましたらぜひお気軽に尋ねてください。

 

本書のタイトルになっている本もとても有名な絵本の覚え違いです。正しいタイトル、思い出せますか?

方向音痴が見ている世界

『方向音痴って、なおるんですか?』 吉玉 サキ/著 交通新聞社(市立・成人 448.9//21)

 

私自身は方向音痴ではないと思っているけれど、旅行先などでは地図アプリに頼り切り。ナビ機能のままに進めば目的地に着くので、地図を読む力はどんどん衰えている気がします。
よく一緒に旅行する友人は自他ともに認める方向音痴。本書にも方向音痴あるあるとして書かれているとおり、最初の一歩をどちらに進めばいいか分からない、地図アプリを見ても逆方向に進んでしまうと言います。最終的には「今ここにいる!」と写真が送られてきて、待ち合わせするのも一苦労です。
本書は、自分を知る・脳を知る・地図を知る・地形を知る・地名を知るの5章。認知科学者や地図研究家といった、それぞれの分野の専門家から教えを受けて、悪戦苦闘しつつ著者が方向音痴を克服する様子が、エッセイ仕立てに楽しく読める一冊です。方向音痴の人も、そうでない人も、新たな視点で街歩きしてみませんか。

「読んでおいしい食エッセイ!」

「はらぺこ万歳! 家ごはん、外ごはん、ときどき旅ごはん」 たかぎ なおこ/著 文藝春秋(市立・郷土作家 596.0//郷土)

 

 現在、図書館2階展示コーナーでは「読んでおいしい食エッセイ」と題して、食にまつわるエッセイを紹介しています。
 食通としても有名な池波正太郎さんをはじめ、小川糸さん、椎名誠さんなどの本が並ぶなか、今回は、四日市出身のイラストレーター、たかぎなおこさんの『はらぺこ万歳!』をご紹介。「家ごはん、外ごはん、ときどき旅ごはん」のサブタイトルどおり、ひとりぐらしの適当自炊から、実家の謎ちくわ料理、旅先の弘前グルメなどを、たかぎさんのイラストで紹介しています。
 たかぎさんの本は、ときどき登場する四日市の話題はもちろんですが、世代が近いせいか「それ、めっちゃわかる~」ということが多く、どの本も大好き。この本では、小学校時代の給食「ポーミントン」にめちゃくちゃ懐かしみを覚えました!

 

「読んでおいしい食エッセイ」の特集は12月28日(日曜日)まで、2階展示コーナーは17時までです。ぜひ、新しい本との出会いを。

 

どんな本があるかは、こちらの「テーマ一覧」からもご覧になれます、ぜひご利用ください。
 (PC版)https://www1.yokkaichi-lib.jp/winj/opac/theme-list.do?key=0000000036&lang=ja
 (スマートフォン版)https://www1.yokkaichi-lib.jp/winj/sp/theme-list.do?key=0000000036&lang=ja

田んぼのまん中にある神社を集めた写真集

『田んぼのまん中のポツンと神社』 えぬびい/写真・文 飛鳥新社(市立・成人 748//25)

 

田んぼのまん中にポツンとある神社を集めた写真集。
最初に静けさが心を和ませてくれる。
日常の喧騒から離れ、風が穂を揺らす音や鳥のさえずり、虫の音を写真から感じられた。
正面や空中写真の構図もよく、水田に映る空、季節の移ろいとともに表情を変える稲穂、その中に凛と立つ神社は、どこか懐かしい日本の原風景を思わせてくれた。
特に稲刈りの時期には黄金色のじゅうたんの中に、雪が降れば白銀の世界へと導いてくれ、季節の移り変わりの美しさを思い出させてくれる。
ポツンと神社のある風景は昭和中期以降からポツポツと誕生したらしい。
春・夏・秋・冬と四季にわたり写真が集められていて、季節ごとに違う表情を見せる情景に温かさと寂しさ、懐かしさを感じた。

自分のからだをいたわる

『疲れないからだをつくる夜のヨガ』 サントーシマ香/著 大和書房(市立・書庫 498.3//17)

 

初めてヨガのレッスンを受けた時、心とからだが軽くなったことを覚えています。自分にベクトルを向け、からだに余分な力が入っていないか確かめながらポーズをとる。からだに痛みを感じると、日々の生活の中で、もっと自分のからだをいたわってあげなきゃと気づかされます。ヨガを覚えたいけど難しいポーズはできる自信がない・・・と思っていた時にこの本に出会いました。
布団の上でも楽に取り組むことができるヨガが紹介されており、ヨガ初心者の私でも簡単にポーズをとることができました。また、ヨガだけでなく疲れないからだをつくるために、日常生活をどう過ごしたらよいかのヒントも紹介されています。
日頃、自分のからだをいたわってあげてなかったかもしれないと思った方に、ぜひ読んでほしい本です。

ひとりぼっちは怖くない

『孤独ぎらいのひとり好き』 田村 セツコ/著 興陽館(市立・成人 726.5//20)

  

『孤独ぎらいのひとり好き』というタイトルを見て、「私のことだ……!」と衝撃を受けて手に取りました。
 実家を離れて一人暮らし。初めは意気込んで始めた一人暮らしですが、だんだんと寂しさが募っていた時でした。
 テレビもついているしエアコンの音もする。それなのに何故かシーンとしていて、涙がぽろっと出てしまう夜がありました。「私はこの世界でひとりぼっちになったのかな」と思うくらい“孤独”を感じていました。
 でも、実家に帰ると美味しいご飯が出てきて、くだらないことで家族と笑いあって、飼い猫は嫌々ながらも撫でさせてくれる。それに、夜中でも電話に付き合ってくれたり、休日には一緒に遊んでくれたりする友達もいる。
 それに気づいた瞬間、「私はひとりぼっちじゃなかったんだ!」と胸がいっぱいでした。
 そうかと思えば、一人で新幹線に乗ってふらっと出かけるのは何てことはないのです。何なら、「一人って最高に楽しい♪」くらいに気楽に感じます。
 最近、こんな風に“孤独”は嫌だけど“一人”は好きな私って変?と考えていましたが、そもそも孤独を感じない人間なんかいないんだな、とこの本を読んで思いました。
 誰でも孤独は感じている。けれど、他の誰かに寄りかかっているだけではダメで、一人で立つ練習もしなくてはいけない。
 私にとって、そんな人生の目標が出来た素敵なエッセイでした。

幸せなおやつ時間

『志麻さんちのおやつ』 タサン志麻/著 NHK出版(市立・成人 596.6//25)


予約のとれない伝説の家政婦 タサン志麻さんの、家庭でつくるお菓子のレシピ本が素敵です。少ない材料で、手軽に出来るものや、工程が少なく簡単にできるレシピで、作りやすいものばかりです。子どもと一緒に作れるくらいシンプルで簡単なレシピです。
バターは有塩でも無塩でもいい!型がなくても大丈夫!チョコレートは市販の板チョコでOK!キレイじゃなくても、ちょっとくらい失敗してもいい!
フランス仕込みの家庭のおやつは、実にザックリなのにとっても魅力的です。
大人も子どもも笑顔になれる家庭のためのおやつ50品を紹介しています。

 

子どもたちと自由に楽しくつくって、みんなで笑顔で味わえたらとっても幸せなおやつ時間になると思います。

地球を知る

『地球史マップ』 クリスティアン グラタルー/著 藤村 奈緒美・瀧下 哉代/訳 日経ナショナルジオグラフィック(市立・成人 450//24)


 黒地に青い地球。この宇宙から見たような地球の表紙に惹かれ手に取ってみた。
パラパラとページをめくると地球誕生・構造、生命の歴史。またヒトという動物の誕生による地球の地質や気候、資源、生物、社会の変化など人類と地球のかかわりについて書かれている。
 例えば、地球の核が生み出す地磁気が「盾」となり、生物を太陽の熱や宇宙線から守っている。地球は、太陽との距離や気圧により水が液体として存在できるハビタブルゾーンに入る唯一の太陽系の惑星であること。深層海流の平均速度は1㎜毎秒で、地球を1周するのに1000年かかることや、海水には太陽エネルギーとCO2を吸収し気候変動を緩和する役割があるが、昨今の温室効果ガスの排出による気温上昇を緩和するため、海水が熱吸収するので海面温度が上がっていることなどである。  
この1冊には地球のこと、また地球とヒトとの関りを社会、地理、生物などの視点から解説されており、「そうだったのか!」が溢れていた。
 百科事典のように全頁が、わかりやすい図や表で表現されパラパラ見ているだけでも面白い。また関連ページの表記や索引もあり、興味のある1ページからどんどん広がっていく1冊である。

書は捨てず、路上に出る

『路上観察学入門』 赤瀬川 原平ほか/編 筑摩書房(市立・書庫 304//86)

 

皆さんは日ごろ道を歩いていて、不思議と目を引くものを見つけた経験はありますか?
私は最近、とある工場の壁の2階に階段も梯子もない奇妙なドアを見つけました。
建築物などに付属しており、実用的には用をなさずそれでいて美しく保存されているものをトマソンと言うそうです。
そのトマソンを最初に提案した赤瀬川原平ほか様々な方たちの執筆物、対談、インタビューなどを集めたのが本作です。

 

タイトルにもなっている路上観察学は、先ほどのトマソンも含め、マンホールのふた、高校の制服、道のわきのドブ板の曲がり方、果ては自宅アパートのお手洗いの窓から見える他の部屋の住民の様子まで様々なものを対象としているということで、本作でも多くの事例や報告が挙げられています。
川に流れているゴミの観察記録など、一見「くだらない」「どこが学問?」となりそうですが、調査報告書や観察の方法・注意点には熱量を感じ、目の前の出来事に関心を持つこと、それを観察、記録するというのは立派な学問への入り口であると真面目に考えてしまいました。

 

ちなみに見つけたドアについては、過去どういう用途であったのかはいまだわかっていません。
毎日見慣れた場所でも、少し見方を変えれば面白いものがあるし、知的好奇心の入口になると教えてくれる一冊です。

【募集は終了しました】「おもしろいエッセーって…」 読書に関するエッセー募集中!

『ウチら棺桶まで永遠のランウェイ』 kemio/著 KADOKAWA (市立・成人 779.9/ /19)

 

エッセーコンクールの担当として、たくさんのエッセーを読む機会をいただいています。
昨年の応募総数は164作(ありがとうございます!)! それだけのエッセーを読むと、「自分はエッセーの、どういうところをおもしろいと感じているんだろう?」と考えるようになりました。

 

思うにエッセーのほとんどは、「書き手に起こったこと」と「それを経て書き手が考えたこと」でできているのではないでしょうか。
そこへ文体、つまり「書き手がどんな距離感で読み手に伝えようとしているか」のいろどりが加わることで、書き手それぞれのリズムに乗って、こちらへ伝わってくるように思えます。

 

そんなわけで今回紹介するのは、kemioさんの『ウチら棺桶まで永遠のランウェイ』です。

 

モデルや歌手、動画クリエイター等多岐に活躍されるkemioさん。その経験と考えが、kemioさんの口調そのままで書かれています。なんたって冒頭から、

 

「地球上のみなさーん! 初めましての方、お帰りなさいの方、バーキンは持たないけどエコバッグは所持系のセレブことkemio、けみおでーす!」(P.022)

 

……ここだけ引くと、乗れる人乗れない人をはっきり分けそうですが、

 

「私、棺桶までのレース、ガンガン走っておりますが、みなさんのレースは順調ですか?」(同)

 

と続くと、お? と身を乗り出してしまいます。
「棺桶までのレース」という、kemioさんの語り口からは想像できない深さからのワード。そんなことばどこから? と思ったらもう、つかまれています。あとはあっという間。生活、恋愛、将来についてしゃべりまくるkemioさんのペースに引っぱり回されるばかりです。
口調を離れて冷静に見ると、kemioさんの来し方は相当にヘヴィです。しかしそう思わせないのは、ひとえにkemioさんのしゃべりそのままの文体の力。抵抗を感じる前に読ませてしまう、オープンな力があります。

 

「今やること、やらないことって結局賭けでしかなくて、ウチら一生ベガス。まじで」(P.163)
「今を楽しくする方法を常に考えてる。(中略)振り返ったら「あ、充実してた」みたいなHAPPY ENDで締め上げる」(P.172)

 

エッセーを読むことが、書き手の経験と考えを読むことなのだとしたら、実はそれってかなり、おしゃべりに近いのではないでしょうか?
読んでくれる人とおしゃべりするように書けたら、たくさんの人に伝わり、またたくさんの考えが生まれるきっかけにもなりそうです。楽しみですね!

 



図書館では、今年も読書に関するエッセーを募集しています。
2025年のテーマは「今、いちばん読んでほしい本!」です。
誰かにおすすめしたい本の中でも、2025年の今、気分はこれ!という本や、2025年、こんな情勢だからこそ読んでほしいと思う本について、エッセー(随筆)にしてください。
またはあなたの読書法や、読書論についてのエッセーも可です。
ご応募お待ちしております!

 

「読書に関するエッセーコンクール」作品募集中