2018年9月の記事一覧
カンパニー
『カンパニー』 伊吹 有喜/著 新潮社 (市立・成人 913.6/イフ/17)
主人公の青柳誠一は、40代後半。製薬会社の総務に25年間務めてきた。与えられた仕事をソツなくこなすだけの青柳は、取り換えのきく人材と評価されリストラ候補に。そして、社長とは縁が深いバレエ団に出向を命じられてしまう。会社に戻るために青柳に残された道は、社名変更キャンペーンイベントの最後を飾るバレエ公演を成功させることなのだが、チケットが売れなかったり、公演の主役であるダンサーが突然居なくなったりと開幕すら危うい状況に。果たして公演は無事開幕するのか。
会社やバレエ団の思惑、ダンサーが現役であり続ける理由など、表舞台では想像しにくい裏側が描かれている本書。まるで裏側を覗き見ているようで、ワクワクしながら読みました。表舞台の華やかさとは裏腹に、喜びや苦悩があるのだと知りました。
また、登場人物たちが自分と向き合っていく姿が魅力的。主人公青柳も違う環境に生きる人たちと触れ合うことで、自分の居場所と必要性について疑問を膨らませていく。青柳が出した答えも考えさせられました。人物の動きや心情が事細かくていねいに描かれているので想像しやすく、バレエを知らない私でも、ついつい小説の世界に引き込まれてしまうような1冊です。
手塚治虫からの伝言(メッセージ)
『手塚治虫からの伝言(メッセージ)命』
『手塚治虫からの伝言(メッセージ)人間の未来』
『手塚治虫からの伝言(メッセージ)平和への祈り』
『手塚治虫からの伝言(メッセージ)友情』
『手塚治虫からの伝言(メッセージ)ロボットと暮らす世界』
いずれも、手塚治虫/著 童心社 (市立・成人 726.1/テス/18)
こんにちは。
マンガの神様・手塚治虫が、未来の人たちに遺して、伝えていきたかった、力強くて、おもしろくて、悲しくて、心にのこるもの…を感じることができる本をご紹介します。
手塚治虫は、人類にとっての普遍的なテーマを数多くの作品に描き続けました。私たちは、「ジャングル大帝」、「鉄腕アトム」、「リボンの騎士」などの作品をわくわくして見て育ちましたが、手塚治虫のマンガにでてくる未来は、明るいものばかりではありません。むしろ、未来の戦争や、人類の終末を描いたもののほうが多いくらいです。
それは、手塚治虫が未来ある人たちに、「道をまちがえてしまうと、未来はこんな暗いものになるよ。気をつけなさい。」というメッセージを伝えようとしていたから。過去の人間の愚かなまちがいを繰り返さないでいいようにという思いからでした。
アトムが描かれてから、半世紀以上が経ちましたが、そのテーマは今も私たちに問いかけてきます。目を見張るほど進歩し続けていくテクノロジーや、命の大切さ、、、どうぞ、それらを感じてください。