これからのために歴史を学ぶ

『総点検・日本海軍と昭和史』 半藤 一利・保阪 正康/著 毎日新聞社(市立・成人 397.2//14)

 

最近、世界各地で起きる戦争や武力衝突のニュースを見ることが多くなりました。
では自分の国はどうなのか、なぜ今から80年ほど前多くの人命が失われる太平洋戦争が起きたのかを知るきっかけになればと思い、読み始めたのがこの本です。

 

本作は、昭和史の大家2人が日露戦争直後から戦艦大和の特攻までの流れについて語り、最後に昭和期の主だった海軍軍人たちを、評価していく対談形式をとっています。
当事者である軍人たちの証言も多数取り上げられており、人物たちの長所や欠点、いつどのタイミングでどんな決断をしたかがわかりやすくなっています。
そのため、太平洋戦争が始まるまでのプロセスだけでなく、際限のない軍備の拡張、組織内の対立や権力争い、現実を見ず過激な主張を行う強硬派の登場、異なる意見を持つ人たち(この場合は国際協調を重視する海軍の一派)の排除といった現代にも通じる問題が存在したことを、学ぶことができます。

昭和期の陸軍に元々良い印象をもっておらず、太平洋戦争の回避や終戦のため活躍した人々に海軍出身者が多かったこともあり、「陸軍と比べて海軍の方が良かったのでは?」などとボンヤリ思っていた私としても、反省を促される体験になりました。
また、特に印象に残ったのが、作者2人が様々な証言を取り上げる中、戦争に至った自分の責任を認めていなかったり、作戦の失敗など都合の悪い部分を避けていることに触れるなど、歴史の当事者として十分な責任を果たしていない人たちがいることを、何度も指摘していることでした。


人間は成功体験より失敗から学ぶべきことの方が多い。
過去、現在の戦争について学び、起きるかもしれない戦争をどうすれば避けられるのかを、考えるきっかけになる一冊です。

本作は海軍の失敗について取り扱っていますが、昭和陸軍の失敗を扱った本として、以下の書籍も併せてお勧めしたいです。

『ノモンハンの夏』 半藤 一利/著 文芸春秋(市立・書庫 210.7//)