図書館スタッフおすすめ本
エッセーってなあに? ~「読書に関するエッセーコンクール」募集開始~
『エッセイストのように生きる』 松浦 弥太郎/著 光文社 (市立・成人 901.4//23)
今年も、「読書に関するエッセーコンクール」の応募受付が始まりました!
今年も、「読書に関するエッセーコンクール」の応募受付が始まりました!
そこで今回は、エッセーを書くのはどんな人なのかを紹介していきます。
現在放送中の大河ドラマ「光る君へ」でも、ききょう(清少納言)が傷心の中宮定子を癒すため、定子と過ごした輝かしい日々を書き止めることを始めました。これが後に「枕草子」となるわけです。
清少納言のように、強烈な体験がなければエッセーを書くことはできないのでしょうか?
もちろん、そんなことはありません。
『エッセイストのように生きる』の著者・松浦弥太郎は、30年以上エッセーを書き続け、エッセーを書くことを生業としています。清少納言やさくらももことは異なる、職業がエッセイストの方ですね。
しかし著者は、エッセイストとはただの職業ではなく生き方であると説きます。
エッセーを書くことで、自分自身を知り、心の中に自分の居場所を守り続けてきたそうです。
本書では、エッセーとはなにか、エッセイストとして生きるとはどういうことかという点から、エッセーを書くための思考法や読書のコツ、プロットの作り方まで丁寧に指南してくれます。
著者曰く、エッセーの秘訣とは自分だけの「視点」と「秘密」。
本書を読み終えたころには、エッセーを書きたくてうずうずしているに違いありません。
いかがですか? だんだん、エッセイストという生き方に興味が沸いてきませんでしたか?
2024年のエッセーコンクールのテーマは「何度だって読みたい本!」です。
これを読んでエッセーを書いてみたいと思った方、「読書に関するエッセーコンクール」へのご応募をお待ちしています!
詳しくはこちらをご覧ください。
「読書に関するエッセーコンクール」作品募集中(市立図書館ホームページ内の別ページが開きます)
知っていますか?「蘭字」
『蘭字ー知られざる輸出茶ラベルの世界ー』 齋田茶文化振興財団齋田記念館/編集・発行 (市立・地域 L675//20)
この資料は、東京にある齋田記念館で行われた「蘭字」をテーマにした展示の図録です。
「蘭字」とは、日本からお茶を輸出する際に茶箱の側面に貼られたラベルの総称。
始まりは定かではないようですが、政府がお茶の栽培と輸出を奨励した明治期頃から、
盛んに製作されていたようです。
蘭字には、種類・品質・産地・ブランド名・輸出商社などの情報が記され、なかには、文字情報と共に日本や西洋をモチーフにした絵柄も施されたものもありました。
カラーで刷られたそれらは、デザイン的にも美しいものが多くあります。
ここ四日市からも多くお茶が輸出され、茶箱には四日市で製作・印刷した蘭字も貼られました。
この資料には、四日市の印刷会社や市内の郷土資料館に残る蘭字やその見本帳なども登場します。
どんな種類のお茶がどこで作られ、どんな商社を通してどこの国へ運ばれていたのか…
蘭字からは、四日市のお茶の歴史とともに、流通の歴史も垣間見ることができます。
デザインの美しさを楽しみ、歴史の一片も知ることのできるこの資料。
ぜひ、2階地域資料室で、手に取ってみてください。
ようこそキングの世界へ
『スティーヴン・キング大全』 ベヴ・ヴィンセント/著 河出書房新社(市立・成人 930.2//24)
ステーヴン・キングの作品は映像化されたものが多く、『キャリー』や『スタンド・バイ・ミー』などはご存じの方も多いかと思います。
ホラー作品から社会派もの(例『グリーン・マイル』)などテーマも幅広く、長編やシリーズも多いのでどれから読み始めようかと思っている方にこの『スティーヴン・キング大全』はおススメです!
年代別に分かりやすく紹介されていたり、どんな子ども時代を過ごしていたかなど、キングのこともまるごと知ることができます。
また、作品と作品が実はつながっていた!ということが分かるのも楽しいです。
この本をきっかけにあなたもキングの世界にはまってしまうかもしれませんよ!
墓マイラーって知っていますか?
『世界のすごい墓』 (地球の歩き方BOOKS W31 旅の図鑑シリーズ) 地球の歩き方編集室/編集 Gakken(市立・成人 629.8//23)
偉人、著名人の墓巡礼をする人のことを墓マイラーというそうです。
日本では墓巡礼の文化は古く、掃苔家(そうたいか)という言葉があり、俳人の松尾芭蕉も古い歌人の墓を訪れていたそうです。
本書は、墓マイラーの名づけ親であるカジポン・マルコ・残月さんの巡礼を続ける理由や心得から始まります。
ページをめくっていくと、世界各国の美しい写真と雑学が楽しめます。さらに観光地、遺跡等には墓や霊廟が多いことに気づきます。それは、巨大な建造物だったり、森の中にひっそりとたたずんでいたり、時には不気味だったり、カラフルで陽気ささえ感じるものもあります。また、埋葬方法や形等からそこに住む人々の死生観や文化を知ることもでき、興味深いです。
世界各国194の墓、霊廟が楽しめます。日本も13か所紹介されています。
私は墓マイラーではありませんが、横浜へ旅行に行った時、三国志で有名な関帝廟を参拝した事を思い出しました。廟に入ると、小説の人物が不思議に身近に感じられ興奮してしまいました。巡礼を旅の目的の一つに加えるだけでも、より思い出深いものになるかもしれません。
あなたも墓マイラーになって、文豪、偉人、著名人を身近に感じる旅に出てみませんか。
絵本を贈ろう
『夢眠書店の絵本棚』 夢眠ねむ/著 ソウ・スウィート・パブリッシング(市立・成人 019.5//23)
子どもの誕生日プレゼント、知人の出産祝いなど、誰かに絵本を贈ったことはありますか?
その時にどんな絵本を選びましたか?思い出に残っている本、好きな本、パッと目についた本……
など、さまざまあるかと思います。
もし、これから贈り物をする時に「どんな絵本が良いのかしら?」と迷っているなら、『夢眠書店の絵本棚』をパラパラとめくってみることをおすすめします。
夢眠ねむさんは、三重県出身の元アイドルで、現在は東京都で絵本を中心とした本屋さん「夢眠書店」を経営しています。
この本では、夢眠書店で購入できるのはもちろん、近くの本屋さんでも入手しやすい絵本ばかりが載っています。
例えば、今大人気の『パンどろぼう』(柴田ケイコ/著 KADOKAWA 児童P/シ/にんき者)や赤ちゃん向けの『じゃあじゃあびりびり』(まついのりこ/作・絵 偕成社 児童P/マ/20)。
でも、人気の本やロングセラーの本は「もう持っているかも」と悩むこともあるかも知れません。そんな時は、ぬいぐるみとセットにしてみたり、しかけがあるものを選んでみたり、“おまけ”があればもっと喜んでくれると思います。
この本では絵本一つ一つに説明が書いてあるので、読んだことがなくても想像しやすいのではないでしょうか。
実際に読んでみたくなったら、図書館でも本屋さんでも手に取ってみてください。
これは個人的な考えですが、絵本は読ませるものではなくて楽しむもの。大人だって嫌いなものは読みたくないですよね。
それと同じように、「楽しんでほしいな」という想いが大切なのだと思います。
絵本のプレゼント選びに困ったら、夢眠書店の絵本棚をのぞいてみるのも良いかも知れませんね。
中国語で推し活
『SNSで学ぶ推し活はかどる中国語』 はちこ/著 朝日出版社(市立・成人 824//23)
友人のすすめで華流ドラマを見始めたところ、あっというまにのめり込んでしまいました。
さらに好きな俳優さんもでき、これを機会に推し活を始めてみることにしました。
推し活をするとはいえ相手は中国人。まずはSNSからと辞書を片手に解読を試みるものの、これがなかなかに難しい。
「推し」や「フォロー」など、新しく生まれた言葉は辞書には載っていないし、そもそも語学力が足りません。
もちろんインターネットを使えばすぐに翻訳できますが、もっと体系的に学べる本が欲しい・・・図書館にありました!
この本はネット上で実際に使われている言葉を基本単語、ジャンル別用語などに分類して紹介。
その言葉がどのように生まれたのかといった説明や、例文も載っているので文法の勉強にもなります。
また、韓国語・日本語由来の言葉や和製英語ならぬChinglish(中製英語)なんていうものもあり、見ているだけでも面白い。
さらに、中国の推し活事情や中国ドラマなどのコラムもあり、語学学習の本としてだけではなく、現在の中国を知る読み物としても楽しめます。
もちろん韓流もありますよ!
『推したい私の韓国語』 イダヒ/著 ワニブックス (市立・成人 829.1//22)
『推し活韓国語』 柳 志英/著 南 嘉英/著 幡野 泉/監修 劇団雌猫/監修 Gakken(市立・成人 829.1//23)
闘病の日常
『くもをさがす』 西 加奈子/著 河出書房新社 (市立・成人 916//ニシ//23)
2021年コロナ禍の最中、滞在先のカナダで浸潤性乳管がんを宣告された著者が、乳がん発覚から治療を終えるまでの約8ヶ月間を克明に描いたノンフィクション作品です。
いつか訪れるかもしれない闘病に関して、そのリアルや心情がとても参考になりました。
2021年コロナ禍の最中、滞在先のカナダで浸潤性乳管がんを宣告された著者が、乳がん発覚から治療を終えるまでの約8ヶ月間を克明に描いたノンフィクション作品です。
腋窩リンパ節転移を伴う右乳がんと診断された作者が、その告知の日から、術前化学療法を経て、がんサバイバーとなっていく日々を綴っています。ただでさえ大変な乳がんの手術をたまたま短期で住んでいたカナダですることになり、言葉も十分には伝わらない上に医療システムの違いや更にコロナ禍まで重なりとても大変だったと思いますが、常に前向きで、周りには助けてくれる素敵な仲間が沢山いて西さんはとても幸せながんサバイバーです。
穏やかで温かく、思わず笑ってしまうような読後感。
きっとここには書けないような、書き切れないことがもっとたくさんあったのだと思いますが、
会話の部分が「関西弁」で描かれていて、それが読んでいて随分と軽くしてくれましたし、救いになった気がします。
生と死、心と体を冷静に俯瞰する知性。
選び抜かれた言葉を読める幸せがあります。
いつか訪れるかもしれない闘病に関して、そのリアルや心情がとても参考になりました。
たくさんの大切な事が書かれている。
この本はきっと、多くの人の光になると思います。
何度でも読み返したくなる そんな一冊です。
時にはのんびりした時間を
『メメンとモリ』 ヨシタケ シンスケ/著 株式会社KADOKAWA (市立・成人 726.6//23)
考えなくたって当たり前のように過ごせるから気づくときはいつも思いもよらないとき。
誰かの人生を通して気づくこともある。
『メメンとモリ』は人生について感じたことを素直に疑問にもつモリと肩の力が抜けるようでいて的を得た答えをするメメンの日常が描かれています。
短い言葉と表情豊かな絵で読みやすいです。
読み終わった後、背筋と腕を伸ばしゆっくり深呼吸してのんびりした時間が訪れます。
でもすぐ日常生活の忙しさ時間に戻ると思います。そしたらまた読んで下さい。
それを何回か繰り返していくうちにのんびりする時間も忙しい時間も愛おしく思えてきます。
推し活に迷いが生じたときに。
『##NAME##』 児玉 雨子/著 河出書房新社 (市立・成人 913.6//コタ//23)
第170回芥川賞が先日発表されました。
第170回芥川賞が先日発表されました。
芥川賞候補作は発表時点では雑誌掲載の作品がほとんどを占めるので、受賞作以外は手に取ったことがない方も多いかもしれません。
そこで前回の芥川賞候補作から単行本を1冊、ご紹介したいと思います。児玉雨子『##NAME##』です。
小説家としての児玉雨子の認知度は、まだあまり高くないかもしれません。
しかし、ハロー!プロジェクトを筆頭とした女性アイドル界隈では、素敵な詩を書かれる作詞家としてよく知られた存在です。
その中でも、私が心を射抜かれた児玉雨子曲は2曲。
Juice=Juice「25歳永遠説」とモーニング娘。'21「ビートの惑星」です。
「25歳永遠説」は「地元の子ママになった あの子は転職中 うれしくて はーぁ せつないな ちょっと誘いづらい」から始まります。女性アイドル曲とは思えない程、リアルな25歳女子の心境です。
25歳が定年と揶揄されることもある女性アイドルが「25歳永遠説 何でもできそう」と歌い上げ、「どんな時もなんとかなった なんとかして来られたじゃん」「昨日 今日 明日もそう明後日も うまくいくよ わたしなら」と言ってくれる。アイドルも私たちと同じような悩みがある女の子で、25歳を過ぎても彼女たちと一緒に歩いて行けば怖いものなんかない、と思わせてくれる一曲です。
しっとりと歌い上げる「25歳永遠説」に対して、「ビートの惑星」はライブでも盛り上がるポップなナンバーです。
「老若男女 いや! どれでもないな オリジナルのyou」と私たちに呼びかけ、「月火水木金曜 土日祝も 謳歌しようか」と日々の疲れを吹き飛ばすように盛り上げます。
そして「ねぇ うちらどうしたい?」と私たちに問いかけ、「歌おうか 君がアガる歌」と寄り添い、「銀河 沸かせよう」と一緒に駆け出してくれる、アイドルの神髄が詰まった一曲です。
アイドルとファンへの高い理解度と共感できる繊細な繊細な言葉選び、このふたつを併せ持った児玉雨子がジュニアアイドルをテーマに書いた小説が『##NAME##』です。
かつてのジュニアアイドルで、今は漫画好きの女子大生である主人公・雪那。
ジュニアアイドル時代と女子大生時代が並行して進む本作では、推される側と推す側、三次元と二次元の狭間で揺れる彼女の想いが、丁寧な描写でくっきりと浮かび上がってきます。
どちらも推したことのある人は、特に感情を乱されるかもしれません。
そして何よりも秀逸なのはタイトルの『##NAME##』。分かる人には分かる、あの文化です。
今流行りなんて言われる推し活ですが、うるさい外野の声にふと迷う時もありますよね。そんなときに読んでみませんか?
人名いろいろ
『氏名の誕生 江戸時代の名前はなぜ消えたのか』 尾脇 秀和/著 筑摩書房 (市立・成人 288.1//21)
この本は、江戸時代の「名前」とはどんなものであったか、現在につながる「氏名」がどのように誕生したのかを説き明かすため、江戸後期から明治初期にかけての人名のあり方を追ったものです。
この本は、江戸時代の「名前」とはどんなものであったか、現在につながる「氏名」がどのように誕生したのかを説き明かすため、江戸後期から明治初期にかけての人名のあり方を追ったものです。
当時、人名を構成する要素には[称号/苗字][官名/通称][姓(セイ)][尸][実名]があった。武家社会や一般世間が人名とするのは[苗字]+[通称]。しかし公家世界が人名と考えるのは[姓]+[実名]であった。
えっ御免なさい。今まで私そのようなこと全然知りませんでした。
他にも、兄が勘七郎で弟が助三郎であるなどは、特段珍しいことではないという話。越前守と呼ばれている人物が越前と関係なかったりする理由。[姓](藤原.源.菅原.平など)の後ろには「の」を挟んで読むことになっているなど、はぁー、へぇー、ほぉーと思わされる情報多々あり。
読み終えて思ったのは、なぜ私は今までこれらのことを知ろうとしなかったのかということ。もっと早くに知っていれば本を読むにも、ドラマ観るにも、調べものをする時も、きっとちょっと違っていただろうに。何かおもしろい気付きがあったかもしれない…と。
そんなわけでこの本を誰かに紹介したい!と考えました。
なお、当館には他に『苗字と名前を知る事典』(奥富敬之/著 東京堂出版)や『日本人の姓・苗字・名前』(大藤修/著 吉川弘文館)などの本があります。併せてお読みください。