図書館スタッフおすすめ本
爽快感を味わう一冊
『死神の精度』 伊坂 幸太郎/著 文藝春秋 (市立・書庫 B/913.6/イサ/15)
大学生の頃に読み、読書にハマるきっかけになった本です。
軽いタッチの文章、人物や情景の絶妙な描写もあり、頭の中に映像が浮かんでくるようで、とても読みやすくページをめくる手がとまりません。
あっという間に読み終えてしまいます。
いくつかの短編で構成されていて、それぞれに出てくる全ての登場人物に味があり、愛着が湧いてきます。
また、それぞれの短編が絡み合っており、読み終えた後は一つの長い物語を読み終えたような感覚になり、何とも言えない爽快感に包まれます。
これから読書をはじめようとしている方にもおススメの一冊です。
お菓子で世界を旅する
『世界のお菓子図鑑』 (地球の歩き方BOOKS W25 旅の図鑑シリーズ) 地球の歩き方編集室/編集 Gakken(市立・成人 383.8//23)
とにかく情報量がすごい。
国ごとの代表的なお菓子がカラー写真と簡単な解説とともに掲載されているほか、それぞれの食文化やお菓子事情、現地出身者に教わるレシピや本場の味が体験できるお店の紹介、コラムや雑学コーナーもあり、お菓子で世界を旅することができる本です。
世界の祝祭菓子や軽食、パンケーキを集めたコーナーや菓子パン比べなどの特集もあり、読んでいるとお腹がすいてきそうです。
日本のお菓子は都道府県ごとに、数種類の銘菓が写真とともに紹介されています。
三重県からは四日市名物のあのお餅も載っていますよ。
ぜひ世界のお菓子の旅を楽しんでください。
考えつづける、笑いながら ~「何度だって読みたい本!」~
『あの素晴らしき七年』 エトガル・ケレット/著 秋元 孝文/訳 新潮社 (市立・成人 929.7//16)
ものすごくへこむ日がある。
そんな日は『あの素晴らしき七年』を、どの話でもいいからひとつ読む。
作者・エトガルの身に起こることは、重い。イスラエルはテルアビブ出身のユダヤ人だから、よくある問題も、ややこしさを増して襲い掛かってくる。生まれたばかりの息子の将来や家族関係にも、国内情勢、テロリズム、ユダヤ教との付き合いなんかが絡みつく……なにせ息子が生まれたのは、テロリストによる攻撃の真っただ中だ。
なのにエトガル、話が上手すぎて、どんなに話が重くても、笑ってしまう部分がある。
空襲警報が鳴ったのに立ったままの息子を腹ばいにさせようと、「パストラミ・サンドイッチごっこ、する?」と誘ったんだそうだ。おもしろすぎる。それで、妻、息子、自分、と腹ばいで重なって、「パストラミ!」と叫ぶや、向こうへ爆弾が落ちた。これがエトガルの、生活のリアルだ。
大事なのは、ことの重さを肌で感じつつ笑うこと。読んでいくうち、自分の生活と重なる部分が見えてきて、気が付いたらエトガルといっしょに笑ったり泣いたりしている。だからここに入った三十六篇のエッセー——エトガルに息子が生まれ、自身のお父さんが亡くなるまでの七年間のできごとは、どれも短いのにとても重たく、とても重たいのに他人事にはならない。せめて、ツレに起こった事くらいにはなる。そう思って読めば、どれほどつらくても、やってってみようか、という気に少しはなれる。この少しが、いかにすごいことか。
ものすごくへこむ。たびたびへこむ。そのたびこの本が読みたくなる。テレアポを断る口実をどこまで膨らませられるかとか、本の献辞に飽きた時いかにふざけられるかとか、ポーランドの細長い土地に建てた薄い家のこととかを、エトガルから面白おかしく聞く。そうすることで、またやってこう、と思えるための温みのようなものを、少し分けてもらっているのだ。
2024年のエッセーコンクールのテーマは、「何度だって読みたい本!」です。
これを読んで、エッセーを書いてみたいと思った方、「読書に関するエッセーコンクール」へぜひご応募ください!
あなたの「何度だって読みたい本」、教えてくださいね。
(市立図書館ホームページの別ページが開きます)
「極上の闇」を求めて!
『闇で味わう日本文学 失われた闇と月を求めて』 中野 純/著 笠間書院(市立・成人 910.2//22)
『ナイトハイクのススメ 夜山に遊び、闇を楽しむ』 中野 純/著 山と溪谷社(市立・成人 786.4//23)
目の前の人の顔も見えない闇とほのかな灯り、怪しいモノの存在を感じさせる山道の真っ暗闇、夜を明るく照らす神秘的な月の光など…。万葉の時代から昭和に至るまでの名作には、「闇」の場面が多く登場する。時代を超えて愛される名作には、豊かな「闇」の文化が、しっかりと根付いている。
やわらかい闇には、星明かりや蛍火などのやさしい光もあるし、月の光が少しでも射し込めば、かなり明るくなる。闇がやわらかければ、光もやわらかくなる。
この本では、「闇」をテーマにした体験案内を、日本文学の名作を引用しながら紹介している。五感をフルに活用して、「闇」を味わうことで、「闇」の本質に迫ることができるはずだ!「極上の闇」を体験した後で、この本に引用されている名作全文をも改めて読んでほしい。きっと今までとは違う、新たな気付きがあることだろう。
この本を読んで、フィールドに飛び出して、夜山に行きたくなった人は、下記の本も併わせて読んでほしい。下記の本には、夜の山の歩き方、心がまえ、装備、野生生物への対処法などが詳しく解説されている。さらには、スマホやデジカメでの闇の撮影術も紹介されている。
宇宙に行ってみたい
『すばらしき宇宙の図鑑 宇宙飛行士だから知っている』 野口 聡一/著 KADOKAWA(市立・成人 440//22)
宇宙のことを考えると、いつも途方もない気持ちになります。(宇宙に放り出されたらどうしよう?とか、宇宙の果てはどこなんだろう?とか)
手を伸ばしても届かない空。それすらも超え、地球を飛び出してしまう宇宙飛行士は、計り知れない勇気を持っているなぁ……と思います。
そんな宇宙飛行士の一人、野口聡一さんが手がけたこの本では、宇宙に関するアレコレをたくさん教えてくれます。
宇宙に対して恐怖心を抱きつつ、同じくらい好奇心もある私は、本を読みながら「宇宙って面白い!」といつか経験するかもしれない宇宙旅行に思いをはせました。
魅力的なトピックの中でも、「へ~」と思ったのが宇宙の色。宇宙の色は黒ではなくて「コズミック・ラテ」というベージュだそうです。
黒く見えるのは“太陽の光を反射するものがないから”らしいですが(難しいことはよくわかりません)、何だか名前が可愛くて親近感がわきました。
他にも、宇宙船の中での生活や太陽系のことなど、文章での説明だけでなくカラー写真もたっぷりあります。
実際に宇宙に行った野口さんの言葉だからこそ面白い宇宙の世界、のぞいてみませんか。
LLブック ―文字を読むことが難しい方へ―
『仕事に行ってきます 10 図書館の仕事』 埼玉福祉会出版部 (市立・成人 LL/366.2//10)
今年度から、成人図書の新刊コーナーの近くに、LLブックのコーナーを設けています。
今年度から、成人図書の新刊コーナーの近くに、LLブックのコーナーを設けています。
LLブックの「LL」とは、“やさしく読める”を意味するスウェーデン語“LattLast”(英語ではeasy to read)の略称で、文字を読むことが難しい方にも読みやすいように作られた本が「LLブック」です。
知的障害や認知症といった、様々な障害や病気によって文章を理解することや読み続けることが難しい方、外国にルーツがあり日本語を読むことが難しい方など、「やさしく読みやすい本」を必要としている全ての方に向けた本です。
この本では、障害のある方を主人公に、図書館で働く一日を紹介しています。
ふりがなのある大きな文字と写真で書かれており、各ページの下には登場人物が行った行動や感情を表すピクトグラムを並べることで、文字を読まなくても内容がわかるように工夫されています。
この本のほかにも、写真だけで話の展開がわかるものや、病院へ受診する方法といった、私たちの生活で必要な段取りをわかりやすく説明したLLブックもあります。
図書館で文字を読み疲れた時、自分の生活を振り返る時、どなたでもふと手にとっていただける本です。
「猫」をさがして ~「何度だって読みたい本!」~
『少女ソフィアの夏』 トーベ・ヤンソン/作 渡部 翠/訳 講談社(市立・児童 94//)
小学校の国語でやった文章で、ひとつだけ、頭に焼きついているのがある。
タイトルは「猫」。作者はムーミンで有名な、トーベ・ヤンソンさん。
もらわれてきた猫・マッペを主人公ソフィアが溺愛(できあい)するものの、あまりになつかず、とりかえることに。かわりに来たのが、人なれしまくった甘々猫。ソフィアはマッペをどれほど愛していたか気づく——猫はもう一度、とりかえられることになった。
これだけの話なのに頭に残ったのは、ソフィアのセリフにひかれたせいだ。「ずーっといいお天気ばっかりだと、なんだか、つまらなくなってくるの」なんて、日ごろどんなものの考え方をしてたら言えるんだろう。そんなソフィアには、彼女をクールに見まもるおばあちゃんがいる。七十も年がちがうけれど対等のつきあい、このふたりのやり取りもまた、かっこよかった。
小学校を出て十数年、また読みたくなって、しらべた。『少女ソフィアの夏』という本に入っているらしかったが、買えなかった。ぜんぜん見つからず、数年たったあるとき、旅先の本屋でとつぜん出会った。気がついたら、本を抱きしめたままレジへ向かっていた。
何度も読んだ。全二十二篇(へん)、どの話にもひきこまれた。ふたりがずっと真剣だったからだ。好奇心と想像力がおさえられないソフィア。それをしずかに、対等に受けとめるおばあちゃん。その関係の魅力が、どの話でも、ふたりの会話からあふれていた。
二十二篇分の北欧のみじかい夏の間、ソフィアとゆっくり成長しながら、だいじなものをたしかめられる一冊です。子どものあなたも、大人のあなたも、ぜひ手に取って、ソフィアとのひと夏を過ごしてみてください。
2024年のエッセーコンクールのテーマは、「何度だって読みたい本!」です。
これを読んで、エッセーを書いてみたいと思った方、「読書に関するエッセーコンクール」へぜひご応募ください!
あなたの「何度だって読みたい本」、教えてくださいね。
詳しくは、こちらをご覧ください。
(市立図書館ホームページの別ページが開きます)
(市立図書館ホームページの別ページが開きます)
図録を楽しもう!図録で学ぼう!
『集まれ!三重のクジラとイルカたち』 吉岡基/ほか監修 三重県総合博物館(市立・地域 L489//22)
『やっぱり石が好き!』 三重県総合博物館(市立・地域 L458//21)
夏休みの自由研究・郷土研究であなたが調べたいテーマの図録、あるかもしれませんよ!
夏休みの自由研究・郷土研究であなたが調べたいテーマの図録、あるかもしれませんよ!
図録とは、博物館や美術館が行う企画展の内容をまとめた冊子のことです。
地域資料室では、県内・市内の美術館や博物館、資料館が発行した図録も集めています。
難しいものが多い地域資料ですが、図録であれば大人から子どもまでが楽しめるものもありますよ。
図録の魅力は何でしょう。
初めに思い浮かぶのは、写真や図が多いので、見て楽しめることでしょうか。
図録は、写真や解説などの基本情報から、研究者の論文までが載っていて、大まかに知りたい初心者にも、知識をより深めたい人にも役立つ資料でもあります。
また、自然に関するテーマを歴史的な視点からも見るなど、あらゆる方面からアプローチできることも、図録ならではかもしれません。
例えば、MieMu(みえむ・三重県総合博物館)の図録。
『集まれ!三重のクジラとイルカたち』には、三重の海で暮らすスナメリやクジラとともに四日市でも行われている「鯨船行事」について、 『やっぱり石が好き!』では、三重の岩石鉱物はもちろん、岩石信仰や石器など人々との関わりについても紹介されています。
見て楽しい、読んで役立つ「図録」。一度、図録をのぞいてみませんか?
2階地域資料室には、それぞれ書かれている内容の場所に図録が置いてありますので、職員までおたずねください。
三十一文字(みそひともじ)の世界へ
『うたわない女はいない』 働く三十六歌仙/著 中央公論新社(市立・成人911.16//23)
「食っていけるの? そう笑ってた人たちをシャネルのバッグでいつか撲(ぶ)ちたい」 野口あや子
どこかで紹介されていたこの歌に、一瞬で心をつかまれました。
なんて力強くて、すがすがしい!
この本は、女性歌人35人と一般公募で大賞に選ばれた1人の計36人が、「働くこと」をテーマに短歌と短いエッセーをつづっています。
エッセーがあることにより、歌が詠まれた背景が想像しやすく、短歌になじみのない人にもおすすめです。
「日曜のにぎわいのまま残された寝ている本を起こしてまわる」は、図書館で働く谷じゃこさんの作品。
休館日明けの図書館の風景を詠んだ歌、本を起こしてまわる、という言葉のチョイスに愛を感じます。
花山周子さんの「床の面積」では、子育てと、働くことの現実が。
「下校した娘には休む場所である家であるゆえひろがれる娘」
「床の面積が心の面積 然れども地獄絵図のごとき床を見降ろす」
外の世界で、少なからず緊張や我慢をしてきたであろう子が、自分の家でのびのびと広がる姿は愛おしい。
愛おしいけど・・・地獄絵図のような床ばかり見てたら、そりゃ眉間にしわもよりますよ。
言葉を選び、そぎ落とし、三十一文字に落とし込んだ短歌の世界、ぜひ味わってみてください。
和菓子の愉しみ
『和菓子の愉しみ』 堀部 美奈子/著 翔泳社(市立・成人 596.6//24)
現代の暮らしの中で、和菓子をより豊かに、深く楽しむための知識やアイデアを集めた一冊です。
現代の暮らしの中で、和菓子をより豊かに、深く楽しむための知識やアイデアを集めた一冊です。
和菓子の素材や歴史、技法といった基礎知識はもちろん季節ごとの味わい、五感を使った愉しみ方、自宅でいただく際の器選び、煎茶や紅茶、珈琲との合わせ方。
そして、簡単に作れる和菓子レシピなど、食べるだけでなく、ひとつの和菓子から広がる豊かな体験、心も体も満たしてくれる、和菓子の愉しみ方を提案してくれます。
日々進化していく「新しい和菓子」も紹介されています。
個人作家のお菓子や老舗の新しい取り組みなど、今の暮らしに寄り添う、現代の和菓子との出会いの愉しみがあります。
和菓子の見た目の美しさや独特の味わい、奥深さを感じながら、和菓子の魅力を、存分に楽しみたいですね。