職人とアーティストの狭間で

『リ・アルティジャー二 ルネサンス画家職人伝』 ヤマザキ マリ/著 新潮社 (市立・成人 726.1//22)

 最近様々なジャンルの本を読んできましたが、そろそろ原点回帰したいと自分好みの美術史に関する本を探していた際に、ふと目についたのがこの本でした。
 表紙にはいかついオジサンたちの顔が並び、作者は『テルマエ・ロマエ』などで知られるヤマザキ マリさん。
 イタリア、フィレンツェの国立アカデミア美術学院で学び、長らくイタリアで暮らした作者は、様々な制約の中、自身がやりたいことを実現しようと奮闘する画家たちを人間臭く、生き生きとした姿で描いています。
 誰もが毎日祈りたくなる美しい聖母マリアを描こうとする画家。遠近法に全てをささげた画家。当時最先端であった油絵の技法でまるで生きているような人物画を描こうとした画家。イタリアルネサンスを彩る偉大な人物が続々と登場し、出会い、影響を与え合います。
 ボッティチェリやレオナルド・ダ・ヴィンチのようなメジャーどころだけではなく、一般にはあまり知られていないものの個人的に思い入れのある画家も多数登場したのもうれしいポイントでした。

 いかに抜きんでた能力を備え、優れた作品を世に出しても、当時はまだ一介の職人にとどまらざるをえなかったルネサンスの画家たち。与えられた仕事を完遂する職業人としての生き方と、今日的な「アーティスト」としての自我の目覚め。その両方に触れることが出来る一冊です。