『静かなノモンハン』

『静かなノモンハン』 伊藤 桂一/著 講談社 (市立・郷土作家 913.6/イト/郷土)


ノモンハン事件、昭和14年モンゴル・ソ連軍と日本・満州軍との極地的紛争、一説によると、日本・満州軍の戦死者:18,115名、負傷者・行方不明者:30,534名・合計48,649名。


 この作品は伊藤氏が、実際にノモンハン事件に参加した兵士から見聞し、戦記小説として生まれたものです。

 伊藤氏自身も出征兵士として、満7年間の軍務についた経験を基に、次々と戦友が戦死していく中、兵士たちがどのような気持ちで戦い、傷つき、死んでいったか。伊藤氏が同じ兵士の目線に立って見事に描いた作品です。


 特に印象的なのは、停戦後、戦場掃除(遺体回収)の命令をうけた鳥居少尉が「実に、みんな死んでしまった。みんな死んでしまったから、ここはいまこのように静かなのだという、しみじみとした思いです。」という一説です。


 伊藤氏もすでに90歳をこえられ、この戦いのみならず第二次世界大戦終了まで行われた数々の戦いを経験した兵士の多くは亡くなり、戦争経験を語れる人はどんどん減少しています。
 「戦争というものが、いかに悲惨で残酷なものであったか!」

それを風化させないためにも、現在の平和な日本に生まれた皆様に、ぜひご一読いただければと思う作品です。


※伊藤氏をはじめ四日市出身や四日市ゆかりの作家の作品は、市立図書館2階郷土作家コーナーで、貸出・閲覧できます。