【募集は終了しました】「おもしろいエッセーって…」 読書に関するエッセー募集中!
『ウチら棺桶まで永遠のランウェイ』 kemio/著 KADOKAWA (市立・成人 779.9/ /19)
エッセーコンクールの担当として、たくさんのエッセーを読む機会をいただいています。
昨年の応募総数は164作(ありがとうございます!)! それだけのエッセーを読むと、「自分はエッセーの、どういうところをおもしろいと感じているんだろう?」と考えるようになりました。
思うにエッセーのほとんどは、「書き手に起こったこと」と「それを経て書き手が考えたこと」でできているのではないでしょうか。
そこへ文体、つまり「書き手がどんな距離感で読み手に伝えようとしているか」のいろどりが加わることで、書き手それぞれのリズムに乗って、こちらへ伝わってくるように思えます。
そんなわけで今回紹介するのは、kemioさんの『ウチら棺桶まで永遠のランウェイ』です。
モデルや歌手、動画クリエイター等多岐に活躍されるkemioさん。その経験と考えが、kemioさんの口調そのままで書かれています。なんたって冒頭から、
「地球上のみなさーん! 初めましての方、お帰りなさいの方、バーキンは持たないけどエコバッグは所持系のセレブことkemio、けみおでーす!」(P.022)
……ここだけ引くと、乗れる人乗れない人をはっきり分けそうですが、
「私、棺桶までのレース、ガンガン走っておりますが、みなさんのレースは順調ですか?」(同)
と続くと、お? と身を乗り出してしまいます。
「棺桶までのレース」という、kemioさんの語り口からは想像できない深さからのワード。そんなことばどこから? と思ったらもう、つかまれています。あとはあっという間。生活、恋愛、将来についてしゃべりまくるkemioさんのペースに引っぱり回されるばかりです。
口調を離れて冷静に見ると、kemioさんの来し方は相当にヘヴィです。しかしそう思わせないのは、ひとえにkemioさんのしゃべりそのままの文体の力。抵抗を感じる前に読ませてしまう、オープンな力があります。
「今やること、やらないことって結局賭けでしかなくて、ウチら一生ベガス。まじで」(P.163)
「今を楽しくする方法を常に考えてる。(中略)振り返ったら「あ、充実してた」みたいなHAPPY ENDで締め上げる」(P.172)
エッセーを読むことが、書き手の経験と考えを読むことなのだとしたら、実はそれってかなり、おしゃべりに近いのではないでしょうか?
読んでくれる人とおしゃべりするように書けたら、たくさんの人に伝わり、またたくさんの考えが生まれるきっかけにもなりそうです。楽しみですね!
図書館では、今年も読書に関するエッセーを募集しています。
2025年のテーマは「今、いちばん読んでほしい本!」です。
誰かにおすすめしたい本の中でも、2025年の今、気分はこれ!という本や、2025年、こんな情勢だからこそ読んでほしいと思う本について、エッセー(随筆)にしてください。
またはあなたの読書法や、読書論についてのエッセーも可です。
ご応募お待ちしております!