『江戸東京の庭園散歩』
『江戸東京の庭園散歩』 田中昭三/著 JTBパブリッシング (市立・成人629.2/ /10)
庭園の鑑賞といえば、まず京都の庭を思い浮かべる方が多くみえると思います。特に興味のある方は、奈良時代から近代まで、全国にある浄土式、回遊式、枯山水の庭園、或いは茶庭、大名庭園、西洋風の庭園等さまざまな様式の庭園を巡ってみえることでしょう。
本書は、江戸300余藩の大名が造り上げた回遊式庭園の数々。その面影を辿りながら江戸に花開いた庭園文化を紹介しています。東京には、江戸時代に千個あまりの庭園があったそうです。現在は大部分が取り壊されてしまいましたが、今でも静寂な地として幾つかの名園が残っています。
例えば文京区にある8万㎡を超える広さをもつ六義園ですが、柳沢吉保によって造られた和歌の趣味を基調とした「池泉回遊式」の大名庭園です。文化人でもあった吉保が七年の歳月をかけ、「万葉集」と「古今和歌集」に因んだ景を選び、「六義園八十八境」を定めていました。もちろん理屈ぬきに目を見張る美しい庭です。また例年11月下旬から12月上旬まで紅葉の名所ということでライトアップもされています。
この本には、都内の代表的な庭園が20余り紹介されていますが、その他に日本庭園の基本的な見方もやさしく解説されています。東京へ行かれた時、静かな場所に立ち寄りたいと思われる方におすすめの一冊です。