四日市市立図書館
 
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図書館スタッフおすすめ本

 

2023/08/01

市民センター図書室と「アナトゥール星伝」

| by 図書館
『金の砂漠王(バーデイア)』 折原みと/著 講談社文庫(市立・児庫/F/オ)

私の家から最も近くにある図書館は、市民センター内にある小さな図書室だった。
広さは四日市市立図書館の児童室くらいしかなく、絵本、児童書、小説、実用書、新聞、雑誌が所狭しと並んでいた。
雑誌コーナーの前に置かれた大きな閲覧机が強烈な存在感を放っていて、そこで本を読むおじさまたちをよく仰ぎ見たものだった。
蔵書数は決して多くなかったが、時々他の市民センター図書室や中央館と本の入れ替えがあり、読みたい本が尽きることはなかった。

小学3年生の社会科見学で訪れたのも、この市民センター図書室だった。
貸出券を作り本を借りる、というのがその日の目標だったのだが、持参した私の貸出券は、上限いっぱいまで本を借りていて新たに貸出ができず、代わりに先生に借りてもらったという苦い思い出もある。

この市民センター図書室で最も借りた回数が多いのが、『金の砂漠王(バーデイア)』から始まる折原みと「アナトゥール星伝」シリーズである。
図書館で出会った本に誘われ、異世界アナトゥールと日本を行き来する主人公。
異世界で運命の人に出会った彼女は、女子高生の感性のまま一人でも多くの命を救おう奮闘する。
そして、王子の伴侶として生きることを決め、戦争の絶えない異世界のために、少しでも役に立ちそうな応急処置や紛争問題などを日本で学んでいくのだった。

砂漠の国の緑化のために選んだ、農学部への進学。
満喫する間もなく振袖のまま転送されてしまった成人式。
異世界に骨を埋める覚悟を、両親と話し合う結婚前夜。

どのシーンも、私の中ではとても鮮やかに思い描くことができる。
人生の決断に迫られたとき、私の悩みに寄り添って欲しくて、何度もシリーズを手に取ったからだ。

シリーズが完結した6年生の春に。親との関係に悩んだ中学生の夏に。
進路がなかなか決まらず眠れない夜が増えた高校3年生の冬に。
漫才師になるという夢を叶えた友人と再会した成人式の夜に。
ついに大学を卒業する頃には全巻買ってしまった。
人生の節目節目で読み返してきたアナトゥール星伝。次に読み直すのは、いつだろうか。



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