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図書館スタッフおすすめ本

 

2024/02/01

推し活に迷いが生じたときに。

| by 図書館
『##NAME##』  児玉 雨子/著 河出書房新社 (市立・成人 913.6//コタ//23)

第170回芥川賞が先日発表されました。
芥川賞候補作は発表時点では雑誌掲載の作品がほとんどを占めるので、受賞作以外は手に取ったことがない方も多いかもしれません。
そこで前回の芥川賞候補作から単行本を1冊、ご紹介したいと思います。児玉雨子『##NAME##』です。

小説家としての児玉雨子の認知度は、まだあまり高くないかもしれません。
しかし、ハロー!プロジェクトを筆頭とした女性アイドル界隈では、素敵な詩を書かれる作詞家としてよく知られた存在です。

その中でも、私が心を射抜かれた児玉雨子曲は2曲。
Juice=Juice「25歳永遠説」とモーニング娘。'21「ビートの惑星」です。

「25歳永遠説」は「地元の子ママになった あの子は転職中 うれしくて はーぁ せつないな ちょっと誘いづらい」から始まります。女性アイドル曲とは思えない程、リアルな25歳女子の心境です。
25歳が定年と揶揄されることもある女性アイドルが「25歳永遠説 何でもできそう」と歌い上げ、「どんな時もなんとかなった なんとかして来られたじゃん」「昨日 今日 明日もそう明後日も うまくいくよ わたしなら」と言ってくれる。アイドルも私たちと同じような悩みがある女の子で、25歳を過ぎても彼女たちと一緒に歩いて行けば怖いものなんかない、と思わせてくれる一曲です。

しっとりと歌い上げる「25歳永遠説」に対して、「ビートの惑星」はライブでも盛り上がるポップなナンバーです。
「老若男女 いや! どれでもないな オリジナルのyou」と私たちに呼びかけ、「月火水木金曜 土日祝も 謳歌しようか」と日々の疲れを吹き飛ばすように盛り上げます。
そして「ねぇ うちらどうしたい?」と私たちに問いかけ、「歌おうか 君がアガる歌」と寄り添い、「銀河 沸かせよう」と一緒に駆け出してくれる、アイドルの神髄が詰まった一曲です。

アイドルとファンへの高い理解度と共感できる繊細な繊細な言葉選び、このふたつを併せ持った児玉雨子がジュニアアイドルをテーマに書いた小説が『##NAME##』です。

かつてのジュニアアイドルで、今は漫画好きの女子大生である主人公・雪那。
ジュニアアイドル時代と女子大生時代が並行して進む本作では、推される側と推す側、三次元と二次元の狭間で揺れる彼女の想いが、丁寧な描写でくっきりと浮かび上がってきます。
どちらも推したことのある人は、特に感情を乱されるかもしれません。
そして何よりも秀逸なのはタイトルの『##NAME##』。分かる人には分かる、あの文化です。

今流行りなんて言われる推し活ですが、うるさい外野の声にふと迷う時もありますよね。そんなときに読んでみませんか?

09:30