2014年4月の記事一覧

隣に神様のいる世界=神去村(かむさりむら)

『神去なあなあ日常』
『神去なあなあ夜話』 三浦しをん/著 徳間書店 (市立・成人913.6/ミウ/)

 このお話、都会の高校を卒業した若者が、なぜか何もない山奥の林業に就職し、人として成長していく物語であることは、皆様ご承知のことかと思います。

「山ではなにが起こるかわからない。最後は神頼みしかないんだよ。」
「山のもんを、ひとの住む場所にいれてはあなんねぃな。山は山、ひとはひとや。俺たちは山にお邪魔させてもらっとるんや、ちゅうことを忘れては、神去の神さんに怒られるねぃな。」
 

 三重県美杉村を題材とした「神去なあなあ日常」「神去なあなあ夜話」。読み返してみると、やはり、内容の面白さ、楽しさは、「なあなあ」の世界に住む住人の心の在り様にあると思います。
 「なあなあ」を「まあまあ」「大体」と言い換えれば、一部分の正解でしょうが、林業という自然の中での営みは、最後は神頼み、神様の掌の中の営みであり、人間社会の営みの結果は「なあなあ」にしか過ぎないと感じさせてくれます。
 志摩の生まれの私は、小さいころから聴かされた言葉、「板子一枚下は地獄」という、海を生活の場にしてきた人々の心の在り様の中で育ちました。「お盆を過ぎたら潮あびに行くな、サメが来るぞ。」引き潮の強くなる時期を子どもにそう教えたのでしょうか。
 おやかた(社長)の一人息子、山太のごとき少年だった私にとって、山と海という世界は違っても、50年の前の日常を追体験させてくれます。

 第三弾を心待ちにしているのは私だけではないと思いますが、「なあなあ」と待ちましょう。その前に、映画も公開されますので、それも楽しみにしています。