2018年5月の記事一覧

日本が見えない

 『日本が見えない 竹内浩三全作品集 』 竹内浩三/著 藤原書店 (市立・成人 918.68 /タケ/01)

 “日本が見えない”、戦時中の詩人・竹内浩三の詩のタイトルです。
竹内浩三は、三重県宇治山田市(現伊勢市)に生まれ、23歳という若さで戦死します。わずか23歳の人生の中で書き記された数々の詩からは、戦時中の日本の空気とともに、今まさにそこに生きている竹内浩三という人間の生が生々しく立ち上がってきます。

 「日本が見えない」と題された700ページもの分厚いこの本には、竹内浩三が残した詩や散文、日記、漫画などが、ぎっしりと収録されています。多彩な才能と、表現への抑えきれない欲求に満ちた作品からは、生きていたら会ってみたい!と思わせる魅力ある人間像があふれています。 「戦死しなかったなら、その後どんな人生を生きてどんな人物になっていたのだろう?」竹内浩三の才能を知る編者や関係者は、この本の中で皆そう語ります。

 「日本が見えない」、どうにも今の日本にも同じことを感じてしまうこの頃。戦争によって未来をあっさり奪われてしまった三重の詩人・竹内浩三の詩を改めて感じていただけたらと思います。

懐かしくて、新しいもの


 
『「太陽の塔」新発見! 岡本太郎は何を考えていたのか』 平野 暁臣/著 青春出版社
                                                 (市立・成人 606.9/ /18)

 皆さんは「太陽の塔」をご存じですか。「太陽の塔」は、1970年に開かれた日本万国博覧会(大阪万博)にテーマ館として造られました。「芸術は爆発だ!」のフレーズで有名な岡本太郎氏の作品です。岡本氏は万博のプロデューサーでもありました。「太陽の塔」の高さは70mにもなり、日本を代表する建築家の丹下健三氏が設計したシンボルゾーンの大屋根を貫き、少し可愛い感じ(個人的な感想ですが)の腕を左右に広げて、会場にそびえたっていました。実際に子供の頃、大阪の万博会場でこの塔と展示を見た私には、おぼろげながら当時の様子が、懐かしくよみがえってきます。

 この本は、今回の耐震工事による改修で、再び脚光を浴びることになった「太陽の塔」について、今まで知られていなかった新しい事実が、著者の綿密な取材により、いろいろと明らかにされています。

 また、一見、危険人物のようにみえる岡本太郎氏が、どんなに魅力的で、当時の一流の建築家やスタッフの気持ちをつかんでいたか…など、意外なエピソードも満載です。
 所々にちりばめられているスナップ写真は、写っている人物の細かい表情までよくわかり、当時の雰囲気がよく伝わってきます。まるで、ドキュメンタリー映画を見ているような気分にさせてくれます。

 48年前に圧倒的な迫力で私たちの目の前に現れ、今なおその輝きを保ち続けている「太陽の塔」とその内部。今まで知らなかった方も、出会った方も、懐かしいと感じるのか、その斬新さに驚くのか。「太陽の塔」と芸術家、岡本太郎に触れてみて下さい。