2020年5月の記事一覧

たまには、世界文学でもどうでしょうか

『怒りの葡萄』(上、下) ジョン・スタインベック/著 新潮社 (市立・成人 B933/スタ/15)

 お勧め出来る本は、たくさんあるので、最近読んだ本をご紹介します。
 
 この物語は、アメリカ中西部のオクラホマ州に住んでいた農家ジュード家が、砂塵嵐と旱
魃に悩まされ、負債で自分の土地を銀行に奪われたため、仕事と賃金を求めて豊かな西部
のカリフォルニアに向けて、旅をする渡り労働者の物語です。
 旅の途中で祖父母の死や家族の別れがあったり、逗留先の簡易テント村でのトラブルといった事故が展開されます。しかし、仕事があると思ったその地は、現実には、競争相手の求職者が多くいるので、仕事を探すのに奔走することになりました。それでも、仕事は見つかりません。やっと見つけた仕事先でも、欲深い大農場主の賃下げで生活は厳しいものでした。毎日のパンにも困る生活状況で、生きるために悪戦苦闘します。

 本作では主人公たちの苦難が語られつつも、アメリカ人のキリスト教を背景とした隣人愛や家族愛も生き生きと描かれています。そのため、遠く離れた昔のアメリカを舞台としているにも関わらず、現代の私たちが読んでも共感できる物語となっています。世界文学に親しむきっかけとしてもおすすめしたい一冊です。

切り紙のワクワクは世代を超えて

『老いのくらしを変えるたのしい切り紙』 井上 由美子/著 筑摩書房 (市立・成人 369.2//12)


 グラフィック工芸家である著者は、主催するものづくり学校の生徒たちに出している宿題“広告や包装紙など日常の紙を使った切り紙づくり”を、自身の義母や父親にも勧めます。きっかけはそれぞれでしたが、どちらも80代手前の頃です。

 お義母さんへのお題は「ソックス」。以前お義母さんが余りものの靴下をテディベアの服へと生かし直したことにちなんだ提案です。
 釣り好きだったお父さんへのお題は「魚」。その後旅行をきっかけにして「富士山」にも取り組みます。

 この本は、お二人の創作の様子を軸に、楽しく切り紙を続けるためのコツ、そしてご家族に対する著者の思いが記されています。

 材料探し、創作の工夫、作品を囲んだ会話 ―

 この切り紙が持つワクワク感は、多くの人にとって、毎日をはりあいよく生きるヒントになると思いました。
 掲載されているお二人の切り紙はどれも洒落ていて、見て楽しく、私たちも何かしたい!と思わされます。