2014年9月の記事一覧

奇妙な隣人たち

『ウイルス・プラネット』 カール・ジンマー/著 飛鳥新社 (市立・成人465.8/ /13)

 「ウイルス」・・・何とも不穏な響きです。不倶戴天の敵とはいかないまでも、あまりいい印象を持っていないという人が多いのではないでしょうか。しかし彼らは、ずっと昔から人類のすぐそばで、時にはとてつもなく大きな影響を及ぼし合いながら存在してきたのです。

 この本の中で紹介されているウイルスたちは、数えきれないほど存在するウイルスの種類の中の、ほんのいくつかにすぎません。ですが、その顔ぶれは実にバラエティーに富んでいます。大昔からの人類のおなじみさんから、ここ十数年の新顔、人を助けてくれるものもいれば、人を死に至らしめるものもいて、実にさまざまです。しかし共通して感じられるのは、われわれとの距離の意外な近さでしょうか。読んだ後、彼らウイルスたちに不思議な親近感を覚えてしまう、そんな本です。

『静かなノモンハン』

『静かなノモンハン』 伊藤 桂一/著 講談社 (市立・郷土作家 913.6/イト/郷土)


ノモンハン事件、昭和14年モンゴル・ソ連軍と日本・満州軍との極地的紛争、一説によると、日本・満州軍の戦死者:18,115名、負傷者・行方不明者:30,534名・合計48,649名。


 この作品は伊藤氏が、実際にノモンハン事件に参加した兵士から見聞し、戦記小説として生まれたものです。

 伊藤氏自身も出征兵士として、満7年間の軍務についた経験を基に、次々と戦友が戦死していく中、兵士たちがどのような気持ちで戦い、傷つき、死んでいったか。伊藤氏が同じ兵士の目線に立って見事に描いた作品です。


 特に印象的なのは、停戦後、戦場掃除(遺体回収)の命令をうけた鳥居少尉が「実に、みんな死んでしまった。みんな死んでしまったから、ここはいまこのように静かなのだという、しみじみとした思いです。」という一説です。


 伊藤氏もすでに90歳をこえられ、この戦いのみならず第二次世界大戦終了まで行われた数々の戦いを経験した兵士の多くは亡くなり、戦争経験を語れる人はどんどん減少しています。
 「戦争というものが、いかに悲惨で残酷なものであったか!」

それを風化させないためにも、現在の平和な日本に生まれた皆様に、ぜひご一読いただければと思う作品です。


※伊藤氏をはじめ四日市出身や四日市ゆかりの作家の作品は、市立図書館2階郷土作家コーナーで、貸出・閲覧できます。

肩の荷が下りて、楽にさせてくれた一冊

『大人の女の流儀』 辛淑玉/著 PHP研究所 (市立・成人159.6/ /12)

「人は自分の人生以外は背負えないのだ」
この一言が、すうっと私の中に入ってきた。そうなのです。
仕事のため、子どものため、あのため、このためと頑張っても、
だれも褒めてくれません。それどころか、煙たがられたりします。
もちろん、褒めてほしくてやっているわけではありません。
でも、ときどき虚しくなる時があります。
そんなときに、この一言を思い出します。
「大人の女の流儀」ちょっと引いてしまうタイトルですが、
かっこいいおんなになろう!!と言っているわけではありません。
頑張りすぎている女性に気軽に手に取ってほしい一冊です。
ちがう自分に出会えるはず!?
ところで、「大人」って、なんなんでしょう?