2022年11月の記事一覧
言の葉は死なず
『言の葉は、残りて』 佐藤 雫/著 集英社 (市立・成人 913.6/サト/20)
大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を見ている影響で手に取ったこの本。
大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を見ている影響で手に取ったこの本。
鎌倉三代将軍 源実朝と、その妻 信子の物語です。
まだ若い二人が出会い、周囲に翻弄されつつも、成長していく姿。
実朝の最期がわかっているだけに、切なさも募ります。
武力ではなく「言の葉」で世を収めることをめざした実朝。
そして、後世に残されていく実朝の「言の葉」。
美しい表紙絵も素敵です。
同筆者の歴史恋愛小説第2弾、茶々(淀殿)と大野治長の物語「さざなみの彼方」もぜひ。
タイムスリップして事件解決!
『大江戸科学捜査八丁堀のおゆう』 山本巧次/著 宝島社 (市立・成人 B913.6/ヤマ/15)
推理ものや歴史好きな人なら、タイムスリップして事件を解決したいと思った事はありませんか?
この本は現代に生きる関口優佳ことおゆうが、江戸時代にタイムスリップし、現代の科学の力で事件を解決していく物語です。
江戸時代の証拠品を現代に持ち帰っては、化学分析の専門家である宇田川の力を借りて、解決していきます。
宇田川の力さえあれば、おゆうの力はいらないんじゃないのと思ってしまいますが、おゆうも女岡っ引きとして、危険な中、体をはって事件を解決します。
指紋鑑定はもちろんですが、なかにはドローンを飛ばして見事解決する時も。
いやいや、ドローンはさすがにばれるでしょとおゆうは言いますが(私も思いますが)、宇田川は、昔の人は現代人ほど空を見ないからと、ドローンを飛ばします。
これだけ怪しい行動をしていたら、周りの人が怪しまないのかと思いますが、八丁堀の役人である鵜飼には、実はばれていたり。
でも、鵜飼もおゆうたちに秘密があって・・・。
いつも新刊が出ると、次はどんな道具を使って解決するのかわくわくしながら読んでいます。
皆さんも、自分がタイムスリップしたら、どんな手を使って事件を解決するか、考えてみてください。
私にとっての1つの色は2つも3つも名前を持っていた
『色弱が世界を変える カラーユニバーサルデザイン最前線』 伊賀公一/著 太田出版 (市立・書庫 496.4//11)
人の網膜は赤・青・緑の3色を見分けることができ、3色の組み合わせで他の色を作っている。
色弱はその3色のうち1色または2色が見分けにくく、著者である伊賀さんは赤色が見分けにくい。
本書では生まれつき色弱者である著者が、自身が見えている世界や半生を振りかえり紹介している。
「私にとっての1つの色は2つも3つも名前を持っていた」という言葉が印象的で、巻頭ページでそれぞれの見え方を表す色シミュレータで視覚化されてはじめてピンときた。確かに見えない。
また、著者は、どんな色の感じ方をしている人にもわかりやすい色使いをするよう勧める仕事をしている団体であるNPO法人カラーユニバーサルデザイン機構CUDOの理事長(当時)である。
講演会等に呼ばれることもあり、体験するほうが言葉で説明するより伝わると、著者は色覚の体験ツールをトランクに入れ持ち歩く。
人気があるのはバリアントールと呼ばれるゴーグル型色弱模擬フィルターで、簡単に色弱者と同じ色の世界を見ることができる。
かけた人からは「こんなに色の見分けができないとは思わなかった」「なんて不便なの」と驚きの声があがるという。
巻頭で「よく見て比べてね」「こう見える理由」「ふだんを困ること」「知って貰うために」を通してあらかじめ知ることが出来るので知識がなくとも読めて優しい。
本文のおすすめは舞台照明のバイトのエピソード。色の見分け方に驚き、そんな失敗があったのかと楽しく読めた。