2026年9月の記事一覧
荒廃と再生-意図せぬユートピア-
『人間がいなくなった後の自然』 カル・フリン/著・木高 恵子/訳 草思社 (市立・成人 290.9//23)
「人間がいなくなった世界」というと、皆さんはどういったことを想像しますか?
建築物や道路などに覆われた場所は、やがてあちこちから植物が生え、経年による人工物の崩壊を手助けし、やがて本来の自然の姿に戻っていく。
それが私のイメージでした。
廃棄物による汚染、紛争など様々な理由で見捨てられた場所や地域。
一見すると人にも他の生物にも非常に過酷としか思えません。
本書では、そのような場所で、失われていた植生や生態系が再生、あるいはそれまでと異なる形で再形成される事例が紹介されています。
さらには、周囲の過酷な環境、安易に人間が立ち入ることができなくなったことで希少な生物の生存圏が守られる事例、新たな生態系同様、新しくやってきた人々が独自のコミュニティを形成し生活する事例も紹介されます。
人間が介入し、開発し、汚染し、やがて見捨てられた土地に新たな生態系が生まれる。
人間のエゴとともに、環境に適応し与えられた状況を利用する生命のしたたかさを感じました。
自然という大きな枠組みの中で人間がどのような役割を果たしているのか?
熊と人間をめぐる昨今の出来事も含め、自然と人間の関わりについて改めて考えるきっかけになりました。