2020年9月の記事一覧
さようなら、「漱石あるある」!
『永日小品』(『夢十夜 他二篇』 夏目漱石/著 岩波文庫 (市立・成人 B/913.6/ナツ/13)などに収録)
……中学生か高校生のころ、『坊っちゃん』が初めての漱石でした。
ふうん、文学っておもしろいかも。と、タイトルだけで『吾輩は猫である』に挑戦。
結果、挫折。体力が続かず。もっと言えば、分厚さだけで半分あきらめてました。
あれから幾年月。今では漱石のことも忘れ、静かに暮らしています……。
あるある、と思ったあなた、『永日小品』読んでみてください!
『永日小品』は、もともと新聞に掲載されていた漱石による短篇のエッセイを集めたものです。
身のまわりの出来事や会話、思い出などが、飾らない文体で書き留められています。
おすすめの理由は次の三つ。
1.とにかく、一篇一篇が短い。
収録作品のほとんどが、二、三ページめくったら終わります。
2.なのに、内容はぎゅっと濃縮。
中でも最後の「クレイグ先生」は、悲喜こもごものザ・人間ドラマです。
3.そして、漱石が情けない。
友達にボートの賞金で買ってもらったシェイクスピアの本が、ちっとも分からなかったり。
夜中ねずみに鰹節をかじられて、閉まっといてよ、と奥さんにぶつくさ言われたり。
寒い日に朝から代わる代わる来る客が、みんな金の無心でげんなりしたり……。
どうですか。読めそうだし、ちょっとおもしろそうじゃないですか。
一日の終わりをじわっと暖める、二百年前のおじさんからの日常報告。ぜひ一度手に取ってみてください。
漱石がすすんでしょぼくれてくれるので、実は疲れている時こそしみる本でもあります。お試しを。
「鉄道旅気分!」はどうでしょうか
『夜行列車の記憶 昭和・平成の名列車がよみがえる』 松本典久/著 株式会社天夢人 (市立・成人 686.2//20)
『青春18きっぷ 2020-2021 パーフェクトガイド』 イカロス出版株式会社 (市立・成人 291.0//20)
今年は新型コロナウィルス感染症の感染拡大により、思うように旅行や外出ができない状況が続いています。
せめて、本の中で鉄道旅行の思いをめぐらしてはどうでしょうか。
1冊目は、「夜行列車の記憶」です。私は小さい頃、ブルートレインという名前を聞いて、いつか乗車して旅行したいと思っていました。しかし、気が付けば新幹線網の拡大や道路網の整備の充実、そしてこれからはリニア中央新幹線と時代はどんどん変わっていきます。スピードが求められいつしか夜行列車という言葉自体も聞かなくなり、今では定期運行される夜行列車は「サンライズ出雲・瀬戸」だけです。
この本では、昭和・平成の鉄道旅行の当時の写真や著者の乗車の思い出などが書かれており、こんな旅行がしてみたかったなと思わせてくれる本です。
2冊目は、『青春18きっぷ2020-2021パーフェクトガイド』です。「格安チケットで日本を旅する!」という本で、青春18きっぷを使うテクニックや船や飛行機なども使ったモデルコースの紹介などが具体的に書かれています。
なかなかゆっくり鉄道旅行ができない方も多いと思います。いつかはこんな旅行がしたい。早く自由に旅行に行きたいと思わせてくれる本です。