2014年11月の記事一覧
『江戸東京の庭園散歩』
『江戸東京の庭園散歩』 田中昭三/著 JTBパブリッシング (市立・成人629.2/ /10)
庭園の鑑賞といえば、まず京都の庭を思い浮かべる方が多くみえると思います。特に興味のある方は、奈良時代から近代まで、全国にある浄土式、回遊式、枯山水の庭園、或いは茶庭、大名庭園、西洋風の庭園等さまざまな様式の庭園を巡ってみえることでしょう。
本書は、江戸300余藩の大名が造り上げた回遊式庭園の数々。その面影を辿りながら江戸に花開いた庭園文化を紹介しています。東京には、江戸時代に千個あまりの庭園があったそうです。現在は大部分が取り壊されてしまいましたが、今でも静寂な地として幾つかの名園が残っています。
例えば文京区にある8万㎡を超える広さをもつ六義園ですが、柳沢吉保によって造られた和歌の趣味を基調とした「池泉回遊式」の大名庭園です。文化人でもあった吉保が七年の歳月をかけ、「万葉集」と「古今和歌集」に因んだ景を選び、「六義園八十八境」を定めていました。もちろん理屈ぬきに目を見張る美しい庭です。また例年11月下旬から12月上旬まで紅葉の名所ということでライトアップもされています。
この本には、都内の代表的な庭園が20余り紹介されていますが、その他に日本庭園の基本的な見方もやさしく解説されています。東京へ行かれた時、静かな場所に立ち寄りたいと思われる方におすすめの一冊です。
読めば、小学生時代にタイムスリップ
『ランドセルしょって。』 k.m.p./著 メディアファクトリー (移動726.5/ /10)
小学生のあの頃を思い出す本です。
小学生時代、カサ一本の色んな持ち方を考案して、実行しては、ひとりでにんまりしてませんでしたか?
指一本で運んだり、カサの先を靴の中に入れて歩いたり、柄の部分に荷物をかけて運んだり・・・。
帰り道が楽しくて仕方なかったあの頃が、ページをめくるたびに鮮やかに蘇ります。
昔、小学生だったすべての大人に送る、ふっと笑える懐かしい気持ちになる本です。
パンケーキを読む
『パンケーキの歴史物語』 ケン・アルバーラ/著 原書房 (市立・成人383.8/ /13)
最近、テレビや雑誌などいたるところで目にするパンケーキ特集。
おいしそうなレシピ本を眺めるだけでも楽しいですが、こんな本を見つけました。
タイトルは『パンケーキの歴史物語』。
パンケーキとは何かといった定義から始まり、その歴史や様々な国のパンケーキ、祝祭の際に食べられるものからストリートフードとしてのパンケーキまで社会や文化との関係を交えながら分かりやすく説明されています。
日本からは「どら焼き」と「お好み焼き」がパンケーキのひとつとして紹介されているのはちょっとびっくり、新しい発見がいろいろありました。
この「お菓子の図書館 歴史物語」シリーズは他にも「ケーキ」、「アイスクリーム」「パイ」、「チョコレート」の4冊があるので次はどれを読もうか迷い中です。
大切なものは目に見えない...心の豊かさ・心の贅沢を探しもとめて♪
『美 「見えないものをみる」ということ』 福原義春/著 PHP研究所 (市立・成人914.6/フク/14)
経済界随一の読書家で知られる資生堂の名誉会長が記した本書は、本当に美しいものが美しいと評価されているのだろうかといった素朴な疑問から始まる。リッチとは…心の豊かさ、心の贅沢…究極のエレガンスでもある。文化に造詣が深い著者が、影響を受けてきた多岐多様の本も引用しながら、音楽、美術、自然などのなかに潜むリッチなものを紹介し、効率性や経済性を重視する時代に警鐘を鳴らす。視覚だけでなく、五感のすべてで対象を感じるのが日本人なのである。本来日本人が持っていた、見えないものをみる感性を取り戻すにはどうしたらいいか…本書は人生のより深い味わい方を説いた次世代へのメッセージである。本書のみならず、本書で紹介されている文献についてもぜひとも読んでいただきたい。
本書の記述の中で私が最も興味を示した箇所は、傳田光洋氏の研究だ。資生堂の皮膚科学の研究者である傳田氏は、鼓膜は聴覚で感じられる音しか聞いていないけれど、全身の肌はどう受けとめているのかという研究を行った。傳田氏の著作には、『皮膚感覚と人間のこころ』(新潮社)、『賢い皮膚』(筑摩書房)、『第三の脳』(朝日出版社)、『皮膚は考える』(岩波書店)などがある。最先端の研究成果を基礎に生命とこころの本質に迫るこれらの本からは、触覚や皮膚感覚についての新たな発見があることだろう。
本書では、詩人の高橋順子氏が書いた『雨の名前』・『風の名前』・『花の名前』(小学館)が紹介されている。育花雨、甘雨、青時雨、御雷様雨、秋雨、御精霊雨、雨雪、風花…。玉風、毘嵐婆、雁渡、少女風、花信風、星の出入り…。桜、花王、馬酔木、蒲公英、菫…。このシリーズは、日本に伝わるそれぞえの名前を集めて、カラー写真・詩・エッセイでつづる写文集である。日本人は、昔から四季による自然の変化に敏感で、自然との触れ合いの中で、言葉も豊かに発達させてきた。しかしいま、自然の気配を敏感に感じ取る力や感じる機会が日本人から失われている。そして自然を表す言葉は急速に消えつつある。このシリーズを読んで私たちが本来持っていた感覚を取り戻してほしい。
傳田 光洋/著
『皮膚感覚と人間のこころ』 新潮社 (市立・成人141.2/ /13)
『賢い皮膚 思考する最大の<臓器>』 筑摩書房 (市立・成人491.3/ /09)
『第三の脳 皮膚から考える命、こころ、世界』 朝日出版社 (市立・成人141.2/ /07)
『皮膚は考える』 岩波書店 (市立・書庫491.3/ /05)
高橋 順子/文,佐藤 秀明/写真
『雨の名前』 小学館 (市立・書庫451.6/ /01)
『風の名前』 小学館 (市立・書庫451.4/ /02)
『花の名前』 小学館 (市立・書庫470/ /07)