図書館スタッフおすすめ本

宇宙に行ってみたい

『すばらしき宇宙の図鑑 宇宙飛行士だから知っている』 野口 聡一/著 KADOKAWA(市立・成人 440//22) 

宇宙のことを考えると、いつも途方もない気持ちになります。(宇宙に放り出されたらどうしよう?とか、宇宙の果てはどこなんだろう?とか)
手を伸ばしても届かない空。それすらも超え、地球を飛び出してしまう宇宙飛行士は、計り知れない勇気を持っているなぁ……と思います。
そんな宇宙飛行士の一人、野口聡一さんが手がけたこの本では、宇宙に関するアレコレをたくさん教えてくれます。
宇宙に対して恐怖心を抱きつつ、同じくらい好奇心もある私は、本を読みながら「宇宙って面白い!」といつか経験するかもしれない宇宙旅行に思いをはせました。

魅力的なトピックの中でも、「へ~」と思ったのが宇宙の色。宇宙の色は黒ではなくて「コズミック・ラテ」というベージュだそうです。
黒く見えるのは“太陽の光を反射するものがないから”らしいですが(難しいことはよくわかりません)、何だか名前が可愛くて親近感がわきました。
他にも、宇宙船の中での生活や太陽系のことなど、文章での説明だけでなくカラー写真もたっぷりあります。
実際に宇宙に行った野口さんの言葉だからこそ面白い宇宙の世界、のぞいてみませんか。

LLブック ―文字を読むことが難しい方へ―

『仕事に行ってきます 10 図書館の仕事』 埼玉福祉会出版部 (市立・成人 LL/366.2//10)

今年度から、成人図書の新刊コーナーの近くに、LLブックのコーナーを設けています。
LLブックの「LL」とは、“やさしく読める”を意味するスウェーデン語“LattLast”(英語ではeasy to read)の略称で、文字を読むことが難しい方にも読みやすいように作られた本が「LLブック」です。
知的障害や認知症といった、様々な障害や病気によって文章を理解することや読み続けることが難しい方、外国にルーツがあり日本語を読むことが難しい方など、「やさしく読みやすい本」を必要としている全ての方に向けた本です。

この本では、障害のある方を主人公に、図書館で働く一日を紹介しています。
ふりがなのある大きな文字と写真で書かれており、各ページの下には登場人物が行った行動や感情を表すピクトグラムを並べることで、文字を読まなくても内容がわかるように工夫されています。

この本のほかにも、写真だけで話の展開がわかるものや、病院へ受診する方法といった、私たちの生活で必要な段取りをわかりやすく説明したLLブックもあります。
図書館で文字を読み疲れた時、自分の生活を振り返る時、どなたでもふと手にとっていただける本です。

「猫」をさがして ~「何度だって読みたい本!」~

『少女ソフィアの夏』 トーベ・ヤンソン/作 渡部 翠/訳 講談社(市立・児童 94//

 小学校の国語でやった文章で、ひとつだけ、頭に焼きついているのがある。
 タイトルは「猫」。作者はムーミンで有名な、トーベ・ヤンソンさん。
 もらわれてきた猫・マッペを主人公ソフィアが溺愛(できあい)するものの、あまりになつかず、とりかえることに。かわりに来たのが、人なれしまくった甘々猫。ソフィアはマッペをどれほど愛していたか気づく——猫はもう一度、とりかえられることになった。
 これだけの話なのに頭に残ったのは、ソフィアのセリフにひかれたせいだ。「ずーっといいお天気ばっかりだと、なんだか、つまらなくなってくるの」なんて、日ごろどんなものの考え方をしてたら言えるんだろう。そんなソフィアには、彼女をクールに見まもるおばあちゃんがいる。七十も年がちがうけれど対等のつきあい、このふたりのやり取りもまた、かっこよかった。
 小学校を出て十数年、また読みたくなって、しらべた。『少女ソフィアの夏』という本に入っているらしかったが、買えなかった。ぜんぜん見つからず、数年たったあるとき、旅先の本屋でとつぜん出会った。気がついたら、本を抱きしめたままレジへ向かっていた。
 何度も読んだ。全二十二篇(へん)、どの話にもひきこまれた。ふたりがずっと真剣だったからだ。好奇心と想像力がおさえられないソフィア。それをしずかに、対等に受けとめるおばあちゃん。その関係の魅力が、どの話でも、ふたりの会話からあふれていた。
 二十二篇分の北欧のみじかい夏の間、ソフィアとゆっくり成長しながら、だいじなものをたしかめられる一冊です。子どものあなたも、大人のあなたも、ぜひ手に取って、ソフィアとのひと夏を過ごしてみてください。
 
2024年のエッセーコンクールのテーマは、「何度だって読みたい本!」です。
これを読んで、エッセーを書いてみたいと思った方、「読書に関するエッセーコンクール」へぜひご応募ください!
あなたの「何度だって読みたい本」、教えてくださいね。
詳しくは、こちらをご覧ください。
(市立図書館ホームページの別ページが開きます)

図録を楽しもう!図録で学ぼう!

『集まれ!三重のクジラとイルカたち』 吉岡基/ほか監修 三重県総合博物館(市立・地域 L489//22) 
『やっぱり石が好き!』 三重県総合博物館(市立・地域 L458//21)

夏休みの自由研究・郷土研究であなたが調べたいテーマの図録、あるかもしれませんよ!

図録とは、博物館や美術館が行う企画展の内容をまとめた冊子のことです。
地域資料室では、県内・市内の美術館や博物館、資料館が発行した図録も集めています。
難しいものが多い地域資料ですが、図録であれば大人から子どもまでが楽しめるものもありますよ。

図録の魅力は何でしょう。
初めに思い浮かぶのは、写真や図が多いので、見て楽しめることでしょうか。
図録は、写真や解説などの基本情報から、研究者の論文までが載っていて、大まかに知りたい初心者にも、知識をより深めたい人にも役立つ資料でもあります。
また、自然に関するテーマを歴史的な視点からも見るなど、あらゆる方面からアプローチできることも、図録ならではかもしれません。
例えば、MieMu(みえむ・三重県総合博物館)の図録。
『集まれ!三重のクジラとイルカたち』には、三重の海で暮らすスナメリやクジラとともに四日市でも行われている「鯨船行事」について、 『やっぱり石が好き!』では、三重の岩石鉱物はもちろん、岩石信仰や石器など人々との関わりについても紹介されています。

見て楽しい、読んで役立つ「図録」。一度、図録をのぞいてみませんか?

2階地域資料室には、それぞれ書かれている内容の場所に図録が置いてありますので、職員までおたずねください。

三十一文字(みそひともじ)の世界へ

『うたわない女はいない』 働く三十六歌仙/著 中央公論新社(市立・成人911.16//23) 

「食っていけるの? そう笑ってた人たちをシャネルのバッグでいつか撲(ぶ)ちたい」 野口あや子

どこかで紹介されていたこの歌に、一瞬で心をつかまれました。
なんて力強くて、すがすがしい!

この本は、女性歌人35人と一般公募で大賞に選ばれた1人の計36人が、「働くこと」をテーマに短歌と短いエッセーをつづっています。
エッセーがあることにより、歌が詠まれた背景が想像しやすく、短歌になじみのない人にもおすすめです。

「日曜のにぎわいのまま残された寝ている本を起こしてまわる」は、図書館で働く谷じゃこさんの作品。
休館日明けの図書館の風景を詠んだ歌、本を起こしてまわる、という言葉のチョイスに愛を感じます。

花山周子さんの「床の面積」では、子育てと、働くことの現実が。
「下校した娘には休む場所である家であるゆえひろがれる娘」 
「床の面積が心の面積 然れども地獄絵図のごとき床を見降ろす」
外の世界で、少なからず緊張や我慢をしてきたであろう子が、自分の家でのびのびと広がる姿は愛おしい。
愛おしいけど・・・地獄絵図のような床ばかり見てたら、そりゃ眉間にしわもよりますよ。
 
言葉を選び、そぎ落とし、三十一文字に落とし込んだ短歌の世界、ぜひ味わってみてください。

和菓子の愉しみ

『和菓子の愉しみ』 堀部 美奈子/著 翔泳社(市立・成人 596.6//24)

現代の暮らしの中で、和菓子をより豊かに、深く楽しむための知識やアイデアを
集めた一冊です。
和菓子の素材や歴史、技法といった基礎知識はもちろん季節ごとの味わい、五感を使った愉しみ方、自宅でいただく際の器選び、煎茶や紅茶、珈琲との合わせ方。
そして、簡単に作れる和菓子レシピなど、食べるだけでなく、ひとつの和菓子から広がる豊かな体験、心も体も満たしてくれる、和菓子の愉しみ方を提案してくれます。

日々進化していく「新しい和菓子」も紹介されています。
個人作家のお菓子や老舗の新しい取り組みなど、今の暮らしに寄り添う、現代の和菓子との出会いの愉しみがあります。
 
和菓子の見た目の美しさや独特の味わい、奥深さを感じながら、和菓子の魅力を、存分に楽しみたいですね。

エッセーを読もう! ~「読書に関するエッセー」募集開始~

『ベスト・エッセイ2024』 日本文藝家協会/編 光村図書出版(市立・成人 914.6//24)

今年も、「読書に関するエッセーコンクール」の応募が始まりました!

 
エッセーを読むのが初めての方、何を読んだらいいか分からない!という方もいるかと思います。
 
そんな方にオススメしたいのは、日本文藝家協会 編「ベスト・エッセイ」シリーズです!
「ベスト・エッセイ」シリーズには、その年に新聞や雑誌などで発表された中から、厳選されたエッセーが1冊にまとめられています。
 
『ベスト・エッセイ2024』では、くすっと笑える話から深い共感のある話、旅や仕事での出会いの中から、浅田次郎や俳人の夏井いつき、芸人のラランド・ニシダといった多様なジャンルの顔ぶれが、2024年の日常を鮮やかに描き出します。
もちろん、読書に関するエッセーも収録されていますよ。
 
三木那由他「私たちには物語が必要だ」では、フィクションを生きるキャラクターを取り上げ、憧れた過去や、フィクションの中で多様な姿での活躍を描いてくれたら、と願っています。
 
宮内悠介「図書館考」では図書館との思い出と作家としての率直な図書館への想いが書かれていて、図書館を利用される方に読んでもらいたい一編です。
 
また今巻は、作家・大江健三郎や評論家・菅野昭正など亡くなった方への追悼文も数多く掲載されています。
中村文則は、初めて読んだ『個人的な体験』や大江健三郎賞に選ばれた時のことを振り返りながら、大江健三郎への感謝を語ります。
 
 
 
いかがですか。
だんだん、エッセーに興味が沸いてきたのではないでしょうか?
2024年のテーマは「何度だって読みたい本!」です。
ぜひあなたの「読み返したい!」を教えてください。
「読書に関するエッセーコンクール」へのご応募をお待ちしています!
(市立図書館ホームページの別ページが開きます)

読書エッセーって面白い!~読書に関するエッセー募集中~

『宮部みゆきが「本よみうり堂」でおすすめした本 2015-2019』 宮部 みゆき/著 中央公論新社(市立・成人 019.9//23)

今年も、「読書に関するエッセーコンクール」の応募が始まりました。
読書に関するエッセーってなに? 読書感想文とは違うの?
そんな方はぜひ、実際に読書エッセーを読んでみましょう!
 
『宮部みゆきが「本よみうり堂」でおすすめした本 2015-2019』は、毎週日曜日に読売新聞朝刊に掲載されている「本よみうり堂」にて、宮部みゆきが書いた書評を集めた1冊です。
読書家の宮部みゆきらしく、フィクション・ノンフィクションを問わないバラエティーに富んだ様々な本が選ばれています。
 
例えば、エルヴェ・ファルチャーニ『世界の権力者が寵愛した銀行』の紹介では、原題が『脱税の金庫番』であることに触れて宮部みゆきらしい題名を考案し、本書の背景と著者を簡単に紹介しつつ「告発者装った? 「情報泥棒」」というキャッチ―な見出しを付けています。
 
舞城王太郎『深夜百太郎 入口』『深夜百太郎 出口』の紹介では、舞城王太郎の超人作家と言っても良いような執筆スタイルは勿論、百話の多彩さを簡潔に示しています。
 
 
新聞書評なので、1つが500字から800字と少し短めですが、宮部みゆきの力量が表れていると感じるポイントがあります。
それは、自身の体験や社会へのまなざし、作品への愛が鮮やかに映しだされている点です。
紹介した本を読みたくなるような仕掛けがふんだんに用いられており、本を語りながら自分を語る、読書エッセーのお手本にするにはもってこいの本なんですよ。
 
いかがでしょうか。
宮部みゆきのほかにもたくさんの小説家やエッセイストが本や読書に関するエッセーを書いているんですよ。
読書エッセーを少しでも身近に感じていただけたでしょうか?
 
2024年のテーマは「何度だって読みたい本!」です。
ぜひあなたの「読み返したい!」を教えてください。
「読書に関するエッセーコンクール」へのご応募をお待ちしています!
(市立図書館ホームページの別ページが開きます)

「気候変動」がますます悪化すると…

『気候崩壊 次世代とともに考える』 宇佐美 誠/著 岩波書店(市立・成人 519//21)
   セットで読むなら『地球のために今日から始めるエコシフト15』 箕輪 弥生/著 文化学園文化出版局
(市立・成人 519//23)

   25年ほど前だろうか。新聞の広告欄見開きにばーんと載っていたのは清水寺の写真。そして「清水の舞台から飛び込む(?だったと思う)」清水の舞台ぎりぎりまで、なみなみと水が押し寄せている写真だった。もちろん合成。地球温暖化が原因で、海水面が上昇するぞという警告。私は「そんな大げさな…」としか思わなかった。確かに大げさな演出ではあったが、現在の状況を考えると、その頃の私はなぜもっと関心を持てなかったのだろうと思う。本書によると温室効果ガスが温暖化を引き起こすだろうと最初に指摘されたのは1896年だというのに。
  海面上昇によって沈む陸地、生きるために気候変動に適応していかなければならない生き物たち、地球に与える影響は恐ろしい。しかし地球が気候崩壊しないためにも、恐ろしく思っているばかりではいけない。紹介したもう1冊も是非読んでほしい。生活の中で実践しやすい事柄が満載だ。わかりやすく、コンパクトにまとめられている2冊である。

あなたも食べたことがあるのでは?

『日本お菓子クロニクル』 日本懐かし大全シリーズ編集部/編 辰巳出版 (市立・成人 588.3//23) 

 この本を開いたら、皆さん懐かしいと思うのではないでしょうか。
実は、昭和の時代から現代までの、お菓子のパッケージ写真が掲載されているのです。
昔と比べると、パッケージが変化しているものがたくさんあります。
例えば、キャラメルのお菓子で大人気の「グリコ」。
昔と比べて変化しているイメージは無かったのですが、あのばんざいポーズのお兄さんの姿が代わっていたり。
他にも、男の子のパッケージのイメージが強い「ビスコ」。
1933年販売のものだと、なぜか男の子はいません。
その代わりに、「グリコ」のお兄さんがいたりと、「ビスコ」なのか「グリコ」なのか、よくわからない不思議なパッケージの時もあったみたいです。
他にも、イメージキャラクターが、年々変化しているお菓子も沢山ありました。
この本を見ると、昔のパッケージの復刻版が出てくれないかなと、つい期待してしまいます。
皆さんもこの本を見て、子供の頃に食べたお菓子の記憶を思い出してください。

エッセーってなあに? ~「読書に関するエッセーコンクール」募集開始~

『エッセイストのように生きる』 松浦 弥太郎/著 光文社 (市立・成人 901.4//23)

今年も、「読書に関するエッセーコンクール」の応募受付が始まりました!
そこで今回は、エッセーを書くのはどんな人なのかを紹介していきます。
 
現在放送中の大河ドラマ「光る君へ」でも、ききょう(清少納言)が傷心の中宮定子を癒すため、定子と過ごした輝かしい日々を書き止めることを始めました。これが後に「枕草子」となるわけです。
 
清少納言のように、強烈な体験がなければエッセーを書くことはできないのでしょうか?
もちろん、そんなことはありません。
 
『エッセイストのように生きる』の著者・松浦弥太郎は、30年以上エッセーを書き続け、エッセーを書くことを生業としています。清少納言やさくらももことは異なる、職業がエッセイストの方ですね。
しかし著者は、エッセイストとはただの職業ではなく生き方であると説きます。
エッセーを書くことで、自分自身を知り、心の中に自分の居場所を守り続けてきたそうです。
 
本書では、エッセーとはなにか、エッセイストとして生きるとはどういうことかという点から、エッセーを書くための思考法や読書のコツ、プロットの作り方まで丁寧に指南してくれます。
著者曰く、エッセーの秘訣とは自分だけの「視点」と「秘密」。
本書を読み終えたころには、エッセーを書きたくてうずうずしているに違いありません。
 
いかがですか? だんだん、エッセイストという生き方に興味が沸いてきませんでしたか?
2024年のエッセーコンクールのテーマは「何度だって読みたい本!」です。
これを読んでエッセーを書いてみたいと思った方、「読書に関するエッセーコンクール」へのご応募をお待ちしています!
詳しくはこちらをご覧ください。

「読書に関するエッセーコンクール」作品募集中(市立図書館ホームページ内の別ページが開きます)

知っていますか?「蘭字」

『蘭字ー知られざる輸出茶ラベルの世界ー』 齋田茶文化振興財団齋田記念館/編集・発行 (市立・地域 L675//20)

この資料は、東京にある齋田記念館で行われた「蘭字」をテーマにした展示の図録です。

「蘭字」とは、日本からお茶を輸出する際に茶箱の側面に貼られたラベルの総称。
始まりは定かではないようですが、政府がお茶の栽培と輸出を奨励した明治期頃から、
盛んに製作されていたようです。

蘭字には、種類・品質・産地・ブランド名・輸出商社などの情報が記され、なかには、文字情報と共に日本や西洋をモチーフにした絵柄も施されたものもありました。
カラーで刷られたそれらは、デザイン的にも美しいものが多くあります。

ここ四日市からも多くお茶が輸出され、茶箱には四日市で製作・印刷した蘭字も貼られました。
この資料には、四日市の印刷会社や市内の郷土資料館に残る蘭字やその見本帳なども登場します。
どんな種類のお茶がどこで作られ、どんな商社を通してどこの国へ運ばれていたのか…
蘭字からは、四日市のお茶の歴史とともに、流通の歴史も垣間見ることができます。

デザインの美しさを楽しみ、歴史の一片も知ることのできるこの資料。
ぜひ、2階地域資料室で、手に取ってみてください。

ようこそキングの世界へ

『スティーヴン・キング大全』 ベヴ・ヴィンセント/著 河出書房新社(市立・成人 930.2//24)

ステーヴン・キングの作品は映像化されたものが多く、『キャリー』や『スタンド・バイ・ミー』などはご存じの方も多いかと思います。
ホラー作品から社会派もの(例『グリーン・マイル』)などテーマも幅広く、長編やシリーズも多いのでどれから読み始めようかと思っている方にこの『スティーヴン・キング大全』はおススメです!
年代別に分かりやすく紹介されていたり、どんな子ども時代を過ごしていたかなど、キングのこともまるごと知ることができます。
また、作品と作品が実はつながっていた!ということが分かるのも楽しいです。
この本をきっかけにあなたもキングの世界にはまってしまうかもしれませんよ!

墓マイラーって知っていますか?

『世界のすごい墓』 地球の歩き方BOOKS W31 旅の図鑑シリーズ) 地球の歩き方編集室/編集 Gakken(市立・成人 629.8//23)

 偉人、著名人の墓巡礼をする人のことを墓マイラーというそうです。
日本では墓巡礼の文化は古く、掃苔家(そうたいか)という言葉があり、俳人の松尾芭蕉も古い歌人の墓を訪れていたそうです。
本書は、墓マイラーの名づけ親であるカジポン・マルコ・残月さんの巡礼を続ける理由や心得から始まります。
ページをめくっていくと、世界各国の美しい写真と雑学が楽しめます。さらに観光地、遺跡等には墓や霊廟が多いことに気づきます。それは、巨大な建造物だったり、森の中にひっそりとたたずんでいたり、時には不気味だったり、カラフルで陽気ささえ感じるものもあります。また、埋葬方法や形等からそこに住む人々の死生観や文化を知ることもでき、興味深いです。
 世界各国194の墓、霊廟が楽しめます。日本も13か所紹介されています。
 私は墓マイラーではありませんが、横浜へ旅行に行った時、三国志で有名な関帝廟を参拝した事を思い出しました。廟に入ると、小説の人物が不思議に身近に感じられ興奮してしまいました。巡礼を旅の目的の一つに加えるだけでも、より思い出深いものになるかもしれません。

 あなたも墓マイラーになって、文豪、偉人、著名人を身近に感じる旅に出てみませんか。

絵本を贈ろう

『夢眠書店の絵本棚』 夢眠ねむ/著 ソウ・スウィート・パブリッシング(市立・成人 019.5//23)

子どもの誕生日プレゼント、知人の出産祝いなど、誰かに絵本を贈ったことはありますか?
その時にどんな絵本を選びましたか?思い出に残っている本、好きな本、パッと目についた本……
など、さまざまあるかと思います。
もし、これから贈り物をする時に「どんな絵本が良いのかしら?」と迷っているなら、『夢眠書店の絵本棚』をパラパラとめくってみることをおすすめします。

夢眠ねむさんは、三重県出身の元アイドルで、現在は東京都で絵本を中心とした本屋さん「夢眠書店」を経営しています。
この本では、夢眠書店で購入できるのはもちろん、近くの本屋さんでも入手しやすい絵本ばかりが載っています。
例えば、今大人気の『パンどろぼう』(柴田ケイコ/著 KADOKAWA 児童P/シ/にんき者)や赤ちゃん向けの『じゃあじゃあびりびり』(まついのりこ/作・絵 偕成社 児童P/マ/20)。
でも、人気の本やロングセラーの本は「もう持っているかも」と悩むこともあるかも知れません。そんな時は、ぬいぐるみとセットにしてみたり、しかけがあるものを選んでみたり、“おまけ”があればもっと喜んでくれると思います。
この本では絵本一つ一つに説明が書いてあるので、読んだことがなくても想像しやすいのではないでしょうか。
実際に読んでみたくなったら、図書館でも本屋さんでも手に取ってみてください。

これは個人的な考えですが、絵本は読ませるものではなくて楽しむもの。大人だって嫌いなものは読みたくないですよね。
それと同じように、「楽しんでほしいな」という想いが大切なのだと思います。
絵本のプレゼント選びに困ったら、夢眠書店の絵本棚をのぞいてみるのも良いかも知れませんね。

中国語で推し活

『SNSで学ぶ推し活はかどる中国語』 はちこ/著 朝日出版社(市立・成人 824//23)

友人のすすめで華流ドラマを見始めたところ、あっというまにのめり込んでしまいました。
さらに好きな俳優さんもでき、これを機会に推し活を始めてみることにしました。

推し活をするとはいえ相手は中国人。まずはSNSからと辞書を片手に解読を試みるものの、これがなかなかに難しい。
「推し」や「フォロー」など、新しく生まれた言葉は辞書には載っていないし、そもそも語学力が足りません。
もちろんインターネットを使えばすぐに翻訳できますが、もっと体系的に学べる本が欲しい・・・図書館にありました!

この本はネット上で実際に使われている言葉を基本単語、ジャンル別用語などに分類して紹介。
その言葉がどのように生まれたのかといった説明や、例文も載っているので文法の勉強にもなります。
また、韓国語・日本語由来の言葉や和製英語ならぬChinglish(中製英語)なんていうものもあり、見ているだけでも面白い。
さらに、中国の推し活事情や中国ドラマなどのコラムもあり、語学学習の本としてだけではなく、現在の中国を知る読み物としても楽しめます。

もちろん韓流もありますよ!

『推したい私の韓国語』 イダヒ/著 ワニブックス (市立・成人 829.1//22)
『推し活韓国語』 柳 志英/著 南 嘉英/著 幡野 泉/監修 劇団雌猫/監修 Gakken(市立・成人 829.1//23)

闘病の日常

『くもをさがす』 西 加奈子/著  河出書房新社 (市立・成人 916//ニシ//23)

 2021年コロナ禍の最中、滞在先のカナダで浸潤性乳管がんを宣告された著者が、乳がん発覚から治療を終えるまでの約8ヶ月間を克明に
描いたノンフィクション作品です。
 腋窩リンパ節転移を伴う右乳がんと診断された作者が、その告知の日から、術前化学療法を経て、がんサバイバーとなっていく日々を綴っています。ただでさえ大変な乳がんの手術をたまたま短期で住んでいたカナダですることになり、言葉も十分には伝わらない上に医療システムの違いや更にコロナ禍まで重なりとても大変だったと思いますが、常に前向きで、周りには助けてくれる素敵な仲間が沢山いて西さんはとても幸せながんサバイバーです。

穏やかで温かく、思わず笑ってしまうような読後感。
きっとここには書けないような、書き切れないことがもっとたくさんあったのだと思いますが、
会話の部分が「関西弁」で描かれていて、それが読んでいて随分と軽くしてくれましたし、救いになった気がします。

生と死、心と体を冷静に俯瞰する知性。
選び抜かれた言葉を読める幸せがあります。

いつか訪れるかもしれない闘病に関して、
そのリアルや心情がとても参考になりました。

たくさんの大切な事が書かれている。
この本はきっと、多くの人の光になると思います。
何度でも読み返したくなる そんな一冊です。

時にはのんびりした時間を

『メメンとモリ』 ヨシタケ シンスケ/著  株式会社KADOKAWA (市立・成人 726.6//23)

考えなくたって当たり前のように過ごせるから気づくときはいつも思いもよらないとき。
誰かの人生を通して気づくこともある。
『メメンとモリ』は人生について感じたことを素直に疑問にもつモリと肩の力が抜けるようでいて的を得た答えをするメメンの日常が描かれています。
短い言葉と表情豊かな絵で読みやすいです。
読み終わった後、背筋と腕を伸ばしゆっくり深呼吸してのんびりした時間が訪れます。
でもすぐ日常生活の忙しさ時間に戻ると思います。そしたらまた読んで下さい。
それを何回か繰り返していくうちにのんびりする時間も忙しい時間も愛おしく思えてきます。

推し活に迷いが生じたときに。

『##NAME##』  児玉 雨子/著 河出書房新社 (市立・成人 913.6//コタ//23)

第170回芥川賞が先日発表されました。
芥川賞候補作は発表時点では雑誌掲載の作品がほとんどを占めるので、受賞作以外は手に取ったことがない方も多いかもしれません。
そこで前回の芥川賞候補作から単行本を1冊、ご紹介したいと思います。児玉雨子『##NAME##』です。

小説家としての児玉雨子の認知度は、まだあまり高くないかもしれません。
しかし、ハロー!プロジェクトを筆頭とした女性アイドル界隈では、素敵な詩を書かれる作詞家としてよく知られた存在です。

その中でも、私が心を射抜かれた児玉雨子曲は2曲。
Juice=Juice「25歳永遠説」とモーニング娘。'21「ビートの惑星」です。

「25歳永遠説」は「地元の子ママになった あの子は転職中 うれしくて はーぁ せつないな ちょっと誘いづらい」から始まります。女性アイドル曲とは思えない程、リアルな25歳女子の心境です。
25歳が定年と揶揄されることもある女性アイドルが「25歳永遠説 何でもできそう」と歌い上げ、「どんな時もなんとかなった なんとかして来られたじゃん」「昨日 今日 明日もそう明後日も うまくいくよ わたしなら」と言ってくれる。アイドルも私たちと同じような悩みがある女の子で、25歳を過ぎても彼女たちと一緒に歩いて行けば怖いものなんかない、と思わせてくれる一曲です。

しっとりと歌い上げる「25歳永遠説」に対して、「ビートの惑星」はライブでも盛り上がるポップなナンバーです。
「老若男女 いや! どれでもないな オリジナルのyou」と私たちに呼びかけ、「月火水木金曜 土日祝も 謳歌しようか」と日々の疲れを吹き飛ばすように盛り上げます。
そして「ねぇ うちらどうしたい?」と私たちに問いかけ、「歌おうか 君がアガる歌」と寄り添い、「銀河 沸かせよう」と一緒に駆け出してくれる、アイドルの神髄が詰まった一曲です。

アイドルとファンへの高い理解度と共感できる繊細な繊細な言葉選び、このふたつを併せ持った児玉雨子がジュニアアイドルをテーマに書いた小説が『##NAME##』です。

かつてのジュニアアイドルで、今は漫画好きの女子大生である主人公・雪那。
ジュニアアイドル時代と女子大生時代が並行して進む本作では、推される側と推す側、三次元と二次元の狭間で揺れる彼女の想いが、丁寧な描写でくっきりと浮かび上がってきます。
どちらも推したことのある人は、特に感情を乱されるかもしれません。
そして何よりも秀逸なのはタイトルの『##NAME##』。分かる人には分かる、あの文化です。

今流行りなんて言われる推し活ですが、うるさい外野の声にふと迷う時もありますよね。そんなときに読んでみませんか?

人名いろいろ

『氏名の誕生 江戸時代の名前はなぜ消えたのか』 尾脇 秀和/著 筑摩書房 (市立・成人 288.1//21)

この本は、江戸時代の「名前」とはどんなものであったか、現在につながる「氏名」がどのように誕生したのかを説き明かすため、江戸後期から明治初期にかけての人名のあり方を追ったものです。

当時、人名を構成する要素には[称号/苗字][官名/通称][姓(セイ)][尸][実名]があった。武家社会や一般世間が人名とするのは[苗字]+[通称]。しかし公家世界が人名と考えるのは[姓]+[実名]であった。
えっ御免なさい。今まで私そのようなこと全然知りませんでした。

他にも、兄が勘七郎で弟が助三郎であるなどは、特段珍しいことではないという話。越前守と呼ばれている人物が越前と関係なかったりする理由。[姓](藤原.源.菅原.平など)の後ろには「の」を挟んで読むことになっているなど、はぁー、へぇー、ほぉーと思わされる情報多々あり。

読み終えて思ったのは、なぜ私は今までこれらのことを知ろうとしなかったのかということ。もっと早くに知っていれば本を読むにも、ドラマ観るにも、調べものをする時も、きっとちょっと違っていただろうに。何かおもしろい気付きがあったかもしれない…と。

そんなわけでこの本を誰かに紹介したい!と考えました。

なお、当館には他に『苗字と名前を知る事典』(奥富敬之/著 東京堂出版)や『日本人の姓・苗字・名前』(大藤修/著 吉川弘文館)などの本があります。併せてお読みください。