図書館スタッフおすすめ本
人間生きているだけで勇者
『絆創膏日記』 東田直樹/著 KADOKAWA (市立・成人 914.6/ヒカ/20)
私は、自閉症の人に出会って、どう接したら良いか戸惑ったことがあります。少しでも自閉症を理解したくて手に取ったのが、著者が13歳の時に書いた本、『自閉症の僕が飛び跳ねる理由[正]』(エスコアール出版部 (市立・書庫 378/07))でした。この本は、今まで理解されにくいとされていた自閉症の内面を知るきっかけとなり、今では30ヶ国以上で翻訳されベストセラーにもなっています。
その後も、多くのエッセイや小説、詩などを出版されています。会話ができない著者は、パソコンを使って執筆活動をされ、文字盤ペインティングと言う方法で会話をされます。私は彼の自然について書いてあるものが好きです。彼の文章を読んでいると、人と自然の距離がうんと近く感じられてきます。
今回紹介するのは、26歳になった著者の日記形式で書かれたエッセイ『絆創膏日記』です。
本書は、自然に対する畏敬の念や親しみ、家族への思い、身の回りの出来事や人に対する考えが、独特の感性で綴られています。自分の身体を思うようにコントロールできない著者は、自らを壊れたロボットと表現しています。悩んだり落ち込んだりの日々は誰にでもあります。
著者の自然や人を思う言葉一つ一つが、日常の中で知らない間にできた心の傷にはる絆創膏となり、「人間生きているだけで勇者」と力強く語りかけてくれます。
これってご当地ものだったの??スーパーで見かける“日常食”
『東海ご当地スーパー 珠玉の日常食』 菅原佳己著/責編 ぴあ株式会社中部支社 (市立・地域 L596/19)
毎日のごはん。スーパーに買い出しに行くと並んでいる商品。
地元の企業が作っているいわゆる「ローカル飯」「ご当地もの」「地元食」なんてものが多く存在します。
地元では当たり前のように並んでいても、県外のスーパーでは見当たらなかったりして「えっ!これって全国販売じゃないの?」なんて思うこともしばしばあったり。また、逆に旅行先等で地元では見かけない商品にわくわくしたり、と。
この本には、愛知・岐阜・三重の3県分のローカルなスーパーで扱うローカルな企業のローカルな食品を紹介されています。
写真と味や特徴などがわかりやすく載っているので見て楽しむだけではなく、毎日のごはんや、少し遠出した時のお土産の参考にも使えます。
毎日の買い出しが少し楽しくなるかもしれませんね。
全国の内容をご覧になりたい方はこちらもおすすめです。
・『日本全国ご当地スーパー隠れた名品、見~つけた!』 菅原佳己/著 講談社 (市立・書庫 596/14)
・『日本全国ご当地スーパー掘り出しの逸品』 菅原佳己/著 講談社 (楠・成人 596)
さようなら、「漱石あるある」!
『永日小品』(『夢十夜 他二篇』 夏目漱石/著 岩波文庫 (市立・成人 B/913.6/ナツ/13)などに収録)
……中学生か高校生のころ、『坊っちゃん』が初めての漱石でした。
ふうん、文学っておもしろいかも。と、タイトルだけで『吾輩は猫である』に挑戦。
結果、挫折。体力が続かず。もっと言えば、分厚さだけで半分あきらめてました。
あれから幾年月。今では漱石のことも忘れ、静かに暮らしています……。
あるある、と思ったあなた、『永日小品』読んでみてください!
『永日小品』は、もともと新聞に掲載されていた漱石による短篇のエッセイを集めたものです。
身のまわりの出来事や会話、思い出などが、飾らない文体で書き留められています。
おすすめの理由は次の三つ。
1.とにかく、一篇一篇が短い。
収録作品のほとんどが、二、三ページめくったら終わります。
2.なのに、内容はぎゅっと濃縮。
中でも最後の「クレイグ先生」は、悲喜こもごものザ・人間ドラマです。
3.そして、漱石が情けない。
友達にボートの賞金で買ってもらったシェイクスピアの本が、ちっとも分からなかったり。
夜中ねずみに鰹節をかじられて、閉まっといてよ、と奥さんにぶつくさ言われたり。
寒い日に朝から代わる代わる来る客が、みんな金の無心でげんなりしたり……。
どうですか。読めそうだし、ちょっとおもしろそうじゃないですか。
一日の終わりをじわっと暖める、二百年前のおじさんからの日常報告。ぜひ一度手に取ってみてください。
漱石がすすんでしょぼくれてくれるので、実は疲れている時こそしみる本でもあります。お試しを。
「鉄道旅気分!」はどうでしょうか
『夜行列車の記憶 昭和・平成の名列車がよみがえる』 松本典久/著 株式会社天夢人 (市立・成人 686.2//20)
『青春18きっぷ 2020-2021 パーフェクトガイド』 イカロス出版株式会社 (市立・成人 291.0//20)
今年は新型コロナウィルス感染症の感染拡大により、思うように旅行や外出ができない状況が続いています。
せめて、本の中で鉄道旅行の思いをめぐらしてはどうでしょうか。
1冊目は、「夜行列車の記憶」です。私は小さい頃、ブルートレインという名前を聞いて、いつか乗車して旅行したいと思っていました。しかし、気が付けば新幹線網の拡大や道路網の整備の充実、そしてこれからはリニア中央新幹線と時代はどんどん変わっていきます。スピードが求められいつしか夜行列車という言葉自体も聞かなくなり、今では定期運行される夜行列車は「サンライズ出雲・瀬戸」だけです。
この本では、昭和・平成の鉄道旅行の当時の写真や著者の乗車の思い出などが書かれており、こんな旅行がしてみたかったなと思わせてくれる本です。
2冊目は、『青春18きっぷ2020-2021パーフェクトガイド』です。「格安チケットで日本を旅する!」という本で、青春18きっぷを使うテクニックや船や飛行機なども使ったモデルコースの紹介などが具体的に書かれています。
なかなかゆっくり鉄道旅行ができない方も多いと思います。いつかはこんな旅行がしたい。早く自由に旅行に行きたいと思わせてくれる本です。
おしゃれな暮らしの良品はいかが?
『いつかは欲しい暮らしの良品』 枻出版社 (市立・成人 590//16)
おしゃれなお鍋で料理したり、可愛いお皿でご飯を食べたい人におススメの本です。
「食」「家事」「住まい」に分かれて、いろいろな暮らしの良品が掲載されています。
こんな良いものにかこまれたら、ちょっと面倒な料理も頑張れるかも?!
ちなみに、私は両手鍋を買おうか検討中です。
お鍋以外にも、箒や椅子や時計まで、幅広く紹介されています。
安いものも良いけれど、ちょっとお高くて良質なものを使うのも良いですね。
育児本どれを選ぶ?
図書館には、育児に関連する本がたくさんあります。
初めての育児をするとなった時、何を読めばいいか、迷いました。
その中で私が選んだのは、松田道雄さんの本でした。
松田さんは小児科医。その経験をもとに、病気・遊び・発達などについて書いてあります。
〈よく泣く赤ちゃん〉いう項目では、「一生泣いている人はいない。きっとなおると楽観していい」というように、他の育児書に比べると、さっぱりとした平易な言葉でかかれているのですが、育児初心者の私は、「そんなに深く考え込まなくても大丈夫」と言われているような気分になりました。何があれば、この本であれこれと調べ、毎回不安を解消していました。
初版は、1967年。そこから、病気の情報などを更新し何度か改版され、図書館には、文庫版と単行本版があります。
松田さんの育児書には、子ども目線で書かれた、『私は赤ちゃん』(市立・成人 /599//16) 『私は二歳)』(市立・書庫 /599//)(いずれも岩波新書)などもあります。
極めるということ
『片手袋研究入門』 石井公二/著 実業之日本社 (市立・成人 049//19)
世の中には、こんなことを研究する必要があるのか?いったい誰に需要があるのか?と思ってしまうような事柄を研究している人がいます。
そういう人をふとテレビで見たり、会話の中で知ったりすると、尊敬の念を抱かずにはいられません。
そういうマニアックな人たちは、たいてい自分の趣味で自分のために始めています。その成果がたまたまツイッターでバズったり、本になったり、この本の著者に至っては現代美術の国際展に選ばれたりしたのです。なので趣味さえあれば誰でも研究者になりうるともいえます。
他人から見れば、こんなことに人生の半分を費やしたのか?と思うものでも、自分が愛していれば、それが研究対象なのであり、突き進むべし。
この本の著者は2004年から14年間、歩道に落ちている片方の手袋を5000枚近く撮影し、撮影状況の類似点・相違点に着目しました。観察・分析を行ううちに独自の分類法ができあがったのだということです。
この本は、すぐ役に立つ知識が得られるわけではありません。
だけど、わたしは読まずにはいられませんでした。
あなたも読んだ後、歩く道の先に片手袋が落ちていないか探してしまうことでしょう。
アイスの思い出
『日本アイスクロニクル』 アイスマン福留/著 辰巳出版 (市立・成人 588.3//19)
昭和から平成にかけて発売されたアイスが年代順にまとめられたこの本、昭和生まれには懐かしさいっぱいです。駄菓子屋さんでいつも同じアイスを買ったこと、カップアイスのふたを大事に残していたこと、今はもう売られていないアイスがとてもおいしかったことなど、いろいろな思い出がよみがえってきました。
今年もアイスのおいしい時期になってきましたね。お気に入りだったアイスを探したり、おなじみのアイスのパッケージの変遷を調べてみたり、楽しみ方はいろいろ。アイスの世界に浸ってみてはいかがでしょうか。
「ミニチュアで「見立て」を楽しむ」
『MINIATURE TRIP IN JAPAN』 田中達也/著 小学館 (市立・成人 748//20)
重ねられた扇子の上に小さな人形?何これ?とその表紙から興味をひいたこの本は、朝ドラのオープニング映像も手がけたミニチュア作家の田中達也さんの作品集でした。
田中さんは、身近な日用品を使い、ミニチュアの世界観でユニークな「見立て」アートを表現している方です。
「見立て」とは、あるものを全く別のものに置き換えることで、日本には古くから枯山水や歌舞伎、落語など、たくさんの「見立て」文化があるそうです。
みなさんも子どもの頃に、一度はごっご遊びなどで「見立て」を楽しんだことがあるのではないでしょうか。
さてこの本は、そんな「見立て」の面白さが新感覚でギュッと詰まった一冊です。
外国の方にも日本に興味を持ってもらえればとの思いで作られたそうで、彼のこれまでの作品の中から、日本の行事や風景、食べ物など日本文化をテーマにした作品が集められています。
例えばあのぐるぐる巻きの蚊取り線香が茶畑になったり、お菓子のキャラメルが将棋盤になったりと、意外なもの、でもなるほど!そうきたか!と思わせるものが使われていて、その視点には、私たち日本人でも思いがけない驚きと発見があり、とても楽しい一冊です。
こんな風に日常を遊んでみる楽しさも、あらためて思い起こさせてくれます。
因みにこの本は写真集なので、図書館北側の大きなガラス壁面横の写真集の棚にあります。他にも写真集をお探しの方は、そちらの棚をご覧ください。
たまには、世界文学でもどうでしょうか
お勧め出来る本は、たくさんあるので、最近読んだ本をご紹介します。
この物語は、アメリカ中西部のオクラホマ州に住んでいた農家ジュード家が、砂塵嵐と旱
魃に悩まされ、負債で自分の土地を銀行に奪われたため、仕事と賃金を求めて豊かな西部
のカリフォルニアに向けて、旅をする渡り労働者の物語です。
旅の途中で祖父母の死や家族の別れがあったり、逗留先の簡易テント村でのトラブルといった事故が展開されます。しかし、仕事があると思ったその地は、現実には、競争相手の求職者が多くいるので、仕事を探すのに奔走することになりました。それでも、仕事は見つかりません。やっと見つけた仕事先でも、欲深い大農場主の賃下げで生活は厳しいものでした。毎日のパンにも困る生活状況で、生きるために悪戦苦闘します。
本作では主人公たちの苦難が語られつつも、アメリカ人のキリスト教を背景とした隣人愛や家族愛も生き生きと描かれています。そのため、遠く離れた昔のアメリカを舞台としているにも関わらず、現代の私たちが読んでも共感できる物語となっています。世界文学に親しむきっかけとしてもおすすめしたい一冊です。