図書館スタッフおすすめ本

油揚げ大好き!

 『愛しの油揚げ おかずにおつまみに簡単レシピ80』
                                 高橋良枝/著 文藝春秋 (市立・成人 596.3/ /16)

 子どもの頃、私はお豆腐があまり得意ではありませんでした。何だか味がない食べ物だなあと思っていたのです。冷奴や湯豆腐などはおいしいと思えず、しょうゆやポン酢をたくさんかけて食べていました。高級なお豆腐を食べて、大豆の味がしっかりするとか、濃厚な味わいとか、そういう言葉を聞くたびに、よく分からないなあ、お豆腐の味がわかるなんて大人だなあと思っていました。

 そんな私でも油揚げは大好き。お味噌汁に入った油揚げは汁をたっぷり吸っていて、口に入れると、じゅわっと汁がしみ出てきて幸せな気持ちになりますし、きつねうどんやおいなりさん、もちや卵を入れたきんちゃく、小松菜などの青物とさっと煮た煮浸しなど、どれも大好物です。しかし、恥ずかしいことに、油揚げはお豆腐から作られているということに、大人になるまで気付いていませんでした。(正確に言えば油揚げ用に固めの豆腐を作って揚げるとのことですが。)

 この本は、そんな油揚げのレシピ本です。スタンダードな煮物や色々な和え物。カリカリに焼いて具材をのせる「カナッペ」や、ポテトサラダや生ハムなどの洋風なものまで詰めてしまう「きつね袋」などなど、さまざまなレシピが紹介されています。油揚げってどんな食材にも合うんだなあと感心し、ますます油揚げが大好きになりました。出来立てアツアツの油揚げが食べてみたい!家の近くにお豆腐屋さんがあればいいのに・・・とかなり切実に思う今日この頃です。

 図書館の本の背にある番号596.3は「材料別の料理法」の本の番号(分類記号)です。鶏肉とか納豆とかトマトとか、自分が好きな食べ物だけのレシピ本を596.3の本の棚で探してみるのもおもしろいですよ。

『超』短編小説の世界へ

 『54字の物語』 氏田 雄介/作  PHP研究所 (913.6/ウシ/18)

 みなさんは「短編小説」や「ショートショート(掌編小説)」と聞いて、どんなものを思い浮かべますか?この2つには明確な区別があるわけではないのですが、多くの場合、ショートショートは短編小説よりさらに短い物語を指す言葉として使われています。ショートショート作家として有名なのが、星新一や阿刀田高。特に星新一は、生涯で1,000作以上のショートショートを発表したと言われています。

 今回おすすめする『54字の物語』は、ショートショートを読むのが好きだという方や、あまり長い話はちょっと…という方におすすめの『超』短編小説集です。タイトル通り、1つの物語がたったの54字(句読点を含む)で完結しています。そのため、1つ読むのに1分もかかりません。私も「こんな字数で物語として成立するの?」と半信半疑で読み始めたのですが、とても面白く、あっという間に最後まで読み切ってしまいました。

 構成は2ページで1作品となっており、まず1ページ目に9マス×6行=54字の作品が掲載されています。そしてページをめくったところに、前ページの作品の解説が書かれています。54字では書き切れなかった詳細な舞台背景なども、この解説ページに載っているので、何度読んでも意味がわからない…という場合も、解説を読めばすっきりします。もちろん、作品だけを読んで自分なりに意味を考えてみるのも、ちょっとした頭の体操になりますよ。

 本の最後には、実際に54字の物語を作る手順も掲載されています。読み終わったら、今度は自分なりの物語を作ってみるのも、楽しいかもしれません。

本と人をつなぐ!人が地域を変える?

 『すてきな司書の図書館めぐり しゃっぴいツアーのたまてばこ』
                                 高野一枝/編著 郵研社 (市立・成人010.2/ /18)

 この本は、しゃっぴいおばさんこと著者と図書館をこよなく愛する熱き図書館員たちが織りなす図書館見学ツアーの素晴らしい一瞬を綴ったレポート集です。ちなみに「しゃっぴい」とは著者の田舎の方言で「おてんば」とか「おしゃべり」な女の子をいいます。

 本によって、人は変わることができます。人によって、地域を変えることができます。図書館員によって、本と人、そして地域を繋ぐことができます。

 しゃっぴいおばさんに集う好奇心旺盛な図書館員たちが、図書館を気軽に楽しみながら、地域に根差した図書館の本質に迫ります。大分県生まれのライブラリーコーディネーターによるマジカルミステリーツアーの壮大な世界観を、余すところなく堪能してください。

 なお、この本は、視覚障害者や身体障害、寝たきりなどで通常の活字による読書が困難な方のために、当館で録音図書を製作しています。録音図書の利用については、カウンター職員にお尋ねください。

神社で見られるどうぶつたち

 『神社のどうぶつ図鑑』 茂木貞純/監修 二見書房 (市立・成人 175.9/ /18)

 年末年始、神社へ参拝する機会が多くなる季節です。稲荷神社の狐、天神様の牛、東照宮の猿。パッと頭に浮かぶだけでも神社には様々な動物がいます。それでも、祭られている動物がもつ意味や、なぜその神社に祭られているのか、ほとんど意識せずにお参りしているのではないでしょうか。

 伊勢神宮に鶏がいる理由は?「撫で牛」のご利益は?この本は、神社で見られる動物に関する疑問について、豆知識なども加えて分かりやすく答えてくれます。

 また全国には、リスやムカデ、マグロやウナギなど、変わった動物が祭られている神社もあるようです。 動物を探しに、ぜひ神社に足を運んでみたくなる一冊です。

今年はどんな野菜に挑戦しようか

 『西村和雄ぐうたら農法』 西村和雄/監修 学研プラス (市立・成人 626.9/ /18)

 私は、ほんの少しだけですが庭で野菜を作っています。野菜作り初心者なので、うまく作れる時もあれば、失敗する時もあります。

 野菜作りの一番の目的は、何と言っても自分で作ったものを食べる楽しみです。しかし、その他にも、野菜の葉に何かが食べたような穴があると、一体どんな虫が食べたのだろうか、せっかく作っている野菜を害虫から防ぐにはどうしたらいいのかなどの疑問や対処、また、これまでは特に気にしなかった虫が、害虫から野菜を守ってくれていることなどに気付くことも楽しいことです。

 今回紹介する本は、本のタイトルからしても、気負わずに野菜作りを初めてみようかなと思わせてくれるような本です。私も今年は、今まで作ったことのない野菜を作ってみたいと思っています。図書館にはたくさんの野菜作りの本があります。ぜひ一度ご覧いただき、野菜作りを楽しんでみませんか。

三重郷土 名士の為人(ひととなり)に触れる

 『泗水百人物の横顔』 伊藤 長次郎(丸山 半月)/著 三重日日新聞社 (市立・地域 L28/ /35)

 聞いたこともないタイトル、著者、出版社の本であると思います。それもそのはず。この本は、昭和10年に発行された本なのです。三重日日新聞(明治12年創刊)に連載されていた「名士プロフィール」を改題上梓した本です。もちろん、当時の名士たちということなので、今となっては教科書に掲載されたり、郷土史などで語られたりする方々ばかり。伊藤傳七、伊藤平治郎、九鬼紋七、小菅剣之助…などなどの実業家たちが名を連ねています。

 そんな彼らはどんな人だったか…。他の本で語られるような偉業の記述ではなく、どんな趣味を持っているか、こんな性格だったのか、お酒はどれぐらい飲むのだとか…少しばかりの親近感が湧くような、名士の為人を知ることが出来ます。また、戦前の発行物ということで、現代では使われない当時の言い回しや文章表現などを体感できると同時に、今ではなかなかできないような、ジャーナリストのざっくばらんな表現も楽しめます。

 この本を読み郷土史を見直したとき、少しだけ郷土の名士を近しく感じられるかもしれませんね。本は2階地域資料室でご覧いただけます。(貸出可)

読者への挑戦状

 『叙述トリック短編集』 似鳥 鶏(ニタドリ ケイ)/著 講談社 (市立・成人 913.6/ニタ/18)

 この本によると、「叙述トリック」とは、小説の文章そのものの書き方で読者を騙すタイプのトリックです。読者をミスリードし、最後に勘違いを突き付けられ、「やられた!騙された!!」と悔しい思いをするものの、この衝撃がクセになってしまい、虜になった一人が私です。

 この作品はタイトルの通り、叙述トリックを使用した推理小説の短編集です。他の叙述トリックを用いた作品と違うのは、タイトルと冒頭で、叙述トリックを用いているとあらかじめ記述し、読者へ挑戦状を投げかけているところです。

 はじめ私は、「叙述トリックを使っていると始めから知っていたら、面白みがないのでは」と考えていました。しかし、タイトルに使っている程、読者をミスリードする自信があるのかと考えると、気になる存在になってしまい、読んでみると、おすすめしたい一冊となりました。ちなみに私は、叙述トリックを使っていると知っていて注意して読んだつもりでした。でも、見抜けたトリックが1つ、何となくそうかな?と部分的に感じたトリックが2つでした。

 最後に、作中の冒頭にも記述のあるヒントをひとつ。「一人だけ、すべての話に同じ人が登場している」…あなたも似鳥鶏のトリックに挑戦してみませんか。

 

お直しの本

 『クライ・ムキのお直しの本』 クライ・ムキ/著 日本文芸社 (市立・成人 593.3/ /16)

 かつて私が子育てしていた時に、クライ・ムキさん編集の雑誌『手作りママキディ』(婦人生活社)に出会いました。洋裁なんて習ったことのない私でしたが、実物大型紙と分かりやすい作り方手順に、パンツ、シャツ、ジャケット等、沢山の作品を作りました。

 洋裁には、作る楽しみと着る楽しみ、両方があります。それを教えてくれたのがクライ・ムキさんでした。残念ながらこの雑誌は1998年に廃刊になっています。しかし、これに代わる簡単手作りの本はたくさん出版され、おかげで私の洋裁好きは今でも続いています。  

 今回紹介するのは、手作りの本とはちょっと違って、手軽にできるリフォームの本です。新しい洋服を作るのもとても楽しい作業なのですが、古いものを甦らせる作業も楽しいものです。この本は、いまさら誰にも聞けないような、糸の通し方や結び方等の基礎知識から、一見難しそうなサイズ直しや修理の方法まで、全てカラー写真で分かりやすく解説してあります。洋裁が苦手な人でも手順通りにやっていけば、案外簡単に
「お直し完了!」となりそうです。

 サイズや形が合わなくなってしまった洋服や、まだ着たいのにほつれたり、裾が擦り切れてしまった洋服を、お直しでもう一度、お気に入りの一着にしてみてはいかがでしょうか。

〝本が売れない〟現実と〝本を売る〟ための悪あがきの物語

 『拝啓、本が売れません』 額賀 澪 (ヌカガミオ)/著 KKベストセラーズ (市立・成人 023.1/ /18)


 私は趣味では基本小説しか読まない人間です。しかしせっかく図書館で働く身だから、と普段は足を運ばない棚で本を探してみました。そのとき出会った本がこちら。ちなみに本を手に取った理由は表紙でした。

 この本は、額賀澪という2015年に「松本清張賞」と「小学館文庫小説賞」をダブル受賞した作家が、≪本が売れない≫現実を思い知り、本を売るために何をしたらいいのかを関係者に問いながら発見していくノンフィクション小説です。


 作中には編集者、書店員、装幀人など作家以外の本を売る側の人が登場します。本が売れるのは、作家にとって、とても大事なこと。そのために何をしたらいいのかを考え、聞き、行動に移す姿は、今や将来、本に関わる仕事をする人はもちろん、一読者としても興味深いものになるのではないでしょうか。売り方の一つに表紙の話もあり、この本を表紙借りした私はドキリとしました。まんまと策にはまってしまった……ということです。


 私はこの作家の本を読んだことがありません。しかし、この一冊を通してこの作家の文章の読み易さを知り、人となりを覗き、売れる本を作り出そうとする仕掛けに、この作家の本を近いうちに読むことを決めました。新しい作家との出会いに成功したのです。ここでは、新たな出会いとなったこの本をおすすめしますが、いつも読まない棚から本を手に取ってみるのも、たまにはいいかもしれません。新しい出会いがあるかもしれませんよ。

“可哀そう”って決めつけないで

 『明日の子供たち』 有川 浩/著 幻冬舎 (市立・成人 913.6/ アリ/14)

 
この作品は児童養護施設を舞台に、主人公の新任職員が施設の子供や職員と関わりながら成長していく様子を描いた物語です。児童養護施設が持つイメージから皆さんは、たぶん「可哀そうで不幸な話、重たいストーリー」ではと思われることと思います。実際、私も”可哀そうな物語”でつらい気持ちになって、最後まで読み終われるかなと不安になりながら読み始めたのですが、杞憂に終わりました。

 著者の描き方が上手く、重くなりそうなテーマを軽やかに明るくまとめてあるため、あっという間に読み終わることが出来ました。普段、あまりよく知られていない「児童養護施設」の現状とかかえる問題を知ることが出来て、私たち大人が本当に子供たちにすべきことは何かを考えさせられました。

 そして、物語を読み終えた後の子供の手紙を読んでください。この作品の本当の存在の意義がわかり、感動が一層深まることと思います。