図書館スタッフおすすめ本
本が先?映画が先?
自動車メーカーのリコール隠しに勇敢に立ち向かった人たちの物語。中小運送業社長が、巨悪に立ち向かう誠実な生き様にも胸がすくわれる作品です。また、いい車、安全な車を作ろうとするメーカー技術者が、欠陥を内部告発するまでの葛藤を刻銘に描いています。
6月には映画も公開され、原作が息を吹き返しています。このところ、事実を隠したり、捏造したり、改ざんする事件が頻発しました。『白い巨塔』で山崎豊子が、医学界に警鐘をならしたように、今こそ信頼の回復と生命の尊厳を守るスタンスに立ち戻らないといけないのではないでしょうか。
また、『空飛ぶタイヤ』は、文庫本、大活字本でも所蔵がありますので、こちらもご利用ください。
はじめてのパソコンのイラッをズバリ!解決
『はじめてのパソコンのイラッをズバリ!解決』 秀和システム (市立・成人 007.6/ /16)
みなさんはこの本のタイトルどおり、パソコンが思いどおりに動かなくて「イラッ」としたことはありませんか?
この本は、初心者の方はもちろん、中級者の方にも参考にしていただける入門書だと思います。入門書らしく、パソコンが思いどおりに動かない時、「やってはいけないコト・コレ!が原因・コレ!で解決」と、3段階で対応方法が解りやすく解説されています。自分でも当たり前のように、「やってはいけないコト!」をやってしまっていた事に、正直驚きました。
みなさんの「イラッ!」が少しでも解決できるよう、ぜひ、この本をご活用ください。
俳句文学への入り口に
『怖い俳句』 倉阪 鬼一郎/著 幻冬舎 (市立・成人 911.30/ /12)
この本は、江戸から現代までの俳人の句を“怖さ”という視点から選び出した作品集です。
作品はおおよその時代ごとに配置され、各々に鑑賞文が添えられています。まえがきに「照明を落とした美術館の回廊を巡っていくように、一句ずつ怖い俳句が目の前に現れていきます。」とありますが、なるほど、そのような歩調で読み進めるのが合いそうです。
紹介される“怖い俳句”に、不吉さを忍ばせた情景・日常の中にある異空間・不気味な時代の空気・目を背けられないほどの痛み・果てしないものへの恐れ・この世とあの世とのゆらめきを思ったり、よくは解らないが何だかすごいフレーズだと驚いたりしながら、私はこの俳句集を読みました。そして“怖さ”が、俳句の魅力に触れさせてくれるとてもよい視点であることを感じました。
文中で著者は、「読者を俳句の世界にいざなう「初めの一冊」になればとひそかに思いつつ、本書を執筆している」と書いています。
俳句文学への入り口に、さまざまな俳人たちを知るきっかけに、私もこの本をオススメします。
オルゴールから聴こえてくるのは…
『ありえないほどうるさいオルゴール店』 瀧羽麻子/著 幻冬舎 (市立・成人913.6/タキ/18)
蓋や引き出しを開けると、心地よくてやさしいメロディーが流れ出すオルゴール。音楽に合わせて人形が動いたり、しかけを楽しめるものもあって、ついつい見入ってしまいますよね。私は、子供の頃にオルゴールに魅せられて、チャンスがあればオルゴールを買ってもらい、集めて楽しんでいた時期があったのを思い出しました。
この物語は、北の町にある静かなオルゴール店と、そこにまるで引き寄せられるように訪れたお客さんとの物語です。店内にはたくさんのオルゴールがありますが、耳利きの職人である店主が、お客さんの好きなメロディーをオーダーメイドで作ってもくれるのです。耳利き…とは、一体どういう意味なんでしょう?どうやら店主は、心の音楽を聴き取ることができるようです。
訪れるお客さんもちょっと訳ありな方々です。耳が聞こえないと医者から告げられた少年と手術に迷う母親や、仲間と一緒に追いかけていた音楽の夢をあきらめた少女。どうしても分かり合えることのなかった父の法事のために、故郷に帰ってきた男性など。そんなお客さんたちが手にしたオルゴールからは、まるで魔法のように人生に寄り添い、背中をそっと押してくれるような、あっと驚くメロディーが流れ出てきます。
読者も、まるでオルゴールから音楽が聴こえてくるかのように、やさしい気持ちになれるそんな物語です。オルゴールが好きな方、音楽が好きな方、ちょっとお疲れ気味の方、よかったら読んでみませんか?
ほめちぎられたい方へ
『「ほめちぎる教習所」のやる気の育て方』 加藤光一/著 KADOKAWA (市立・成人 336.4/ /18)
三重県にほめちぎる自動車教習所があります。そこは2013年にリニューアルし、ほめる指導を始めました。
みなさんは、自動車教習所といえばどのようなイメージでしょうか。わたしの場合は、無表情のおじさんが助手席に座り、少しでも間違うようなら、思い切りブレーキを踏まれる(公道ではなく、まだコース内の段階においてです)。そして、評価には濃い鉛筆でバツ。座学の際には、一つでも聞き逃すと、本試験はおろか仮免試験にも受からないと脅されました。そんなイメージです。そして試験に落ちると、余計に追加料金がかかるシステムだったので、貧乏学生のわたしは、夏休みの間少々追い詰められながら、なんとか合格しました。
なのでほめられた記憶は一度もありません。むしろ運転は苦手、というイメージがついてしまったので免許を取得してから10年目ですが一度も運転していません。運転しなくても電車でなんとかなる生活圏だったのですが、最近引っ越しをして不便になってしまいました。これを機会にペーパードライバーを卒業したいと思っています。
運転においてもそうでなくても、ほめちぎられたいと思うわたしにとって、ここはぴったりな教習所かもしれません。ちなみに、この本の巻末には、ほめちぎる教習所がイチオシするほめ方10選が載っています。こちらは日常の中でも使えるものばかりなので、活用しようと思っています。
世界は奇跡に満ちている
「バチカン奇跡調査官(シリーズ)」 藤木 稟/著 角川書店 (市立・成人 913.6/フシ/07~)
カソリックの総本山・バチカン。ここではこの現代においても、“奇跡”の認定が行われています。「バチカン奇跡調査官」とは、この奇跡認定を求めて世界中から申請されて来る不可思議現象について、これをあらゆる角度から調査し、真に神の奇跡と認めてよいか否かを検証する任務を帯びた聖職者たちです。(注:この役職は作者のフィクションです。ただし、バチカンが奇跡認定を行っているのは本当です。)
主役は、神父として、そして奇跡調査官としてバチカンに奉職する二人の青年。この二人がコンビとなって、毎回、申請のあった奇跡の現場へ赴き、協力しながら調査に当たるわけですが、そこにはその土地の歴史や民俗、宗教、様々な人間の思惑が絡み合って一筋縄ではいきません。果ては古い秘密結社やナチスの末裔なども暗躍し、命の危険にさらされることもしばしばです。果たして二人は、奇跡の真相に辿り着くことができるのか・・・というのが物語の大筋です。
奇跡調査官は皆、何某かの分野のエキスパートで、主役の二人・平賀神父とロベルト神父もそれぞれ、医学・科学捜査の、あるいは暗号解読・民俗学の専門家です。この二人の奇跡調査を通じて、奇跡の起こったカラクリ(これが明らかにされるということは、すなわち真の奇跡ではないということなのですが(笑))のみならず、現地の現在の事情からそこに至るまでの歴史・民俗などが詳しく語られ、結果的にとても包括的で豊かな内容のミステリーになっています。
また、二人の神父の世界に対する目が限りなく対等で誠実なためか、事件や過去の歴史事実など凄惨な描写が多いにも関わらず、作品全体に不思議な肯定感、優しさがあり、人は過ちも多く犯すけれど、希望がないわけではないなと感じさせてくれます。
興味のある方はぜひご一読を。
縁起物ってどんなものがあるの?
『縁起物』 ~日本のたしなみ帖シリーズより~ 自由国民社 (市立・成人 387/ /16)
皆さんは、縁起物を購入したり、お祭りがあると参加したりしていませんか?
お守りを購入したり、おめでたい日には鯛や赤飯を食べたり。
お節料理の意味をよくわからないまま、毎年作っていたり…。
理由をよくわからないまま験担ぎしているのは何か変だなと思い、この本を手に取りました。この本には、行事やお守り・お祝い・動物と植物に分かれて、縁起物が紹介されています。
例えば、今の季節だと、「夏越しの祓え(なごしのはらえ)」という行事があります。どんな行事かと思ったら、「茅の輪くぐり(ちのわくぐり)」の事だそうです。神社に行くと、千萱(ちがや)で作った大きな輪が置いてあるのを見たことありませんか?あの輪っかをくぐる事により、罪や穢れが払われ、厄を免れるそうです。6月末に半年分の穢れを払い、次の半年に入るために心身を清め、後半の無事を祈るのだそうです。
今度は動物に目を向けると、猿や烏が神の使いだったり、植物では南天が、「難を転じて福となす」縁起の良い木とされていたり。他にも沢山あります。
あなたの知らなかった縁起物が、実は身近な所にあるかもしれませんよ。
ぜひ読んでみてくださいね。
日本が見えない
『日本が見えない 竹内浩三全作品集 』 竹内浩三/著 藤原書店 (市立・成人 918.68 /タケ/01)
“日本が見えない”、戦時中の詩人・竹内浩三の詩のタイトルです。
竹内浩三は、三重県宇治山田市(現伊勢市)に生まれ、23歳という若さで戦死します。わずか23歳の人生の中で書き記された数々の詩からは、戦時中の日本の空気とともに、今まさにそこに生きている竹内浩三という人間の生が生々しく立ち上がってきます。
「日本が見えない」と題された700ページもの分厚いこの本には、竹内浩三が残した詩や散文、日記、漫画などが、ぎっしりと収録されています。多彩な才能と、表現への抑えきれない欲求に満ちた作品からは、生きていたら会ってみたい!と思わせる魅力ある人間像があふれています。 「戦死しなかったなら、その後どんな人生を生きてどんな人物になっていたのだろう?」竹内浩三の才能を知る編者や関係者は、この本の中で皆そう語ります。
「日本が見えない」、どうにも今の日本にも同じことを感じてしまうこの頃。戦争によって未来をあっさり奪われてしまった三重の詩人・竹内浩三の詩を改めて感じていただけたらと思います。
懐かしくて、新しいもの
『「太陽の塔」新発見! 岡本太郎は何を考えていたのか』 平野 暁臣/著 青春出版社
(市立・成人 606.9/ /18)
皆さんは「太陽の塔」をご存じですか。「太陽の塔」は、1970年に開かれた日本万国博覧会(大阪万博)にテーマ館として造られました。「芸術は爆発だ!」のフレーズで有名な岡本太郎氏の作品です。岡本氏は万博のプロデューサーでもありました。「太陽の塔」の高さは70mにもなり、日本を代表する建築家の丹下健三氏が設計したシンボルゾーンの大屋根を貫き、少し可愛い感じ(個人的な感想ですが)の腕を左右に広げて、会場にそびえたっていました。実際に子供の頃、大阪の万博会場でこの塔と展示を見た私には、おぼろげながら当時の様子が、懐かしくよみがえってきます。
この本は、今回の耐震工事による改修で、再び脚光を浴びることになった「太陽の塔」について、今まで知られていなかった新しい事実が、著者の綿密な取材により、いろいろと明らかにされています。
また、一見、危険人物のようにみえる岡本太郎氏が、どんなに魅力的で、当時の一流の建築家やスタッフの気持ちをつかんでいたか…など、意外なエピソードも満載です。
所々にちりばめられているスナップ写真は、写っている人物の細かい表情までよくわかり、当時の雰囲気がよく伝わってきます。まるで、ドキュメンタリー映画を見ているような気分にさせてくれます。
48年前に圧倒的な迫力で私たちの目の前に現れ、今なおその輝きを保ち続けている「太陽の塔」とその内部。今まで知らなかった方も、出会った方も、懐かしいと感じるのか、その斬新さに驚くのか。「太陽の塔」と芸術家、岡本太郎に触れてみて下さい。
本とお酒好きにはしっくり?な小説
『飲めば都』 北村薫/著 新潮社 (市立・成人 913.6/キタ/11)
4月になり、皆さん何かと「仕事」+「お酒」の予定も多くなってくる時期ではないでしょうか?この本は、本とお酒が大好きな文芸編集者「都さん」の日常を描いたお話です。
日々、仕事に奮闘する都さん。作家や本との出会いのなかで成長していきます。色々な本・小説にまつわるエピソードや人間模様が書かれていて、本好きにもたまらない1冊です。
一方で、お酒が入ってしまうと、仕事での関係や立場を忘れ、とんでもない行動をしてしまうこともしばしばな「都さん」。武勇伝も失敗談もケタはずれにすごい。そんな都さんの周りをとりまく人々もなかなかのお酒好き。お酒の席だからこそ、立場を忘れて?腹を割って普段できない話ができ、関係が深まり、「都さん」の成長にもつながっていきます。
仕事や人間関係で悩んで・踏ん張っている「都さん」だからこそ、周りには人が集まり、(たまにほろ苦いけれど)おいしく楽しいお酒が、飲めるのだろうなと思う私でした。
今日も、おいしい一杯のために仕事がんばろうと思える小説です。そして、私も「都さん」のような飲み友だちがほしい!