図書館スタッフおすすめ本

未来を生きる子どもたちへ かこさんからのメッセージ

『未来のだるまちゃんへ』 かこ さとし/著 文藝春秋 (市立・書庫 726.5//14)

 『だるまちゃんとてんぐちゃん』や『からすのパンやさん』などで知られ、大人をも夢中にさせる絵本を数多く世に生み出してきた、絵本作家かこさとしさん。
 2018年に92歳でこの世を去るまで600冊を超える作品を残し、その名作の数々は今なお世代を超え読み継がれています。
 88歳(当時)にして現役の絵本作家であった、かこさんが何を思い、迷い道の人生、絵本に込めた希望、尊敬してやまない子どもたち、そしてすべての親への応援歌となる一冊を残してくれたので、紹介したいと思います。
 
 かこさんは、書籍の中で、昔のこどもと今の子どもたちは本質的にはそんなに違わないのではないか、生きるということは喜びでなければいけないけれど、苦しみを避けていくこともできないと語っています。
 また、そのときに、「誰かに言われたからそうする」のではなく、自分で考え、自分で判断できる賢さを持ってほしいとも書かれています。
 
 かこさんの言葉がこれからの時代を生きていく子どもたちとそれを支えていく私達、大人にも力を与えてくれると思います。
 ぜひこの本を読んで、自分達の生きていく場所がより良いもの、楽しく、喜びいっぱいになるといいですね。

神話の楽しさ

『イリアス』(上・下) ホメロス/著 松平千秋/訳 岩波書店 (市立・書庫 B/991.1//10)
『新訳ラーマーヤナ』(1~7) ヴァールミーキ/編著 中村了昭/訳 平凡社 (市立・成人 929.8//12~13)

 この2つの文学書は、いずれも多くの世界文学全集に取り入れられている歴史上、貴重な名著です。しかしながら、現代の人は避けているというか、実際読んでみた人は少ないのではないでしょうか。それはおそらく、作られた時期や題材が大変古いということが原因と思われます。しかし、その内容は意外や意外、現代人も案外わくわくさせる内容なのです。

 『イリアス』は、ギリシャ軍とトロイア軍との戦争が舞台ですが、戦闘シーンがアメリカのアクション映画のような迫力があって、表現がすごく生々しく、スリリングです。
 『ラーマーヤナ』の方は、インドの市民生活に根付いた道徳的物語で冒険物語の風情です。鬼神ラーヴァナに妻のシーターをさらわれたラーマが、妻を奪還するために妖怪のような鬼神と戦います。これもすごく迫力があって、まるでアニメ映画の雰囲気です。とても長い物語なので、読みやすくまとめた『インド神話物語ラーマーヤナ』(上、下)(デーヴァダッタ・パトナーヤク/文・画 原書房 (市立 929.8//20))もお勧めです。

『西の魔女が死んだ』~あの本のこの人に会いたい!<登場人物編>~

 人生で2度、本気で魔女になろうと考えたことがある。
 
 1度目は、8歳の時。
 ジブリ映画『魔女の宅急便』のビデオを擦り切れるほど見ていた私は、自分が魔女になるのだと信じて疑わなかった。魔女の帽子を被ってハロウィンのおはなし会に出かけたり『魔女の宅急便』シリーズ(角野栄子/著 福音館書店 (市立・児童 F/カ))『ハウルの動く城』シリーズ(ダイアナ・ウィン・ジョーンズ/著 徳間書店 (市立・児童 933/ショ))『わたしのママは魔女』シリーズ(藤 真知子/著 ポプラ社 (市立・児庫 F/フ))を愛読して、13歳で修業に出る日に備えていた。

 2度目は、22歳の時。
 『西の魔女が死んだ』(梨木 香歩/著 新潮社 (市立・成人 913.6/ナシ/17))について論文を書いていた時である。
 前年に「魔法」について卒業論文で書いていた私は、「魔法を使えるようになりたいんですか?」と聞かれることが多かった。
 当時は笑って否定していたのだが、文献と格闘する毎日に疲れ、本気で魔女という肩書で生きていけないかと模索していたのである。
 魔女が開いているというハーブ専門店で買ったハーブティーを飲み、
 国会図書館で「薬草魔女検定」のテキストを読んでハーブの効能を学んでいた。

 そんな気持ちがふっと晴れたのは、『西の魔女が死んだ』における魔女・おばあちゃんが
なぜ主人公・まいに魔女修行を施したのか、という問いに自分なりの結論が出た時であった。
 おばあちゃんは、野いちごジャムやハーブの虫よけ薬の作り方から、ベッドメイクの仕方、庭の手入れまで様々な知恵を、まいに授ける。
 その中でも最も印象的なのは、学校生活での悩みを打ち明けたまいへ向けたこの言葉だ。

「魔女になるためにも、いちばん大切なのは、意志の力。自分で決める力、自分で決めたことをやり遂げる力です」

「上等の魔女は外からの刺激には決して動揺しません」

「魔女は自分で決めるんですよ。分かっていますね」

 おばあちゃんの示した魔女という生き方。
 それは特別なものではなくて、もしかしたら、誰もが身に付けることのできる処世術であるのかもしない。

 魔女になれないまま生きてきた。
 そしてこれからも、きっと魔女になることはない。
 それでも、魔女という生き方を諦める必要はない。
 いつかそんな生き方を自分のものにできたなら、おばあちゃんにいろんな話を教えてほしいのだ。
 おばあちゃんの作り上げた庭で、ミントティーとどっしりとしたお菓子を嗜みながら……。


2022年のテーマは「あの本のこの人に会いたい!」です。
 これを読んでエッセーを書いてみたいと思った方、「読書に関するエッセーコンクール」へのご応募をお待ちしています!
 詳しくは以下のページをご覧ください。

エッセーを書いてみよう! 「読書に関するエッセーコンクール」募集中

 今年も、「読書に関するエッセーコンクール」の応募が始まりました!
 みなさんはエッセーを書いたことがありますか?
 読書感想文を学生の頃に書いたり、本や映画の感想をブログにアップしたことがある方は多いかもしれません。
 でも改めてエッセーを書いたことがあるかと言われると……?

 そんなあなたにぜひ読んでいただきたいのは、『エッセイ脳―800字から始まる文章読本』(岸本 葉子/著 中央公論新社 (市立・成人 901.4//10))です!
 『モヤモヤするけどスッキリ暮らす』などで知られる、エッセイスト岸本葉子が、テーマ・題材選びや読みやすさ、そして言葉の選び方などについて、具体的に指南してくれる1冊です。
 中でも「与えられたテーマの中で、題材を持って」「自分の書きたいこと」を実現していくエッセーの組み立て方は必見ですよ!
 ちなみに、この本が対象にしているエッセーは800字から1600字ということで、ちょうど「読書に関するエッセーコンクール」にぴったりでもあります。

 いかがでしょうか。
 エッセーを書くのが楽しみになってきませんか?
 是非この本を読んで「ある、ある、へぇーっ、そうなんだ」というエッセーを目指してみましょう!

 
 2022年のテーマは「あの本のこの人に会いたい!」です。
 これを読んでエッセーを書いてみたいと思った方、「読書に関するエッセーコンクール」へのご応募をお待ちしています!
 詳しくは以下のページをご覧ください。

エッセーってなあに? ~「読書に関するエッセー」募集開始~

 今年も、「読書に関するエッセーコンクール」の応募が始まりました!
 そこで今回は、エッセーとは何かを紹介していきます。

 日本国語大辞典第二版によればエッセー(エッセイ)とは、以下の通りです。

文学の一ジャンル。自由な形式で書かれ、見聞、経験、感想などを気のむくままに書き記した文章。随筆。
 
 つまり、自分の体験などを自由気ままに書いた文章ということです。
 なので、エッセーは旅行や家族、ご近所づきあいから仕事のことまで著者が気になったことが幅広く書かれています。

 では、エッセーを読みたくなったときはどうしたらよいでしょうか?
 図書館では、エッセーは914.6という分類番号のところに置いてあります。
 それ以外にも、様々なテーマに焦点を絞って書かれることもありますので、その場合はそれぞれのテーマのところをご覧ください。

 エッセーを読むのが初めてで、何を読んだら分からない!という方もいるかと思います。
 そんな方にオススメしたいのは日本文藝家協会 編「ベスト・エッセイ」シリーズです。
 「ベスト・エッセイ」シリーズには、その年に新聞・雑誌などで発表された中から、厳選されたエッセーが1冊にまとめられています。

 例えば『ベスト・エッセイ2021』(日本文藝家協会/編 光村図書出版 (市立・成人 914.6//21))では、林真理子や角田光代といった錚錚たる顔ぶれが、2020年の日常を切り取っています。
 もちろん、読書に関するエッセーも収録されていますよ。全盲の文化人類学者である広瀬浩二郎が「感じて動く読書法」にて、耳による読書を熱く語っています。

 いかがですか? だんだん、エッセーに興味が沸いてきませんでしたか?
 2022年のテーマは「あの本のこの人に会いたい!」です。
 これを読んでエッセーを書いてみたいと思った方、「読書に関するエッセーコンクール」へのご応募をお待ちしています!
 詳しくは下記のページをご覧ください。

本や読書のエッセーってどんなの? ~「読書に関するエッセー」募集中~

 今年も、「読書に関するエッセーコンクール」の応募が始まりました!
 2022年のテーマは「あの本のこの人に会いたい!」です。

 ところでみなさんは、読書に関するエッセーは読んだことがありますか?
 実は、読書や本に関するエッセーはたくさんあるんですよ!
 今回紹介するのは、本や読書について熱い想いをしたためたエッセーです。

 『米澤屋書店』(米澤 穂信/著 文藝春秋 (市立・成人 019.9//21))は、ミステリ作家・米澤穂信が本について書いてきたエッセーや紹介文をまとめた本です。
 作家としてデビューしてから書いたものをまとめているので、著者が好きな本は、何度も何度も登場します。特に北村薫『六の宮の姫君』は、毎回違った角度から感動が語られます。

 『本屋さんで待ちあわせ』(三浦 しをん/著 大和書房 (市立・書庫 019//12))は、直木賞作家・三浦しをんが本との出会いや読書体験をまとめた書評集です。
 しかし全く堅苦しいものではなく、著者が本との出会いや熱い気持ちをぶつけたエッセーでもあります。
 例えば『読むと猛然と腹が減る』では、著者ならではの驚くべき読書法と選書法を紹介しています。また『孤独と、優しさと、茶目っ気と。』では、学生時代の授業を受けてから読んだ、太宰治『駆け込み訴え』の衝撃を語っています。

 いかがでしょうか。
 本や読書に関するエッセーを、少しでも身近に感じていただけたでしょうか?

 2022年のテーマは「あの本のこの人に会いたい!」です。
 これを読んでエッセーを書いてみたいと思った方、「読書に関するエッセーコンクール」へのご応募をお待ちしています!
 詳しくは以下のページをご覧ください。

宇宙旅行へGO

『宇宙の地図』 観山 正見・小久保 英一郎/著 朝日新聞出版 (市立・書庫 440.8//12)

 宇宙の地図と聞いて思い描くのはどのようなものでしょう。一枚紙で太陽が中心にあって、その周りに太陽系の天体、さらに太陽系外の天体・・・大体そんな感じではないでしょうか。
 
 この本は宇宙の地図です。ですが宇宙の見せ方にちょっと工夫があります。
 まず東京の国立天文台から始まり、ページをめくるごとに10倍ずつ上空へと昇ってゆく・・・つまり地球から離れてゆく。そしてその各地点から地球方向を鳥瞰しつつ、地球から似たような距離にある天体を美しい写真とともに紹介する。そういう形をとっています。
 不思議なもので、地球を中心にして少しずつ遠くの天体を見てゆくと、一枚地図で全体を俯瞰するよりも「この星はここにあったのか」という新鮮な感動があります。自分とその天体との位置関係をある意味実感を持って認識できるせいでしょう。地球人にとって非常にわかりやすい宇宙の案内図と言えます。

 最近は近県への旅行すらままならないことが多かったと思います。この本を手に、いっそ地球の外、宇宙への旅行に出かけてしまってはいかがでしょう。

ホラーではありません!? 愛の写真集です

『愛されすぎたぬいぐるみたち』 マーク・ニクソン/写真・文 オークラ出版 (市立・成人 759//18)

 本書は、世界中から集められた60体以上のぬいぐるみの写真集です。
 
 ぬいぐるみと言っても、ただのぬいぐるみではありません。とにかく愛されすぎたぬいぐるみなのです。ページをめくって頂ければどんなに愛されたかが一目で分かります。
 何といっても、子どもの愛は容赦ありません。引っ張ったり、噛んだり、放り投げたり、連れまわしたり。でも、一日の終わりには、必ず抱きしめて眠りについたことでしょう。
 涙も汗も鼻水も、誰にも言えない秘密も、辛抱強く受け止め、こんなにもばっちく、いえいえ、味のあるぬいぐるみに育っています。どんな姿になっても、子供たちの大切な親友であり続けたのです。

 赤ん坊が母親から離れる時の足掛かりとして使われるぬいぐるみのことを「移行対象」と言うそうです。移行対象を持っていた子どもはその後の人生にも影響するのだとか。
 どのぬいぐるみにも名前やエピソード等が書かれています。そして、写真とともにかけがえのない親友であった証と濃密な物語がよみがえります。
 写真家マーク・エクソンが初めて書いたという詩は、「愛されすぎたぬいぐるみたち」への心からのメッセージのようです。
 一見するとホラーに見えそうな写真も読み進めると愛おしく思えてきます。

四日市を知るなら、まずはコレ!

『のびゆく四日市』 四日市市教育委員会/編集 四日市市教育委員会 (市立・地域 L223//20)

 みなさん、どれくらい「四日市」のことを知っていますか?

 私は、こう聞かれて「まあ、学校で習った程度は」と答えていました。
 けれど、小学校の社会科の副読本に使われているこの本を読み、気づきました。
 「私、四日市のこと全然知らない…私もこの本を使っていたはずなのに。」

 副読本だけあって、この本には、うつりかわり・産業・くらしを支える仕組みなど、四日市市のことがギュッとつまっています。
 「え?子ども向けなんでしょ?」「ずっと住んでいるし知らないことなんてない!」と思ったみなさん、一度読んでみてください。
 子ども向けだからこそ分かりやすく、四日市に来たばかりの人が知るのに、ぴったりです。
ずっと住んでいる人にも、新しい発見があるかもしれません。
 図書館には、歴代(1969年~)の『のびゆく四日市』もあるので、「これつかってたな~」と懐かしむのもいいですね。

 そして、定番の「郷土を調べる」という夏休み宿題で何を調べようか迷っているみなさん。
この本は、テーマ探しや調べ方のヒントにもなりますよ。
 昔使っていたのが、まだ捨てずに家にあるという人は、大事に残しておくといいかもしれませんね。

 市立図書館では2階の地域資料室で、読むことができます。
(注:年代によっては、貸出できないものもあります。)

うつし世は夢 よるの夢こそまこと

『江戸川乱歩大事典』 落合教幸/編 勉誠出版 (市立・参考 R910.26/エト/21)
 
 巨大な多面体「乱歩ワールド」を、文学、メディア史、社会学など、広範囲の分野から案内する本書は、戦後から昭和の高度経済成長時代の子供時代を過ごし、少年探偵団シリーズやテレビ放映の明智小五郎シリーズで大いに楽しませてもらった大ファンにとっては、様々な希望に応じた知識を授けてくれる優れものです。
 
 生誕百年を経て、未だに我々を魅了し続ける乱歩の創作・思考の背景にあるものとはいったい何か?

 乱歩の形成した人的ネットワーク、そして彼の生きた時代、戦前戦後という文化事象、出版文化の展開と共に花開いた雑誌・メディアなど乱歩ワールドの広がりを体感できる初の大辞典です。作品が書かれた当時の時代背景や政治、人間心理、メディア、美、エロス等、どこを切り口にしても尽きることのない金太郎飴のような豪華さです。これまで乱歩の作品に親しんできた人はもちろん、これから乱歩ワールドに踏み込んでいく人にもおすすめの一冊となっています。
(注:本書は参考図書につき貸出はできません。館内閲覧のみとなりますので、ご了承ください)

 余談となりますが、個人的に一番好きな乱歩作品を吐露させて頂くことをお許し頂けるなら、『パノラマ島綺談』をあげさせてください。三重県鳥羽のとある人工島を舞台にした壮大なスケールと豊かなエンターテイメントの世界が融合したダイナミックな作品です。乱歩は三重県出身で鳥羽の造船所で働いていた経験から、海や孤島を背景にした作品を複数書いており、大宴会の場面での豪勢な伊勢海老の舟盛りの描写など説得力があり、イメージが浮かんでくるようです。『江戸川乱歩作品集 3』(江戸川 乱歩/著 岩波書店(市立・成人 B913.6/エト/18))等にも収録されておりますので、 興味のある方はぜひご一読ください。