図書館スタッフおすすめ本

奈良公園のコガネムシ

『奈良の鹿』 奈良の鹿愛護会/監修 京阪奈情報教育出版 (市立・書庫 482.9//10)
『たくましくて美しい糞虫図鑑』 中村 圭一/著 創元社 (市立・成人 486.6//21)


 先日図書館の本棚で、以前読んだ『奈良の鹿』を見かけました。
 奈良公園の鹿について、保護活動、おやつ、生態系、歴史など、多方面から学べる本です。
 奈良公園には糞を食べるコガネムシがたくさん生息していて、芝生・鹿・コガネムシが互いに関わりあいながら共存していることをこの本で読み、驚いたのを思い出しました。


 そこで少し調べてみたところ、奈良市に「ならまち糞虫館」があり、その館長さんが最近も本を出されているようなのです。
 おっ、図書館にありました。『たくましくて美しい糞虫図鑑』。
 「糞虫」とは、糞を食べるコガネムシの仲間を指すのだそうです。
 本を開くと、糞虫の基礎知識、日本の糞虫の解説、世界の糞虫の写真のほか、糞虫館を作るまでの館長の歩み、糞虫観察の春夏秋冬、糞虫を語り合う対談等が書かれていて、初学者の私にも楽しい読みものでした。

 
 レッツ糞虫観察!とまではいかないかもしれませんが、足元の世界で起きていることを知るのってワクワクすると思いませんか?

貝殻から見える世界

『貝と文明』 ヘレン・スケールズ/著 築地書館 (市立・成人 486//16)


 皆さんは貝と聞くとまず何を思い浮かべますか?
 私を含め多くの方は、食卓で並ぶことが多いアサリやカキ、人によってはアクセサリーに用いられる真珠を思い浮かべるでしょう。

 
 今回紹介する本の主役は、貝を中心にタコ、イカなどを含む軟体動物たちです。
 海洋生物学者である著者は、私たちが知っているようであまり知らないこれらの生き物たちについて、最新の研究やユニークな体験談を交えつつ分かりやすく解説してくれています。
 ある章では貝殻がどのように作られるのか、アオイガイ(貝殻のあるタコのような見た目です)の不思議な習性など軟体動物それ自体がテーマになっています。一方、ある章では、カキ養殖の新たな取組やイモガイの毒を活用した新薬開発についてなど、軟体動物と人間との関わりがテーマとなっています。
 最終章のテーマは、今日の軟体動物たちを取り巻く海の変化です。ここでは、海の変化が軟体動物にどのようなリスクをもたらすのか実験や調査をもとに語られています。


 読み終えた私は、「いつか砂浜でのんびり貝殻を拾い集めるのも楽しそうだな…」と海に思いをはせると同時に、自分たちが今当たり前に食べているアサリやイカをいつか食べることができなくなるのではという不安も感じました。
 この本が、皆さんが貝や海に興味をもったり、馴染み深いものから人間の営みや自然とのかかわりを考えるきっかけになればと思います。

まずはルールを決めること

『死んでも床にモノを置かない。』 須藤昌子/著 すばる舎 (市立・成人 597.5//19)


 タイトルに惹かれて読まずにいられなかった2年前(だったはず)。

 サブタイトルは、片づけ・掃除上手がやっている「絶対やらない」ことのルール。
 ルールその1がタイトルの「死んでも床にモノを置かない。」
 これだけで、家がきれいになっていきます。(!)
 その理由は、床にモノがない状態を維持できれば、掃除や整理が一気に楽になるから。


 今度こそやるしかありません。でも、大切なのは「やる片づけ」ではなく、「やらない片づけ」なのです。

視覚障害者と一緒に「言葉による美術鑑賞」を楽しむ!

『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』 川内 有緒/著 集英社インターナショナル (市立・成人 706.9//21)

 この本では、白鳥さんとアートを見ると楽しいよ」という友人の一言から、ユニークな旅が始まります。全盲の白鳥さんと一緒に見ていると、たくさんの会話が生まれます。ときには思いがけない方向に話が飛んで行ったり、脱線したり、発展することも…。
 
 見える・見えないとは?障害とは?差別とは?アートとは?どう伝える?何を伝える?作品の前で色々な言葉が出会うとき、驚き・喜び・気づき…、新たな発見があります。分かり合えない他者と寄り添う関係、曖昧な記憶、果たして本当に見えているのだろうか?…先入観や偏見で凝り固まった常識が壊れていきます。
 見えない人と一緒に時間を過ごす喜び、浮かび上がる社会や人間の真実、時空を超えて聴こえてくる作品からのメッセージ…。アートを巡るコミニュケーションにこそ、心の内側を知る鍵が隠されているのです。

 この本を読めば「言葉による美術鑑賞」の追体験が楽しめます!さぁ、見えない目とともにアートを見る旅へ出かけましょう。

「身の丈にあった」に惹かれて

『身の丈にあった勉強法』 菅 広文/著 幻冬舎 (市立・成人 379.7//18)


 「少し難しそうな内容の本だな。読むのは今度にしよう。」
 
 私がこの本のタイトルだけを見た時の第一印象です。
 しかし、どうしても「身の丈にあった」に惹かれてしまい、読んでみました。

 
 この本の最初の章に、「この本で紹介する基本的な勉強法は、宇治原に教えてもらい、僕でも出来そうなやり方をその中から抜粋しました。」(書籍からの引用)とあります。
 著者は、ロザンというコンビの芸人さんです。相方である、宇治原史規さん(京都大学出身)の勉強法の中から著者である菅さんが出来そうな方法が抜粋されています。「勉強法」と聞くと、少しかたく感じてしまう方もいらっしゃるかもしれません。私も、読む前はかたい内容の本だと思っていました。
 やはり「勉強法」と謳っているだけあり、章ごとにそれぞれ「身の丈にあった勉強法」が紹介されているのですが、ただ勉強法が紹介されているだけではなく、クスッと笑える要素も含まれています。
 
 個人的なお話になりますが、実際に読んでみて、特に難しく感じることなく、楽しく読み進めることができました。楽しみながら「身の丈にあった勉強法」も知れて、一石二鳥!?かもしれません。
 よろしければ、ぜひ一度タイトルで躊躇せず、内容も読んでみてください。

龍玉(ロンユイ)の行方は?

『蒼穹の昴』 (上、下巻) 浅田次郎/著 講談社 (市立・成人 913.6/アサ/13)
『珍妃の井戸』 浅田次郎/著 講談社 (市立・書庫 913.6/アサ)
『中原の虹』 (1~4巻) 浅田次郎/著 講談社 (市立・書庫 913.6/アサ/06)
『マンチュリアン・リポート』 浅田次郎/著 講談社 (市立・書庫 913.6/アサ/10)
『天子蒙塵』 浅田次郎/著 講談社 (市立・成人 913.6/アサ/16)
『兵諫』 浅田次郎/著 講談社 (市立・書庫 913.6/アサ/21)

 
 中国の歴史ドラマにはまっています。特に清王朝の荘厳な紫禁城(現故宮博物院)で繰り広げられる煌びやかな世界に引き込まれます。
 
 そんな私がお勧めしたい小説は、テレビドラマにもなった浅田次郎著の『蒼穹の昴』です。その後、シリーズとして、『珍妃の井戸』、『中原の虹』、『マンチュリアン・リポート』、『天子蒙塵』、最新作の『兵諫』(へいかん)へと続きます。清朝最盛期の華やかな時代とは違い、西大后が牽制をふるった王朝衰退期から、近代中国への混沌とした時代の物語です。中国を統べる者が持つと言われる龍玉(ロンユイ)がシリーズのキーワードとなり、史実と創作の人物が織り交ざって物語は進んでいきます。どれか一部だけ読んでも充分楽しむことができます。


 以前は「中国の小説は、難しい漢字が多くて読みにくい」という印象を持っていました。このシリーズは、漢字のルビが中国語読みになっています。中国から伝わった漢字の読みの違いも楽しんでほしいです。

 ぜひ、中国四千年の歴史とも言われる中国の王朝最後の物語を見届けてください。

おもしろい計算力の世界へ

『世界の猫はざっくり何匹?』 ロブ・イースタウェイ/著 ダイヤモンド社 (市立・成人 417.6//21)


 おおざっぱな計算で世の中にある数値を把握しようと試みる本です。
 仮定を立て1つ1つ推論していく過程が面白く、タイトルである「世界の猫はざっくり何匹?」は本書のはじめに紹介される1例です。
 他にも身近な大人の髪の毛の本数から、環境問題まであります。読者自身が導き出せるように、おおざっぱな計算に必要な知識や方法が解説してあるので楽しく学びながら読めます。

なつかしのアレコレ

『絶滅事典 20世紀末モノ&コトカタログ』 造事務所/編著 カンゼン (市立・成人 049//21)


 1970年代から1990年代にかけて流行したものの、現在はあまり見かけなくなったモノやコトを集めた本です。生活(衣食住)、学校、趣味・娯楽、仕事・技術の4章に分かれ、編集部が独自に設定した絶滅の度合いも表示されています。

 学校の章では、わら半紙やロケット鉛筆、多面式筆箱やアルコールランプなど懐かしのモノが多数登場。そういえばあんなこともあったな-、と思わず学生時代を振り返ってしまいました。

 
 1つの項目は1~2ページで完結しているので、どこから読んでも楽しめます。
 ところどころに登場するイラストとコメントもぜひチェックしてみてください。

パンダを知りたい!

『読むパンダ』 黒柳徹子/選・日本ペンクラブ/編 白水社 (市立・成人 489.5//18)


 上野動物園で誕生した双子パンダの名前が決まりました。男の子が“シャオシャオ(暁暁)”、女の子が“レイレイ(蕾蕾)”。幼い頃に、テレビでパンダ幼稚園のドキュメンタリーを見て以来、なんとなく注目しているパンダ。最近は、疲れた時に二頭の動画に癒しを与えてもらっています。名前が決まったことで、さらに可愛さが増した気がします。


 この本は、『パンダを愉しむ』、『パンダを知る』、『パンダを守る』の三章で構成されています。
 第一章では、漫画『しろくまカフェ』の作者であるヒガアロハさん、映画『パンダコパンダ』の監督である高畑勲さん、他にも作家の浅田次郎さん、温又柔さんといった方々がパンダにまつわる書下ろしエッセイを寄せています。
 第二章では上野動物園やアドベンチャーワールドでパンダ飼育を担当された方の実体験・飼育日記が、第三章では、パンダの保護活動について書かれています。さらにパンダ愛溢れる黒柳徹子さんの座談会もあり。

 少しでもパンダに興味がある方、ぜひ読んでほしい一冊です。

ヒルと生きる

『ヒルは木から落ちてこない。ぼくらのヤマビル研究記』 樋口大良+子どもヤマビル研究会/著 山と渓谷社 (市立・地域、L483//21) 
                                            

 鈴鹿の山に登った後で、近場の温泉に行く。「ゆっくりつかろうか」と友と話しながら、Tシャツをばっと脱いだ瞬間「ボトッ」何かが床に落ちる。「今日も暑かったな」と帰りの車を走らせていると、何やら靴下の中がムズムズしたので信号待ちの時に靴を脱いでみる。「コロン」何かが転がる。
 言うまでもなく鈴鹿の山(なかでも堆積岩帯の山)の名物『ヒル』である。このなじみ深い生き物の生態を解き明かしていこうと、観察を重ね、実験をし、次々に課題をクリアーしていくヤマビル研究会の子どもたちの姿がとてもかっこいい。自分もこの研究会の一員になった気になって、一気に読んでしまった。
 「ヒルの生態を観察し、自然の仕組みを解き明かす・・・」ポッサム先生と研究会のメンバーが掲げているテーマは、私たち人間は自然を愛し、守り、共に生きていこうとすることの大切さを改めて考えさせてくれた。まだまだ解らないことがたくさんあるけれど、『ヒル』は生きている。そして私たちも生きている。そのかかわりは特殊な形かもしれないが、お互いに求めあっていることは事実であると感じた。より深く知るために。
 
 「気持ちわる~」と言っているあなた、そんなこと言わずにぜひ読んでみてください。子どもヤマビル研究会の活動をぜったい応援したくなるから。