図書館スタッフおすすめ本

謎の絵画が、過去と現在をつなぐ!

『海は地下室に眠る清水 裕貴/著 KADOKAWA (市立成人/913.6/シミ/23)
 
 この小説は、千葉市にある稲毛海岸が舞台となっている。海岸近くの古い洋館から、正体不明の絵画が発見された。その絵は、過去にこの地域で流行っていた「赤いドレスの女」という怪談を思い出させる。学芸員のひかりは、絵について調査を始める。そこで、映像作家の黒砂から、千葉の旧花街にまつわる資料を預かる。その資料では、ひかりの祖母が「流転」の王妃として知られる「嵯峨浩」との戦時中の交流について語っていた。過去に流行った怪談と謎の絵画、そして祖母の過去。欠片をひとつずつ紐解くと、戦時中の混乱の中で、運命に翻弄されて生きた女たちの秘められた過去が明らかに。ミステリアスなストーリー展開で、グイグイと引き込まれます。
 写真家であり、「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞した著者による小説「花盛りの椅子」もあわせて読んでほしいと思う。家具職人見習いの主人公が、震災や台風による被災家具への思いを記した連作短編。

『花盛りの椅子』 清水 裕貴/著 集英社 (市立・
成人/913.6/シミ/22)

心の中に潜む差別

『マイクロアグレッションを吹っ飛ばせ』  渡辺 雅之/著  高文研  (市立・人権同和361.8/21)

  私は少し前まで、見た目が外国人の人に対して「日本語お上手ですね。」ということについて、自然な気持ちを素直に発言していて、別にどこにも問題を感じていなかった。しかしこの本を読んで、そう言われた人が、「自分にとって当たり前なんやけどな。だって日本生まれ日本育ちやもん。外国人と日本人に分けられるのってなんかいややな。」という感情を持ったらどうだろうか。
 本書によると、「マイクロアグレッション」とは日頃から心の中に潜んでいるものであり、口にした本人に”誰かを差別したり、傷つけたりする意図“がある・なしとは関係なく、受け手の心に敵対・中傷・否定などのダメージを与える言動、とのことである。マイクロアグレッションを何度か受けていると、大変なストレスになり、差別や偏見で苦しむようになることは容易に想像がつく。
 私は試されているような感覚で本書を読んだ。自分の中のマイクロアグレッションを一つひとつ退治していくために。

8人が語る「作詞」

『作詞のための8の極意』 ヤマハミュージックメディア/編、いしわたり 淳治/[ほか著] ヤマハミュージックメディア (市立・成人 911.66//14)

 学生時代に授業で作詞をする機会があったのですが、その際に参考にしたのがこの本です。
作詞経験もなく、どうしたら良いか分からなかったのですが、この本を読んで少しだけコツが分かった気がしています。

 この本は、作詞家や作家、歌手、ラッパーなど8人の方々が作詞について語っている本です。
 練習方法や作詞のコツ、作詞のプロセス、作詞家になろうと思ったきっかけ、どんなトレーニングをしたかなど、それぞれ作詞について語っています。

 作詞をしないという方でも、作詞の裏話を語っている方もいるので、「あぁ、この曲の歌詞はこう作られたのだな」といった楽しみ方もできると思います。

 また、8人それぞれが20ページ前後で著者ごとに分かれた章のつくりになっているので、気になる方の部分だけでも読むことができますよ。

 「作詞について少しでも知りたい」と思った方、一度読んでみませんか。

見て、食べて、使って楽しい!

『素晴らしきお菓子缶の世界』 中田ぷう/著 光文社 (市立・成人 675.1//21)

『もっと素晴らしきお菓子缶の世界』 中田ぷう/著 光文社 (市立・成人 675.1//23)

お菓子缶ってこんなにも種類があるんだとびっくり!!
貰っても嬉しいし、贈る時もワクワクしながら選んだり、つい自分の分まで買ってしまったり・・・そんな経験ありませんか?

著者は、47年以上お菓子缶の世界にはまり、所有するお菓子缶の数は1000缶以上という中田ぷうさん。
日本のお菓子缶、日本で買える外国のお菓子缶、美術館・博物館・動物園のお菓子缶、名店のお菓子缶の歴史など、写真とともに詳しい解説が満載で、読んで楽しいお菓子缶の世界がここにあります。
缶の紹介だけでなく、コラムも充実。空き缶再利用アイディアでは、お弁当箱や植木鉢などなるほどと思うような利用法も載っています。食べ終わった後もお菓子缶は大活躍ですね。
そういえば小さい頃、お菓子缶にかわいい消しゴムやお土産でもらったキーホルダーなどを入れて、「たからばこ」と呼んでいたなーと懐かしい思い出もよみがえってきました。

著者によると、第一次お菓子缶ブームが起こったのは2010年頃、2020年頃からは第二次お菓子缶ブームが始まったようです。
色もデザインも形も多種多様なお菓子缶の世界をのぞいてみてはいかがでしょうか。

現代川柳を浴びる

『リバー・ワールド』 川合大祐/著 書肆侃侃房(市立・成人 911.46//21)

まず、書架での立ち姿を見てほしいです。シルバー川柳がずらっと並ぶ横に、どん、とたたずむ真っ赤な背表紙。厚さはまわりの本の倍はあるでしょうか。そこへはみ出さんばかりにタイトルが貼り付いています。『リバー・ワールド』。少年マンガのオノマトペみたいな、ぎざぎざのオーラがほとばしる字。
 一見なんの本だかわかりませんが、分類通り川柳の句集です。しかし中身は、想像とまったく違うと思います。いくつか句を引いてみると、

   トマト屋がトマトを売っている 泣けよ/川合大祐
   花の名をだれも信じてくれない日
   横綱を言葉で言うと桜桃忌

 いわゆる川柳が重んじる「共感」を、煮詰めに煮詰めてできてしまった異形の文字列。このような川柳=現代川柳が、全部で1,001句掲載されています。
 はじめは1句1句に「?」となるかもしれません。でもそのうち、ほどよいレイアウトに運ばれて、飛ばし読みできるようになってきます。それでいい。そうしてめくっていくうち、きっとどこかで急ブレーキがかかります。そのページにある句があなたの、あたらしい感情の回路へ、大量の電流をどっ、と流してくれるはずです。

   恐竜でひらかなかった扉の前に/川合大祐
   わたしにもわたし逃げ去るための橋
   現場にはスーパーボール跳ねており
   「山本リンダ」
   道 彼と呼ばれる長い神経路

 17音にこれだけのことが込められるんだという驚き、そして込められたことからこんなにも世界が広げられるんだという歓びを、どうぞ1,001句分浴びてみてください。そしてもしよかったら、あなたに急ブレーキをかけさせた句、こっそり教えてくださいね。

   死、の文字を、もうすぐあめ、と読み上げた/川合大祐