図書館スタッフおすすめ本

塾の図書室と『ぼくは落ち着きがない』~エッセーコンクール開催中~

『ぼくは落ち着きがない』 長嶋有/著 光文社 (市立・書庫/913.6/ナカ/08)

小学生の頃通っていた塾には、小さな図書室があった。
ロビーの端に並べられた3つの机の後ろに置かれた4つのカラーボックスは、図書室というより図書コーナーというべきかもしれないが、受験生で図書館に行く時間のなかった私のオアシスだった。
 
棚には、当時話題だった村上龍『13歳のハローワーク』や、国語の入試に頻出していた中沢けい『楽隊のうさぎ』、中学生向けだろうシェイクスピア『ヴェニスの商人』、三島由紀夫『金閣寺』が並んでいた。
おそらく受験に役立つようにと、先生方が集めたり、卒業生が寄贈していった本だったのだろう。
 
まだシェイクスピアや『金閣寺』に魅力を感じられなかった私に刺さったのは、長嶋有『ぼくは落ち着きがない』だった。
ライトグリーンの表紙に踊るポップな女子高生と、裏表紙のヘッドホンの後ろ姿。
 
主人公・望美は高校の図書部員である。
やる気のない図書委員に代わって図書館を運営する“図書部”。
図書部の面々は、図書館の中にベニヤ板で区切られて作られた書庫兼部室に集まり、昼休みと放課後には本の貸出返却の業務を行う。図書室便りも作るし、延滞者にトクソク状も送る。
 
図書委員なんてつまんない仕事、と思っていた私は、わざわざ図書部に入って委員の仕事を肩代わりする望美たちに衝撃を受けた。
しかも彼女たちは優等生然としているわけでも、いわゆる文学少女でもないのだ。
筒井康隆も山田詠美も読むけれど、「金田一少年の事件簿」も「デスノート」も部室に置いて回し読みする。
電気グルーヴのCDを貸し借りして、小説家になるために書いた原稿を見せてもらって……
 
本が好きな高校生って、こんな風に友達と仲良くするんだ。
図書館に入り浸って、こんな高校生生活を送ることが出来るんだ。
 
図書室に夢を膨らませた私は、あっという間にこの本の虜になった。
あまりにも繰り返し私が借りていたので、同時期に在籍した友達は棚に並んでいるところをみたことがないかもしれないほどだ。
 
そんな大好きな小説は、急に忘れられない小説になった。
なんと、入試問題に『僕は落ち着きがない』が出題されたのである。
国語の問題に引用されたのは、望美の友達である頼子の弁当箱が大きいと噂され、空手部の男子と弁当箱の大きさ対決をするというシーンだった。
クラスでは少し浮いているという頼子。そんな頼子に、望美が感じている魅力が凝縮された場面なのだ。
 
 
   あんな風に喜怒哀楽の独特に過剰な人は絶対に「浮いてしまう」だろう。
   
   ただもう目の前のアクションに。全力で正直なリアクションを返している。
 
 
ここに引かれていた棒線は、高校の図書室でのいつかの出会いを想起させるのには十分だった。
 
図書室に夢を膨らませて入学した私は、中高の六年間図書委員を他に譲らず、最後には委員長として君臨することになるのだが……、それはまだ、少し先の話である。
 
「読書に関するエッセーコンクール」
2023年のテーマは「図書館が出会わせてくれたもの」です。
これを読んでエッセーを書いてみたいと思った方のご応募をお待ちしています!
是非、あなたと図書館の思い出を教えてくださいね。

市民センター図書室と「アナトゥール星伝」

『金の砂漠王(バーデイア)』 折原みと/著 講談社文庫(市立・児庫/F/オ)

私の家から最も近くにある図書館は、市民センター内にある小さな図書室だった。

広さは四日市市立図書館の児童室くらいしかなく、絵本、児童書、小説、実用書、新聞、雑誌が所狭しと並んでいた。
雑誌コーナーの前に置かれた大きな閲覧机が強烈な存在感を放っていて、そこで本を読むおじさまたちをよく仰ぎ見たものだった。
蔵書数は決して多くなかったが、時々他の市民センター図書室や中央館と本の入れ替えがあり、読みたい本が尽きることはなかった。
 
小学3年生の社会科見学で訪れたのも、この市民センター図書室だった。
貸出券を作り本を借りる、というのがその日の目標だったのだが、持参した私の貸出券は、上限いっぱいまで本を借りていて新たに貸出ができず、代わりに先生に借りてもらったという苦い思い出もある。
 
この市民センター図書室で最も借りた回数が多いのが、『金の砂漠王(バーデイア)』から始まる折原みと「アナトゥール星伝」シリーズである。
図書館で出会った本に誘われ、異世界アナトゥールと日本を行き来する主人公。
異世界で運命の人に出会った彼女は、女子高生の感性のまま一人でも多くの命を救おう奮闘する。
そして、王子の伴侶として生きることを決め、戦争の絶えない異世界のために、少しでも役に立ちそうな応急処置や紛争問題などを日本で学んでいくのだった。
 
砂漠の国の緑化のために選んだ、農学部への進学。
満喫する間もなく振袖のまま転送されてしまった成人式。
異世界に骨を埋める覚悟を、両親と話し合う結婚前夜。
 
どのシーンも、私の中ではとても鮮やかに思い描くことができる。
人生の決断に迫られたとき、私の悩みに寄り添って欲しくて、何度もシリーズを手に取ったからだ。
 
シリーズが完結した6年生の春に。親との関係に悩んだ中学生の夏に。
進路がなかなか決まらず眠れない夜が増えた高校3年生の冬に。
漫才師になるという夢を叶えた友人と再会した成人式の夜に。
ついに大学を卒業する頃には全巻買ってしまった。
人生の節目節目で読み返してきたアナトゥール星伝。次に読み直すのは、いつだろうか。
 
 
 
「読書に関するエッセーコンクール」
2023年のテーマは「図書館が出会わせてくれたもの」です。
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見て、食べて、使って楽しい!

『素晴らしきお菓子缶の世界』 中田ぷう/著 光文社 (市立・成人 675.1//21)

『もっと素晴らしきお菓子缶の世界』 中田ぷう/著 光文社 (市立・成人 675.1//23)

お菓子缶ってこんなにも種類があるんだとびっくり!!
貰っても嬉しいし、贈る時もワクワクしながら選んだり、つい自分の分まで買ってしまったり・・・そんな経験ありませんか?

著者は、47年以上お菓子缶の世界にはまり、所有するお菓子缶の数は1000缶以上という中田ぷうさん。
日本のお菓子缶、日本で買える外国のお菓子缶、美術館・博物館・動物園のお菓子缶、名店のお菓子缶の歴史など、写真とともに詳しい解説が満載で、読んで楽しいお菓子缶の世界がここにあります。
缶の紹介だけでなく、コラムも充実。空き缶再利用アイディアでは、お弁当箱や植木鉢などなるほどと思うような利用法も載っています。食べ終わった後もお菓子缶は大活躍ですね。
そういえば小さい頃、お菓子缶にかわいい消しゴムやお土産でもらったキーホルダーなどを入れて、「たからばこ」と呼んでいたなーと懐かしい思い出もよみがえってきました。

著者によると、第一次お菓子缶ブームが起こったのは2010年頃、2020年頃からは第二次お菓子缶ブームが始まったようです。
色もデザインも形も多種多様なお菓子缶の世界をのぞいてみてはいかがでしょうか。

野菜はけなげに育つのです

『けなげな野菜図鑑』 稲垣 栄洋/監修 ヒダカ ナオト/絵 アマナNATURE&SCIENC/編 エクスナレッジ (市立・成人 626//22)

 我が家の庭に、ようやくトマトが実りました。
 昨年はうまく育たなかった為、今年こそはと、土を変え、肥料を与え、大切に育てた甲斐がありました。
 けなげに育つ野菜はかわいいもの。
 そんな私が紹介したい本は『けなげな野菜図鑑』です。
 「トマトは実は赤すぎて観賞用だった」というような、聞いた事がある様なお話から、「ゴボウは日本以外ではただの雑草」「緑色のキュウリは世をしのぶ仮の姿」という仰天するような内容もあります。
 その他にも、野菜の栄養素や冷蔵庫で保存するかしないか等のタメになるお話も。
 野菜が嫌いな人も、きっとこの本を読めば好きになるかもしれませんね。

全国の地元パン食べてみませんか。

『日本全国地元パン』 甲斐みのり/著 (市立・成人 596.6//23)

 地元パンとは、その土地土地で長年製造・販売され、親しまれているパンのことです。名称・味・パッケージデザイン等に独特の味わいのあるものが多く、時には地域の土地柄や歴史すら垣間見せてくれるものもあるそうです。この本では北は北海道から南は沖縄まで、著者が情熱をもって蒐集してきた地元パンとその販売店が紹介されています。
 昔ながらのパン店らしく、ユーモラスでどこかほっとする名称やデザインのパンが目白押しです。レトロなものが好きな方には見ているだけで楽しいかもしれません。そして何よりとても美味しそう。今すぐこのパンたちにかぶりつきたくなって、時間でなくてもお腹が空いてきます。
 可愛いもの好き、レトロ好き、パン好きの方には必見の一冊です。
 ちなみに、四日市のパン店も2軒ほど出ていますよ。