図書館スタッフおすすめ本
私にとっての1つの色は2つも3つも名前を持っていた
『色弱が世界を変える カラーユニバーサルデザイン最前線』 伊賀公一/著 太田出版 (市立・書庫 496.4//11)
人の網膜は赤・青・緑の3色を見分けることができ、3色の組み合わせで他の色を作っている。
色弱はその3色のうち1色または2色が見分けにくく、著者である伊賀さんは赤色が見分けにくい。
本書では生まれつき色弱者である著者が、自身が見えている世界や半生を振りかえり紹介している。
「私にとっての1つの色は2つも3つも名前を持っていた」という言葉が印象的で、巻頭ページでそれぞれの見え方を表す色シミュレータで視覚化されてはじめてピンときた。確かに見えない。
また、著者は、どんな色の感じ方をしている人にもわかりやすい色使いをするよう勧める仕事をしている団体であるNPO法人カラーユニバーサルデザイン機構CUDOの理事長(当時)である。
講演会等に呼ばれることもあり、体験するほうが言葉で説明するより伝わると、著者は色覚の体験ツールをトランクに入れ持ち歩く。
人気があるのはバリアントールと呼ばれるゴーグル型色弱模擬フィルターで、簡単に色弱者と同じ色の世界を見ることができる。
かけた人からは「こんなに色の見分けができないとは思わなかった」「なんて不便なの」と驚きの声があがるという。
巻頭で「よく見て比べてね」「こう見える理由」「ふだんを困ること」「知って貰うために」を通してあらかじめ知ることが出来るので知識がなくとも読めて優しい。
本文のおすすめは舞台照明のバイトのエピソード。色の見分け方に驚き、そんな失敗があったのかと楽しく読めた。
戦後改革期 女性国会議員の10年
『福田昌子とその時代』 佐藤 瑞枝/著 ドメス出版 (市立・人権同和 312.1//22)
1947年 日本国憲法発布後、初の衆議院議員総選挙で国会議員となった福田昌子氏。
その10年間の間、常に彼女は女性の健康、女性の基本的人権を守るため、また女性の地位向上を目指し、政治活動を行い、国会では積極的に発言しました。
「優生保護法」の審議の際には、人口対策として人口の増加を抑制する必要があるという風潮の中、「産む性」の立場で、貧困や食糧不足の中で子どもを産むことへの苦しみ、自分の意思や健康に反して産むことを強制されることへの反発、産むことについて人格と人生が尊重され、主体的に選択でできる(リプロダクティブヘルス&ライツ)ことを訴えました。そしてある程度の人工妊娠中絶を認めるべきであると述べたのです。
「売春防止法」に対しては、売春も買春も処罰の対象とするべきと訴えたましたが、買春した男性は処罰の対象にはならず(米兵の存在もあったので)、「売春婦のみ、犯罪者であるという社会の見方を形成した」とし、大いに意見しました。売春という現実が女性の地位を低めるものであるという考えが、彼女の女性の基本的人権の擁護のエネルギーとなりました。
「看護制度」に向けての「保健婦助産婦看護婦法」に関しては、自身も産婦人科医である福田氏は、当時の看護職の社会的地位は低く医者の補助や病人の世話をする女性職業であるという当時の現実に対して意見しました。そして法案に対し「看護職の質を高めるために、高い教育課程を実施するより、まず待遇を大幅に引き上げるべきだ。」と主張しました。
この本を読むと、福田昌子氏が、女性解放に向けての重要な役割を果たしてくれたことは間違いないと思いました。出し惜しみしてここまで書いたが、それでもただ一点、納得がいかないことがあります。
福田昌子氏は「優生保護法」に対しては母性保護の立場からの発言も行いましたが、所謂「優生思想」の最たる考えである「不良分子の出生を防止する」という思いを強固に持ち合わせていたと書かれていたのです。
命の選別をしてはいけないと思います。女性の生命や性を大切に思い、その施策にかかわってきた福田昌子さん、時代背景はあるとはいえ、あなたはなぜ生まれてくる、生まれる可能性のある命を摘むべきだと思ったのでしょうか。
命の重さはみんな同じだが、それぞれがどのような境遇であっても幸せに生きていくために、政治家ならば、様々な施策を打つべきではないのか。実際、その後はそうした活動をされてきたではないか。今でもそう思ってみえるのか。福田昌子さん、私はあなたと会って、話してみたい。たとえ私の言っていることがきれいごとと言われようと、あなたの本心を、あなたの声で聴いてみたい。
・「読書の秋のおともにエッセー!~エッセーコンクール開催中~」(市立図書館ホームページの別ページが開きます)
命の重さはみんな同じだが、それぞれがどのような境遇であっても幸せに生きていくために、政治家ならば、様々な施策を打つべきではないのか。実際、その後はそうした活動をされてきたではないか。今でもそう思ってみえるのか。福田昌子さん、私はあなたと会って、話してみたい。たとえ私の言っていることがきれいごとと言われようと、あなたの本心を、あなたの声で聴いてみたい。
福田昌子の生きざまをどう感じますか?福田氏はそうでも、私はこう生きたいと思った方、今度は「読書に関するエッセーコンクール」に挑戦してみませんか?
2022年のテーマは「あの本のこの人に会いたい!」です。
これを読んでエッセーを書いてみたいと思った方、「読書に関するエッセーコンクール」へのご応募をお待ちしています!
詳しくは以下のページをご覧ください。
・「読書の秋のおともにエッセー!~エッセーコンクール開催中~」(市立図書館ホームページの別ページが開きます)
日本刀ってすごい
『ヤバすぎる日本刀伝説』 小和田 哲男/監修 宝島社 (市立・成人 756.6//21)
日本刀は、歴史の中で起きた事件、偉人に実際に関わっていた物、なんですよね。
その実物が今も残っているってすごいことだな、と最近になって思うようになり手に取ったこの1冊。
日本刀には人間だけではなく、鬼や妖怪、幽霊を切ったとされる刀もたくさんある。
そんな刀の歴史や逸話が沢山詰め込まれたこの本。
イラスト付きで短くまとめてもらってあるので、気軽に読めて、かつ現存する刀は所蔵も書かれているので、気になる刀の実物を見に行くこともできる、かも。
日本刀の種類や各部の名称、歴史、刀にまつわる儀式等も紹介してもらってあるので、気軽に日本刀について知ることができる本だと思います。
コレも読書に関するエッセー!?~「エッセーコンクール」募集中~
本を読み終わった後、すぐに誰かの感想を聴きたい!ということ、ありませんか?
SNSや読書感想サイトで検索しても、なかなか思うように見つからない……
そんな時にすぐ読める読書に関するエッセーがあるんです!
それは、文庫本の解説。
文庫本の巻末に著者ではない人の解説が載っていることも多いですよね。
ただ「堅苦しそう……」と読み飛ばしてしまっている方、とっても勿体ないです!
文庫本の解説は、その本に関する読書エッセーと言っても過言ではないほど、たくさん愛の詰まった解説が載っていることも多いんですよ。
そんな文庫解説をたくさん紹介している本もあります。
斎藤美奈子/著『文庫解説ワンダーランド』(岩波書店 (市立・成人 019//17)) では、文庫解説を4パターンに分類して紹介しています。
夏目漱石『坊ちゃん』や太宰治『伊豆の踊子』といった名作と、村上龍『限りなく透明に近いブルー』のような現代文学ではどんな人たちが作品への愛を語っているのでしょうか?
是非みなさんも、文庫解説を読んで1冊の本を何度も楽しんでみませんか?
ただし、あとがきや解説のない小説の場合、いきなりクライマックスを開いてしまうこともありますので本文を読み終わった後にチェックするなど、ネタバレには十分ご注意ください。
文庫解説に触れてみて、自分でも本への愛を語りたいと思った方、今度は「読書に関するエッセーコンクール」に挑戦してみませんか?
2022年のテーマは「あの本のこの人に会いたい!」です。
これを読んでエッセーを書いてみたいと思った方、「読書に関するエッセーコンクール」へのご応募をお待ちしています!
詳しくは以下のページをご覧ください。
- 「令和4年度読書に関するエッセーコンクール作品募集中」(市立図書館ホームページの別ページが開きます)
インベカヲリ★に会いたい! ~あの本のこの人に会いたい!<著者編>~
インベカヲリ★に会いたい。
『週刊読書人』(市立図書館で閲覧できます)で連載していた「なぜ名前にホシがあるのか?」には、インベカヲリ★によるコラムが連載されていた。
そこには、写真家である彼女が撮影した写真が添えられていた。
新聞紙のせいか、すこしざらついた印象のある写真はいつも目を惹くもので、一体誰が被写体に名乗り出るのか不思議だった。
そんな被写体である女性たちに強烈な共感を覚えたのは、『私の顔は誰も知らない』を読み終わった時であった。
そして猛烈に彼女に写真を撮ってもらいたくなったのだ。
インベカヲリ★は写真を撮る前に、被写体を務めるモデルから時間をかけて話を聞くという。
「写真を撮られるという行為は、被写体にとっても自己表現」であり、「自己表現とは「話したいことがある」とイコールだ」(『家族不適応殺』より)と彼女が語るように、私も彼女に話したいことがある。
『私の顔は誰も知らない』の中で繰り返し語られる「普通を演じる」「擬態する」こと。
もしかしたら、私が抱いている違和感は、この「擬態」という言葉に隠されているのかもしれない。
「場を盛り上げるパフォーマー」に「擬態」して生きるのは、楽しい。周囲と同じに「擬態」するうちに、化粧していない自分の顔を自分ではないと感じるようになり、加工アプリで撮影していない自分の写真を自分ではないと感じるようになった。
「擬態」しない自分をインベカヲリ★に引き出してほしい。
そしてそんな自分を写真に残してほしい。
彼女にファインダーに映る私は、一体どんな顔をしているのだろう。
2022年のテーマは「あの本のこの人に会いたい!」です。
これを読んでエッセーを書いてみたいと思った方、「読書に関するエッセーコンクール」へのご応募をお待ちしています!