図書館スタッフおすすめ本

元気で長生きの決め手は…

『爺(じじい)の暇つぶし もてあます暇をもてあそぶ極意、教えます』 吉川 潮/著、島 敏光/著 ワニブックス (市立・成人 367.7) 

 元気で長生きの決め手は、「きょういく」と「きょうよう」。なるほど、「教育と教養」は、昔から大切と言われているからなぁ…。と思っていたら、なんと「今日、行くところがあって、今日、やるべき用がある人」は、健康で生き生きと生きられるとのこと。この本は、老後の楽しい余暇の過ごし方を教えてくれる一冊となっています。

 図書館には、健康長寿のヒントや充実ライフのポイントなど、“お宝”がいっぱいです。そして、暇つぶしにはもってこいの場所。そんなわけで、皆さんぜひ図書館に足を運んでみてください。


 

人間とはどのような生き物であったか

『ゴリラからの警告』 山極 寿一/著 毎日新聞出版 (市立・成人 914.6/ヤマ/18)

 「ゴリラの国に留学して来た」というゴリラ研究の世界的権威が、現在の人間社会に発する警告の書です。

 
 現在、社会のあちこちで噴出している問題・・・生活習慣病、アレルギー、自閉症、家庭内暴力、いじめ、ヘイトスピーチ等々・・・。皆さんは、この原因は何だとお考えになりますか?筆者は作中において、「こういったトラブルは、人間が備えている特徴の由来や本質を誤解することから生じる」と主張しています。著者の言う人間の特徴とは、祖先を同じくするサルやゴリラと比較して、人間に固有または顕著な性質や行動のことです。そしてそれは、人間が人間として進化していく過程で、様々な必要性から獲得してきたものなのです。著者はその一つ一つについて、なぜそれが人間にとって必要だったのか、その特徴を獲得したことで、人間の心身や社会がどのように発達してきたのかを、長年の研究に基づいて解り易く解説します。読み進めてゆくと、今現在私たちが生きているこの社会のあり方が、様々な点で人間という生物種の“つくり”に合っていないのではないかと考えられてきます。自分に合わない環境で生きていれば多大なストレスがかかりますし、そうなれば社会が荒れるのも当たり前でしょう。著者は、研究のため自ら一頭のゴリラとなってゴリラの群れに交わり、彼らを観察してきました。その結果、生物種という境界の外側から人間を観察する機会に恵まれました。その観察眼と評価は客観的で的確です。

 
 誰しも、己の本当の姿は判らぬもの。一度人間以外の目から人間の姿を見直し、さらに自分たちの生きる社会を見直してみてはいかがでしょうか。今ある苦しみや生きづらさの原因が判るかも知れませんし、原因が判れば解決の手段も見つかるかも知れません。

 

もしも図書館で事件が起きたら?

『図書館の殺人』 青崎 有吾/著 東京創元社 (市立・成人 913.6/アオ/16)


 私は小さいころから推理小説を読むのが好きです。本格ミステリと呼ばれるものから日常の小さな謎を解き明かすようなものまで、国内海外問わずいろいろと読んできました。
 
 その中でも図書館で働いている職員として、この本はタイトルのインパクトが抜群でした。閉館後の図書館で発生した殺人事件を、なぜか高校の校内に住んでいる高校生探偵・裏染天馬が解決する物語です。文章が読みやすく軽快で、くすりと笑える場面もたくさんあります。事件に使われたトリックも、論理的にじっくり考えれば解ける内容になっています。しかし事件の結末は切なく、読み終わったあとは必ずしも「事件が無事解決してよかった」とは感じられないかもしれません。青崎さんの作品はこのほかにも何冊か読んだことがありますが、このように“完全なハッピーエンド”で終わらない雰囲気が魅力だと感じました。

 魅力的なキャラクターが登場する小説が読みたい方、本格ミステリを手軽に読んでみたい方、論理的な謎解きに挑戦してみたい方は、ぜひ一度手にとってみてください。

「美術と文学の共演」100年前にタイムスリップ!

『片隅の美術と文学の話』 酒井 忠康/著 求龍堂 (市立・成人 702.1//17) 

 
 この本は、文学と美術をめぐるエッセイ集です。今年2019年は、関根正二と村山塊多という二人の画家が、若い生涯を終えて百年にあたります。そして、百年前の1919年は、盲目の詩人エロシェンコが再び日本を訪れた年でもあります。
 
 芥川龍之介、岡倉天心、鏑木清方、川端康成、古賀春江、志賀直哉、澁澤龍彦、高村光太郎、竹久夢二、谷崎潤一郎、夏目漱石、西脇順三郎、萩原朔太郎…。世田谷美術館の現館長である著者の美的センスと学芸員としての経験によって綴られたエッセイからは、一筋縄ではいかない強烈な個性の近代日本を代表する文豪や詩人、画家たちの生き様と、当時の厳しい時代背景が目に浮かんできます。美術と文学が、たがいに照応し想像の刺激を共有しながら、時代の文化・藝術の思潮とも相互に関連をもって、じつに興味深い展開を示しています。

 文豪や詩人、画家たちの精神が映し出されたサイドストーリーは、文学好き、アート好きどちらにも本を手にする喜び、絵を観る喜びに誘ってくれるものになっています。



 

この絵はどんな人が描いている?

『近代美術の巨匠たち』 高階 秀爾/著 青土社 (市立・書庫 723.0)

 皆さんは芸術家とはどのような人たちだと思いますか?気難しくて、頑固者、いつも一人孤独に作品の制作に打ち込んでいる。そのようなイメージを持つ方が多いのではないでしょうか?
 
 本書では、19世紀半ばから20世紀前半にかけて活躍した近代を代表する13人の画家が取り上げられています。日本における西洋美術研究の第一人者である筆者は、画家の性格や芸術上の特徴を象徴するエピソードを盛り込み、13人それぞれの強烈な個性、芸術家としての自意識の強さを伝えています。一方で筆者は、ゴッホやゴーギャン、アンリ・ルソーといった著名な画家についての一般的なイメージとは異なるエピソード、あるいは広く知られていない事実を取り上げることで、従来の通説とは異なる芸術家の実像を描き出しています。私は、現在広く知られている芸術家のイメージには創作、あるいは誇張されたものが多く含まれているのではと考えずにはいられませんでした。

 有名な《睡蓮》や《ひまわり》を描いた画家がどんな人物であったのかという好奇心から、私は本書を読み始めました。そして、それまで興味がなかった画家についても、人となりを知ることで親近感を覚えるようになり、作品を意識して見るようになりました。絵画に興味があるけど難しそう、とっつきにくいと思う人にこそ、多くの画家や作品と出会うきっかけとしておすすめしたい一冊です。