あたらしいこどもの本

【児童室でおもうこと】不自由な今だからこそ

 休館中、わたしが気になっているのは、10代の子たちがどのように過ごしているのか、ということ。

  「ティーンエイジャー」という言葉を知っていますか?「10代の若者」という意味です。
とくべつな言い方をするのは、その数年間がかけがえのない時間だからだと思います。
それなのに、部活ができない、友だちともあそべない…など、たくさんのイライラがつもることでしょう。

 そんな「ティーンエイジャー」に、もちろんそうでない人にも、少しでも気分が上がるような本を
紹介したいと思います!


①ファンタジーでいやな現実とおさらば! 『チャーリー・ボーンは真夜中に』
 ある日とつぜん、ふしぎな力を手に入れたら…。一度は考えたこと、ありますよね?
 主人公のチャーリーは、ふしぎな力をもつ子どもがあつまる学校に入ります。
 そこでおこる事件とは…!?

②恋バナ大好き!なあなたへ 『ラブ・レッスンズ』
 だれが好き、とかが気になるお年ごろのみなさん。
 ジャクリーン・ウィルソンの本は、女の子のリアルな恋愛もようがかかれています。
 イマドキの恋愛小説とは少しちがうかもしれませんが、しっかりしたお話を読みたい人におすすめです。

③さらっと爽快ミステリー 『IQ探偵ムー』シリーズ
 元(げん)のクラスにひっこしてきた夢羽(むう)は、美少女だけどふしぎな女の子。
 とても頭がよくて、どんななぞもすぐに解決!ミステリー入門のようなシリーズです。

④有名作家さんが気になったら 『ステップファザー・ステップ』
 双子の男の子(両親が家出中!)と、どろぼうの一つ屋根の下、へんてこ生活が始まります。
 宮部みゆきさんは大人向けの本を書いていますが、心配はいりません。
 気に入ったら、『ブレイブ・ストーリー』や『ドリームバスター』も読んでみて!

⑤だれにでも悩みはあります 『拝啓パンクスノットデッドさま』
 まず目を引くのが表紙のショッキングピンク。楽しいバンドのお話なのかな、
 と思ったら「パンク」とヘビーな「家庭事情」。
 悩める10代にはとても身近に感じられるのではないでしょうか。
 読んだ後はスッキリしているはず!




 いかがでしたか?おうち時間に本を読みたいと思っている人、図書館が開いたら借りに来たいと思っている人
など、たくさんの人の「読みたい!」につながりますように。(し)



『チャーリー・ボーンは真夜中に』  ジェニー・ニモ/作(933ニ)  徳間書店
『ラブ・レッスンズ』  ジャクリーン・ウィルソン/作(933ウ)  理論社
『IQ探偵ムー』シリーズ  深沢美潮/作(Fフ文庫)  ポプラ社
『ステップファザー・ステップ』(青い鳥文庫)  宮部みゆき/作(Fミ児庫)  講談社
『ブレイブ・ストーリー』  宮部みゆき/作(Fミ児庫)  角川文庫
『ドリームバスター』  宮部みゆき/作(913.6ミヤ成人書庫)  徳間書店
『拝啓パンクスノットデッドさま』  石川宏千花/作(Fイ)  くもん出版

【児童室でおもうこと】子どもとおとな、いっしょに読む

 平成のはじめのころまで、電車に乗るときはキップという小さな紙を買う必要がありました。
そして、そのキップを駅員さんに、はさみでパチンと切ってもらってから駅の中へ入って
電車に乗り、駅を出るときはそのキップを駅員さんに渡します。
ですから、キップをなくすと駅から出られなくなります。『キップをなくして』は、そんな時代の物語です。


 キップをなくした子どもたちは「駅の子」になり、電車に乗って通学する普通の子どもたちを守る仕事につきます。
主人公のイタルもキップをなくして駅から出られなくなり、同じように「駅の子」となった8歳から14歳くらいの
子どもたちとともに、東京駅で生活していくことになりました。
「駅の子」となった子どもたちは家には帰れず、駅員さんと一緒に寝泊まりし、食事をします。
電車は乗り放題。そして仕事さえ終えれば、自由な時間が与えられます。


 いろいろな個性の子どもたちが登場するのですが、ある日、食事をしない小さな女の子“ミンちゃん”が
「わたし、死んだ子なの」と話しました。ここから、この物語は新たな展開を迎えていくことになります。


 著者の池澤夏樹は、理系の大学で物理学を専攻した小説家です。

多分そのために、彼の作品の多くは独特の科学的な視点で描かれています。
人は死んだらどうなるかということについては、あまり科学的ではないかもしれませんが、
作品の中で何人かが語る死後の世界は、自分の家族やペット、身近な人を亡くした人にとっては、
大きな安らぎを与えてくれます。宇宙全体まで範囲を広げる語りに、ぐんぐん引き込まれます。


 この物語の終盤では、「駅の子」が過ごす魅力いっぱいの夏休みの旅も描かれます。
夏が終わった今の時期の小学生や中学生、かつて子どもだった人にとっては、かなり心に響く一冊です。(西)


『キップをなくして』 池澤夏樹/著(Fイ) 角川書店


 

【児童室でおもうこと】育児中のみなさんへ

 この一年半、おうち時間が増え、お子さんへの読み聞かせの時間が増えたという方も
いらっしゃるのではないでしょうか?

 育児中には、私も毎晩絵本の読み聞かせをしていましたが、自分自身が
読み聞かせによって救われたと感じたことが何度もありました。

 
 地元を離れ、初めての土地で初めての子育てをしていた私は、早くその土地になじもうと
方言を封印したせいか、ストレスがたまる一方。子どもは、毎日毎日同じ本を持ってきては
「読んで!」という時期。(あるあるですよね。)「またこれか…」と少々嫌気がさしてきた私は、
「それじゃあ、いっそのこと」と、あろうことか文章を全部故郷の方言に換えて読み聞かせしたのです。
 すると、字はまだ読めなくても毎日聞いていてストーリーを覚えている子どもは
「そんなこと、どこにも書いていない!」と言いながらも、私が意気揚々と読むからでしょうか、
大笑い!大喜び!
 二人して笑い転げながら、読み終えたときには心がすっきり解放されていたのを覚えています。

 またある夜は、子どもをしかりつけた後のこと。
 しかられたのに、子どもはいつものルーティンで本を持ってくるのです。
 私は怒った気持ちのままページをめくりました。ところが、そんな波打った気持ちのままでは
ぜんぜん絵本が読めないのです。
 なんとか気を取り直して読み始めると、今度はあっという間に気持ちは本の中へ。
読み終わった頃には、心も子どもとの関係も元通り。本当に、本に助けられたと思いました。


 そんなこんながいろいろあり、子どものためと思っていた読み聞かせが、
実は自分自身のためでもあったのだと、今、つくづく思い返します。

 小さいお子さんがいらっしゃるみなさん!
 お子さんの好きな本でも、ご自身の好きな本でも、図書館で見つけた本でも
(開館まではもうしばらくお待ちを)おうち時間にぜひぜひ絵本を活用してみてくださいね。


 ちなみに当時子どもがはまり、私たち親子を笑わせることとなった絵本は
『しんせつなともだち』です。くりかえしの心やさしいおはなしで、どこにも笑いの要素はありません。
叱った後に読んだ絵本は…『まゆとりゅう』だったような気がします。(ま)

『しんせつなともだち』方軼羣/作(Pムとも) 福音館書店
『まゆとりゅう』富安陽子/作(Pトとも)福音館書店 

【児童室でおもうこと】本の思い出、母に聞いてみた!

 図書館ではたらいている私が本に親しむきっかけを作ってくれたのは、母です。
 『ムギと王さま』(エリナー・ファージョン/作)のさし絵の中で、少女(?)が
  本に囲まれている姿が自分のような気がした、と母からよく聞かされました。
  母がどうしてそんなに本が好きだったのか知りたくて、インタビューしてみました!


Q.1 どうしてそんなに本を読んでいたの?

 一人っ子で、両親がはたらいていたので、一人ですごすことが多く、本が友達でした。
 あまり本を買ってもらえなかったので、小学生の頃から、朝、図書室で借りて、
 下校までに読み終わって、また新しい本を借りて帰っていました。


Q.2 どんな本を特に覚えていますか?

  『岩波少年少女名作全集』という全集で海外の作品にふれて、世界が広がったような気がしました。
 その中では、『シェイクスピア物語』とか『ジェーン・アダムスの生涯』という伝記や
 『ツバメ号の伝書バト』などが心に残っています。『ムギと王さま』もこのシリーズでした。


Q.3 さびしかったり、落ち込んだ時に、心の支えになった本はありますか?

  『あらしの前』『あらしのあと』『銀のスケート』の3作品です。
  『あらしの前』という作品は、オランダを舞台にした家族の物語です。
   あらしとは、第二次世界大戦のことで、ドイツ軍が攻めてくるまでの楽しい家族の日々が書かれています。
 
  続編の『あらしのあと』は、『あらしの前』から6年後、終戦後1年たち、
  戦争がどう人を変えてしまったのかを描いています。つらい毎日を送った
  子どもたちが悲しみを乗り越えようと、とまどいながらも前に進み始めていく物語です。
 『銀のスケート』は、貧しい兄妹が、記憶をなくしたお父さんを助け、はげまし合って生きていくお話です。

 
 どの作品も、ハラハラドキドキするようなぼうけんのお話ではないけれど、
 読むと、なぜか心が落ち着くところがいいと思います。
 つらいことを家族が助け合って、乗り越えていくお話はいいですね。

 
今回、母にインタビューをしてみて、親子で本について語り合うことの楽しさに改めて気づきました。
 みなさんのおうちでもぜひ、家族で話してみてはいかがですか?(か)

 

『岩波少年少女名作全集』(908)岩波書店 1961年~1962年刊
※新しい版で読めます。『シェイクスピア物語』(93)岩波書店
           『ツバメ号の伝書バト上・下』(933ラン)岩波書店
           『ムギと王さま』(933フ)岩波書店


『あらしの前』『あらしのあと』ドラ・ド・ヨング/作(933ヨ)岩波書店
『ハンス・ブリンカー 銀のスケート 上・下巻』メリー・メイプス・ドッジ/作 (93)岩波書店



 

【休校中のみんなへ】読書=想像力

 
 いま、学校の友達と遊べない、楽しみにしていた行事がなくなった、
なぜ自分たちだけこんな目にあうのか、など、さびしさ、不安、不満に
思っている人も多いことと思います。
ここは気分を切りかえて、休校中の間にいろんな本と出会ってみませんか?


 私は、小さいころ、家族がいそがしかったので、読みきかせをしてもらった
おぼえがあまりありません。でも、本を読むのが好きだったので、『ぐるんぱのようちえん』や
『三びきのやぎのがらがらどん』などの絵本を、一人でよく読んでいました。
小学校に入ってからも、多くの時間を図書室の中ですごしました。


 ある時から、特に、戦争や平和について書いてある本に興味がわくようになりました。
きっかけの一つが、小学校3年生の教科書にのっていた『ちいちゃんのかげおくり』です。
「戦争」「死」に初めてふれた作品で、心にとても残っています。


 それからは、『はだしのゲン』や『白い町ヒロシマ』など、戦争中の日本の子どもたちの
様子が書かれている作品のほか、『テレジンの小さな画家たち』などの、第二次世界大戦中の
他の国の子どもたちを書いた作品なども読むようになりました。


 大人になって読んだ本の中では、日本・中国・韓国の絵本作家たちが、国を超え、
交流を重ねながら、平和と戦争について、命について、さまざまな視点からえがいた
「日・中・韓 平和絵本」シリーズが心に残っています。
 おたがいの悪いことばかりを見て争うのではなく、みんなが手を取り合って仲良くして
いくためにはどうしたらいいのか。絵本を通して考えてみてほしいと思います。


9/3の新聞記事に、池上彰さんのこんな言葉が載っていました。「一番大切なのは、想像力」。

本を読むことは、想像力を育てます。本を通して、国や世代に関係なく、おおぜいの人たちが、
悲しみやつらさ、さびしさを乗りこえて生きてきたことを、知り、感じてもらえたらうれしいです。
そして、図書館が再開したとき、すてきな笑顔のみなさんと出会えることを楽しみにしています。(か)
 
『ぐるんぱのようちえん』 西内ミナミ/文 堀内誠一/絵(Pホとも) 福音館書店
『三びきのやぎのがらがらどん』 マーシャ・ブラウン/文・絵(Pフ)福音館書店
『ちいちゃんのかげおくり』 あまんきみこ/文 上野紀子/絵(Pウ)あかね書房
『はだしのゲン』 中沢啓治/作(726まんが)汐文社 全10巻
『白い町ヒロシマ』 木村靖子/作(Fキ) 金の星社
『テレジンの小さな画家たち』 野村路子/著(916) 偕成社
『日・中・韓平和絵本』シリーズ 童心社 全10巻