図書館スタッフおすすめ本

打ってみたいな返り点

『これならわかる返り点』 古田島 洋介/著 新典社 (市立・成人811.2/ /09)

 この本は、「漢文すなわち古典中国語の語順をおおむね日本語の語順に変換するための符号」である返り点の使用法について、その全体像を示してくれる一冊です。

 “返り点は簡略に”という心構えや、レ点(れてん)、一二点(いちにてん)の機能と用法に関する解説を、ふんふんナルホドと読み終えた後にはおそらく、返り点を打ちたくなっていることでしょう。

 続編に、『これならわかる漢文の送り仮名』 古田島洋介/著 新典社(市立・成人811.2/ /12) があります。これもまたおもしろい。 

『絵の言葉』―「絵」を「読む」ということ

『絵の言葉』 小松 左京、高階 秀爾/著  講談社 (市立・書庫 B720.4/ /)

 SF小説作家・小松左京と美術史家・高階秀爾による対談集です。
人間社会にとって「絵」とは何であったか、何でありうるかという大きな問題を追求していながら、対談であるため読みやすい文章です。

 絵には、言葉と同じくそれ自体に意味があるという話からはじまり、その意味を読むための文法と語彙があるのか、絵と自然はどのように関わるのかという話題に展開していきます。

 ゴッホの糸杉やキリスト教教会の宗教画、ラスコーの洞窟壁画など、過去に描かれてきた作品例のほか、絵にまつわる古今東西の文化や歴史などについても次々と具体例が飛び交います。こうした両氏の多種多様な話もこの本の魅力です。

 額縁に飾られるものなりイラストレーションなり、「絵」はただ見るだけでも楽しめるものですが、描かれた意味や背景を知れば知るほど、より深く楽しめることを教えてくれます。

 絵の見かたが一変されるような本です。

これであなたも三重県通

 来年のサミット(主要国首脳会議)、そして平成33年の国民体育大会が三重県で開催されることになりました。三重県には日本に、いや世界に誇れるものがたくさんありますが、全国的にみて三重県についての認識度はそう高くはありません。また、三重県に住んでいても、その地域の良さや魅力、歴史や特性などについて知らない人も案外多いのではないでしょうか。

 「美し国(うましくに) 三重」を全国に発信し、地域への愛着心をさらに高めるためにも、今一度、三重県のことについて学んでみませんか。

 二階・地域資料室にある『三重あるある』、『三重のおきて』、『三重の法則』は三重県のことについておもしろく紹介しており、気軽に読める本です。

 また、ヒストリー、ミステリーものがお好きな方は、『三重県謎解き散歩』、『三重「地理・地名・地図」の謎』、『これでいいのか三重県 ―秘境で生まれた三重のミステリー』もご覧ください。「へー、そうだったのか」と思うことがいっぱい出てきますょ。

『三重あるある』 金木 有香/著 TOブックス (市立・成人 361.4/ /14)
『三重のおきて』 三重県地位向上委員会/編 泰文堂 (市立・地域 L290/ /15)
『三重の法則』 三重の法則研究委員会/編 泰文堂 (市立・地域 L290/ /15)
『三重県謎解き散歩』 矢野 憲一、五十鈴塾/編 (市立・成人 B291.5/ /13)または(市立・地域
                                                         L290/ /13)
『三重「地理・地名・地図」の謎』 岡田 登/監 実業乃日本社 (市立・地域 L290/ /15)
『これでいいのか三重県-秘境で生まれた三重のミステリー』 昼間 たかし/編 マイクロマガジン社 
                                                 (市立・地域 L290/ /14)

余裕のある生活は部屋の整理から!

『いつも余裕のある人が実践している男の部屋の整理』
小松 易/著 石川 ともこ/イラスト メディアファクトリー (市立・成人597.5/ /13)

生活に余裕をつくるには、仕事のデスク周りの片づけだけでは十分とはいえません。

この本は、片づけの専門家がたくさんの人に指導してきた経験をもとに部屋や持ち物など、日常で使っているものを整理し、必要なものが必要な時に準備できる生活を実践するための必読本といえるかもしれません。

部屋がちらかってしまう原因をチェックしそれを改善することからはじめていき、物の整理を習慣化すれば、あなたも時間や気持ちに余裕ができるかもしれません。

小学2年生の国語の教科書に泣けた

『きいろいばけつ』 森山 京(みやこ)/著 あかね書房 (市立・児童 F/モ /05)

小学2年生の国語の教科書に掲載されている物語です。

 森で黄色いばけつを見つけた、きつね君。
 一目でとっても気に入って、このばけつを森でうっとり眺めたり、このばけつで自分の庭の木に水をあげる姿を想像したり、ばけつに自分の名前を書くまねをしたりします。

 でも誰のものだか分からないので、持ち主が現れるまで、1週間待ちます。
 1週間待っている間の、きつね君の仕草がたまらない。
 大切に、大切に、ばけつを見守っているのです。

 でも、ばけつがやっと自分のものになる前の晩、ばけつは強い風に吹き飛ばされて、遠くへ飛んで行ってしまいます。
 この場面は、夢かうつつか、どちらでも取れる表現がしてあります。

 この後のきつね君のセリフ。
 「(どっちでも いい)と、きつねの こは、おもいました。」

 長女の教科書でここまで読んだ時、私はボロボロ泣きました。
 これを書いている今でも、泣けてきます。

 きつね君は、「どうでもいいや」と思ったわけでは決してありません。
 毎日、毎日、森へ通って、慈しむように眺めていた、ばけつなのです。
 どうでもいいわけは、ないのです。
 ぐっと我慢して、彼なりに今までの思いを昇華させたのです。
 あんたは、えらいなあ!と、きつね君を抱きしめたくなります。

 心躍らせながら、大事に大事に育てた「もの」や「こころ」が、最後の最後の段階で、自分の手の届かない所へ行ってしまう。
 すべてを失ったかのような、喪失感。
 それでも立ち上がって、ふたたび歩き始める。

 そんな経験は、子どもたちより大人の方が沢山しているから、大人がこの物語に心を揺さぶられるのですね。
 あなたも、小学2年生の国語の教科書で、泣いてください。

いつか動き出す日が来る!?

『巨大仏!!』 中野 俊成/著 河出書房新社 (市立・成人 748/ /10)

 巨大仏の写真集です。
巨大仏ファンは、巨大仏に対し違和感を覚え恐怖を感じ怖いもの見たさでハマっていくそうです。この一冊でその魅力を堪能できます。

 全国に数ある巨大仏に見えかくれする当時のバブル臭や宗教的背景の薄さからか、ポツンと佇む巨大仏さん達の背中は 憂いを帯びている様にも見えます。
 鎌倉大仏との比較図もあり、巨大仏の大きさがわかり易くなっています。
著者のコメントもユーモアがあります。

 この写真集を見ていると、巨大仏への「なぜそこにいるの?」という違和感も地元住民にとっては日常だということです。
仙台の友人に裏表紙にもなっている仙台大仏について聞いてみたら、「そういえばあるな」でした。

 巨大仏に興味がわいた方にこちらもおススメ!!
『晴れた日は巨大仏を見に』 宮田 珠己 /著 白水社 (市立・書庫 291.0/ /04 )

『やわらかなレタス』

『やわらかなレタス』 江國 香織/著  文藝春秋 (市立・成人914.6/エク/11 )
 

 うっとりしたり戦慄したり…小説は楽しいですが、お気に入り作家のエッセイもまた、味わい深いものです。その作家ならではの視点や感性が、何気ない日常に光を当て、面白く豊かに彩ります。

 本書は、珍しい食べものや絵本の中に登場する食べもの、その食べものの背景にあるものなど、食べものにまつわるエッセイ集です。あたたかいジュース、やさしい枇杷、シュールなアスパラガス、やわらかなレタス…おいしそうなものがたくさん登場します。

 また、「ごちそうの巻、あるいは魅惑の四日市」という題で、江國香織さんが四日市市を訪れた時のことも書かれています。

「四日市は不思議な街だ。ひっそりしていて静かなのにどこかが混沌としていて、のどかなのに何かが烈しい…」
と始まります。
 江國香織さんのフィルターを通した四日市を感じることもできて、楽しい一冊です。


幸せになる勇気を手にする方法とは?

『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』
岸見 一郎,古賀 史健/著 ダイヤモンド社 (市立・成人146.1/ /14)
 

過去に支配されない自分の手で選び取る自由な人生のあり方・・・それは誰にでも可能で人は今から変われる、幸福になることが出来る。そんなことが可能なのでしょうか?

「どうすれば幸せに生きることができるか」と言う問いにアドラーの思想(アドラー心理学)を用いて具体的な方法を哲学者と一人の青年の対話方式で示していきます。
青年が私達読者の沸き起こる疑問や反発を代弁してくれています。
思いも寄らない発想や考え方に驚かされつつ青年と一緒に進むと心が一新され視界が開けてきます。
 「すべての悩みは対人関係の悩みである」
アドラー心理学の基本概念から説き、幸せなライフスタイル=人生のあり方を探っていきます。

不幸なのは過去や環境のせいではなく「幸せになる勇気」が足りないから。

読み終わるころには心が軽くなり、自分が変われる、新しい一歩を踏み出す「勇気」を持てる気がします。
背中を押してくれるようなそんな気持ちになる一冊です。

『おべんとうの時間』

『おべんとうの時間』 阿部 丁/写真 阿部 直美/文 木楽舎 (市立・成人596.4/ /10)

 このタイトルを読んで料理のレシピ本と思われた方が多いのではないでしょうか?
 本書はANA機内雑誌書『翼の大国』に連載されている、阿部夫妻が全国各地を訪ね歩いたお弁当の旅本です。毎回お一人を訪ね、その人の仕事場での様子やお弁当の中身の写真を交えながら、お弁当の思い出や自分の家族の事、仕事の事などを、まるでご本人が語られている様な文体で書かれています。

 誰にでもきっとあるお弁当の思い出。お弁当を入口にして様々な世界が広がりその暖かい気持ちにホッとする感覚。

 私自身、子供達へのお弁当を面倒がらずにもっと大切に作ればよかったと思わされました。そして、子供達のどんな思い出となって残っているのかと少し不安になりました。

『あなたの知らない東海地方の名字の秘密』

『あなたの知らない東海地方の名字の秘密』 森岡 浩/著 洋泉社 (市立・地域 L288/ /14)

 地域資料室にあるオレンジ色の小さな本である。表紙のタイトルの右側には
  愛知:豊田市にある徳川家のルーツとは?
  静岡:「月見里さん」「一尺八寸さん」はなんと読む?
  岐阜:「加賀の藤原」加藤さんは美濃で広がった?
  三重:名字における東西日本の境目はどこ?
といった副題が書かれてあり、その副題に興味をもって本を読んでみた。

 東海地方は、関東地方に限りなく近い静岡県伊豆地方から大阪への通勤圏となっている三重県伊賀地方まで東西に長く、この地域にはいろいろな文化の境目が存在し、名字の上でも東日本型名字と西日本型名字の境目が三重県内にあり、東海地方は日本全体の縮図である。
 また、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康という三人の英雄が出たことや東海道を中心に江戸時代東西交通が盛んで人の出入りも盛んであったことなど歴史的地理的要素が名字の分散に大きく影響している。伊勢神宮の存在も大きく関係しているそうです。

 この本では、愛知県、静岡県、岐阜県、三重県の名字のランキングと特色、東海地方の名字秘話などが紹介されています。
 自分の名字に関心を持って、そのルーツを見てみると、とても興味が湧いてきます。

婚活男子必読!

『はじめての男の婚活マニュアル』 男の婚活研究会/著 秀和システム (市立・成人152.2/ /15)

 婚活。
 その門をくぐるには、ただでさえ一抹の恥ずかしさが漂うというのに、蛮勇をふるってこの旅に乗り出すと、そこには、数えきれないほどの、男の悔しさ、男の無念さ、そして、やり場のない男の怒りが、打ち捨てられています。
 なぜか。
 それは、大抵は男の側に原因があります。

 男は、力を入れれば入れるほど、頓珍漢なことをしてしまう。
 しなくてもいいことに心血を注ぎ、しなければいけないことに配慮が行き届かず、その結果、「ごめんなさい。」の大山脈を築いてしまうのです。

 この本は、自分を偽って、仮面を被れと言っているのではありません。
 他人から必要とされる人間になるためには、こういった点を努力した方がいいよと、アドバイスしてくれる本です。
 仕事に置き換えても役立つことが書いてあります。

 仕事の本だと自分に言い聞かせて、恥ずかしくても、ぜひ手に取ってみてください。
 本の分類番号は、152.2。
 倫理学・道徳の本が並ぶ、分類番号150番台の棚を見てください。
 倫理や道徳の本を読みに来たと思えば、恥ずかしくないでしょう。

 また、自動貸出機で本を借りれば、何を借りたか、他人には分かりません。
 雑誌コーナーの一番、貸出カウンター寄りに、貸出機があります。
 自動貸出機は、バーコードさえ読み取れればよいので、周りが気になる人は、本の題名を隠して、貸出機に置いてもいいですよ。

 この本が広く読まれて、婚活で泣く男性を一人でも少なくできればと願っています。
 婚活失敗歴うん十回の男より。

語り継がれる昔話

『日本昔話百選』  稲田 浩二,稲田 和子/編著 三省堂 (市立・児童388/ /研究)(点字・録音資料室 録音図書)

 15年程も前の、まだ子どもが小さかった時です。
 毎夜、絵本の読み聞かせタイムを楽しみにしていてくれる子どもに、そろそろ、言葉の持つ力だけで想像できるようになって欲しいと思いました。

 それなら、日本の昔話をしてあげたいと選んだ本が『日本昔話百選』でした。
 ずっと語り継がれてきた地方の、飾りけのない暮らし言葉で百の話が採話されています。
 それでこそ、人生を戦いぬき、愛してきた人々の心がこもり、未来ある幼な子の心に語りかけるのです。

 「なんと昔があったそうな。むかし、じいさんとばあさんがおったそうな…… むかしこっぽり。」
 子どもに話してあげながら、いつのまにか私が、日本の豊かな風景や心で一杯に満たされていきました。

 今も私の本棚にある、そして皆さんにおすすめしたい本です。

都道府県の持ちかたってナニ?

『都道府県の持ちかた』 バカリズム/著 ポプラ社 (市立・成人049/ /12)

小学校の頃、都道府県を覚えるのに苦労した思い出のある方は多いと思います。
当時、この本に出合っていれば…と思える程、都道府県がおもしろく紹介されています。

著者バカリズムさん独特な感性で、今まで考えたこともなかったような持ちかたを教えてくれています。
持ちかたポイントも笑ってしまいます。
 

基本データも掲載されており、都道府県の特長、人口、産業なども知ることができ、大人の方からお子さんにもお勧めです。
 

個人的に、三重県の持ちかたが、一番かっこいいですね。

介護の夢と現実を知りたきゃ、これを読め

“介護の夢と現実を知りたきゃ、これを読め 公務員の夢と現実を知りたきゃ、これを読め”

『ヘルプマン!』(1巻~27巻) くさか里樹/著 講談社 (市立・成人726.1/クサ/)

 この本は、一人でも多くの方が介護の世界に入って来てほしいとの切実な願いを込めて、ご寄贈いただきました。
 皆さん、特に学生さん、ぜひ手に取って読んでください。漫画ですから、読みやすいと思います。


 私がこの本をお薦めするのは、介護の尊さ・素晴らしさだけを描いていないからです。むしろ、介護の厳しさ・残酷さを描いた場面の方が、はるかに多いです。
 もし私がこの本を学生の時に手にしていたら、私は介護の道には進まなかったと思います。私のような軟弱者には、この厳しさを乗り越えるだけの根性や覚悟がありません。


 だからこそ、若い人には、この本を読んでほしい。この本を読んで、自分には無理だと思ったら、別の道を探した方が良いと思います。
 この本を読んで、よし、私はこの世界で頑張ってやる!、と意気込める人には、ぜひ、介護の道に進んでほしいのです。
 覚悟を持った元気な若人を、介護の世界は求めています。


 あと、若い人と公務員の皆様。この本の26巻と27巻を、ぜひ読んでください。
 私には、ここに描かれていることが、フィクションや演出とは思えない。公務とは何かについて、核心を突いた問題提起をしていると思います。
 26巻と27巻を読んで、よし、私はこの世界で頑張ってやる!、と意気込める人には、ぜひ、公務員の道に進んでほしい。


 さて、この本は、漫画という表現形態に着目して、芸術(700)の分野で、絵画(720)に属する、漫画・挿絵・童画(726)に分類し、その番号が並ぶ棚に並べました。
 この本との出会いを求めて図書館へみえたら、分類番号(726)の本が並ぶ棚の位置を職員に尋ねるか、本棚側面に表示した緑色の分類番号を目安に、書架までいらっしゃってください。


 この本が、文字主体で表現された出版物であれば、社会科学(300)の分野で、社会(360)に属する、家庭(367)や社会福祉(369)に分類したでしょう。
 このあたりの話は、別の本をご紹介する時に、ご説明できればと思います。
 それでは、今日はこの辺で。


 

タスキをつないで

『風が強く吹いている』 三浦しをん/著 新潮社 (市立・成人913.6/ミウ/ )

 本書は箱根駅伝にむけての弱小陸上部の群像青春物語です。

 エリートアスリートとは違う個性豊かな10人が監督も、サポートをしてくれるスタッフもいない中、独自の練習メニューで箱根駅伝を目指します。
 10人につけられたニックネームはとてもユニークで、各人の個性、エピソードにあっています。それぞれに与えられた課題を乗り越えて成長していく若者の姿、そして箱根駅伝の当日、タスキをつないでいく先に待っているそれぞれ思いを描いています。

 本書を読んだあとにテレビで見る箱根駅伝。上位、下位のチーム、有名、無名の選手を誰しも応援したくなるそんな一冊です。
  

男も料理をしよう!

『速習!男のメシ仕度』 西田成夫,高谷典子,金久保茂樹/著 祥伝社 (市立・成人596/ /11)

 男も料理ができれば、もっと人生が楽しくなること間違いなし!

 この本には、簡単な料理や、レトルト、インスタント食品、冷凍食品、乾麺などを使いこなす方法ものっています。
 また、スーパーへの買い物、用具と調味料の知識、キッチン収納マップ、料理術、後片付け
など料理のエッセンスがほとんどのっているのでこれを読めば、あなたも料理がしたくなる本です。

『江戸東京の庭園散歩』

『江戸東京の庭園散歩』 田中昭三/著 JTBパブリッシング (市立・成人629.2/ /10)

 庭園の鑑賞といえば、まず京都の庭を思い浮かべる方が多くみえると思います。特に興味のある方は、奈良時代から近代まで、全国にある浄土式、回遊式、枯山水の庭園、或いは茶庭、大名庭園、西洋風の庭園等さまざまな様式の庭園を巡ってみえることでしょう。

 本書は、江戸300余藩の大名が造り上げた回遊式庭園の数々。その面影を辿りながら江戸に花開いた庭園文化を紹介しています。東京には、江戸時代に千個あまりの庭園があったそうです。現在は大部分が取り壊されてしまいましたが、今でも静寂な地として幾つかの名園が残っています。
 例えば文京区にある8万㎡を超える広さをもつ六義園ですが、柳沢吉保によって造られた和歌の趣味を基調とした「池泉回遊式」の大名庭園です。文化人でもあった吉保が七年の歳月をかけ、「万葉集」と「古今和歌集」に因んだ景を選び、「六義園八十八境」を定めていました。もちろん理屈ぬきに目を見張る美しい庭です。また例年11月下旬から12月上旬まで紅葉の名所ということでライトアップもされています。

 この本には、都内の代表的な庭園が20余り紹介されていますが、その他に日本庭園の基本的な見方もやさしく解説されています。東京へ行かれた時、静かな場所に立ち寄りたいと思われる方におすすめの一冊です。

読めば、小学生時代にタイムスリップ

『ランドセルしょって。』 k.m.p./著 メディアファクトリー (移動726.5/ /10)

小学生のあの頃を思い出す本です。

小学生時代、カサ一本の色んな持ち方を考案して、実行しては、ひとりでにんまりしてませんでしたか?
指一本で運んだり、カサの先を靴の中に入れて歩いたり、柄の部分に荷物をかけて運んだり・・・。

帰り道が楽しくて仕方なかったあの頃が、ページをめくるたびに鮮やかに蘇ります。

昔、小学生だったすべての大人に送る、ふっと笑える懐かしい気持ちになる本です。

 

パンケーキを読む

『パンケーキの歴史物語』 ケン・アルバーラ/著 原書房 (市立・成人383.8/ /13)

最近、テレビや雑誌などいたるところで目にするパンケーキ特集。
おいしそうなレシピ本を眺めるだけでも楽しいですが、こんな本を見つけました。

タイトルは『パンケーキの歴史物語』。

パンケーキとは何かといった定義から始まり、その歴史や様々な国のパンケーキ、祝祭の際に食べられるものからストリートフードとしてのパンケーキまで社会や文化との関係を交えながら分かりやすく説明されています。
日本からは「どら焼き」と「お好み焼き」がパンケーキのひとつとして紹介されているのはちょっとびっくり、新しい発見がいろいろありました。

この「お菓子の図書館 歴史物語」シリーズは他にも「ケーキ」、「アイスクリーム」「パイ」、「チョコレート」の4冊があるので次はどれを読もうか迷い中です。

 

大切なものは目に見えない...心の豊かさ・心の贅沢を探しもとめて♪

『美 「見えないものをみる」ということ』 福原義春/著 PHP研究所 (市立・成人914.6/フク/14)

 経済界随一の読書家で知られる資生堂の名誉会長が記した本書は、本当に美しいものが美しいと評価されているのだろうかといった素朴な疑問から始まる。リッチとは…心の豊かさ、心の贅沢…究極のエレガンスでもある。文化に造詣が深い著者が、影響を受けてきた多岐多様の本も引用しながら、音楽、美術、自然などのなかに潜むリッチなものを紹介し、効率性や経済性を重視する時代に警鐘を鳴らす。視覚だけでなく、五感のすべてで対象を感じるのが日本人なのである。本来日本人が持っていた、見えないものをみる感性を取り戻すにはどうしたらいいか…本書は人生のより深い味わい方を説いた次世代へのメッセージである。本書のみならず、本書で紹介されている文献についてもぜひとも読んでいただきたい。


 本書の記述の中で私が最も興味を示した箇所は、傳田光洋氏の研究だ。資生堂の皮膚科学の研究者である傳田氏は、鼓膜は聴覚で感じられる音しか聞いていないけれど、全身の肌はどう受けとめているのかという研究を行った。傳田氏の著作には、『皮膚感覚と人間のこころ』(新潮社)、『賢い皮膚』(筑摩書房)、『第三の脳』(朝日出版社)、『皮膚は考える』(岩波書店)などがある。最先端の研究成果を基礎に生命とこころの本質に迫るこれらの本からは、触覚や皮膚感覚についての新たな発見があることだろう。


 本書では、詩人の高橋順子氏が書いた『雨の名前』・『風の名前』・『花の名前』(小学館)が紹介されている。育花雨、甘雨、青時雨、御雷様雨、秋雨、御精霊雨、雨雪、風花…。玉風、毘嵐婆、雁渡、少女風、花信風、星の出入り…。桜、花王、馬酔木、蒲公英、菫…。このシリーズは、日本に伝わるそれぞえの名前を集めて、カラー写真・詩・エッセイでつづる写文集である。日本人は、昔から四季による自然の変化に敏感で、自然との触れ合いの中で、言葉も豊かに発達させてきた。しかしいま、自然の気配を敏感に感じ取る力や感じる機会が日本人から失われている。そして自然を表す言葉は急速に消えつつある。このシリーズを読んで私たちが本来持っていた感覚を取り戻してほしい。


傳田 光洋/著  
『皮膚感覚と人間のこころ』 新潮社 (市立・成人141.2/ /13)
『賢い皮膚 思考する最大の<臓器>』 筑摩書房 (市立・成人491.3/ /09)
『第三の脳 皮膚から考える命、こころ、世界』 朝日出版社 (市立・成人141.2/ /07)
『皮膚は考える』 岩波書店 (市立・書庫491.3/ /05)

高橋 順子/文,佐藤 秀明/写真  
『雨の名前』 小学館 (市立・書庫451.6/ /01)
『風の名前』 小学館 (市立・書庫451.4/ /02)
『花の名前』 小学館 (市立・書庫470/ /07)