図書館スタッフおすすめ本
ヒルと生きる
『ヒルは木から落ちてこない。ぼくらのヤマビル研究記』 樋口大良+子どもヤマビル研究会/著 山と渓谷社 (市立・地域、L483//21)
鈴鹿の山に登った後で、近場の温泉に行く。「ゆっくりつかろうか」と友と話しながら、Tシャツをばっと脱いだ瞬間「ボトッ」何かが床に落ちる。「今日も暑かったな」と帰りの車を走らせていると、何やら靴下の中がムズムズしたので信号待ちの時に靴を脱いでみる。「コロン」何かが転がる。
言うまでもなく鈴鹿の山(なかでも堆積岩帯の山)の名物『ヒル』である。このなじみ深い生き物の生態を解き明かしていこうと、観察を重ね、実験をし、次々に課題をクリアーしていくヤマビル研究会の子どもたちの姿がとてもかっこいい。自分もこの研究会の一員になった気になって、一気に読んでしまった。
「ヒルの生態を観察し、自然の仕組みを解き明かす・・・」ポッサム先生と研究会のメンバーが掲げているテーマは、私たち人間は自然を愛し、守り、共に生きていこうとすることの大切さを改めて考えさせてくれた。まだまだ解らないことがたくさんあるけれど、『ヒル』は生きている。そして私たちも生きている。そのかかわりは特殊な形かもしれないが、お互いに求めあっていることは事実であると感じた。より深く知るために。
「気持ちわる~」と言っているあなた、そんなこと言わずにぜひ読んでみてください。子どもヤマビル研究会の活動をぜったい応援したくなるから。
セミだけじゃない!いろんな虫のいろんなぬけがら!
『虫のぬけがら図鑑』 安田守/著 ベレ出版 (市立・成人 486.1//21)
虫のぬけがらと言えば、「セミ!」と思っていた私。
この本には、日本に生息し脱皮する様々な昆虫やクモなどのぬけがらが写真で紹介されています。
私はまだ見たことのない「ぬけがら」ばかりで、細長ーいナナフシやトゲトゲのテントウムシのぬけがらなんて、どうやってそのままの形が残るように脱いだのかな?
確かに、うちのカブトムシたちも羽化するときに脱皮したし、成長する時に脱皮する虫には、「ぬけがら」が必ず存在するってことか、フムフム。
と、それほど虫に興味がないのにじっくり読んでしまいました。
図書館にこの本が入った時、ちょうど謎のぬけがらを見つけたある職員。
さっそく、一緒にこの本で「ぬけがらウオッチング」。おそらく「バッタの仲間」ということが分かりました!
謎のぬけがらを見つけた時にはぜひ、この本で確認してみてください。
無人島に1冊持っていくなら? ~エッセーコンクール募集中~
『パノラマ島美談』 西尾維新/著 講談社 (市立・書庫 B913.6/ニシ/16)
今年も図書館では、「読書に関するエッセー」を募集しています。
今回のテーマは、「無人島に1冊持っていくなら?」です。
私が無人島に1冊持っていくなら、西尾維新『パノラマ島美談』です。
『パノラマ島美談』は、2021年4月から放送していたアニメ「美少年探偵団」の原作シリーズ第5作目にあたります。残念ながらアニメでは飛ばされてしまったエピソードですが、無人島にピッタリの1冊なんです!
私立指輪学園中等部で、秘密裏に活動する、非公式かつ非営利組織“美少年探偵団”。
そのメンバーとは、リーダーで美学のマナブこと、双頭院学。生徒会で美声のナガヒロこと、咲口長広。番長で美食のミチルこと、袋井満。陸上部で美脚のヒョータこと、足利瓢汰。そして、ひょんなことからメンバー入りした美観のマユミこと、瞳島眉美である。
1.美しくあること2.少年であること3.探偵であることをモットーに校内のトラブル解決に勤しんでいた彼らが冬休みの合宿地に選んだのは、琵琶湖に浮かぶ無人島『野良間島』。その島では、学園から追放された元美術教師の永久井こわ子が、たった1作の絵を飾るための美術館を建てていた。美少年探偵団のアジトである美術室を正式に譲り受けようとした彼らは、5つの美術館からそれぞれに展示されている『見えない絵』を見つけることを求められ……?
西尾維新作品の中でも、1冊が短い「美少年探偵団」シリーズ。
もしかしたら無人島に行く道中で読み終わってしまうかもしれません。でも、それでかまわないのです。無人島に行くのですから、きっとそこには、謎が、チームが待っているはず。無人島への期待に胸を高鳴らせて、上陸できるに違いありません。
さあ、“無人島でも”美しく、少年のように、探偵をしよう。
皆さんも是非、「読書に関するエッセー」に応募して、おすすめの本を教えてくださいね!
- 「読書に関するエッセー」募集について(図書館ホームページお知らせ記事が開きます。)
エッセーのすすめ
『仙台ぐらし』 伊坂幸太郎/著 荒蝦夷 (市立・成人 914.6/イサ/12)
高校生のころ、お気に入り作家の新作小説だ!と思って読んだら何だか変。いつまでたっても登場人物が出てこない。ストーリーがすすまない。何これ? というのが、当時、フィクションしか読んだことがなかった私とエッセーの出会い。
その後、「笑っちゃうから電車で読んだら絶対だめ」と友人に原田宗典さんのエッセーを紹介され、どっぷりはまったのでした。
特に、小説家のエッセーは、小説を読んでいるだけではなかなか目に浮かばない書き手の姿をリアルに感じることができ、距離感がぐっと近づくように思います。
『仙台ぐらし』はそんな作家の一人、伊坂幸太郎さんのエッセー。
仙台の地域誌に掲載していたものを2011年に書籍化予定でしたが、震災により翌年に延期された経緯があります。震災より前に書かれた、くすっと笑えるおだやかな日常と、震災後、もう一度「作品を書く」ということに向き合っていく伊坂さんの言葉。伊坂さんの新作小説を楽しく読みながらも、ときどきこのエッセーを振り返るように読んでいます。
なお、現在、図書館では「読書に関するエッセーコンクール」の作品を募集中。今年のテーマは「無人島に1冊持っていくなら?」です。
非日常だったいろんなことが、日常となりつつある今、あなたの思いをつづってみませんか。メールでもご応募できます。
興味がある方はこちらもご覧ください(図書館ホームページ「読書に関するエッセーコンクール」作品募集のお知らせ記事が開きます)。
青空文庫で読んでみる
『三国志』1~8巻 吉川英治/著 講談社 (市立・成人 B/913.6/ヨシ/12)
なかなか思うように外出できない日々が続きます。
図書館に行けない、でも読みたい・・・そんなときは、「青空文庫」を利用してみてはいかがでしょう。
「青空文庫」は、著作権保護期間の終わった作品や、著者・訳者が公開に同意した作品を、web上で誰でも読めるようにしたもの。今では、かなりの作品数が公開されています。
・・・でも「青空文庫」って、芥川とか、古いのばっかりでしょ(ごめんなさい!)、と思ったあなた。
そう、確かに古い。ですが、「文豪」をとりあげた漫画やアニメがヒットした影響もあり、若い世代の方でも作品が読み直されているんです。今まで読んだことがない人も、むかし読んだけど響かなかった人も、今だからこそ、味わえる作品に出会えるかもしれません。
ちなみに私が今、目をつけているのは、吉川英治の「三国志」全8巻。
かつて、友人に「おもしろくて一気読みだよ!」とすすめられたのですが、挫折。途中までは一気に読むのですが、いつも自然消滅。今回、3度目のチャレンジです。
返却期限がない青空文庫、図書館とともに活用してはいかがでしょうか。