図書館スタッフおすすめ本

古から伝わる謎解きに挑戦

 『千年クイズ』 清水文子/著 リットーミュージック (市立・成人 807.9/ /14)


 今、私たちは、本やテレビ番組などさまざまな場面で、たくさんのクイズに触れることができます。さらに、 この『千年クイズ』を読めば、今とは一味違った昔のクイズにも挑戦できるのです。

 この本には、平安時代から昭和まで、古い時代のクイズが一問一答形式で紹介されています。クイズは多種多様で、絵を見て考える「絵解き謎」、文字を読んで考える「文字変換謎」、数字を計算して考える「数字謎」などがあります。その中から、自分のお気に入りの謎が見つかるかもしれません。

 昔の謎解きは難しいかも、と思った時でも安心。各クイズにはヒントがついています。クイズは、当時の時代背景や常識が元になっているので、謎解きをしながら、楽しく歴史を知ることもできます。

 私は、昔はこんなクイズがあったのかと驚き、頭をひねり、次のクイズは何かとワクワクし、つい時間を忘れて謎解きをしました。楽しみ方は人それぞれ。皆さんも古の様々な「謎」にぜひ、挑戦してみてください。

スケオタの世界

 『スケオタデイズ』 (市立・成人784.6/ /15) グレゴリ青山/著  KADOKAWA 
 『スケオタデイズ 飛び出せ!海外遠征編』 (市立・成人784.6/ /16) グレゴリ青山/著  KADOKAWA  

 スケオタとは何か?それはフィギュアスケートオタクの略。今回紹介するのは、スケオタの世界に足を踏み入れることになった漫画家・イラストレーターのグレゴリ青山さんの著書。スケートとの出会いから次第に夢中になっていく様子、観戦した数々の試合で起こるドラマやちょっとしたネタまで、面白いと同時に興味深いエピソードが満載です。また海外遠征編では、日本人選手だけでなく、海外選手も多く登場。選手に対する深い愛情が伝わってくるのも魅力の一つです。

 10数年ほど前、国際試合とアイスショーを生で数回観戦したことがあります。そのとき、テレビで見るのとは違った迫力や会場の雰囲気に圧倒されたことを思い出しました。フィギュアスケートブームの今は、もっとすごいのでしょうね。来年2月には、平昌オリンピックが開催されます。4年に一度の大舞台で、出場する選手たちがどのような演技を行うのか、観戦できるのを楽しみに待ちたいと思います。

 他にもフィギュアスケートに関する本は、多数あります。ぜひ、「784.6」の棚をご覧ください。

田村泰次郎の文学世界

 『肉体の門』 田村泰次郎/著 角川出版 (913.6/タム/郷土)

 四日市の郷土作家である「田村泰次郎」と聞いて連想することは、「肉体文学」という言葉や、風俗小説作家といった肩書きでしょうか。
 代表作である「肉体の門」は、戦後の日本の街娼を主人公としたものです。何度も映像化されたそれのパッケージやキャッチコピー、そしてその衝撃的なタイトル自体がどこか淫靡さや頽廃を感じられるもので、彼の作品には、そのようなイメージがついているように思われます。私が情報として知っていた田村泰次郎は、そのようなものでした。

 実際読んでみると、映像であったような淫靡さや、現代における風俗小説といった類とは、異なるように思えました。今回読んだ文庫には、「肉体の門」、「肉体の悪魔」、「刺青」、「春婦伝」の4作が集録されており、いずれも「肉体」を用いた表現をしているものの(それが肉体文学なのでしょうが)、戦中戦後の日本を生々しく描いた戦争文学であり、前述で述べたようなものでは決してないように感じられます。頽廃的な生々しさというよりは、内面のある種の健康さを表現しているようにも考えられました。

 先行するイメージにとらわれず、一度、田村泰次郎の作品に触れてみるのはいかがでしょうか。自分なりの解釈や感想が生まれると思いますよ。


 また、田村泰次郎に関する研究の本も出版されています。

・『丹羽文雄と田村泰次郎』(910.26/タム/郷土)
・『田村泰次郎の戦争文学』(910.26/タム/郷土)

 一読後、文学者の見解、田村泰次郎の為人を含め、作家について知るのもおもしろいのではないでしょうか。

 ここで紹介した本は、いずれも本館の2階郷土作家コーナーで借りられますので、是非、読んでみて下さい。

初恋は実らずか・・・

 『石田三成の青春』 松本 匡代/著 サンライズ出版 (市立・成人 913.6/マツ/16)

 戦国武将石田三成と大谷吉継の友情をテーマに書かれた小説。三成が豊臣秀吉の家臣になるところから始まり、吉継とともに豊臣家を守るため、徳川家康を討つことを決断するところで終わっている。

 この小説には、人権的な視点で、友情を考えさせられる内容が語られている。秀吉主催の茶会の席で、一つの茶碗を数名で回し飲みする催事でのこと。大病を患い、目と口は出ているが、頭巾で顔を覆っている吉継の飲んだ茶を、隣の武将数名は、茶碗に口をつける真似をするだけで飲まなかった。ところが、三成は、自分のところに茶碗がくると一気に飲み干した。

 周りの武将は、吉継のことを姿形や風評で判断して、忌み嫌う。当時、病気の知識はなかったにせよ、美辞麗句を並べ立てて、吉継を心配するふりをする武将より、幼馴染みで、気心の知れた三成のとった自然な振る舞いの方が、吉継にとって、どれほど温かく、そして頼もしく感じたことだろう。友情という絆が、より一層強く深くなったことを彷彿とさせてくれるエピソードである。

 また、著者の創作した人物「おもよ」との恋の場面では、三成は、初恋は実らないものと身をもって知る。戦や政治から離れた三成のプライベートな部分が、女性目線の見事な筆致で書かれていて、彼の新たな一面を想像させてくれる。これが、この小説の魅力の一つとなっている。

 現代に置き換えても、十分に通じる内容満載歴史ドラマを、ぜひご一読ください。

ちょっと一息・・・

 『記憶をつなぐラブレター』 城戸 真亜子/著 朝日出版社 (市立・成人 916/キト/16)

 なんともかわいらしいおばあちゃんのイラストに魅かれて、思わず手にとってしまいました。そのおばあちゃんの傍らには、やさしそうな女の人が微笑んで立っています。本をよく見てみると、この二人は、この本の著者であり、画家でもある城戸真亜子さんと、認知症になってしまった義理のお母さんだとわかりました。なんてほんわかしているのでしょう。そのイラストから、描いた人の,お母さんへの愛情が伝わってきます。一瞬、認知症や介護という言葉とは、無縁の世界に行ったような気になりました。

 認知症が進んでくると、人は、言葉や出来事を記憶しておくことができなくなります。著者の城戸さんは、文字にすると、口で言うより受け入れてもらい易いことに気付きました。そして、認知症になってしまい、抜け落ちていくお母さんの記憶の代わりに、日々の出来事、尊敬の気持ち、お母さんがいてくれてうれしい気持ちなどを、手紙を書くように絵日記に綴りはじめ、お母さんに読んでもらっているのだそうです。

 この本には、お母さんにまつわるいろいろな出来事が、心癒されるイラストとともに描かれています。シンプルに絵や出来事を楽しむこともできますし、事例がとてもわかり易く、介護制度の仕組みが説明されているので、著者と同じように介護に取り組んでいる人にとっては、勇気づけてくれる強い味方にもなります。介護とは無縁でも、ちょっと一息つきたいな・・・と思っている人にも、おすすめしたい一冊です。