図書館スタッフおすすめ本

あったかい縁側で読みたい本です

 『図書館の神様』 瀬尾まいこ/著 マガジンハウス (市立・書庫 913.6/セオ/04)

 この本はとっても読みやすいので、高校生でも楽しめます。主人公は2人です。高校の先生のキヨと、生徒の垣内君。あわよくば文芸部顧問をサボりたいキヨと、文学を愛する真面目すぎる垣内君の正反対な2人の会話は読んでいてクスリと笑ってしまい、思わず突っ込みたくなってしまいます。

 キヨは過去のあることがきっかけで大きな挫折を味わい、そのまま成長し、なりたくもない先生をしています。おまけにドロドロな不倫をしています。でもそれで幸せなのだと思い込んでいます。
 しかし垣内君とかかわっていくうちに、次第に考え方が変わっていき…。どん底から、少しずつ浄化され、キヨが立ち直っていく様子は、読んでいて本当にエールを送ってしまいましたし、垣内君の眩しすぎるくらいの純粋な言葉ひとつひとつにドキドキしてしまいました。

 「僕は毎日文学している。クラブ以外でも。いつでも何かに触れて何かを感じてる。」
 大人になって鈍感になってしまっていた私にとっては衝撃でした。私は毎日仕事でたくさんの本に囲まれているのに、読まなければいけない本だけしか目を通していない時期がありました。そんな中この本は、~文学が好きだから図書館で働いている~という原点を思い出させてくれました。

 この本の結末は涙が出るほど爽やかです。
 ちょうどこれから春になる、新しい芽が出てすべてはこれからだ、という今の時期にぴったりの本です。

旅ノートのすすめ

 『50歳からのおしゃれ旅スタイル』 中山庸子/著 海竜社 (市立・成人 290.9/ /15) 
   『旅ノート・散歩ノートのつくりかた』   奥野宣之/著 ダイヤモンド社 (市立・成人 290.9/ /13)
  『誰にでも書ける!k.m.pのイラスト旅ノート』  k.m.p./著 JTBパブリッシング(市立・成人 290.9/ /16)

 私は一年に何度か旅をします。友人や家族と一緒だったり、時には一人だったりします。泊りがけの旅行から日帰りバスツアー、ちょっとしたドライブや散歩程度のお出かけ。すべてを旅と呼んで楽しむと見る景色も変わってきます。しかし残念な事に、私は、行った場所、見たものを記憶に留めて整理するのがとても苦手です。

 そんな時出会ったのが、『50歳からのおしゃれ旅スタイル』です。この本には旅の楽しみ方のヒントがたくさんちりばめられています。その中で一番目に留まったのが、「旅ノート」のページでした。旅の準備メモから、行った場所、見たもの、感じたこと、食べたものなどなんでも自由に書き込んでいきます。私もさっそくA5サイズのノートを買い、旅ノートを作りました。ほとんど簡単なメモ程度ですが、時にはチケットを貼ったり、色鉛筆でイラストを描いたりして楽しんでいます。後で読み返すのも旅の続きのようで楽しい時間になります。

 そして簡単な旅ノートでは物足りないと言う方へお勧めなのが『旅ノート・散歩ノートのつくりかた』と『イラスト旅ノート』です。この2冊には旅の資料を作ったり、記録を整理するアイデアがぎっしり詰まっています。楽しみながらガイドブックに負けないオリジナルな旅の本ができそうです。

 旅好きなあなた、ぜひ、旅ノートを素敵な旅のお供にしてみてはいかがでしょうか。

パンダ愛

    『読むパンダ』   黒柳徹子/選 日本ペンクラブ/編 白水社 (市立・成人 489.5/ /18)

 昨年6月、上野動物園に待ちに待った赤ちゃんパンダのシャンシャンが生まれ、大きな話題となりました。12月にはシャンシャンの一般公開も始まり、好奇心旺盛で可愛い様子を見ると、私もすっかり魅せられています。皆さんの中にもパンダが大好きという人もいらっしゃるのではないでしょうか?

 この本は、浅田次郎を始めとした各界著名人たちによるパンダ愛にあふれるエッセイ集です。パンダが見たいがために密かに計画をたてる作家さんの話や、誰もが知っている有名パンダ作品誕生秘話まで22作のエッセイが楽しめます。

 初めて日本でパンダを受け入れてから昨年で45年になるそうですが、歴代の飼育員さんたちによるエッセイでは、謎だらけのパンダの飼育に試行錯誤する日々、そして、毎日接しているからこそ知ることができる パンダの生態や子育てについても語られています。もちろん、シャンシャンとお母さんのシンシンのことも!

 まだまだ謎の多いまさに珍獣パンダですが、この本を読むとますますとりこになってしまいそうです。私も上野動物園までシャンシャンを見に行きたくなってしまいました!


上質の歴史ミステリー

 「修道士カドフェル・シリーズ」 全21巻(短篇集含む) エリス・ピーターズ/著 社会思想社                                                                                                    (市立・書庫 B933/ヒタ/01)

 舞台は12世紀イングランド。王と女帝が相争い、国は内乱状態。そんな世相を背景に、初老の修道士カドフェルが、毎度起こる事件の解決に挑むという物語です。

 見どころはまず、中世ヨーロッパという時代背景に起因する“新しさ”でしょうか。現代社会ではまず遭遇しないであろう状況・考えつかない解決法が、作中には度々登場します。しかしそれは読者が「理解できない」と遠ざかってしまうようなものではなく、むしろ歴史ミステリーならではの目新しさ、意外性となって、読者を惹きつける役割を果たしています。

 次に、いわゆる“名探偵とパートナー”に当たる2人の関係です。少し乱暴な括り方をしてしまいますが、名探偵とパートナーというと、名探偵の天才性・特殊性にばかり重点が置かれて、パートナーはかすみがち、もしくは引き立て役、というイメージがあるのではないでしょうか。
 しかし、この作品の2人に関しては、そのような印象を受ける読者は皆無と言ってよいでしょう。主人公のカドフェルは、豊かな人生経験に基づく判断力と洞察力、そして持ち前の行動力で、事件の真相に忍耐強く迫ってゆく紛れもない名探偵です。そして彼のパートナーたる人物(物語の都合上、名前はここでは明かしません)もまた、主人公とは違う、己の持てる力でもって事件に切り込んでいく、言わばもう一人の名探偵なのです。もちろん主人公はカドフェルなので、この人物は“最高に頼りになる協力者”という描かれ方ですが。2人は年齢も身分も、生きる世界も大きく隔たっています。しかし、お互いを認め合い、足りない部分を補い合える、限りなく対等な無二の親友でもあるのです。

 「歴史ものは難しい」、「キリスト教はよくわからない」という方、ご心配なく。歴史や宗教の知識なんてほとんど必要ありません。知らない単語が出てきても、「ははあ、こういうものがあるんだな」と思ってそのまま読み進めていけばいいのです。全く問題なく楽しめるでしょう。 

 ドイルやクリスティなどなら、かなり読んだという方や、軽すぎず重すぎず、しかし読みごたえのあるミステリーを読みたいという方には、特におすすめの作品です。

得する人,損する人 ~ 一度の人生,さあ,どう生きるか? ~

「すばらしい人に 出会いなさい。亡くなった人は,その人の“血や肉である 作品や書物”に出会いなさい。」…… 学生時代の恩師のことばです。
 さいわい 私たちのまち・四日市では、文化会館などで 講演会や舞台、演奏の場があり、多くの刺激・エネルギーを得ることができます。(*2月10日は,四日市ゆかりの直木賞候補作家・伊吹有喜さんの講演会もあります。《図書館主催》満員御礼!! )
 
  日ごろ、図書館をご利用の皆さんには、「人生航路の“羅針盤”」として、次の3冊をおすすめします。ぜひ身近な本で、“すばらしい人”に出会って、「得」をしてみてください。

 『戦場から女優へ』 サヘル・ローズ/著 文藝春秋 (779.9/ / 09)

 イラン・イラク戦争の空爆で村が全滅するも、たったひとり生き残り、孤児院へ。来日後、ホームレス、いじめなどの苦難を乗り越え、滝川クリステルさんのものまねをきっかけに、芸能界へ。現在は、NHK「探検バクモン」や ネプ&イモト「世界番付」などで活躍するイラン人タレントの壮絶な半生。

 『夢を食いつづけた男』 植木 等・北畠 清泰/著 朝日新聞社 (市立・書庫 914.6/ウエ/84)

  あの植木等のお父さん、植木徹誠(てつじょう)の一代記。 御木本真珠店の貴金属職人、クリスチャン、僧侶など多彩な経歴。戦時中、「戦争は集団殺人だ」と特高に浴びせ、検束・拷問。さらには、部落解放運動を展開するなど、常人では歩めない人生を歩んだ人。

 『おくりびと』 百瀬しのぶ/著 小学館 (B913.6/モモ/08)

  映画化で、一躍 脚光を浴びた作品。スクリーンでは 美しい映像に魅了されるが、原作には、LGBT、過疎化、少子高齢化、孤独死など、現代社会が抱える問題も多く含まれている。今、私たちは、どう生きればいいのか、さまざまな示唆に富んでいる。