図書館スタッフおすすめ本

縁起物ってどんなものがあるの?

 『縁起物』 ~日本のたしなみ帖シリーズより~ 自由国民社 (市立・成人 387/ /16)

 皆さんは、縁起物を購入したり、お祭りがあると参加したりしていませんか?
お守りを購入したり、おめでたい日には鯛や赤飯を食べたり。
お節料理の意味をよくわからないまま、毎年作っていたり…。

 理由をよくわからないまま験担ぎしているのは何か変だなと思い、この本を手に取りました。この本には、行事やお守り・お祝い・動物と植物に分かれて、縁起物が紹介されています。

 例えば、今の季節だと、「夏越しの祓え(なごしのはらえ)」という行事があります。どんな行事かと思ったら、「茅の輪くぐり(ちのわくぐり)」の事だそうです。神社に行くと、千萱(ちがや)で作った大きな輪が置いてあるのを見たことありませんか?あの輪っかをくぐる事により、罪や穢れが払われ、厄を免れるそうです。6月末に半年分の穢れを払い、次の半年に入るために心身を清め、後半の無事を祈るのだそうです。

 今度は動物に目を向けると、猿や烏が神の使いだったり、植物では南天が、「難を転じて福となす」縁起の良い木とされていたり。他にも沢山あります。

 あなたの知らなかった縁起物が、実は身近な所にあるかもしれませんよ。
ぜひ読んでみてくださいね。

日本が見えない

 『日本が見えない 竹内浩三全作品集 』 竹内浩三/著 藤原書店 (市立・成人 918.68 /タケ/01)

 “日本が見えない”、戦時中の詩人・竹内浩三の詩のタイトルです。
竹内浩三は、三重県宇治山田市(現伊勢市)に生まれ、23歳という若さで戦死します。わずか23歳の人生の中で書き記された数々の詩からは、戦時中の日本の空気とともに、今まさにそこに生きている竹内浩三という人間の生が生々しく立ち上がってきます。

 「日本が見えない」と題された700ページもの分厚いこの本には、竹内浩三が残した詩や散文、日記、漫画などが、ぎっしりと収録されています。多彩な才能と、表現への抑えきれない欲求に満ちた作品からは、生きていたら会ってみたい!と思わせる魅力ある人間像があふれています。 「戦死しなかったなら、その後どんな人生を生きてどんな人物になっていたのだろう?」竹内浩三の才能を知る編者や関係者は、この本の中で皆そう語ります。

 「日本が見えない」、どうにも今の日本にも同じことを感じてしまうこの頃。戦争によって未来をあっさり奪われてしまった三重の詩人・竹内浩三の詩を改めて感じていただけたらと思います。

懐かしくて、新しいもの


 
『「太陽の塔」新発見! 岡本太郎は何を考えていたのか』 平野 暁臣/著 青春出版社
                                                 (市立・成人 606.9/ /18)

 皆さんは「太陽の塔」をご存じですか。「太陽の塔」は、1970年に開かれた日本万国博覧会(大阪万博)にテーマ館として造られました。「芸術は爆発だ!」のフレーズで有名な岡本太郎氏の作品です。岡本氏は万博のプロデューサーでもありました。「太陽の塔」の高さは70mにもなり、日本を代表する建築家の丹下健三氏が設計したシンボルゾーンの大屋根を貫き、少し可愛い感じ(個人的な感想ですが)の腕を左右に広げて、会場にそびえたっていました。実際に子供の頃、大阪の万博会場でこの塔と展示を見た私には、おぼろげながら当時の様子が、懐かしくよみがえってきます。

 この本は、今回の耐震工事による改修で、再び脚光を浴びることになった「太陽の塔」について、今まで知られていなかった新しい事実が、著者の綿密な取材により、いろいろと明らかにされています。

 また、一見、危険人物のようにみえる岡本太郎氏が、どんなに魅力的で、当時の一流の建築家やスタッフの気持ちをつかんでいたか…など、意外なエピソードも満載です。
 所々にちりばめられているスナップ写真は、写っている人物の細かい表情までよくわかり、当時の雰囲気がよく伝わってきます。まるで、ドキュメンタリー映画を見ているような気分にさせてくれます。

 48年前に圧倒的な迫力で私たちの目の前に現れ、今なおその輝きを保ち続けている「太陽の塔」とその内部。今まで知らなかった方も、出会った方も、懐かしいと感じるのか、その斬新さに驚くのか。「太陽の塔」と芸術家、岡本太郎に触れてみて下さい。

本とお酒好きにはしっくり?な小説

 『飲めば都』 北村薫/著 新潮社 (市立・成人 913.6/キタ/11)

 4月になり、皆さん何かと「仕事」+「お酒」の予定も多くなってくる時期ではないでしょうか?この本は、本とお酒が大好きな文芸編集者「都さん」の日常を描いたお話です。
 日々、仕事に奮闘する都さん。作家や本との出会いのなかで成長していきます。色々な本・小説にまつわるエピソードや人間模様が書かれていて、本好きにもたまらない1冊です。

 一方で、お酒が入ってしまうと、仕事での関係や立場を忘れ、とんでもない行動をしてしまうこともしばしばな「都さん」。武勇伝も失敗談もケタはずれにすごい。そんな都さんの周りをとりまく人々もなかなかのお酒好き。お酒の席だからこそ、立場を忘れて?腹を割って普段できない話ができ、関係が深まり、「都さん」の成長にもつながっていきます。
 仕事や人間関係で悩んで・踏ん張っている「都さん」だからこそ、周りには人が集まり、(たまにほろ苦いけれど)おいしく楽しいお酒が、飲めるのだろうなと思う私でした。

 今日も、おいしい一杯のために仕事がんばろうと思える小説です。そして、私も「都さん」のような飲み友だちがほしい!

あったかい縁側で読みたい本です

 『図書館の神様』 瀬尾まいこ/著 マガジンハウス (市立・書庫 913.6/セオ/04)

 この本はとっても読みやすいので、高校生でも楽しめます。主人公は2人です。高校の先生のキヨと、生徒の垣内君。あわよくば文芸部顧問をサボりたいキヨと、文学を愛する真面目すぎる垣内君の正反対な2人の会話は読んでいてクスリと笑ってしまい、思わず突っ込みたくなってしまいます。

 キヨは過去のあることがきっかけで大きな挫折を味わい、そのまま成長し、なりたくもない先生をしています。おまけにドロドロな不倫をしています。でもそれで幸せなのだと思い込んでいます。
 しかし垣内君とかかわっていくうちに、次第に考え方が変わっていき…。どん底から、少しずつ浄化され、キヨが立ち直っていく様子は、読んでいて本当にエールを送ってしまいましたし、垣内君の眩しすぎるくらいの純粋な言葉ひとつひとつにドキドキしてしまいました。

 「僕は毎日文学している。クラブ以外でも。いつでも何かに触れて何かを感じてる。」
 大人になって鈍感になってしまっていた私にとっては衝撃でした。私は毎日仕事でたくさんの本に囲まれているのに、読まなければいけない本だけしか目を通していない時期がありました。そんな中この本は、~文学が好きだから図書館で働いている~という原点を思い出させてくれました。

 この本の結末は涙が出るほど爽やかです。
 ちょうどこれから春になる、新しい芽が出てすべてはこれからだ、という今の時期にぴったりの本です。