図書館スタッフおすすめ本

初恋は実らずか・・・

 『石田三成の青春』 松本 匡代/著 サンライズ出版 (市立・成人 913.6/マツ/16)

 戦国武将石田三成と大谷吉継の友情をテーマに書かれた小説。三成が豊臣秀吉の家臣になるところから始まり、吉継とともに豊臣家を守るため、徳川家康を討つことを決断するところで終わっている。

 この小説には、人権的な視点で、友情を考えさせられる内容が語られている。秀吉主催の茶会の席で、一つの茶碗を数名で回し飲みする催事でのこと。大病を患い、目と口は出ているが、頭巾で顔を覆っている吉継の飲んだ茶を、隣の武将数名は、茶碗に口をつける真似をするだけで飲まなかった。ところが、三成は、自分のところに茶碗がくると一気に飲み干した。

 周りの武将は、吉継のことを姿形や風評で判断して、忌み嫌う。当時、病気の知識はなかったにせよ、美辞麗句を並べ立てて、吉継を心配するふりをする武将より、幼馴染みで、気心の知れた三成のとった自然な振る舞いの方が、吉継にとって、どれほど温かく、そして頼もしく感じたことだろう。友情という絆が、より一層強く深くなったことを彷彿とさせてくれるエピソードである。

 また、著者の創作した人物「おもよ」との恋の場面では、三成は、初恋は実らないものと身をもって知る。戦や政治から離れた三成のプライベートな部分が、女性目線の見事な筆致で書かれていて、彼の新たな一面を想像させてくれる。これが、この小説の魅力の一つとなっている。

 現代に置き換えても、十分に通じる内容満載歴史ドラマを、ぜひご一読ください。

ちょっと一息・・・

 『記憶をつなぐラブレター』 城戸 真亜子/著 朝日出版社 (市立・成人 916/キト/16)

 なんともかわいらしいおばあちゃんのイラストに魅かれて、思わず手にとってしまいました。そのおばあちゃんの傍らには、やさしそうな女の人が微笑んで立っています。本をよく見てみると、この二人は、この本の著者であり、画家でもある城戸真亜子さんと、認知症になってしまった義理のお母さんだとわかりました。なんてほんわかしているのでしょう。そのイラストから、描いた人の,お母さんへの愛情が伝わってきます。一瞬、認知症や介護という言葉とは、無縁の世界に行ったような気になりました。

 認知症が進んでくると、人は、言葉や出来事を記憶しておくことができなくなります。著者の城戸さんは、文字にすると、口で言うより受け入れてもらい易いことに気付きました。そして、認知症になってしまい、抜け落ちていくお母さんの記憶の代わりに、日々の出来事、尊敬の気持ち、お母さんがいてくれてうれしい気持ちなどを、手紙を書くように絵日記に綴りはじめ、お母さんに読んでもらっているのだそうです。

 この本には、お母さんにまつわるいろいろな出来事が、心癒されるイラストとともに描かれています。シンプルに絵や出来事を楽しむこともできますし、事例がとてもわかり易く、介護制度の仕組みが説明されているので、著者と同じように介護に取り組んでいる人にとっては、勇気づけてくれる強い味方にもなります。介護とは無縁でも、ちょっと一息つきたいな・・・と思っている人にも、おすすめしたい一冊です。

忍者って?

 『The NINJA-忍者ってナンジャ!?-公式ブック』 
 The NINJA-忍者ってナンジャ!?-」実行委員会/監修 KADOKAWA (市立・成人 789.8/ /16)

 忍者ってどんな人達だったんだろう?

 東京都と三重県で昨年から今年にかけて開催されていた企画展の公式ブックです。
企画展自体はもう終わってしまっていますが、安心してください、この本があります!
 近年、海外でも注目されている忍者の実像について、貴重な史料や科学の面から、イラスト付きで楽しくわかりやすく教えてくれます。
 そしていろいろな科学実験からの解説が、忍者の凄さを物語っています。

 日々の生活の中でも生かせる知恵が見つかるかも?

 企画展に行った人も、行けなかった人も、忍者の実態について興味のある人は、お手にとってみてください。

車中泊快適術

 『車中泊快適術』 桃園書房 (市立・成人 786.3/ /07)

 今回紹介する本は、題名どおり「普段使っている車の中で、いかに快適に安眠できるか」について書かれています。
 ページをめくっていくと、「楽しみ」、「快適術」、「過ごし方」、「場所選び」、「DIY」等、初心者にもわかりやすく項目別に分けてあり、それぞれ図解・写真も豊富に紹介されています。車中泊に興味が無かった人でも、「これだったら一度チャレンジしてみようかな」という思いが湧き上がってくるような本です。

 また、この本は、普段の生活とちょっと違った体験をしてみたいと思っているいろいろな年代のすべての人に、参考にして頂けるに違いありません。

 みなさん、この本を読み、一度車中泊にチャレンジしてみませんか?
 車中泊を通じて、新しい趣味も生まれるかもしれませんよ。

 参考までに、『ミニバン車中泊バイブル』 稲垣朝則/著 マイナビ (市立・成人 786.3/ /15)という本もおすすめです。

ショートショート

 『エヌ氏の遊園地』 星新一/著 新潮社 (市立・成人 B/913.6/ホシ/13)

 みなさんは「星新一」という人を知っていますか?

星新一とは、SS(ショートショート)という数ページから数十ページで読める短い作品を多く生み出した人物です。
「昔、教科書で作品を読んだことがあるかも」という人が、いるかもしれません。
その作品には、美人のロボットが登場しましたか?
それとも、なんでも飲み込みそうな大きな穴の話だったでしょうか?

 今回私が紹介するのは、全ての作品に「エヌ氏」という人物が登場する『エヌ氏の遊園地』です。
この本の中では、探偵や博士などのエヌ氏たちが、事件に巻き込まれたり、何かを開発したりと色々な形で活躍しています。
 また、エヌ氏に注目して読むだけでなく、どれも短い物語なので、
「この話はどう終わるのだろう?」
「あと3ページしかないけれど、この話はちゃんと解決するのかな?」
などと、考えながら読んでも楽しめます。

 星新一の作品は「面白い話が読みたいけれど、長い小説は読むのが大変!」と思っている人にオススメです。
なんと1つの作品が、ほんの数分で読めちゃいます。
また、文庫サイズの本なので、どこかに行く移動中や、寝る前の数分でたっぷりと楽しむことが出来ます。

 今回紹介した本だけでなく、星新一の作品はどれも面白い内容ばかりです。
小さなスマートフォン1つで電話、メール、音楽などが簡単に楽しめる時代になった今だからこそ、少し不思議でかなり面白い近未来が広がる星新一ワールドにぜひ一度、足を踏み入れてみてください。