図書館スタッフおすすめ本
現代川柳を浴びる
『リバー・ワールド』 川合大祐/著 書肆侃侃房(市立・成人 911.46//21)
まず、書架での立ち姿を見てほしいです。シルバー川柳がずらっと並ぶ横に、どん、とたたずむ真っ赤な背表紙。厚さはまわりの本の倍はあるでしょうか。そこへはみ出さんばかりにタイトルが貼り付いています。『リバー・ワールド』。少年マンガのオノマトペみたいな、ぎざぎざのオーラがほとばしる字。
一見なんの本だかわかりませんが、分類通り川柳の句集です。しかし中身は、想像とまったく違うと思います。いくつか句を引いてみると、
トマト屋がトマトを売っている 泣けよ/川合大祐
花の名をだれも信じてくれない日
横綱を言葉で言うと桜桃忌
いわゆる川柳が重んじる「共感」を、煮詰めに煮詰めてできてしまった異形の文字列。このような川柳=現代川柳が、全部で1,001句掲載されています。
はじめは1句1句に「?」となるかもしれません。でもそのうち、ほどよいレイアウトに運ばれて、飛ばし読みできるようになってきます。それでいい。そうしてめくっていくうち、きっとどこかで急ブレーキがかかります。そのページにある句があなたの、あたらしい感情の回路へ、大量の電流をどっ、と流してくれるはずです。
恐竜でひらかなかった扉の前に/川合大祐
わたしにもわたし逃げ去るための橋
現場にはスーパーボール跳ねており
「山本リンダ」
道 彼と呼ばれる長い神経路
17音にこれだけのことが込められるんだという驚き、そして込められたことからこんなにも世界が広げられるんだという歓びを、どうぞ1,001句分浴びてみてください。そしてもしよかったら、あなたに急ブレーキをかけさせた句、こっそり教えてくださいね。
死、の文字を、もうすぐあめ、と読み上げた/川合大祐
見て、食べて、使って楽しい!
『素晴らしきお菓子缶の世界』 中田ぷう/著 光文社 (市立・成人 675.1//21)
『もっと素晴らしきお菓子缶の世界』 中田ぷう/著 光文社 (市立・成人 675.1//23)
お菓子缶ってこんなにも種類があるんだとびっくり!!
貰っても嬉しいし、贈る時もワクワクしながら選んだり、つい自分の分まで買ってしまったり・・・そんな経験ありませんか?
著者は、47年以上お菓子缶の世界にはまり、所有するお菓子缶の数は1000缶以上という中田ぷうさん。
日本のお菓子缶、日本で買える外国のお菓子缶、美術館・博物館・動物園のお菓子缶、名店のお菓子缶の歴史など、写真とともに詳しい解説が満載で、読んで楽しいお菓子缶の世界がここにあります。
缶の紹介だけでなく、コラムも充実。空き缶再利用アイディアでは、お弁当箱や植木鉢などなるほどと思うような利用法も載っています。食べ終わった後もお菓子缶は大活躍ですね。
そういえば小さい頃、お菓子缶にかわいい消しゴムやお土産でもらったキーホルダーなどを入れて、「たからばこ」と呼んでいたなーと懐かしい思い出もよみがえってきました。
著者によると、第一次お菓子缶ブームが起こったのは2010年頃、2020年頃からは第二次お菓子缶ブームが始まったようです。
色もデザインも形も多種多様なお菓子缶の世界をのぞいてみてはいかがでしょうか。
エッセーってなあに? ~「読書に関するエッセーコンクール」募集開始~
『日本エッセイ小史』 酒井 順子/著 (市立・成人 914//23)
今年も、「読書に関するエッセーコンクール」の応募が始まりました!
今年も、「読書に関するエッセーコンクール」の応募が始まりました!
そこで今回は、エッセーとは何かを紹介していきます。
学校で、エッセー=随筆と習った方も多いのではないでしょうか。
随筆といえば、清少納言『枕草子』ですし、エッセーと言われると、中学校の国語の授業で習った、向田邦子『字のないはがき』を思い出す方もいるかもしれません。
いくらエッセーと随筆が同じものだといわれても、『枕草子』と『字のないはがき』では、なんだかピンときませんね。
さらにややこしいのが、コラム。
ファッション誌に連載していたコラムが、書籍化したらエッセーの棚に並んでいたり、なんてことも。
エッセー、コラム、随筆……。
このあたりのややこしい分類を、歴史の流れで分かりやすくまとめた本がこちら!
酒井順子『日本エッセイ小史』です。
講談社エッセイ賞の選考委員も務める著者が、受賞作や話題になったエッセーをもとにエッセーの歴史を紐解きます。
あの時代にみんながこぞって読んだ懐かしのエッセーや今話題の芸人エッセー、長寿エッセーまで、新たなエッセーと出会えること間違いありません。
いかがですか? だんだん、エッセーに興味が沸いてきませんでしたか?
2023年のテーマは「図書館が出会わせてくれたもの」です。
これを読んでエッセーを書いてみたいと思った方、「読書に関するエッセーコンクール」へのご応募をお待ちしています!
詳しくは下記ホームページをご覧ください。
全国の地元パン食べてみませんか。
『日本全国地元パン』 甲斐みのり/著 (市立・成人 596.6//23)
地元パンとは、その土地土地で長年製造・販売され、親しまれているパンのことです。名称・味・パッケージデザイン等に独特の味わいのあるものが多く、時には地域の土地柄や歴史すら垣間見せてくれるものもあるそうです。この本では北は北海道から南は沖縄まで、著者が情熱をもって蒐集してきた地元パンとその販売店が紹介されています。
地元パンとは、その土地土地で長年製造・販売され、親しまれているパンのことです。名称・味・パッケージデザイン等に独特の味わいのあるものが多く、時には地域の土地柄や歴史すら垣間見せてくれるものもあるそうです。この本では北は北海道から南は沖縄まで、著者が情熱をもって蒐集してきた地元パンとその販売店が紹介されています。
昔ながらのパン店らしく、ユーモラスでどこかほっとする名称やデザインのパンが目白押しです。レトロなものが好きな方には見ているだけで楽しいかもしれません。そして何よりとても美味しそう。今すぐこのパンたちにかぶりつきたくなって、時間でなくてもお腹が空いてきます。
可愛いもの好き、レトロ好き、パン好きの方には必見の一冊です。
ちなみに、四日市のパン店も2軒ほど出ていますよ。
野菜はけなげに育つのです
『けなげな野菜図鑑』 稲垣 栄洋/監修 ヒダカ ナオト/絵 アマナNATURE&SCIENC/編 エクスナレッジ (市立・成人 626//22)
我が家の庭に、ようやくトマトが実りました。
昨年はうまく育たなかった為、今年こそはと、土を変え、肥料を与え、大切に育てた甲斐がありました。
けなげに育つ野菜はかわいいもの。
そんな私が紹介したい本は『けなげな野菜図鑑』です。
「トマトは実は赤すぎて観賞用だった」というような、聞いた事がある様なお話から、「ゴボウは日本以外ではただの雑草」「緑色のキュウリは世をしのぶ仮の姿」という仰天するような内容もあります。
その他にも、野菜の栄養素や冷蔵庫で保存するかしないか等のタメになるお話も。
野菜が嫌いな人も、きっとこの本を読めば好きになるかもしれませんね。
不器用だけど、作ってみたい。
『はじめての手作り小物』 かっぱ/著 ワニブックス ( 市立・成人 594//21)
「手芸をしてみたい!」と思い立ったものの、今までほとんど経験がないし、受けたはずの家庭科の授業の記憶もはるか遠くに…。
「手芸をしてみたい!」と思い立ったものの、今までほとんど経験がないし、受けたはずの家庭科の授業の記憶もはるか遠くに…。
図書館に手芸の本はたくさんあるけれど、道具もいろいろ揃えないといけないし、凝ったものをいきなり作るのはハードルが高くて…と、興味はあれど腰が重く、なかなか実行に移すことができませんでした。
そんなときに図書館で見つけたのが、この『はじめての手作り小物』という本。色とりどりの作品が散りばめられた表紙の写真の可愛らしさと、タイトルとともに書かれている「ぶきっちょさんでもできる」という言葉に、「初心者の私でも作れるかも?」と意欲がわきました。
メインで使用する材料は紙と糸、布、レジン、ろうそく。材料ごとに6種類ずつ、小物の作り方が写真つきで紹介されています。私は特にレジンで作る作品に興味があったため、そのページをメインで読みました。表紙の写真にも掲載されている、レジンで作る棒つきキャンディーは見た目も本物そっくりで、思わず食べたくなってしまいそうな出来栄え。作り方も簡単で、さっそく作ってみたくなりました。
使用する道具類も、家にあるものや、百均でも売られている安価なものがほとんどで、そろえるハードルが低いのもうれしいポイント。各作品のページに、難易度や作業にかかる時間の目安も掲載されているので、自分のスキルに合わせて選ぶこともできます。お子さんでも作れそうな作品も載っているので、親子でわいわい手芸を楽しむのもよし。夏休みの工作にも使えるかも?
キモノの世界にようこそ
『召しませキモノ』 スタジオクゥ/ 著 イーストプレス (市立・成人 593.8//23)
何十年と箪笥の肥やしになっている着物、もったいないなあ、着付け習いに行こうかなと思いつつ、行動に移す事も出来ずにいる私。
そんな私の目に留まったこの本のタイトル、着付けの本かな?と思わず手に取って見たところ、着物のある生活の楽しさを描くコミックエッセイでした。
何十年と箪笥の肥やしになっている着物、もったいないなあ、着付け習いに行こうかなと思いつつ、行動に移す事も出来ずにいる私。
そんな私の目に留まったこの本のタイトル、着付けの本かな?と思わず手に取って見たところ、着物のある生活の楽しさを描くコミックエッセイでした。
着物や小物に関するお店の紹介だけでなく、帯や草履など和服に携わる職人の方の思いなどをきれいな写真やイラストで描かれています。
さらに、綿と真綿とは違うことや、着物や帯の柄には意味があることなど、和装に関する知識も盛り込まれています。
また、各章のはじめにその土地で親しまれている有名なお菓子についての紹介など興味深く楽しめます。
和装の世界を気軽に感じて、着物を身近に感じることが出来る一冊です。
しんどいあなたへ ―戦中、戦後、平成の“生きづらい”女たち―
「白痴」(『白痴』 坂口安吾/著 新潮社 (市立・成人 B913.6/サカ/12)などより)
「杳子」(『古井由吉自撰作品 1』 古井由吉/著 河出書房新社 (市立・書庫3 913.6/フル/12)より)
『コンビニ人間』 村田 沙耶香 文藝春秋 (市立・成人 913.6/ムラ/16)
近年、生きづらさに悩む人が増えているという。
生きづらさをテーマにした本が数多く出版され、市立図書館でも多く所蔵している。
では文学の世界では、生きづらさを抱えた女性たちを、どう描いてきたのだろうか。
坂口安吾「白痴」は、戦時下の東京を舞台にした小説である。
新聞社に勤める井沢という主人公の男と、ひょんなことから暮らすようになった「白痴の女」は、戦中に暮らす生きづらさを抱えた女性である。
「然るべき家柄の然るべき娘のような品の良さで、眼の細々とうっとうしい、瓜実顔の古風の人形か能面のような美しい顔立ち」と描写される彼女だが、「特別静かでおとなし」く、「何かおどおどと口の中で言うだけで、その言葉は良くききとれず」、「料理も、米を炊くことも知らず、やらせれば出来るかも知れないが、ヘマをやって怒られ」てばかりであった。
空襲が繰り返される日々の中で「配給物をとりに行っても自身では何もできず、ただ立っているというだけ」という彼女は、怒鳴るばかりの義母と頼りにならない夫から逃げ、
隣の家に住んでいた井沢のもとに身を寄せるようになった。
しかし、「配給の行列に立っているのが精一杯で、喋ることすらも自由ではない」彼女を「まるで俺のために造られた悲しい人形のようではないか」と考える井沢との生活は、彼女の生きづらさを解消したわけではないだろう。
1970年に芥川賞を受賞した、古井由吉「杳子」に登場する蓉子もまた生きづらさを抱えた女性である。
大学生である主人公Sは登山をしている途中に、谷底でぼんやりと岩の上に座っていた杳子と出会う。
杳子は会うたびに主人公に違った印象を与え、彼女の話はどこか要領を得ない。
彼女は自身のことを「わたし、自分の病気のことをひとに喋ると、いつでも嘘をついてしまうんです」と語る。
そんな彼女に魅力を感じていたSだったが、約束と違う行動をとることのできない彼女と行動を共にすることに限界を感じ始める。
まるで彼女の保護者かのように振る舞うSだが、病気を超えて彼女自身を理解しようとする様子はない。
「白痴の女」も杳子も、男性の視点から描かれる。彼女たちの生きづらさは、男性と出会っても理解されず、解消されることもなかった。。
しかし、生きづらさを抱える女性を真っ向から描いた作品が、平成の世に現れた。
2016年に芥川賞を受賞した『コンビニ人間』である。
主人公である古倉は、お手本のない人生に生きづらさを感じていた。
大学生の頃、新装開店するコンビニにアルバイトとして働きはじめたことで、「コンビニ店員として生まれる前のことは、どこかおぼろげで、鮮明には思い出せない」ほどにコンビニ店員に順応する。自分の性格も、アルバイト仲間からお手本に作り上げた。
彼女は、白羽という男と出会ったことで、コンビニ業務以外のことを上手くこなせないという
“生きづらさ”と改めて直面することになるのである。
古倉は白羽に、助けも理解も求めない。彼女は自分の生きづらさを粛々と受け止めるのだ。
戦中、戦後、平成と変化してきた時代の中で、同じようで異なる生きづらさを抱えながら生きる彼女たち。
そんな彼女たちの生き方から、生きづらさに立ち向かうヒントがあるかもしれない。
職人とアーティストの狭間で
『リ・アルティジャー二 ルネサンス画家職人伝』 ヤマザキ マリ/著 新潮社 (市立・成人 726.1//22)
最近様々なジャンルの本を読んできましたが、そろそろ原点回帰したいと自分好みの美術史に関する本を探していた際に、ふと目についたのがこの本でした。
表紙にはいかついオジサンたちの顔が並び、作者は『テルマエ・ロマエ』などで知られるヤマザキ マリさん。
イタリア、フィレンツェの国立アカデミア美術学院で学び、長らくイタリアで暮らした作者は、様々な制約の中、自身がやりたいことを実現しようと奮闘する画家たちを人間臭く、生き生きとした姿で描いています。
誰もが毎日祈りたくなる美しい聖母マリアを描こうとする画家。遠近法に全てをささげた画家。当時最先端であった油絵の技法でまるで生きているような人物画を描こうとした画家。イタリアルネサンスを彩る偉大な人物が続々と登場し、出会い、影響を与え合います。
ボッティチェリやレオナルド・ダ・ヴィンチのようなメジャーどころだけではなく、一般にはあまり知られていないものの個人的に思い入れのある画家も多数登場したのもうれしいポイントでした。
いかに抜きんでた能力を備え、優れた作品を世に出しても、当時はまだ一介の職人にとどまらざるをえなかったルネサンスの画家たち。与えられた仕事を完遂する職業人としての生き方と、今日的な「アーティスト」としての自我の目覚め。その両方に触れることが出来る一冊です。
首を洗って待っていた! 20年目の<戯言>シリーズ。
『キドナプキディング』 西尾維新/著 講談社 (市立・成人 B913.6/ニシ/23)
首を洗って待っていた! 20年目の<戯言>シリーズ。
中学高校生の頃に、『クビキリサイクル』から始まる戯言シリーズにハマり、西尾維新にどっぷり浸かった……という青春を送った方も多いだろう。
そんな皆様に朗報である。
戯言シリーズ待望の続編、『キドナプキディング』がついに刊行された。
今回の主人公となるのは、戯言シリーズで語り部を務めた戯言遣いと、彼の相棒であった玖渚友の娘、玖渚盾(くなぎさ じゅん)である。
私の名前は玖渚盾。誇らしき盾。
この始まりの一文から既に西尾維新は全開である。
「誇らしき盾」という自己紹介に潜む“矛(ほこ)”“盾”の文字。
そして何より、シリーズを読んできた読者に衝撃を与えたのは、“じゅん”という娘への名付けだ。戯言遣いと友に多大な影響を与えた友人、哀川潤にあやかったことは明白だ。
人類最強の請負人、哀川潤と澄百合学園に通う女子中学生、玖渚盾。
“じゅん”コンビがどんな冗談(kidding)みたいな誘拐(kidnap)に興じるのか、ぜひご覧いただきたい。
新本格ミステリファンへのサービスが満点の目次も見逃せない。
章タイトル「悪魔が来りて人を轢く」「城王蜂」「玖渚家の一族」は横溝正史『悪魔が来りて笛を吹く』『女王蜂』『犬神家の一族』のオマージュである。
では果たして内容は……?
すべての西尾維新ファンへのご褒美のような一冊であるが、
西尾維新デビューにもぜひおすすめしたい一冊である。
豆、豆、豆、豆、豆。
『日本の豆ハンドブック』 長谷川 清美/著 文一総合出版 (市立・成人 616.7//16)
司書は毎日たくさんの本を見ているので、本屋さんではなかなか出会えない本とときどきめぐりあいます。
今回もとんでもない本に出会いました――『日本の豆ハンドブック』、です。
今回もとんでもない本に出会いました――『日本の豆ハンドブック』、です。
表紙に大きく「豆」。手の中に収まる新書判。
何がすごいってまず、写真がすごい。
日本各地の豆約200品種について、一粒ずつの写真を掲載。オールカラー、高解像度の美麗写真で、模様や色合いが手に取るようにわかります。一寸そら豆なんて、窪みをなぞりたくなるほど。しかも上から撮ったものと横から撮ったものの二点ずつ掲載されているので、サイズや形状もばっちりつかめます。もし道に落ちているのを見つけても、「ビルマ豆だね……」ってすぐ言えちゃいます。粋。
そして、データがすごい。
その豆の名前の由来から育てられるようになった経緯、現在の栽培事情までが豊富に収録されています。誰誰さんちの先代がどこから持ってきた、など、フィールドワークによる濃密情報満載です。
さらに採取場所は町名まで記載のうえ、育てている方のお名前・生年まで(!)載っています。その人の家では何にして食べているかも書いてあって、いちいちお腹がすくこと請け合い。
とどめに、コラムが充実。
地域ごとの豆料理を家庭の写真たっぷりで紹介してみたり、里山の来し方行く末に思いを馳せてみたり、豆の育て方やよい豆の選び方など実践に役立つことまで押さえてみたり。ここまでされると、なんでもいいからとにかく豆の実物をつまみたくなってきますよ。
似たような豆にも地域ごとの特色と歴史があり、それぞれに大事にされて今があるんだ、と妙な感動さえおぼえます。豆で感動、してみませんか。
この本の出版元である文一総合出版さんは、ほかにもたくさんのハンドブックを出しています。
『ウニハンドブック』 田中 颯/著 (市立・成人 484.9//19)
『シダハンドブック』 北川 淑子/著 (市立・成人 476//07)
『酒米ハンドブック』 副島 顕子/著 (市立・成人 616.2//17)
など。
いずれも新書判、美麗写真満載。めくるだけでも楽しいのでぜひ手に取ってみてください。
……個人的には須黒 達巳/著『ハエトリグモハンドブック』(市立・成人 485.7//22)が、次のねらい目かな……。
水を浸み込ませる土
『よくわかる土中環境』 高田 宏臣/著 パルコエンタテインメント事業部 (市立・成人 468.2//22)
この本は、山・川・里・海が一体としてつながる自然の仕組みについて知る本です。
大地が雨を浸み込ませる。山では木々が土中をぬらしながら水を吸い上げる。余った水は下に下り水脈を伝って川や海に湧き出る。
このつながりを保つには水と空気が循環する土中環境が必要だというのです。
土の中の水と空気の動きが妨げられてしまうとやがて、水が浸透しにくくなった山からは泥水が流れ落ち、その泥が川底を詰まらせるようになるのだそうです。
そして人間が住む里。昔の人々の暮らしの中には、水源を守る木を御神木とする、川や池の泥をさらい脇に木を植えるなど、自然の仕組みを維持する営みがみられることが紹介されています。
では今の私はどうすればよいか。本書後半は、身近な場所から土の中を改善するとして、落葉や枝の活用法、庭に溝や穴を掘ること、土を育てる草の刈り方などの働きかけを教えてくれます。
良好な環境にある土って、ふわっと軽く、しっとりと潤ってるんですって。
「文房具沼」へようこそ!
『文房具』 暮らしの図鑑編集部/編 翔泳社 (市立・成人 589.7//21)
「文房具」という言葉に、あなたはどんな印象や思い出を持っていますか?
「鉛筆とか消しゴムとかボールペンとか、種類は多そう」
「学生時代は、香りつきのボールペンを全色揃えてた!」
「普段、連絡はスマホばっかりで、手紙なんて何年も書いてないなぁ」
「便箋に万年筆で手紙を書くのはちょっと憧れるけど、なんか大袈裟かも」
……などなど、人によって千差万別かと思います。
実は、文房具の世界は日々進化しています。そして文房具に興味をもち、収集している人がいます。文房具を収集することに熱中している状態を指して、「文房具沼(または「文具沼」)にハマる」と呼ぶのですが、近年は大人を中心に、沼にハマる人が増えているんです。
今回は、この『文房具』という本の中から、ガラスペンとインクをご紹介します。
ガラスペンとは、名前の通り全体がガラス製で、先端にインクをつけて使う筆記具です。量産が難しく、手作業で作られているものがほとんど。軸に色ガラスが使われているもの、模様がついているものなど、繊細なつくりを眺めているだけでもわくわくしてきます。
ガラスペンにつけるインクは、インクの色も瓶のデザインも、メーカーによってさまざま。全国の文具店では、その地方の名所や特産品をイメージして作られた、オリジナルの「ご当地インク」が販売されていたりもします。文房具の中でも、インクを収集している人は多く、「インク沼」という言葉がSNSなどを中心に使われるほど、ハマる人が続出しています。
私自身、この本を読んだときにも、ガラスペンとインクの紹介に強く心を惹かれました。もともと収集することが好きで、シールやマスキングテープを集めていたため、さまざまな色のインクが並んでいる写真を見て、心が躍りました。
とはいえ……たくさん収集するなら、どうしてもお金がかかってしまいますよね。ちょっと興味はあるけれど、最初からインクを大人買いしたり、1本で何千円もするガラスペンをいきなり買ったりするのは……と、尻込みしている方に朗報です。
書店やインターネットでは、ガラスペンとインクがセットになったものや、数種類のインクがセットになったものがムック本として比較的安価で販売されており、インク沼に飛び込む最初の一歩を後押ししてくれます。
図書館にはこの他にも、文房具やガラスペン、インク等を紹介している本があります。「文房具が好きだ!」という方、「文房具って、そんなに種類があるの?」という方、「収集するのが好き!」な方にもおすすめです。文房具沼の入口を、ぜひ覗いてみてください。
よい図書館とは?誰がつくるのか?
『行政マンとして図書館員が忘れていること』 内野 安彦/編著 樹村房 (市立・成人 013.1//22)
本書は、図書館で働く人々に向けたメッセージを2部構成で発信しています。
1部は、茨城県鹿嶋市と長野県塩尻市の図書館長を勤めた著者が、市民に愛される図書館づくりに必要な図書館員の役割について、評価対象を市民・役所の同僚・地域の3つに分けて記しています。
2部は、業務委託・指定管理者・直営といった立場の違った4人の図書館長経験者が、個々の経験を元に、図書館員のあるべき姿について描出した論考を収録しています。
図書館の予算が減らされるのはなぜか、どうして図書館は行政内で評価されないのか、行政マンとの良好なパートナーシップを築くにはどうすればいいのか…。
より良い図書館サービスを届けるには、市民は図書館に何を望んでいるのか、市民や地域に適切なアドバイスができるか、地域住民から信頼されるにはどうすればいいのか…。
全く図書館を知らない役所の上層部に、図書館の存在感や有用性を示せなければ、当然人も予算も削られます。正規職員・会計年度任用職員に関わらず図書館員が変わらなければ図書館に期待を寄せる市民を守れません。「図書館員は役所と地域を知らない」と言われないように、図書館員の意識改革が必要なことを痛感させれた1冊です。
著者の下記の図書についても併せて読んでいただきたいです。
『図書館人への言葉のとびら』 内野 安彦/著 郵研社 (市立・成人 010.4//22)
『図書館はまちのたからもの ひとが育てる図書館』 内野 安彦/著 日外アソシエーツ (市立・成人 010.4//16)
『図書館長論の試み 実践からの序説』 内野 安彦/著 樹村房 (市立・書庫 013//14)
絵が語る?愛を語る!自由に語る♪
(1)『絵の中のモノ語り』 中野京子/著 KADOKAWA (市立・成人 723//22)
(2)『愛を描いたひと イ・ジュンソプと山本方子の百年』 大貫智子/著 小学館 (市立・成人 723.2//21)
(3)『妄想美術館』 原田マハ・ヤマザキマリ/著 SBクリエイティブ (市立・成人 720.4//22)
不要不急の風潮により、美術館での絵画鑑賞も間々ならない日々が続いています。そこで、絵画にまつわる3冊を紹介させてもらいます。
(1)は、西洋絵画に描き込まれたモノに的をしぼったエッセーです。
日本の美しい提灯、一時期盛大に吸われていた煙草、どんな使い方をしたのか忘れられたモノ、今なお形を変えずに残っているモノ、絵画の中には意外なモノが隠されています。
歴史の謎や社会背景、画家たちの思惑をミステリアスなエピソードとともに紹介しており、絵画鑑賞に新たな視点を提示してくれた1冊です。
日本の美しい提灯、一時期盛大に吸われていた煙草、どんな使い方をしたのか忘れられたモノ、今なお形を変えずに残っているモノ、絵画の中には意外なモノが隠されています。
歴史の謎や社会背景、画家たちの思惑をミステリアスなエピソードとともに紹介しており、絵画鑑賞に新たな視点を提示してくれた1冊です。
(2)は、大正生まれの韓国人画家と日本人妻の生涯を綴ったノンフィクションです。
東京での2人の出会い、北朝鮮・元山での新婚生活、朝鮮戦争の勃発、韓国・釜山への避難、方子の日本帰国、息子たちへの自筆絵葉書、夫婦が交わした手紙、ジュンソプの死去、永遠の別れ…。
情熱的な画家と寡黙な妻の姿が、方子へのインタビュー、韓国での現地取材から見えてきます。人が幸せに生きるとはどういうことか考えさせられた1冊です。
(3)は、美術を溺愛する作家と漫画家の対談です。
「絵画は親しい友だち、美術館は友だちの家」と言う原田マハさんと、「美術館は創造物を糧に生きてきた人々の魂が集う緑豊かな森のようなもの」と言うヤマザキマリさんが、美術館や芸術家たちの妄想話を思い付くままに繰り広げます。
絵画や美術館への思いを好きなだけ膨らませて自らの想像力(妄想力?)を養ってくれた1冊です。
「絵画は親しい友だち、美術館は友だちの家」と言う原田マハさんと、「美術館は創造物を糧に生きてきた人々の魂が集う緑豊かな森のようなもの」と言うヤマザキマリさんが、美術館や芸術家たちの妄想話を思い付くままに繰り広げます。
絵画や美術館への思いを好きなだけ膨らませて自らの想像力(妄想力?)を養ってくれた1冊です。
美術館に気軽に出向いて心おきなく語り合える日々が再び訪れることを願っています。
お気に入りの絵の前で大切な人との賑やかなおしゃべりに包まれながら。
最後に、令和4年8月13日に101歳で他界された山本方子さんへ哀悼の意を捧げます。
ようやく最愛の人と一緒になれましたね!安らかに眠ってください。
散歩のお供に
『散歩が楽しくなる空の手帳』 森田 正光/監修 東京書籍 (市立・成人 451//20)
散歩に出かけたとき、空を見上げることはありますか?
私は意識しないとあまり見上げません。
しかし、この本と出合って「散歩」や「空を見上げること」をしてみたくなりました。
この本は、序章から第3章と「空&雲の雑学」の章で構成されています。
序章では、「空&雲の基本」を学ぶことができます。
「雲とは何か?」から説明されているので、空のことを何も知らない状態でも、本を読み進められるようになっています。
第1章では「四季折々の空&雲」、第2章では「さまざまな雲と大気光学現象」、第3章では「山と海の空&雲」が写真とともに紹介されており、ところどころで空にまつわる俳句も紹介されています。
写真を見て楽しんだり、俳句を楽しみに読み進めたりすることもできます。
また、「空&雲の雑学」の章では、「へぇ!」と納得するような雑学が紹介されています。
ちなみに、読み終わってみて私が好きだなと感じた現象は「環水平アーク」です。
気になった方はぜひ本をお手に取ってみてください。
好きな現象を探すもよし、散歩のお供にして、空を眺めて雲の名前を探すのもよし、色々な楽しみ方ができる本です。
この本を読み終わった後は、きっと散歩に出かけてみたくなりますよ。
へとへとパンって!?
『へとへとパン 小麦粉を使わない白崎茶会のかんたんレシピ』 白崎裕子/著 マガジンハウス (市立・成人 596.6//22)
図書館にはパン作りの本がたくさんあります。
パンを自分で作れたら楽しそう!ふとしたきっかけでパン作りを始めた頃、本を借りてはいろんなレシピでパンを作っていました。
ですが、小麦粉をこねたり、生地を発酵させたり・・・パン作りは面白いですが結構大変。
もっと簡単に作ることができるレシピはないかなと探していたところ、みつけたのがこの『へとへとパン』です。
小麦粉とイーストは使わず、米粉とベーキングパウダーを使うので発酵いらず、材料を混ぜて焼くだけなので思い立ったらすぐに作れそう。
『へとへとなのに、「パンが焼ける・・・・!?」』というフレーズにも思わず笑ってしまいました。
同じ著者で、料理レシピ本大賞2017【お菓子部門】で大賞を受賞した『白崎茶会のあたらしいおやつ』(白崎裕子/著 マガジンハウス (市立・成人 596.6//16))もおすすめです。
この本に載っているレシピは何度も繰り返し作っていて、クッキーやマフィン、蒸しパンやパンケーキなどをどれも米粉で簡単に作ることができます。
特におすすめはスノーボールというクッキー。本当にすぐに作れてとても美味しいですよ。
冬が近づいてきました。寒くて家から出たくない日は、おうち時間にぜひ、何か作ってみてくださいね。
言の葉は死なず
『言の葉は、残りて』 佐藤 雫/著 集英社 (市立・成人 913.6/サト/20)
大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を見ている影響で手に取ったこの本。
大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を見ている影響で手に取ったこの本。
鎌倉三代将軍 源実朝と、その妻 信子の物語です。
まだ若い二人が出会い、周囲に翻弄されつつも、成長していく姿。
実朝の最期がわかっているだけに、切なさも募ります。
武力ではなく「言の葉」で世を収めることをめざした実朝。
そして、後世に残されていく実朝の「言の葉」。
美しい表紙絵も素敵です。
同筆者の歴史恋愛小説第2弾、茶々(淀殿)と大野治長の物語「さざなみの彼方」もぜひ。
タイムスリップして事件解決!
『大江戸科学捜査八丁堀のおゆう』 山本巧次/著 宝島社 (市立・成人 B913.6/ヤマ/15)
推理ものや歴史好きな人なら、タイムスリップして事件を解決したいと思った事はありませんか?
この本は現代に生きる関口優佳ことおゆうが、江戸時代にタイムスリップし、現代の科学の力で事件を解決していく物語です。
江戸時代の証拠品を現代に持ち帰っては、化学分析の専門家である宇田川の力を借りて、解決していきます。
宇田川の力さえあれば、おゆうの力はいらないんじゃないのと思ってしまいますが、おゆうも女岡っ引きとして、危険な中、体をはって事件を解決します。
指紋鑑定はもちろんですが、なかにはドローンを飛ばして見事解決する時も。
いやいや、ドローンはさすがにばれるでしょとおゆうは言いますが(私も思いますが)、宇田川は、昔の人は現代人ほど空を見ないからと、ドローンを飛ばします。
これだけ怪しい行動をしていたら、周りの人が怪しまないのかと思いますが、八丁堀の役人である鵜飼には、実はばれていたり。
でも、鵜飼もおゆうたちに秘密があって・・・。
いつも新刊が出ると、次はどんな道具を使って解決するのかわくわくしながら読んでいます。
皆さんも、自分がタイムスリップしたら、どんな手を使って事件を解決するか、考えてみてください。
私にとっての1つの色は2つも3つも名前を持っていた
『色弱が世界を変える カラーユニバーサルデザイン最前線』 伊賀公一/著 太田出版 (市立・書庫 496.4//11)
人の網膜は赤・青・緑の3色を見分けることができ、3色の組み合わせで他の色を作っている。
色弱はその3色のうち1色または2色が見分けにくく、著者である伊賀さんは赤色が見分けにくい。
本書では生まれつき色弱者である著者が、自身が見えている世界や半生を振りかえり紹介している。
「私にとっての1つの色は2つも3つも名前を持っていた」という言葉が印象的で、巻頭ページでそれぞれの見え方を表す色シミュレータで視覚化されてはじめてピンときた。確かに見えない。
また、著者は、どんな色の感じ方をしている人にもわかりやすい色使いをするよう勧める仕事をしている団体であるNPO法人カラーユニバーサルデザイン機構CUDOの理事長(当時)である。
講演会等に呼ばれることもあり、体験するほうが言葉で説明するより伝わると、著者は色覚の体験ツールをトランクに入れ持ち歩く。
人気があるのはバリアントールと呼ばれるゴーグル型色弱模擬フィルターで、簡単に色弱者と同じ色の世界を見ることができる。
かけた人からは「こんなに色の見分けができないとは思わなかった」「なんて不便なの」と驚きの声があがるという。
巻頭で「よく見て比べてね」「こう見える理由」「ふだんを困ること」「知って貰うために」を通してあらかじめ知ることが出来るので知識がなくとも読めて優しい。
本文のおすすめは舞台照明のバイトのエピソード。色の見分け方に驚き、そんな失敗があったのかと楽しく読めた。