図書館スタッフおすすめ本

東京會舘を愛した人たち

 
 『東京會舘とわたし』上・下 辻村深月/著 (市立・成人 913.6/ツシ/16)
 『図書室で暮らしたい』 辻村深月/著 (市立・成人 914.6/ツシ/15)

 東京會舘といえば、芥川賞や直木賞の受賞記者会見が行われる会場としてご存知の方も多いのではないでしょうか。『東京會舘とわたし』(上・下)の主人公は、この建物「東京會舘」です。大正から昭和、そして平成という激動の時代を経験した東京會舘。その場所に関わり、その場所を愛したさまざまな人たち(作家・バーテンダー・菓子職人・結婚式を挙げた人など)の心あたたまる物語が時系列で描かれています。それぞれを短編として読むことも出来ますが、最後まで読んでいくとひとつの壮大な物語として完結します。訪れたこともない東京會舘が、まるで自分もその歴史をずっと見てきたかのように身近に感じられる読後感は、さすがと唸ってしまう辻村ワールドでした。

 直木賞作家である著者は、受賞前に東京會舘で結婚式を挙げたそうです。その時、“直木賞を受賞して戻ってきます”と告げ、4年後にそれは本当に実現しました。支配人はそれを覚えていて“おかえりなさいませ”と迎え入れたという感動的なエピソードもあり、東京會舘への愛が詰まった物語が誕生したのも納得です。

 初代を旧館(上巻)、そして建て替え後を新館(下巻)として記された、東京會舘の物語。
 同著者の「東京會舘の思い出」が収録されているエッセイ『図書室で暮らしたい』も併せてオススメします。

おそるべし、”ジェーン・スー”


『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。』 ジェーン・スー/著 文藝春秋 (市立・成人 914.6/シェ/16 )

 “未婚のプロ”ジェーン・スーさんの新刊、ついに出ました!
今回は、オーガニック・ヨガ・ファッション・京都など、まるで女子だったら好きでないと、やっていないといけないと世間からの空気がただよっている【女の甲冑】をテーマに、ジェーン・スーさんが持論を展開します。

 プロポーズされない101の理由を紹介する『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな 』 幻冬舎 (市立・成人 367.2/ /14 )や、女子に関わる様々な問題・話題について書かれた『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』 幻冬舎 (市立・成人 367.2/ /14)など、ジェーン・スーさんの本に、私はまずタイトルから心をつかまれます。
 しかし、「いざ読むぞ!」と本を開く時はこわごわ…。
「そこまでですか!すごいですね。真似できません…」と思ったり、恐ろしく思い当たる節があって「ひぃ~」と心をえぐられたりするからです。
 でも、読まずにはいられない、読んでしまうのです。
それは、「そういう考え方もあるのか」と教えられたり、「あ、こう思ってたの私だけじゃないのか」と安心したりすることがあるからかもしれません。

 この夏、ジェーンスーさんと同じく、七分丈のレギンスを求めさまよった私。
知ってました?七分丈のレギンス、もう流行遅れらしいですよ…。
すみません、私履いてました。というか、履いてます!

時の罠にご注意を!

 『時の罠』 辻村深月,万城目学,湊かなえ,米澤穂信/著 文藝春秋(本館・成人 B913.6/ /14)
 
 電車の中で本を読みたいけど、文庫サイズの簡単に読める本が良いなあ。
好きな作家さんもいるし、人気の作家さんも書いているから、これにしよう。
退屈しのぎに、ただ何となく手にとった1冊。
毎日少しずつ読めたらと思っていたのですが、結局気になって1日で読み終えてしまいました。
 

 人気作家の辻村深月・万城目学・湊かなえ・米澤穂信による時をめぐる短編集です。
「タイムカプセルの8年」(辻村深月/著)では、息子の卒業時に先生によって埋められたはずのタイムカプセルが埋められていなかった。
熱血先生で生徒からも父兄からも人気の先生がなぜ?
先生のような教師になりたいという息子に、事実を知ってほしくない主人公がとった行動とは?
感動のお話です。

 「下津山縁起」(米澤穂信/著)では、科学の進化により、山に知性がある事がわかった未来。
なんと、上津山が下津山を殺害したとして有罪判決に?!
検事側も山なら、弁護側も山。
ありえないと思うかもしれませんが、近い将来こんな未来が待っているかもしれません。
奇想天外なお話です。

 他にも、おもしろいお話やぞっとするお話があります。
どの作品も、その作家さんならではのお話になっていますので、一度読んでみてください。

和装本をつくってみよう

『和装本のつくりかた』 村上翠亭・山崎曜/共著 二玄社 (市立・成人 022.8/ /09)

 この世にある様々な『もの』は、時代や文化によって変化、進化していくものです。図書館にある『本』もまたそのひとつ。その本の装幀に着目してみると、現代では洋装幀本が多く並んでいるのが見受けられます。対して、歴史的な和装の形態の本というものはなかなか見かけず、一般的になじみのないものかもしれません。この機に和装本というものに、触れてみてはいかがでしょうか。

 実は、和装本って意外と簡単に作れるんです。この本では、平安時代に利用された装幀を元に、現代でも使える和装本を提案しています。最低限の道具で合理的に作ることができ、それゆえにアレンジの効く『手作り』ならではの装幀です。和綴じ本や折り本などの伝統的なものから、洋紙を用いて作る写真アルバムなどの実用的な装幀本まで、幅広く掲載されています。
 作る工程は、写真で表記しているのでわかりやすいです。そのほかに、装幀についてのコラムなども充実しており、製本の心構えから和装本に纏(まつ)わる小話まで、読むだけでも興味深いですよ。

 この本を参考にして、書や画などの作品を綴ってみたり、小さな和装本を普段のメモ帳代わりに携帯してみたりしてもいいですね。
手作りならではの、愛着の湧く作品を作ってみてはいかがでしょうか。

女性作家ならではの推理小説

『鏡は横にひび割れて』  アガサ・クリスティ/著 橋本福夫/訳 早川書房 (市立・成人 B933/ /12)

 ミステリーの女王・クリスティによる、“老嬢探偵ミス・マープル”シリーズの一編です。NHKで放送された映像作品をご存知の方もいらっしゃるのでは。

 事件はマープルの住むセント・メアリ・ミード村に著名な女優が移り住んできたことから始まります。彼女の屋敷で催されたパーティの席上、村の一夫人が毒殺されます。しかし彼女に殺意を抱くような人物は浮かび上がらず、周囲は首をひねるばかり。ロンドン警視庁から派遣されてきた警部は、旧知のミス・マープルの協力を得ながら事件の解決を図るのですが・・・。

 この作品の最大の魅力は、殺人の動機でしょう。実は、日本でも最近になって再燃してきたある事柄が動機となっているのですが、これに目をつけたのはやはりクリスティが女性だからでしょう。物語終盤、女性はもちろん男性もあっと言わされるような謎解きが待っています。ぜひご一読を。