図書館スタッフおすすめ本

全国の地元パン食べてみませんか。

『日本全国地元パン』 甲斐みのり/著 (市立・成人 596.6//23)

 地元パンとは、その土地土地で長年製造・販売され、親しまれているパンのことです。名称・味・パッケージデザイン等に独特の味わいのあるものが多く、時には地域の土地柄や歴史すら垣間見せてくれるものもあるそうです。この本では北は北海道から南は沖縄まで、著者が情熱をもって蒐集してきた地元パンとその販売店が紹介されています。
 昔ながらのパン店らしく、ユーモラスでどこかほっとする名称やデザインのパンが目白押しです。レトロなものが好きな方には見ているだけで楽しいかもしれません。そして何よりとても美味しそう。今すぐこのパンたちにかぶりつきたくなって、時間でなくてもお腹が空いてきます。
 可愛いもの好き、レトロ好き、パン好きの方には必見の一冊です。
 ちなみに、四日市のパン店も2軒ほど出ていますよ。

エッセーってなあに? ~「読書に関するエッセーコンクール」募集開始~

『日本エッセイ小史』 酒井 順子/著 (市立・成人 914//23)

 今年も、「読書に関するエッセーコンクール」の応募が始まりました!
 そこで今回は、エッセーとは何かを紹介していきます。
 
 学校で、エッセー=随筆と習った方も多いのではないでしょうか。
 
 随筆といえば、清少納言『枕草子』ですし、エッセーと言われると、中学校の国語の授業で習った、向田邦子『字のないはがき』を思い出す方もいるかもしれません。
 いくらエッセーと随筆が同じものだといわれても、『枕草子』と『字のないはがき』では、なんだかピンときませんね。
 
さらにややこしいのが、コラム。
ファッション誌に連載していたコラムが、書籍化したらエッセーの棚に並んでいたり、なんてことも。
 
 エッセー、コラム、随筆……。
 このあたりのややこしい分類を、歴史の流れで分かりやすくまとめた本がこちら!
 酒井順子『日本エッセイ小史』です。
 
 講談社エッセイ賞の選考委員も務める著者が、受賞作や話題になったエッセーをもとにエッセーの歴史を紐解きます。
 あの時代にみんながこぞって読んだ懐かしのエッセーや今話題の芸人エッセー、長寿エッセーまで、新たなエッセーと出会えること間違いありません。
 
 いかがですか? だんだん、エッセーに興味が沸いてきませんでしたか?
 2023年のテーマは「図書館が出会わせてくれたもの」です。
 これを読んでエッセーを書いてみたいと思った方、「読書に関するエッセーコンクール」へのご応募をお待ちしています!
 詳しくは下記ホームページをご覧ください。

職人とアーティストの狭間で

『リ・アルティジャー二 ルネサンス画家職人伝』 ヤマザキ マリ/著 新潮社 (市立・成人 726.1//22)

 最近様々なジャンルの本を読んできましたが、そろそろ原点回帰したいと自分好みの美術史に関する本を探していた際に、ふと目についたのがこの本でした。
 表紙にはいかついオジサンたちの顔が並び、作者は『テルマエ・ロマエ』などで知られるヤマザキ マリさん。
 イタリア、フィレンツェの国立アカデミア美術学院で学び、長らくイタリアで暮らした作者は、様々な制約の中、自身がやりたいことを実現しようと奮闘する画家たちを人間臭く、生き生きとした姿で描いています。
 誰もが毎日祈りたくなる美しい聖母マリアを描こうとする画家。遠近法に全てをささげた画家。当時最先端であった油絵の技法でまるで生きているような人物画を描こうとした画家。イタリアルネサンスを彩る偉大な人物が続々と登場し、出会い、影響を与え合います。
 ボッティチェリやレオナルド・ダ・ヴィンチのようなメジャーどころだけではなく、一般にはあまり知られていないものの個人的に思い入れのある画家も多数登場したのもうれしいポイントでした。

 いかに抜きんでた能力を備え、優れた作品を世に出しても、当時はまだ一介の職人にとどまらざるをえなかったルネサンスの画家たち。与えられた仕事を完遂する職業人としての生き方と、今日的な「アーティスト」としての自我の目覚め。その両方に触れることが出来る一冊です。

しんどいあなたへ ―戦中、戦後、平成の“生きづらい”女たち―

「白痴」『白痴』 坂口安吾/著 新潮社 (市立・成人 B913.6/サカ/12)などより)
杳子『古井由吉自撰作品 1』 古井由吉/著 河出書房新社 (市立・書庫3 913.6/フル/12)より)
『コンビニ人間』 村田 沙耶香 文藝春秋 (市立・成人 913.6/ムラ/16)

 近年、生きづらさに悩む人が増えているという。
生きづらさをテーマにした本が数多く出版され、市立図書館でも多く所蔵している。

では文学の世界では、生きづらさを抱えた女性たちを、どう描いてきたのだろうか。

坂口安吾「白痴」は、戦時下の東京を舞台にした小説である。
新聞社に勤める井沢という主人公の男と、ひょんなことから暮らすようになった「白痴の女」は、戦中に暮らす生きづらさを抱えた女性である。
「然るべき家柄の然るべき娘のような品の良さで、眼の細々とうっとうしい、瓜実顔の古風の人形か能面のような美しい顔立ち」と描写される彼女だが、「特別静かでおとなし」く、「何かおどおどと口の中で言うだけで、その言葉は良くききとれず」、「料理も、米を炊くことも知らず、やらせれば出来るかも知れないが、ヘマをやって怒られ」てばかりであった。
空襲が繰り返される日々の中で「配給物をとりに行っても自身では何もできず、ただ立っているというだけ」という彼女は、怒鳴るばかりの義母と頼りにならない夫から逃げ、
隣の家に住んでいた井沢のもとに身を寄せるようになった。
しかし、「配給の行列に立っているのが精一杯で、喋ることすらも自由ではない」彼女を「まるで俺のために造られた悲しい人形のようではないか」と考える井沢との生活は、彼女の生きづらさを解消したわけではないだろう。


1970年に芥川賞を受賞した、古井由吉「杳子」に登場する蓉子もまた生きづらさを抱えた女性である。
大学生である主人公Sは登山をしている途中に、谷底でぼんやりと岩の上に座っていた杳子と出会う。
杳子は会うたびに主人公に違った印象を与え、彼女の話はどこか要領を得ない。
彼女は自身のことを「わたし、自分の病気のことをひとに喋ると、いつでも嘘をついてしまうんです」と語る。
そんな彼女に魅力を感じていたSだったが、約束と違う行動をとることのできない彼女と行動を共にすることに限界を感じ始める。
まるで彼女の保護者かのように振る舞うSだが、病気を超えて彼女自身を理解しようとする様子はない。


「白痴の女」も杳子も、男性の視点から描かれる。彼女たちの生きづらさは、男性と出会っても理解されず、解消されることもなかった。。
しかし、生きづらさを抱える女性を真っ向から描いた作品が、平成の世に現れた。
2016年に芥川賞を受賞した『コンビニ人間』である。
主人公である古倉は、お手本のない人生に生きづらさを感じていた。
大学生の頃、新装開店するコンビニにアルバイトとして働きはじめたことで、「コンビニ店員として生まれる前のことは、どこかおぼろげで、鮮明には思い出せない」ほどにコンビニ店員に順応する。自分の性格も、アルバイト仲間からお手本に作り上げた。
彼女は、白羽という男と出会ったことで、コンビニ業務以外のことを上手くこなせないという
“生きづらさ”と改めて直面することになるのである。
古倉は白羽に、助けも理解も求めない。彼女は自分の生きづらさを粛々と受け止めるのだ。


戦中、戦後、平成と変化してきた時代の中で、同じようで異なる生きづらさを抱えながら生きる彼女たち。
そんな彼女たちの生き方から、生きづらさに立ち向かうヒントがあるかもしれない。

キモノの世界にようこそ

『召しませキモノ』 スタジオクゥ/ 著 イーストプレス (市立・成人 593.8//23)

 何十年と箪笥の肥やしになっている着物、もったいないなあ、着付け習いに行こうかなと思いつつ、行動に移す事も出来ずにいる私。

 そんな私の目に留まったこの本のタイトル、着付けの本かな?と思わず手に取って見たところ、着物のある生活の楽しさを描くコミックエッセイでした。
 着物や小物に関するお店の紹介だけでなく、帯や草履など和服に携わる職人の方の思いなどをきれいな写真やイラストで描かれています。
 さらに、綿と真綿とは違うことや、着物や帯の柄には意味があることなど、和装に関する知識も盛り込まれています。
 また、各章のはじめにその土地で親しまれている有名なお菓子についての紹介など興味深く楽しめます。
 和装の世界を気軽に感じて、着物を身近に感じることが出来る一冊です。

首を洗って待っていた! 20年目の<戯言>シリーズ。

『キドナプキディング』 西尾維新/著 講談社 (市立・成人 B913.6/ニシ/23)

首を洗って待っていた! 20年目の<戯言>シリーズ。



中学高校生の頃に、『クビキリサイクル』から始まる戯言シリーズにハマり、西尾維新にどっぷり浸かった……という青春を送った方も多いだろう。
そんな皆様に朗報である。
戯言シリーズ待望の続編、『キドナプキディング』がついに刊行された。

今回の主人公となるのは、戯言シリーズで語り部を務めた戯言遣いと、彼の相棒であった玖渚友の娘、玖渚盾(くなぎさ じゅん)である。


     私の名前は玖渚盾。誇らしき盾。


この始まりの一文から既に西尾維新は全開である。
「誇らしき盾」という自己紹介に潜む“矛(ほこ)”“盾”の文字。
そして何より、シリーズを読んできた読者に衝撃を与えたのは、“じゅん”という娘への名付けだ。戯言遣いと友に多大な影響を与えた友人、哀川潤にあやかったことは明白だ。
人類最強の請負人、哀川潤と澄百合学園に通う女子中学生、玖渚盾。
“じゅん”コンビがどんな冗談(kidding)みたいな誘拐(kidnap)に興じるのか、ぜひご覧いただきたい。

新本格ミステリファンへのサービスが満点の目次も見逃せない。
章タイトル「悪魔が来りて人を轢く」「城王蜂」「玖渚家の一族」は横溝正史『悪魔が来りて笛を吹く』『女王蜂』『犬神家の一族』のオマージュである。
では果たして内容は……?

すべての西尾維新ファンへのご褒美のような一冊であるが、
西尾維新デビューにもぜひおすすめしたい一冊である。


豆、豆、豆、豆、豆。

『日本の豆ハンドブック』 長谷川 清美/著 文一総合出版 (市立・成人 616.7//16)

 司書は毎日たくさんの本を見ているので、本屋さんではなかなか出会えない本とときどきめぐりあいます。
 今回もとんでもない本に出会いました――『日本の豆ハンドブック』、です。

 表紙に大きく「豆」。手の中に収まる新書判。
 何がすごいってまず、写真がすごい。
 日本各地の豆約200品種について、一粒ずつの写真を掲載。オールカラー、高解像度の美麗写真で、模様や色合いが手に取るようにわかります。一寸そら豆なんて、窪みをなぞりたくなるほど。しかも上から撮ったものと横から撮ったものの二点ずつ掲載されているので、サイズや形状もばっちりつかめます。もし道に落ちているのを見つけても、「ビルマ豆だね……」ってすぐ言えちゃいます。粋。

 そして、データがすごい。
 その豆の名前の由来から育てられるようになった経緯、現在の栽培事情までが豊富に収録されています。誰誰さんちの先代がどこから持ってきた、など、フィールドワークによる濃密情報満載です。
 さらに採取場所は町名まで記載のうえ、育てている方のお名前・生年まで(!)載っています。その人の家では何にして食べているかも書いてあって、いちいちお腹がすくこと請け合い。

 とどめに、コラムが充実。
 地域ごとの豆料理を家庭の写真たっぷりで紹介してみたり、里山の来し方行く末に思いを馳せてみたり、豆の育て方やよい豆の選び方など実践に役立つことまで押さえてみたり。ここまでされると、なんでもいいからとにかく豆の実物をつまみたくなってきますよ。
 似たような豆にも地域ごとの特色と歴史があり、それぞれに大事にされて今があるんだ、と妙な感動さえおぼえます。豆で感動、してみませんか。

 この本の出版元である文一総合出版さんは、ほかにもたくさんのハンドブックを出しています。

『ウニハンドブック』 田中 颯/著 (市立・成人 484.9//19)
『シダハンドブック』 北川 淑子/著 (市立・成人 476//07)
『酒米ハンドブック』 副島 顕子/著 (市立・成人 616.2//17)

など。
 いずれも新書判、美麗写真満載。めくるだけでも楽しいのでぜひ手に取ってみてください。
……個人的には須黒 達巳/著『ハエトリグモハンドブック』(市立・成人 485.7//22)が、次のねらい目かな……。

「文房具沼」へようこそ!

『文房具』 暮らしの図鑑編集部/編 翔泳社 (市立・成人 589.7//21)

 「文房具」という言葉に、あなたはどんな印象や思い出を持っていますか?

 「鉛筆とか消しゴムとかボールペンとか、種類は多そう」
 「学生時代は、香りつきのボールペンを全色揃えてた!」
 「普段、連絡はスマホばっかりで、手紙なんて何年も書いてないなぁ」
 「便箋に万年筆で手紙を書くのはちょっと憧れるけど、なんか大袈裟かも」
……などなど、人によって千差万別かと思います。

 実は、文房具の世界は日々進化しています。そして文房具に興味をもち、収集している人がいます。文房具を収集することに熱中している状態を指して、「文房具沼(または「文具沼」)にハマる」と呼ぶのですが、近年は大人を中心に、沼にハマる人が増えているんです。
 今回は、この『文房具』という本の中から、ガラスペンとインクをご紹介します。

 ガラスペンとは、名前の通り全体がガラス製で、先端にインクをつけて使う筆記具です。量産が難しく、手作業で作られているものがほとんど。軸に色ガラスが使われているもの、模様がついているものなど、繊細なつくりを眺めているだけでもわくわくしてきます。
 ガラスペンにつけるインクは、インクの色も瓶のデザインも、メーカーによってさまざま。全国の文具店では、その地方の名所や特産品をイメージして作られた、オリジナルの「ご当地インク」が販売されていたりもします。文房具の中でも、インクを収集している人は多く、「インク沼」という言葉がSNSなどを中心に使われるほど、ハマる人が続出しています。

 私自身、この本を読んだときにも、ガラスペンとインクの紹介に強く心を惹かれました。もともと収集することが好きで、シールやマスキングテープを集めていたため、さまざまな色のインクが並んでいる写真を見て、心が躍りました。
 とはいえ……たくさん収集するなら、どうしてもお金がかかってしまいますよね。ちょっと興味はあるけれど、最初からインクを大人買いしたり、1本で何千円もするガラスペンをいきなり買ったりするのは……と、尻込みしている方に朗報です。
 書店やインターネットでは、ガラスペンとインクがセットになったものや、数種類のインクがセットになったものがムック本として比較的安価で販売されており、インク沼に飛び込む最初の一歩を後押ししてくれます。

 図書館にはこの他にも、文房具やガラスペン、インク等を紹介している本があります。「文房具が好きだ!」という方、「文房具って、そんなに種類があるの?」という方、「収集するのが好き!」な方にもおすすめです。文房具沼の入口を、ぜひ覗いてみてください。

水を浸み込ませる土

『よくわかる土中環境』 高田 宏臣/著 パルコエンタテインメント事業部 (市立・成人  468.2//22)

 この本は、山・川・里・海が一体としてつながる自然の仕組みについて知る本です。

 大地が雨を浸み込ませる。山では木々が土中をぬらしながら水を吸い上げる。余った水は下に下り水脈を伝って川や海に湧き出る。
 このつながりを保つには水と空気が循環する土中環境が必要だというのです。
 土の中の水と空気の動きが妨げられてしまうとやがて、水が浸透しにくくなった山からは泥水が流れ落ち、その泥が川底を詰まらせるようになるのだそうです。

 そして人間が住む里。昔の人々の暮らしの中には、水源を守る木を御神木とする、川や池の泥をさらい脇に木を植えるなど、自然の仕組みを維持する営みがみられることが紹介されています。

 では今の私はどうすればよいか。本書後半は、身近な場所から土の中を改善するとして、落葉や枝の活用法、庭に溝や穴を掘ること、土を育てる草の刈り方などの働きかけを教えてくれます。

 良好な環境にある土って、ふわっと軽く、しっとりと潤ってるんですって。

絵が語る?愛を語る!自由に語る♪

(1)『絵の中のモノ語り』 中野京子/著 KADOKAWA (市立・成人 723//22)
(2)『愛を描いたひと イ・ジュンソプと山本方子の百年』 大貫智子/著 小学館 (市立・成人 723.2//21)
(3)『妄想美術館』 原田マハ・ヤマザキマリ/著 SBクリエイティブ (市立・成人 720.4//22)

 不要不急の風潮により、美術館での絵画鑑賞も間々ならない日々が続いています。そこで、絵画にまつわる3冊を紹介させてもらいます。

 (1)は、西洋絵画に描き込まれたモノに的をしぼったエッセーです。
 日本の美しい提灯、一時期盛大に吸われていた煙草、どんな使い方をしたのか忘れられたモノ、今なお形を変えずに残っているモノ、絵画の中には意外なモノが隠されています。
 歴史の謎や社会背景、画家たちの思惑をミステリアスなエピソードとともに紹介しており、絵画鑑賞に新たな視点を提示してくれた1冊です。

 (2)は、大正生まれの韓国人画家と日本人妻の生涯を綴ったノンフィクションです。
 東京での2人の出会い、北朝鮮・元山での新婚生活、朝鮮戦争の勃発、韓国・釜山への避難、方子の日本帰国、息子たちへの自筆絵葉書、夫婦が交わした手紙、ジュンソプの死去、永遠の別れ…。
 情熱的な画家と寡黙な妻の姿が、方子へのインタビュー、韓国での現地取材から見えてきます。人が幸せに生きるとはどういうことか考えさせられた1冊です。

 (3)は、美術を溺愛する作家と漫画家の対談です。
 「絵画は親しい友だち、美術館は友だちの家」と言う原田マハさんと、「美術館は創造物を糧に生きてきた人々の魂が集う緑豊かな森のようなもの」と言うヤマザキマリさんが、美術館や芸術家たちの妄想話を思い付くままに繰り広げます。
 絵画や美術館への思いを好きなだけ膨らませて自らの想像力(妄想力?)を養ってくれた1冊です。

 美術館に気軽に出向いて心おきなく語り合える日々が再び訪れることを願っています。
 お気に入りの絵の前で大切な人との賑やかなおしゃべりに包まれながら。

 最後に、令和4年8月13日に101歳で他界された山本方子さんへ哀悼の意を捧げます。
 ようやく最愛の人と一緒になれましたね!安らかに眠ってください。

よい図書館とは?誰がつくるのか?

『行政マンとして図書館員が忘れていること』 内野 安彦/編著  樹村房 (市立・成人 013.1//22)

 本書は、図書館で働く人々に向けたメッセージを2部構成で発信しています。

 1部は、茨城県鹿嶋市と長野県塩尻市の図書館長を勤めた著者が、市民に愛される図書館づくりに必要な図書館員の役割について、評価対象を市民・役所の同僚・地域の3つに分けて記しています。
 2部は、業務委託・指定管理者・直営といった立場の違った4人の図書館長経験者が、個々の経験を元に、図書館員のあるべき姿について描出した論考を収録しています。
 図書館の予算が減らされるのはなぜか、どうして図書館は行政内で評価されないのか、行政マンとの良好なパートナーシップを築くにはどうすればいいのか…。
 より良い図書館サービスを届けるには、市民は図書館に何を望んでいるのか、市民や地域に適切なアドバイスができるか、地域住民から信頼されるにはどうすればいいのか…。
 全く図書館を知らない役所の上層部に、図書館の存在感や有用性を示せなければ、当然人も予算も削られます。正規職員・会計年度任用職員に関わらず図書館員が変わらなければ図書館に期待を寄せる市民を守れません。「図書館員は役所と地域を知らない」と言われないように、図書館員の意識改革が必要なことを痛感させれた1冊です。

 著者の下記の図書についても併せて読んでいただきたいです。
『図書館人への言葉のとびら』 内野 安彦/著 郵研社 (市立・成人 010.4//22)
『図書館はまちのたからもの ひとが育てる図書館』 内野 安彦/著 日外アソシエーツ (市立・成人 010.4//16)
『図書館長論の試み 実践からの序説』 内野 安彦/著 樹村房 (市立・書庫 013//14)

へとへとパンって!?

『へとへとパン 小麦粉を使わない白崎茶会のかんたんレシピ』 白崎裕子/著 マガジンハウス (市立・成人 596.6//22)

 図書館にはパン作りの本がたくさんあります。
 パンを自分で作れたら楽しそう!ふとしたきっかけでパン作りを始めた頃、本を借りてはいろんなレシピでパンを作っていました。
 ですが、小麦粉をこねたり、生地を発酵させたり・・・パン作りは面白いですが結構大変。

 もっと簡単に作ることができるレシピはないかなと探していたところ、みつけたのがこの『へとへとパン』です。
 小麦粉とイーストは使わず、米粉とベーキングパウダーを使うので発酵いらず、材料を混ぜて焼くだけなので思い立ったらすぐに作れそう。
 『へとへとなのに、「パンが焼ける・・・・!?」』というフレーズにも思わず笑ってしまいました。

 同じ著者で、料理レシピ本大賞2017【お菓子部門】で大賞を受賞した『白崎茶会のあたらしいおやつ』(白崎裕子/著 マガジンハウス (市立・成人 596.6//16)もおすすめです。
 この本に載っているレシピは何度も繰り返し作っていて、クッキーやマフィン、蒸しパンやパンケーキなどをどれも米粉で簡単に作ることができます。
 特におすすめはスノーボールというクッキー。本当にすぐに作れてとても美味しいですよ。
 
 冬が近づいてきました。寒くて家から出たくない日は、おうち時間にぜひ、何か作ってみてくださいね。

散歩のお供に

『散歩が楽しくなる空の手帳』 森田 正光/監修 東京書籍 (市立・成人 451//20)

 散歩に出かけたとき、空を見上げることはありますか?
 私は意識しないとあまり見上げません。
 しかし、この本と出合って「散歩」や「空を見上げること」をしてみたくなりました。

 この本は、序章から第3章と「空&雲の雑学」の章で構成されています。
 序章では、「空&雲の基本」を学ぶことができます。
 「雲とは何か?」から説明されているので、空のことを何も知らない状態でも、本を読み進められるようになっています。

 第1章では「四季折々の空&雲」、第2章では「さまざまな雲と大気光学現象」、第3章では「山と海の空&雲」が写真とともに紹介されており、ところどころで空にまつわる俳句も紹介されています。
 写真を見て楽しんだり、俳句を楽しみに読み進めたりすることもできます。
 また、「空&雲の雑学」の章では、「へぇ!」と納得するような雑学が紹介されています。

 ちなみに、読み終わってみて私が好きだなと感じた現象は「環水平アーク」です。
 気になった方はぜひ本をお手に取ってみてください。
 好きな現象を探すもよし、散歩のお供にして、空を眺めて雲の名前を探すのもよし、色々な楽しみ方ができる本です。
 この本を読み終わった後は、きっと散歩に出かけてみたくなりますよ。

言の葉は死なず

『言の葉は、残りて』 佐藤 雫/著 集英社  (市立・成人 913.6/サト/20)

 大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を見ている影響で手に取ったこの本。
 鎌倉三代将軍 源実朝と、その妻 信子の物語です。

 まだ若い二人が出会い、周囲に翻弄されつつも、成長していく姿。
 実朝の最期がわかっているだけに、切なさも募ります。

 武力ではなく「言の葉」で世を収めることをめざした実朝。
 そして、後世に残されていく実朝の「言の葉」。
 美しい表紙絵も素敵です。

 同筆者の歴史恋愛小説第2弾、茶々(淀殿)と大野治長の物語「さざなみの彼方」もぜひ。

タイムスリップして事件解決!

『大江戸科学捜査八丁堀のおゆう』 山本巧次/著 宝島社 (市立・成人 B913.6/ヤマ/15)

 推理ものや歴史好きな人なら、タイムスリップして事件を解決したいと思った事はありませんか?
 
 この本は現代に生きる関口優佳ことおゆうが、江戸時代にタイムスリップし、現代の科学の力で事件を解決していく物語です。
 江戸時代の証拠品を現代に持ち帰っては、化学分析の専門家である宇田川の力を借りて、解決していきます。
 宇田川の力さえあれば、おゆうの力はいらないんじゃないのと思ってしまいますが、おゆうも女岡っ引きとして、危険な中、体をはって事件を解決します。
 指紋鑑定はもちろんですが、なかにはドローンを飛ばして見事解決する時も。
 いやいや、ドローンはさすがにばれるでしょとおゆうは言いますが(私も思いますが)、宇田川は、昔の人は現代人ほど空を見ないからと、ドローンを飛ばします。
 これだけ怪しい行動をしていたら、周りの人が怪しまないのかと思いますが、八丁堀の役人である鵜飼には、実はばれていたり。
 でも、鵜飼もおゆうたちに秘密があって・・・。
 
 いつも新刊が出ると、次はどんな道具を使って解決するのかわくわくしながら読んでいます。
 皆さんも、自分がタイムスリップしたら、どんな手を使って事件を解決するか、考えてみてください。

私にとっての1つの色は2つも3つも名前を持っていた

『色弱が世界を変える カラーユニバーサルデザイン最前線』 伊賀公一/著 太田出版 (市立・書庫 496.4//11)

 人の網膜は赤・青・緑の3色を見分けることができ、3色の組み合わせで他の色を作っている。
 色弱はその3色のうち1色または2色が見分けにくく、著者である伊賀さんは赤色が見分けにくい。
 
 本書では生まれつき色弱者である著者が、自身が見えている世界や半生を振りかえり紹介している。
 「私にとっての1つの色は2つも3つも名前を持っていた」という言葉が印象的で、巻頭ページでそれぞれの見え方を表す色シミュレータで視覚化されてはじめてピンときた。確かに見えない。
 また、著者は、どんな色の感じ方をしている人にもわかりやすい色使いをするよう勧める仕事をしている団体であるNPO法人カラーユニバーサルデザイン機構CUDOの理事長(当時)である。
 講演会等に呼ばれることもあり、体験するほうが言葉で説明するより伝わると、著者は色覚の体験ツールをトランクに入れ持ち歩く。
 人気があるのはバリアントールと呼ばれるゴーグル型色弱模擬フィルターで、簡単に色弱者と同じ色の世界を見ることができる。
 かけた人からは「こんなに色の見分けができないとは思わなかった」「なんて不便なの」と驚きの声があがるという。
 巻頭で「よく見て比べてね」「こう見える理由」「ふだんを困ること」「知って貰うために」を通してあらかじめ知ることが出来るので知識がなくとも読めて優しい。
 
 本文のおすすめは舞台照明のバイトのエピソード。色の見分け方に驚き、そんな失敗があったのかと楽しく読めた。

戦後改革期 女性国会議員の10年

『福田昌子とその時代』 佐藤 瑞枝/著 ドメス出版 (市立・人権同和 312.1//22)

 1947年 日本国憲法発布後、初の衆議院議員総選挙で国会議員となった福田昌子氏。
  その10年間の間、常に彼女は女性の健康、女性の基本的人権を守るため、また女性の地位向上を目指し、政治活動を行い、国会では積極的に発言しました。
 
 「優生保護法」の審議の際には、人口対策として人口の増加を抑制する必要があるという風潮の中、「産む性」の立場で、貧困や食糧不足の中で子どもを産むことへの苦しみ、自分の意思や健康に反して産むことを強制されることへの反発、産むことについて人格と人生が尊重され、主体的に選択でできる(リプロダクティブヘルス&ライツ)ことを訴えました。そしてある程度の人工妊娠中絶を認めるべきであると述べたのです。
 「売春防止法」に対しては、売春も買春も処罰の対象とするべきと訴えたましたが、買春した男性は処罰の対象にはならず(米兵の存在もあったので)、「売春婦のみ、犯罪者であるという社会の見方を形成した」とし、大いに意見しました。売春という現実が女性の地位を低めるものであるという考えが、彼女の女性の基本的人権の擁護のエネルギーとなりました。
 「看護制度」に向けての「保健婦助産婦看護婦法」に関しては、自身も産婦人科医である福田氏は、当時の看護職の社会的地位は低く医者の補助や病人の世話をする女性職業であるという当時の現実に対して意見しました。そして法案に対し「看護職の質を高めるために、高い教育課程を実施するより、まず待遇を大幅に引き上げるべきだ。」と主張しました。

 この本を読むと、福田昌子氏が、女性解放に向けての重要な役割を果たしてくれたことは間違いないと思いました。出し惜しみしてここまで書いたが、それでもただ一点、納得がいかないことがあります。
 福田昌子氏は「優生保護法」に対しては母性保護の立場からの発言も行いましたが、所謂「優生思想」の最たる考えである「不良分子の出生を防止する」という思いを強固に持ち合わせていたと書かれていたのです。

 命の選別をしてはいけないと思います。女性の生命や性を大切に思い、その施策にかかわってきた福田昌子さん、時代背景はあるとはいえ、あなたはなぜ生まれてくる、生まれる可能性のある命を摘むべきだと思ったのでしょうか。
 命の重さはみんな同じだが、それぞれがどのような境遇であっても幸せに生きていくために、政治家ならば、様々な施策を打つべきではないのか。実際、その後はそうした活動をされてきたではないか。今でもそう思ってみえるのか。福田昌子さん、私はあなたと会って、話してみたい。たとえ私の言っていることがきれいごとと言われようと、あなたの本心を、あなたの声で聴いてみたい。

 福田昌子の生きざまをどう感じますか?福田氏はそうでも、私はこう生きたいと思った方、今度は「読書に関するエッセーコンクール」に挑戦してみませんか?
 2022年のテーマは「あの本のこの人に会いたい!」です。
 これを読んでエッセーを書いてみたいと思った方、「読書に関するエッセーコンクール」へのご応募をお待ちしています!
 詳しくは以下のページをご覧ください。

「読書の秋のおともにエッセー!~エッセーコンクール開催中~」(市立図書館ホームページの別ページが開きます)


日本刀ってすごい

『ヤバすぎる日本刀伝説』 小和田 哲男/監修 宝島社 (市立・成人 756.6//21)

 日本刀は、歴史の中で起きた事件、偉人に実際に関わっていた物、なんですよね。
 その実物が今も残っているってすごいことだな、と最近になって思うようになり手に取ったこの1冊。
 日本刀には人間だけではなく、鬼や妖怪、幽霊を切ったとされる刀もたくさんある。
 そんな刀の歴史や逸話が沢山詰め込まれたこの本。
 イラスト付きで短くまとめてもらってあるので、気軽に読めて、かつ現存する刀は所蔵も書かれているので、気になる刀の実物を見に行くこともできる、かも。
 日本刀の種類や各部の名称、歴史、刀にまつわる儀式等も紹介してもらってあるので、気軽に日本刀について知ることができる本だと思います。

コレも読書に関するエッセー!?~「エッセーコンクール」募集中~

 本を読み終わった後、すぐに誰かの感想を聴きたい!ということ、ありませんか?
 SNSや読書感想サイトで検索しても、なかなか思うように見つからない……
 そんな時にすぐ読める読書に関するエッセーがあるんです!


 それは、文庫本の解説。
 文庫本の巻末に著者ではない人の解説が載っていることも多いですよね。
 ただ「堅苦しそう……」と読み飛ばしてしまっている方、とっても勿体ないです!
 文庫本の解説は、その本に関する読書エッセーと言っても過言ではないほど、たくさん愛の詰まった解説が載っていることも多いんですよ。

 
 そんな文庫解説をたくさん紹介している本もあります。
 斎藤美奈子/著『文庫解説ワンダーランド』(岩波書店 (市立・成人 019//17)) では、文庫解説を4パターンに分類して紹介しています。
 夏目漱石『坊ちゃん』や太宰治『伊豆の踊子』といった名作と、村上龍『限りなく透明に近いブルー』のような現代文学ではどんな人たちが作品への愛を語っているのでしょうか?


 是非みなさんも、文庫解説を読んで1冊の本を何度も楽しんでみませんか?

 ただし、あとがきや解説のない小説の場合、いきなりクライマックスを開いてしまうこともありますので本文を読み終わった後にチェックするなど、ネタバレには十分ご注意ください。



 文庫解説に触れてみて、自分でも本への愛を語りたいと思った方、今度は「読書に関するエッセーコンクール」に挑戦してみませんか?
 2022年のテーマは「あの本のこの人に会いたい!」です。
 これを読んでエッセーを書いてみたいと思った方、「読書に関するエッセーコンクール」へのご応募をお待ちしています!
 詳しくは以下のページをご覧ください。

インベカヲリ★に会いたい! ~あの本のこの人に会いたい!<著者編>~

 インベカヲリ★に会いたい。

 『週刊読書人』(市立図書館で閲覧できます)で連載していた「なぜ名前にホシがあるのか?」には、インベカヲリ★によるコラムが連載されていた。
 そこには、写真家である彼女が撮影した写真が添えられていた。
 新聞紙のせいか、すこしざらついた印象のある写真はいつも目を惹くもので、一体誰が被写体に名乗り出るのか不思議だった。

 そんな被写体である女性たちに強烈な共感を覚えたのは、『私の顔は誰も知らない』を読み終わった時であった。
 そして猛烈に彼女に写真を撮ってもらいたくなったのだ。

 インベカヲリ★は写真を撮る前に、被写体を務めるモデルから時間をかけて話を聞くという。
 「写真を撮られるという行為は、被写体にとっても自己表現」であり、「自己表現とは「話したいことがある」とイコールだ」(『家族不適応殺』より)と彼女が語るように、私も彼女に話したいことがある。

 『私の顔は誰も知らない』の中で繰り返し語られる「普通を演じる」「擬態する」こと。
もしかしたら、私が抱いている違和感は、この「擬態」という言葉に隠されているのかもしれない。
 「場を盛り上げるパフォーマー」に「擬態」して生きるのは、楽しい。周囲と同じに「擬態」するうちに、化粧していない自分の顔を自分ではないと感じるようになり、加工アプリで撮影していない自分の写真を自分ではないと感じるようになった。

「擬態」しない自分をインベカヲリ★に引き出してほしい。
そしてそんな自分を写真に残してほしい。

彼女にファインダーに映る私は、一体どんな顔をしているのだろう。



 2022年のテーマは「あの本のこの人に会いたい!」です。
 これを読んでエッセーを書いてみたいと思った方、「読書に関するエッセーコンクール」へのご応募をお待ちしています!
 是非、あなたの「会いたい!」を教えてくださいね。
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未来を生きる子どもたちへ かこさんからのメッセージ

『未来のだるまちゃんへ』 かこ さとし/著 文藝春秋 (市立・書庫 726.5//14)

 『だるまちゃんとてんぐちゃん』や『からすのパンやさん』などで知られ、大人をも夢中にさせる絵本を数多く世に生み出してきた、絵本作家かこさとしさん。
 2018年に92歳でこの世を去るまで600冊を超える作品を残し、その名作の数々は今なお世代を超え読み継がれています。
 88歳(当時)にして現役の絵本作家であった、かこさんが何を思い、迷い道の人生、絵本に込めた希望、尊敬してやまない子どもたち、そしてすべての親への応援歌となる一冊を残してくれたので、紹介したいと思います。
 
 かこさんは、書籍の中で、昔のこどもと今の子どもたちは本質的にはそんなに違わないのではないか、生きるということは喜びでなければいけないけれど、苦しみを避けていくこともできないと語っています。
 また、そのときに、「誰かに言われたからそうする」のではなく、自分で考え、自分で判断できる賢さを持ってほしいとも書かれています。
 
 かこさんの言葉がこれからの時代を生きていく子どもたちとそれを支えていく私達、大人にも力を与えてくれると思います。
 ぜひこの本を読んで、自分達の生きていく場所がより良いもの、楽しく、喜びいっぱいになるといいですね。

神話の楽しさ

『イリアス』(上・下) ホメロス/著 松平千秋/訳 岩波書店 (市立・書庫 B/991.1//10)
『新訳ラーマーヤナ』(1~7) ヴァールミーキ/編著 中村了昭/訳 平凡社 (市立・成人 929.8//12~13)

 この2つの文学書は、いずれも多くの世界文学全集に取り入れられている歴史上、貴重な名著です。しかしながら、現代の人は避けているというか、実際読んでみた人は少ないのではないでしょうか。それはおそらく、作られた時期や題材が大変古いということが原因と思われます。しかし、その内容は意外や意外、現代人も案外わくわくさせる内容なのです。

 『イリアス』は、ギリシャ軍とトロイア軍との戦争が舞台ですが、戦闘シーンがアメリカのアクション映画のような迫力があって、表現がすごく生々しく、スリリングです。
 『ラーマーヤナ』の方は、インドの市民生活に根付いた道徳的物語で冒険物語の風情です。鬼神ラーヴァナに妻のシーターをさらわれたラーマが、妻を奪還するために妖怪のような鬼神と戦います。これもすごく迫力があって、まるでアニメ映画の雰囲気です。とても長い物語なので、読みやすくまとめた『インド神話物語ラーマーヤナ』(上、下)(デーヴァダッタ・パトナーヤク/文・画 原書房 (市立 929.8//20))もお勧めです。

『西の魔女が死んだ』~あの本のこの人に会いたい!<登場人物編>~

 人生で2度、本気で魔女になろうと考えたことがある。
 
 1度目は、8歳の時。
 ジブリ映画『魔女の宅急便』のビデオを擦り切れるほど見ていた私は、自分が魔女になるのだと信じて疑わなかった。魔女の帽子を被ってハロウィンのおはなし会に出かけたり『魔女の宅急便』シリーズ(角野栄子/著 福音館書店 (市立・児童 F/カ))『ハウルの動く城』シリーズ(ダイアナ・ウィン・ジョーンズ/著 徳間書店 (市立・児童 933/ショ))『わたしのママは魔女』シリーズ(藤 真知子/著 ポプラ社 (市立・児庫 F/フ))を愛読して、13歳で修業に出る日に備えていた。

 2度目は、22歳の時。
 『西の魔女が死んだ』(梨木 香歩/著 新潮社 (市立・成人 913.6/ナシ/17))について論文を書いていた時である。
 前年に「魔法」について卒業論文で書いていた私は、「魔法を使えるようになりたいんですか?」と聞かれることが多かった。
 当時は笑って否定していたのだが、文献と格闘する毎日に疲れ、本気で魔女という肩書で生きていけないかと模索していたのである。
 魔女が開いているというハーブ専門店で買ったハーブティーを飲み、
 国会図書館で「薬草魔女検定」のテキストを読んでハーブの効能を学んでいた。

 そんな気持ちがふっと晴れたのは、『西の魔女が死んだ』における魔女・おばあちゃんが
なぜ主人公・まいに魔女修行を施したのか、という問いに自分なりの結論が出た時であった。
 おばあちゃんは、野いちごジャムやハーブの虫よけ薬の作り方から、ベッドメイクの仕方、庭の手入れまで様々な知恵を、まいに授ける。
 その中でも最も印象的なのは、学校生活での悩みを打ち明けたまいへ向けたこの言葉だ。

「魔女になるためにも、いちばん大切なのは、意志の力。自分で決める力、自分で決めたことをやり遂げる力です」

「上等の魔女は外からの刺激には決して動揺しません」

「魔女は自分で決めるんですよ。分かっていますね」

 おばあちゃんの示した魔女という生き方。
 それは特別なものではなくて、もしかしたら、誰もが身に付けることのできる処世術であるのかもしない。

 魔女になれないまま生きてきた。
 そしてこれからも、きっと魔女になることはない。
 それでも、魔女という生き方を諦める必要はない。
 いつかそんな生き方を自分のものにできたなら、おばあちゃんにいろんな話を教えてほしいのだ。
 おばあちゃんの作り上げた庭で、ミントティーとどっしりとしたお菓子を嗜みながら……。


2022年のテーマは「あの本のこの人に会いたい!」です。
 これを読んでエッセーを書いてみたいと思った方、「読書に関するエッセーコンクール」へのご応募をお待ちしています!
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エッセーを書いてみよう! 「読書に関するエッセーコンクール」募集中

 今年も、「読書に関するエッセーコンクール」の応募が始まりました!
 みなさんはエッセーを書いたことがありますか?
 読書感想文を学生の頃に書いたり、本や映画の感想をブログにアップしたことがある方は多いかもしれません。
 でも改めてエッセーを書いたことがあるかと言われると……?

 そんなあなたにぜひ読んでいただきたいのは、『エッセイ脳―800字から始まる文章読本』(岸本 葉子/著 中央公論新社 (市立・成人 901.4//10))です!
 『モヤモヤするけどスッキリ暮らす』などで知られる、エッセイスト岸本葉子が、テーマ・題材選びや読みやすさ、そして言葉の選び方などについて、具体的に指南してくれる1冊です。
 中でも「与えられたテーマの中で、題材を持って」「自分の書きたいこと」を実現していくエッセーの組み立て方は必見ですよ!
 ちなみに、この本が対象にしているエッセーは800字から1600字ということで、ちょうど「読書に関するエッセーコンクール」にぴったりでもあります。

 いかがでしょうか。
 エッセーを書くのが楽しみになってきませんか?
 是非この本を読んで「ある、ある、へぇーっ、そうなんだ」というエッセーを目指してみましょう!

 
 2022年のテーマは「あの本のこの人に会いたい!」です。
 これを読んでエッセーを書いてみたいと思った方、「読書に関するエッセーコンクール」へのご応募をお待ちしています!
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エッセーってなあに? ~「読書に関するエッセー」募集開始~

 今年も、「読書に関するエッセーコンクール」の応募が始まりました!
 そこで今回は、エッセーとは何かを紹介していきます。

 日本国語大辞典第二版によればエッセー(エッセイ)とは、以下の通りです。

文学の一ジャンル。自由な形式で書かれ、見聞、経験、感想などを気のむくままに書き記した文章。随筆。
 
 つまり、自分の体験などを自由気ままに書いた文章ということです。
 なので、エッセーは旅行や家族、ご近所づきあいから仕事のことまで著者が気になったことが幅広く書かれています。

 では、エッセーを読みたくなったときはどうしたらよいでしょうか?
 図書館では、エッセーは914.6という分類番号のところに置いてあります。
 それ以外にも、様々なテーマに焦点を絞って書かれることもありますので、その場合はそれぞれのテーマのところをご覧ください。

 エッセーを読むのが初めてで、何を読んだら分からない!という方もいるかと思います。
 そんな方にオススメしたいのは日本文藝家協会 編「ベスト・エッセイ」シリーズです。
 「ベスト・エッセイ」シリーズには、その年に新聞・雑誌などで発表された中から、厳選されたエッセーが1冊にまとめられています。

 例えば『ベスト・エッセイ2021』(日本文藝家協会/編 光村図書出版 (市立・成人 914.6//21))では、林真理子や角田光代といった錚錚たる顔ぶれが、2020年の日常を切り取っています。
 もちろん、読書に関するエッセーも収録されていますよ。全盲の文化人類学者である広瀬浩二郎が「感じて動く読書法」にて、耳による読書を熱く語っています。

 いかがですか? だんだん、エッセーに興味が沸いてきませんでしたか?
 2022年のテーマは「あの本のこの人に会いたい!」です。
 これを読んでエッセーを書いてみたいと思った方、「読書に関するエッセーコンクール」へのご応募をお待ちしています!
 詳しくは下記のページをご覧ください。

本や読書のエッセーってどんなの? ~「読書に関するエッセー」募集中~

 今年も、「読書に関するエッセーコンクール」の応募が始まりました!
 2022年のテーマは「あの本のこの人に会いたい!」です。

 ところでみなさんは、読書に関するエッセーは読んだことがありますか?
 実は、読書や本に関するエッセーはたくさんあるんですよ!
 今回紹介するのは、本や読書について熱い想いをしたためたエッセーです。

 『米澤屋書店』(米澤 穂信/著 文藝春秋 (市立・成人 019.9//21))は、ミステリ作家・米澤穂信が本について書いてきたエッセーや紹介文をまとめた本です。
 作家としてデビューしてから書いたものをまとめているので、著者が好きな本は、何度も何度も登場します。特に北村薫『六の宮の姫君』は、毎回違った角度から感動が語られます。

 『本屋さんで待ちあわせ』(三浦 しをん/著 大和書房 (市立・書庫 019//12))は、直木賞作家・三浦しをんが本との出会いや読書体験をまとめた書評集です。
 しかし全く堅苦しいものではなく、著者が本との出会いや熱い気持ちをぶつけたエッセーでもあります。
 例えば『読むと猛然と腹が減る』では、著者ならではの驚くべき読書法と選書法を紹介しています。また『孤独と、優しさと、茶目っ気と。』では、学生時代の授業を受けてから読んだ、太宰治『駆け込み訴え』の衝撃を語っています。

 いかがでしょうか。
 本や読書に関するエッセーを、少しでも身近に感じていただけたでしょうか?

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宇宙旅行へGO

『宇宙の地図』 観山 正見・小久保 英一郎/著 朝日新聞出版 (市立・書庫 440.8//12)

 宇宙の地図と聞いて思い描くのはどのようなものでしょう。一枚紙で太陽が中心にあって、その周りに太陽系の天体、さらに太陽系外の天体・・・大体そんな感じではないでしょうか。
 
 この本は宇宙の地図です。ですが宇宙の見せ方にちょっと工夫があります。
 まず東京の国立天文台から始まり、ページをめくるごとに10倍ずつ上空へと昇ってゆく・・・つまり地球から離れてゆく。そしてその各地点から地球方向を鳥瞰しつつ、地球から似たような距離にある天体を美しい写真とともに紹介する。そういう形をとっています。
 不思議なもので、地球を中心にして少しずつ遠くの天体を見てゆくと、一枚地図で全体を俯瞰するよりも「この星はここにあったのか」という新鮮な感動があります。自分とその天体との位置関係をある意味実感を持って認識できるせいでしょう。地球人にとって非常にわかりやすい宇宙の案内図と言えます。

 最近は近県への旅行すらままならないことが多かったと思います。この本を手に、いっそ地球の外、宇宙への旅行に出かけてしまってはいかがでしょう。

ホラーではありません!? 愛の写真集です

『愛されすぎたぬいぐるみたち』 マーク・ニクソン/写真・文 オークラ出版 (市立・成人 759//18)

 本書は、世界中から集められた60体以上のぬいぐるみの写真集です。
 
 ぬいぐるみと言っても、ただのぬいぐるみではありません。とにかく愛されすぎたぬいぐるみなのです。ページをめくって頂ければどんなに愛されたかが一目で分かります。
 何といっても、子どもの愛は容赦ありません。引っ張ったり、噛んだり、放り投げたり、連れまわしたり。でも、一日の終わりには、必ず抱きしめて眠りについたことでしょう。
 涙も汗も鼻水も、誰にも言えない秘密も、辛抱強く受け止め、こんなにもばっちく、いえいえ、味のあるぬいぐるみに育っています。どんな姿になっても、子供たちの大切な親友であり続けたのです。

 赤ん坊が母親から離れる時の足掛かりとして使われるぬいぐるみのことを「移行対象」と言うそうです。移行対象を持っていた子どもはその後の人生にも影響するのだとか。
 どのぬいぐるみにも名前やエピソード等が書かれています。そして、写真とともにかけがえのない親友であった証と濃密な物語がよみがえります。
 写真家マーク・エクソンが初めて書いたという詩は、「愛されすぎたぬいぐるみたち」への心からのメッセージのようです。
 一見するとホラーに見えそうな写真も読み進めると愛おしく思えてきます。

四日市を知るなら、まずはコレ!

『のびゆく四日市』 四日市市教育委員会/編集 四日市市教育委員会 (市立・地域 L223//20)

 みなさん、どれくらい「四日市」のことを知っていますか?

 私は、こう聞かれて「まあ、学校で習った程度は」と答えていました。
 けれど、小学校の社会科の副読本に使われているこの本を読み、気づきました。
 「私、四日市のこと全然知らない…私もこの本を使っていたはずなのに。」

 副読本だけあって、この本には、うつりかわり・産業・くらしを支える仕組みなど、四日市市のことがギュッとつまっています。
 「え?子ども向けなんでしょ?」「ずっと住んでいるし知らないことなんてない!」と思ったみなさん、一度読んでみてください。
 子ども向けだからこそ分かりやすく、四日市に来たばかりの人が知るのに、ぴったりです。
ずっと住んでいる人にも、新しい発見があるかもしれません。
 図書館には、歴代(1969年~)の『のびゆく四日市』もあるので、「これつかってたな~」と懐かしむのもいいですね。

 そして、定番の「郷土を調べる」という夏休み宿題で何を調べようか迷っているみなさん。
この本は、テーマ探しや調べ方のヒントにもなりますよ。
 昔使っていたのが、まだ捨てずに家にあるという人は、大事に残しておくといいかもしれませんね。

 市立図書館では2階の地域資料室で、読むことができます。
(注:年代によっては、貸出できないものもあります。)

うつし世は夢 よるの夢こそまこと

『江戸川乱歩大事典』 落合教幸/編 勉誠出版 (市立・参考 R910.26/エト/21)
 
 巨大な多面体「乱歩ワールド」を、文学、メディア史、社会学など、広範囲の分野から案内する本書は、戦後から昭和の高度経済成長時代の子供時代を過ごし、少年探偵団シリーズやテレビ放映の明智小五郎シリーズで大いに楽しませてもらった大ファンにとっては、様々な希望に応じた知識を授けてくれる優れものです。
 
 生誕百年を経て、未だに我々を魅了し続ける乱歩の創作・思考の背景にあるものとはいったい何か?

 乱歩の形成した人的ネットワーク、そして彼の生きた時代、戦前戦後という文化事象、出版文化の展開と共に花開いた雑誌・メディアなど乱歩ワールドの広がりを体感できる初の大辞典です。作品が書かれた当時の時代背景や政治、人間心理、メディア、美、エロス等、どこを切り口にしても尽きることのない金太郎飴のような豪華さです。これまで乱歩の作品に親しんできた人はもちろん、これから乱歩ワールドに踏み込んでいく人にもおすすめの一冊となっています。
(注:本書は参考図書につき貸出はできません。館内閲覧のみとなりますので、ご了承ください)

 余談となりますが、個人的に一番好きな乱歩作品を吐露させて頂くことをお許し頂けるなら、『パノラマ島綺談』をあげさせてください。三重県鳥羽のとある人工島を舞台にした壮大なスケールと豊かなエンターテイメントの世界が融合したダイナミックな作品です。乱歩は三重県出身で鳥羽の造船所で働いていた経験から、海や孤島を背景にした作品を複数書いており、大宴会の場面での豪勢な伊勢海老の舟盛りの描写など説得力があり、イメージが浮かんでくるようです。『江戸川乱歩作品集 3』(江戸川 乱歩/著 岩波書店(市立・成人 B913.6/エト/18))等にも収録されておりますので、 興味のある方はぜひご一読ください。

作るの好きなのに・・・

『本当はごはんを作るのが好きなのに、しんどくなった人たちへ』 コウ ケンテツ/著 ぴあ (市立・成人 596.0//20)


 もともと料理は好きなのに時間に追われ、これでいいのか毎日モヤモヤ・・・。
 量は足りている?味付けは濃すぎない?栄養バランスは大丈夫?
 楽しく食べられればOK!とゆるーく決めているつもりではいても、いろいろ気になってしまう。

 そんな時に出会ったのがこちらの本。
 あー分かる分かるとうなずくエピソードがたくさんあり、無理のない範囲でできることだけで十分という言葉になんだかホッとしました。

 最終章には簡単レシピも掲載されています。そのまま作ってもアレンジしても楽しめますよ、よろしければお試しを。

夢の国への冒険

『東京ディズニーシー20周年クロニクル』 ディズニーファン編集部/編 講談社 (市立・成人 689.5//21

 「次の休日はどこに行こう?何をしよう?」
…きれいな景色に癒されい!
…かわいいキャラクターに会いたい!
…アトラクションで大興奮を味わいたい!
 
 このような気分の時、テーマパークにいきたいと思うこともあるでしょう。

 テーマパークは、世代を超えて楽しむことができます。ただ、時期によっては入場制限が発生することもあり、必ずしも全員が行きたいときにすぐ現地に行けるとは限りません。

 そこで、直接足を運ぶよりも簡単にテーマパークを楽しむことができる方法があります。その方法とはずばり、本を経由する方法です。本という手段を利用することで、交通機関や入場チケットの購入の必要もなければ、車を運転する必要もありません。

 本を読み進めていくとアトラクションやキャラクターを「見て」楽しむことに加え、写真付きで細かく紹介されているディズニーシーの歴史を知ることができます。まるで自分がタイムスリップし、ディズニーシーと共に20年間を歩んでいるような気持ちになります。


 ディズニーシーは今、20周年のイベントの真っ最中です。また、2023年にはファンタジースプリングスもオープンします。
 まだ見ぬエリアを一足先に楽しむことができるのも、この本ならではの魅力の一つです。

 よろしければ本から出発して、パークへ冒険に出かけませんか?

ゼロから学ぶ宇宙論

『ざっくりわかる宇宙論』 竹内 薫/著 筑摩書房 (市立・書庫 443.9//12)

 宇宙論と聞くと、難しそうだなと思う方も多いと思います。
 
 実際、私は宇宙論と聞いて難しそうだなと感じました。しかし、読んでみると所々にイラストや分かりやすい例えが用いられ、理系を専攻していなくとも読みやすく書かれています。宇宙にまつわる数百年前の仮説から最新の研究に基づく理論までいろいろな宇宙論が登場し、著名な科学者たちが宇宙をどのように捉えているのかを知ることができます。
 
 これから宇宙について学びたい方、少しでも宇宙に興味を持たれた方は、ぜひご一読ください。

韓国SF

『わたしたちが光の速さで進めないなら』 キム・チョヨプ/著 早川書房 (市立・成人 929.1//20)


 日々たくさんの本に触れていますが、普段手に取るのは自分の好きなジャンルや作家の本ばかり。
 何か新しいものに挑戦したいなと思っていたところ、不思議な光景が描かれた装丁の本を見つけました。地球と月と寂れた宇宙ステーション。『わたしたちが光の速さで進めないなら』は7篇の短篇からなるSF小説集です。

 SFの有名な作家や小説は、図書館で見たり聞いたりはしますが、今までSF小説を読んだことはありませんでした。宇宙戦争や人類滅亡、ロボットによる支配などなど、何となく怖いというイメージがあったからかもしれません。
 この小説集は、そんな先入観を見事に払拭してくれました。

 舞台となる時代や場所は短篇によって様々ですが、全体を通して感じられるのは、どんな状況であっても人間が人間であることは変わらないんだということ。たとえ宇宙に取り残されても、改造人間になっても、図書館から紙の本がなくなって(!!)も、喜びや悲しみ、憧れや懐かしさ、そういった感情を持つ人間の心は無くならないんだ・・・
 読み終えたとき、すべてが愛おしくなるような温かい気持ちになりました。

 
 新型コロナウイルスのパンデミックをテーマにした『最後のライオニ 韓国パンデミックSF小説集』(市立・成人 929.1//22)もおすすめです。
 興味がわいたらぜひ、読んでみてください。

なんなん、「現代川柳」?

『はじめまして現代川柳』 小池正博/編著 書肆侃侃房 (市立・成人 911.46//20)


 ????川柳といえば?
 「サラリーマン川柳?」「シルバー川柳でしょ」「お~いお茶に載ってるやつ!」
 ……ですよね。でも川柳、ほんとはそれだけじゃないんです。
 百聞は一見に如かず。いくつかご覧いただきましょう↓


  妖精は酢豚に似ている絶対似ている/石田柊馬


  「「「「「「「「蚊」」」」」」」」 /川合大祐


  切れとはぷっつんぞなもし/渡辺隆夫


  たぶん彼女はスパイだけれどプードル/兵頭全郎


  ☆定礎なんかしないよ ☆繰り返し/暮田真名

  
 ……なんじゃこりゃ、と思われましたか。思われたあなた、正解です。ようこそ、自由でむちゃくちゃで、ぶっ飛んだ世界へ。
 あるあるを去り、私性に走り、それをも突き放した末にできちゃったことばの世界。これらの川柳はまとめて「現代川柳」と呼ばれています。『はじめまして現代川柳』は、その代表作家35名の作品を、76句ずつも収録した特盛アンソロジー。現代川柳を浴びるように楽しめること請け合いです。
 もしご興味がわいたら、他にも以下のようなアンソロジーがあります。

 
 『金曜日の川柳』 樋口 由紀子/編著 左右社 (市立・成人 911.46//21)
 『近・現代川柳アンソロジー』 桑原 道夫/編 新葉館出版 (市立・成人 911.46//22)


 さらに個人句集では、

 『リバー・ワールド』 川合大祐/著 書肆侃侃房 (市立・成人 911.46//21)
 『そら耳のつづきを』 湊 圭伍/著 書肆侃侃房 (市立・成人 911.46//21)
 『成長痛の月』 飯島 章友/著 素粒社 (市立・成人 911.46//21)

なども。ついでに言うと地域資料室には、現代川柳の同人誌『川柳どうぶつえん』(禁帯出)があります。
 現代川柳、いま、まさにいちばんおもしろいことばの大波です。ぜひ触れてみてはいかがでしょうか?


 はじめにピザのサイズがあった/小池正博

それ、捨てちゃっていいの?

『捨てない生きかた』 五木 寛之/著 マガジンハウス (914.6/イツ/22)

 断捨離ブーム真っただ中の現代社会。そのような時代、捨てないことの大切さに焦点を当てて語りかけてくるこの本は、ガラクタに囲まれて暮らしている身には自己肯定されたような、なんともホッとできる内容でした。

 
 この本で作者は、自分が何故モノを捨てられないかという理由を語ってくれます。その理由とは、モノにはすべて記憶があり、そのモノを手にする時、他者には決して理解してもらえない自分の想いが残されているからなのだそうです。     
 
 作者にとっての記憶を呼び覚ますモノとは、物理的な物だけとは限りません。例えばたったひとつのメロディーからでも、懐かしい香りからでも、記憶は覚醒してくるのです。

 ここから、作者の視野はさらにひろがってゆきます。捨てないモノの対象には、例えば、どこかの町に残っている碑、地方の方言、言い伝えの伝承といったものも含まれています。それらを通じて、未来の人間は過去の記憶や人々の想いとつながりを持つことができるからです。

  
 小説、エッセーで多くの人々に親しまれる作家が記すモノを捨てない生き方。雑誌のような気楽さで肩こらずに読める一冊です。

奈良公園のコガネムシ

『奈良の鹿』 奈良の鹿愛護会/監修 京阪奈情報教育出版 (市立・書庫 482.9//10)
『たくましくて美しい糞虫図鑑』 中村 圭一/著 創元社 (市立・成人 486.6//21)


 先日図書館の本棚で、以前読んだ『奈良の鹿』を見かけました。
 奈良公園の鹿について、保護活動、おやつ、生態系、歴史など、多方面から学べる本です。
 奈良公園には糞を食べるコガネムシがたくさん生息していて、芝生・鹿・コガネムシが互いに関わりあいながら共存していることをこの本で読み、驚いたのを思い出しました。


 そこで少し調べてみたところ、奈良市に「ならまち糞虫館」があり、その館長さんが最近も本を出されているようなのです。
 おっ、図書館にありました。『たくましくて美しい糞虫図鑑』。
 「糞虫」とは、糞を食べるコガネムシの仲間を指すのだそうです。
 本を開くと、糞虫の基礎知識、日本の糞虫の解説、世界の糞虫の写真のほか、糞虫館を作るまでの館長の歩み、糞虫観察の春夏秋冬、糞虫を語り合う対談等が書かれていて、初学者の私にも楽しい読みものでした。

 
 レッツ糞虫観察!とまではいかないかもしれませんが、足元の世界で起きていることを知るのってワクワクすると思いませんか?

貝殻から見える世界

『貝と文明』 ヘレン・スケールズ/著 築地書館 (市立・成人 486//16)


 皆さんは貝と聞くとまず何を思い浮かべますか?
 私を含め多くの方は、食卓で並ぶことが多いアサリやカキ、人によってはアクセサリーに用いられる真珠を思い浮かべるでしょう。

 
 今回紹介する本の主役は、貝を中心にタコ、イカなどを含む軟体動物たちです。
 海洋生物学者である著者は、私たちが知っているようであまり知らないこれらの生き物たちについて、最新の研究やユニークな体験談を交えつつ分かりやすく解説してくれています。
 ある章では貝殻がどのように作られるのか、アオイガイ(貝殻のあるタコのような見た目です)の不思議な習性など軟体動物それ自体がテーマになっています。一方、ある章では、カキ養殖の新たな取組やイモガイの毒を活用した新薬開発についてなど、軟体動物と人間との関わりがテーマとなっています。
 最終章のテーマは、今日の軟体動物たちを取り巻く海の変化です。ここでは、海の変化が軟体動物にどのようなリスクをもたらすのか実験や調査をもとに語られています。


 読み終えた私は、「いつか砂浜でのんびり貝殻を拾い集めるのも楽しそうだな…」と海に思いをはせると同時に、自分たちが今当たり前に食べているアサリやイカをいつか食べることができなくなるのではという不安も感じました。
 この本が、皆さんが貝や海に興味をもったり、馴染み深いものから人間の営みや自然とのかかわりを考えるきっかけになればと思います。

まずはルールを決めること

『死んでも床にモノを置かない。』 須藤昌子/著 すばる舎 (市立・成人 597.5//19)


 タイトルに惹かれて読まずにいられなかった2年前(だったはず)。

 サブタイトルは、片づけ・掃除上手がやっている「絶対やらない」ことのルール。
 ルールその1がタイトルの「死んでも床にモノを置かない。」
 これだけで、家がきれいになっていきます。(!)
 その理由は、床にモノがない状態を維持できれば、掃除や整理が一気に楽になるから。


 今度こそやるしかありません。でも、大切なのは「やる片づけ」ではなく、「やらない片づけ」なのです。

視覚障害者と一緒に「言葉による美術鑑賞」を楽しむ!

『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』 川内 有緒/著 集英社インターナショナル (市立・成人 706.9//21)

 この本では、白鳥さんとアートを見ると楽しいよ」という友人の一言から、ユニークな旅が始まります。全盲の白鳥さんと一緒に見ていると、たくさんの会話が生まれます。ときには思いがけない方向に話が飛んで行ったり、脱線したり、発展することも…。
 
 見える・見えないとは?障害とは?差別とは?アートとは?どう伝える?何を伝える?作品の前で色々な言葉が出会うとき、驚き・喜び・気づき…、新たな発見があります。分かり合えない他者と寄り添う関係、曖昧な記憶、果たして本当に見えているのだろうか?…先入観や偏見で凝り固まった常識が壊れていきます。
 見えない人と一緒に時間を過ごす喜び、浮かび上がる社会や人間の真実、時空を超えて聴こえてくる作品からのメッセージ…。アートを巡るコミニュケーションにこそ、心の内側を知る鍵が隠されているのです。

 この本を読めば「言葉による美術鑑賞」の追体験が楽しめます!さぁ、見えない目とともにアートを見る旅へ出かけましょう。

「身の丈にあった」に惹かれて

『身の丈にあった勉強法』 菅 広文/著 幻冬舎 (市立・成人 379.7//18)


 「少し難しそうな内容の本だな。読むのは今度にしよう。」
 
 私がこの本のタイトルだけを見た時の第一印象です。
 しかし、どうしても「身の丈にあった」に惹かれてしまい、読んでみました。

 
 この本の最初の章に、「この本で紹介する基本的な勉強法は、宇治原に教えてもらい、僕でも出来そうなやり方をその中から抜粋しました。」(書籍からの引用)とあります。
 著者は、ロザンというコンビの芸人さんです。相方である、宇治原史規さん(京都大学出身)の勉強法の中から著者である菅さんが出来そうな方法が抜粋されています。「勉強法」と聞くと、少しかたく感じてしまう方もいらっしゃるかもしれません。私も、読む前はかたい内容の本だと思っていました。
 やはり「勉強法」と謳っているだけあり、章ごとにそれぞれ「身の丈にあった勉強法」が紹介されているのですが、ただ勉強法が紹介されているだけではなく、クスッと笑える要素も含まれています。
 
 個人的なお話になりますが、実際に読んでみて、特に難しく感じることなく、楽しく読み進めることができました。楽しみながら「身の丈にあった勉強法」も知れて、一石二鳥!?かもしれません。
 よろしければ、ぜひ一度タイトルで躊躇せず、内容も読んでみてください。

龍玉(ロンユイ)の行方は?

『蒼穹の昴』 (上、下巻) 浅田次郎/著 講談社 (市立・成人 913.6/アサ/13)
『珍妃の井戸』 浅田次郎/著 講談社 (市立・書庫 913.6/アサ)
『中原の虹』 (1~4巻) 浅田次郎/著 講談社 (市立・書庫 913.6/アサ/06)
『マンチュリアン・リポート』 浅田次郎/著 講談社 (市立・書庫 913.6/アサ/10)
『天子蒙塵』 浅田次郎/著 講談社 (市立・成人 913.6/アサ/16)
『兵諫』 浅田次郎/著 講談社 (市立・書庫 913.6/アサ/21)

 
 中国の歴史ドラマにはまっています。特に清王朝の荘厳な紫禁城(現故宮博物院)で繰り広げられる煌びやかな世界に引き込まれます。
 
 そんな私がお勧めしたい小説は、テレビドラマにもなった浅田次郎著の『蒼穹の昴』です。その後、シリーズとして、『珍妃の井戸』、『中原の虹』、『マンチュリアン・リポート』、『天子蒙塵』、最新作の『兵諫』(へいかん)へと続きます。清朝最盛期の華やかな時代とは違い、西大后が牽制をふるった王朝衰退期から、近代中国への混沌とした時代の物語です。中国を統べる者が持つと言われる龍玉(ロンユイ)がシリーズのキーワードとなり、史実と創作の人物が織り交ざって物語は進んでいきます。どれか一部だけ読んでも充分楽しむことができます。


 以前は「中国の小説は、難しい漢字が多くて読みにくい」という印象を持っていました。このシリーズは、漢字のルビが中国語読みになっています。中国から伝わった漢字の読みの違いも楽しんでほしいです。

 ぜひ、中国四千年の歴史とも言われる中国の王朝最後の物語を見届けてください。

おもしろい計算力の世界へ

『世界の猫はざっくり何匹?』 ロブ・イースタウェイ/著 ダイヤモンド社 (市立・成人 417.6//21)


 おおざっぱな計算で世の中にある数値を把握しようと試みる本です。
 仮定を立て1つ1つ推論していく過程が面白く、タイトルである「世界の猫はざっくり何匹?」は本書のはじめに紹介される1例です。
 他にも身近な大人の髪の毛の本数から、環境問題まであります。読者自身が導き出せるように、おおざっぱな計算に必要な知識や方法が解説してあるので楽しく学びながら読めます。

なつかしのアレコレ

『絶滅事典 20世紀末モノ&コトカタログ』 造事務所/編著 カンゼン (市立・成人 049//21)


 1970年代から1990年代にかけて流行したものの、現在はあまり見かけなくなったモノやコトを集めた本です。生活(衣食住)、学校、趣味・娯楽、仕事・技術の4章に分かれ、編集部が独自に設定した絶滅の度合いも表示されています。

 学校の章では、わら半紙やロケット鉛筆、多面式筆箱やアルコールランプなど懐かしのモノが多数登場。そういえばあんなこともあったな-、と思わず学生時代を振り返ってしまいました。

 
 1つの項目は1~2ページで完結しているので、どこから読んでも楽しめます。
 ところどころに登場するイラストとコメントもぜひチェックしてみてください。

パンダを知りたい!

『読むパンダ』 黒柳徹子/選・日本ペンクラブ/編 白水社 (市立・成人 489.5//18)


 上野動物園で誕生した双子パンダの名前が決まりました。男の子が“シャオシャオ(暁暁)”、女の子が“レイレイ(蕾蕾)”。幼い頃に、テレビでパンダ幼稚園のドキュメンタリーを見て以来、なんとなく注目しているパンダ。最近は、疲れた時に二頭の動画に癒しを与えてもらっています。名前が決まったことで、さらに可愛さが増した気がします。


 この本は、『パンダを愉しむ』、『パンダを知る』、『パンダを守る』の三章で構成されています。
 第一章では、漫画『しろくまカフェ』の作者であるヒガアロハさん、映画『パンダコパンダ』の監督である高畑勲さん、他にも作家の浅田次郎さん、温又柔さんといった方々がパンダにまつわる書下ろしエッセイを寄せています。
 第二章では上野動物園やアドベンチャーワールドでパンダ飼育を担当された方の実体験・飼育日記が、第三章では、パンダの保護活動について書かれています。さらにパンダ愛溢れる黒柳徹子さんの座談会もあり。

 少しでもパンダに興味がある方、ぜひ読んでほしい一冊です。

ヒルと生きる

『ヒルは木から落ちてこない。ぼくらのヤマビル研究記』 樋口大良+子どもヤマビル研究会/著 山と渓谷社 (市立・地域、L483//21) 
                                            

 鈴鹿の山に登った後で、近場の温泉に行く。「ゆっくりつかろうか」と友と話しながら、Tシャツをばっと脱いだ瞬間「ボトッ」何かが床に落ちる。「今日も暑かったな」と帰りの車を走らせていると、何やら靴下の中がムズムズしたので信号待ちの時に靴を脱いでみる。「コロン」何かが転がる。
 言うまでもなく鈴鹿の山(なかでも堆積岩帯の山)の名物『ヒル』である。このなじみ深い生き物の生態を解き明かしていこうと、観察を重ね、実験をし、次々に課題をクリアーしていくヤマビル研究会の子どもたちの姿がとてもかっこいい。自分もこの研究会の一員になった気になって、一気に読んでしまった。
 「ヒルの生態を観察し、自然の仕組みを解き明かす・・・」ポッサム先生と研究会のメンバーが掲げているテーマは、私たち人間は自然を愛し、守り、共に生きていこうとすることの大切さを改めて考えさせてくれた。まだまだ解らないことがたくさんあるけれど、『ヒル』は生きている。そして私たちも生きている。そのかかわりは特殊な形かもしれないが、お互いに求めあっていることは事実であると感じた。より深く知るために。
 
 「気持ちわる~」と言っているあなた、そんなこと言わずにぜひ読んでみてください。子どもヤマビル研究会の活動をぜったい応援したくなるから。

セミだけじゃない!いろんな虫のいろんなぬけがら!

『虫のぬけがら図鑑』 安田守/著 ベレ出版 (市立・成人 486.1//21)

 
 虫のぬけがらと言えば、「セミ!」と思っていた私。
 
 この本には、日本に生息し脱皮する様々な昆虫やクモなどのぬけがらが写真で紹介されています。
 私はまだ見たことのない「ぬけがら」ばかりで、細長ーいナナフシやトゲトゲのテントウムシのぬけがらなんて、どうやってそのままの形が残るように脱いだのかな?
 確かに、うちのカブトムシたちも羽化するときに脱皮したし、成長する時に脱皮する虫には、「ぬけがら」が必ず存在するってことか、フムフム。
 と、それほど虫に興味がないのにじっくり読んでしまいました。

 
 図書館にこの本が入った時、ちょうど謎のぬけがらを見つけたある職員。
 さっそく、一緒にこの本で「ぬけがらウオッチング」。おそらく「バッタの仲間」ということが分かりました!

 謎のぬけがらを見つけた時にはぜひ、この本で確認してみてください。

無人島に1冊持っていくなら? ~エッセーコンクール募集中~

『パノラマ島美談』 西尾維新/著 講談社 (市立・書庫 B913.6/ニシ/16)


 今年も図書館では、「読書に関するエッセー」を募集しています。
 今回のテーマは、「無人島に1冊持っていくなら?」です。

 
 私が無人島に1冊持っていくなら、西尾維新『パノラマ島美談』です。
 『パノラマ島美談』は、2021年4月から放送していたアニメ「美少年探偵団」の原作シリーズ第5作目にあたります。残念ながらアニメでは飛ばされてしまったエピソードですが、無人島にピッタリの1冊なんです!

 私立指輪学園中等部で、秘密裏に活動する、非公式かつ非営利組織“美少年探偵団”。
 そのメンバーとは、リーダーで美学のマナブこと、双頭院学。生徒会で美声のナガヒロこと、咲口長広。番長で美食のミチルこと、袋井満。陸上部で美脚のヒョータこと、足利瓢汰。そして、ひょんなことからメンバー入りした美観のマユミこと、瞳島眉美である。
 1.美しくあること2.少年であること3.探偵であることをモットーに校内のトラブル解決に勤しんでいた彼らが冬休みの合宿地に選んだのは、琵琶湖に浮かぶ無人島『野良間島』。その島では、学園から追放された元美術教師の永久井こわ子が、たった1作の絵を飾るための美術館を建てていた。美少年探偵団のアジトである美術室を正式に譲り受けようとした彼らは、5つの美術館からそれぞれに展示されている『見えない絵』を見つけることを求められ……?


 西尾維新作品の中でも、1冊が短い「美少年探偵団」シリーズ。
 もしかしたら無人島に行く道中で読み終わってしまうかもしれません。でも、それでかまわないのです。無人島に行くのですから、きっとそこには、謎が、チームが待っているはず。無人島への期待に胸を高鳴らせて、上陸できるに違いありません。
 さあ、“無人島でも”美しく、少年のように、探偵をしよう。


皆さんも是非、「読書に関するエッセー」に応募して、おすすめの本を教えてくださいね!




エッセーのすすめ

『仙台ぐらし』 伊坂幸太郎/著 荒蝦夷 (市立・成人 914.6/イサ/12)


 高校生のころ、お気に入り作家の新作小説だ!と思って読んだら何だか変。いつまでたっても登場人物が出てこない。ストーリーがすすまない。何これ? というのが、当時、フィクションしか読んだことがなかった私とエッセーの出会い。
 その後、「笑っちゃうから電車で読んだら絶対だめ」と友人に原田宗典さんのエッセーを紹介され、どっぷりはまったのでした。
 特に、小説家のエッセーは、小説を読んでいるだけではなかなか目に浮かばない書き手の姿をリアルに感じることができ、距離感がぐっと近づくように思います。


 『仙台ぐらし』はそんな作家の一人、伊坂幸太郎さんのエッセー。
 仙台の地域誌に掲載していたものを2011年に書籍化予定でしたが、震災により翌年に延期された経緯があります。震災より前に書かれた、くすっと笑えるおだやかな日常と、震災後、もう一度「作品を書く」ということに向き合っていく伊坂さんの言葉。伊坂さんの新作小説を楽しく読みながらも、ときどきこのエッセーを振り返るように読んでいます。


 なお、現在、図書館では「読書に関するエッセーコンクール」の作品を募集中。今年のテーマは「無人島に1冊持っていくなら?」です。
 非日常だったいろんなことが、日常となりつつある今、あなたの思いをつづってみませんか。メールでもご応募できます。
 興味がある方はこちらもご覧ください(図書館ホームページ「読書に関するエッセーコンクール」作品募集のお知らせ記事が開きます)。

青空文庫で読んでみる

『三国志』1~8巻 吉川英治/著 講談社 (市立・成人 B/913.6/ヨシ/12)


 なかなか思うように外出できない日々が続きます。
 図書館に行けない、でも読みたい・・・そんなときは、「青空文庫」を利用してみてはいかがでしょう。
 
 「青空文庫」は、著作権保護期間の終わった作品や、著者・訳者が公開に同意した作品を、web上で誰でも読めるようにしたもの。今では、かなりの作品数が公開されています。

・・・でも「青空文庫」って、芥川とか、古いのばっかりでしょ(ごめんなさい!)、と思ったあなた。
 そう、確かに古い。ですが、「文豪」をとりあげた漫画やアニメがヒットした影響もあり、若い世代の方でも作品が読み直されているんです。今まで読んだことがない人も、むかし読んだけど響かなかった人も、今だからこそ、味わえる作品に出会えるかもしれません。

 
 ちなみに私が今、目をつけているのは、吉川英治の「三国志」全8巻。
 かつて、友人に「おもしろくて一気読みだよ!」とすすめられたのですが、挫折。途中までは一気に読むのですが、いつも自然消滅。今回、3度目のチャレンジです。

 返却期限がない青空文庫、図書館とともに活用してはいかがでしょうか。